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1章 王都ルーデリー 出会い編

1-19 万事屋

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 リーズと別れ、街を案内してもらう。
 
「さっきは聞けなかったけど、「風の民」はエルフとは違うの?」

「少し複雑なのですが、元は同じ種族です。
 所謂エルフは「森の民」と呼ばれ、自然を愛し肉を食しません。
 「風の民」は窮屈を望まず放浪したり自分たちの街を新たに作ったりと、自由奔放な種族です。」

「とっても仲が悪いんだよ!」

 ミーシャが横やりを入れる。

「自由奔放な「風の民」は、しきたりを重視して正当なエルフを主張する「森の民」を「引きこもり」と呼んでるし。
 「森の民」からしたら、エルフとしての伝統を軽んじる「風の民」を「罰当たり」と呼んでるし。」

 つまり、種族としては同じだが一緒にされたくないという事だろう。

ーーーーーーーーーー
 そうこうしているうちに目的地に着く。

「ここが私がよく来る万事屋よろずやアルト。
 この街にいくつかある万事屋のなかでは一番信頼できる。」

「うれしいこと言ってくれるじゃない、ナツキちゃん。」

 後ろから声が聞こえる。
 振り向くろ、少しふくよかな女性が経っている。

「お久しぶりです、アルミラさん。」

「久しぶり、街に帰って来てたんだね。
 さ、入って。」

 大きな荷物を両手に抱えているにも関わらず器用にドアを開ける。

「アルミラさんも、ここのご主人のアルトさんも「ドワーフ」なんです。」

 イメージしていたドワーフとはだいぶ違う。
 アルミラさんは体型こそふくよかだが、身長は小さいとは言えず、170㎝はあるのではないだろうか。

 中に入りもっと驚いたのは主人のアルトさんだ。
 身長は180cmはあるだろう、少しぽっちゃりしているが、その体型でも筋肉は際立っていた。

 後で教えてもらった事なのだが、「トーラドワーフ」と言う人間族などとあまり変わらない背丈の種族らしい。

「いらっしゃい、ナツキ、ミーシャ。
 新しい仲間かい?
 サービスするよ。」

 先ほどの会話を奥さんから教わったのか、えらく上機嫌だ。

「彼の為に剣を新調したい。」

「よし分かった。
 ちょっと待ってろ。」

 そういって奥へ下がる。
 その間店内を見廻すが、どれもこれも見たことのないものばかりだ。

「お待たせっ、てそうでもないか?」

 興味津々で店内を物色している俺を見て笑う。
 
「すみません、田舎者なので…」

「いいって、兄ちゃん。
 どんどん見てくれ、うちはお値段以上間違いなしの良心価格だ。」

 そういって奥から刀を持ってきていた。
 この世界にも刀があるのかと驚いたが、他の「迷い人」が持ち込んだのだとしたら不思議でもない。

「これは自信作、の一歩手前ってところだ。
 それなりの出来だが、ナツキの為に打った一本だ。
 ついでに持ってってくれ。」

 そういって気前よく渡してくれる。
 ついでって、ナツキの為ってどういうことだろうと思ったが、すぐ解決する。

「では、出来たのですね!?」

「ああ、自信作だ。
 お前さんの要望通りの重さ、固さ、切れ味。
 切れ味に関しては想像を上回るだろう。」

 お前さんの実力ならな、と付け加える。

 目を輝かせて刀を持つナツキは、クリスマスプレゼントを貰った子供のようだ。

「この刀はアルトさんが打ったんですか?」

 疑問をぶつける。

「当然だ、俺はこの街一番の鍛冶師だぜ!」

 胸を叩いてそういう。
 ナツキの反応を見るに、あながち間違いでもないのだろう。
 これまた後で聞いた話だが、薬師にしても、鍛冶師にしても、生産専門で行う職人もいれば、自らお店を開く人もいるのだとか。
 考えてみれば当然だよな、自分の頭がいかに凝り固まっているかを思い知らされる。

「お店は基本的にアルミラさんとアルトさんの弟さんの奥さんが切り盛りして、アルトさんと弟さんは鍛冶職が本業、直接店頭販売しているからモノによってかなりお買い得なんです。」

 すごいな…
 素直にそう思う。
 
 元々はアルト、アルミラ夫婦が細々とやっていた武器屋にこの街に住み始めた弟夫婦が加わり、万事屋として拡大したのだとか。
 
「たまに素材の依頼なんかも来るから、お互いに御贔屓さんってとこ!」

 ミーシャが胸を張る。
 人と人との繋がり。
 前の世界では忙しさを理由に蔑ろにしてしまっていたものだ。

 まずはナツキとミーシャ、二人との関係から大切にしていこうと思った。
 
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