20 / 97
1章 王都ルーデリー 出会い編
1-19 万事屋
しおりを挟む
リーズと別れ、街を案内してもらう。
「さっきは聞けなかったけど、「風の民」はエルフとは違うの?」
「少し複雑なのですが、元は同じ種族です。
所謂エルフは「森の民」と呼ばれ、自然を愛し肉を食しません。
「風の民」は窮屈を望まず放浪したり自分たちの街を新たに作ったりと、自由奔放な種族です。」
「とっても仲が悪いんだよ!」
ミーシャが横やりを入れる。
「自由奔放な「風の民」は、しきたりを重視して正当なエルフを主張する「森の民」を「引きこもり」と呼んでるし。
「森の民」からしたら、エルフとしての伝統を軽んじる「風の民」を「罰当たり」と呼んでるし。」
つまり、種族としては同じだが一緒にされたくないという事だろう。
ーーーーーーーーーー
そうこうしているうちに目的地に着く。
「ここが私がよく来る万事屋アルト。
この街にいくつかある万事屋のなかでは一番信頼できる。」
「うれしいこと言ってくれるじゃない、ナツキちゃん。」
後ろから声が聞こえる。
振り向くろ、少しふくよかな女性が経っている。
「お久しぶりです、アルミラさん。」
「久しぶり、街に帰って来てたんだね。
さ、入って。」
大きな荷物を両手に抱えているにも関わらず器用にドアを開ける。
「アルミラさんも、ここのご主人のアルトさんも「ドワーフ」なんです。」
イメージしていたドワーフとはだいぶ違う。
アルミラさんは体型こそふくよかだが、身長は小さいとは言えず、170㎝はあるのではないだろうか。
中に入りもっと驚いたのは主人のアルトさんだ。
身長は180cmはあるだろう、少しぽっちゃりしているが、その体型でも筋肉は際立っていた。
後で教えてもらった事なのだが、「トーラドワーフ」と言う人間族などとあまり変わらない背丈の種族らしい。
「いらっしゃい、ナツキ、ミーシャ。
新しい仲間かい?
サービスするよ。」
先ほどの会話を奥さんから教わったのか、えらく上機嫌だ。
「彼の為に剣を新調したい。」
「よし分かった。
ちょっと待ってろ。」
そういって奥へ下がる。
その間店内を見廻すが、どれもこれも見たことのないものばかりだ。
「お待たせっ、てそうでもないか?」
興味津々で店内を物色している俺を見て笑う。
「すみません、田舎者なので…」
「いいって、兄ちゃん。
どんどん見てくれ、うちはお値段以上間違いなしの良心価格だ。」
そういって奥から刀を持ってきていた。
この世界にも刀があるのかと驚いたが、他の「迷い人」が持ち込んだのだとしたら不思議でもない。
「これは自信作、の一歩手前ってところだ。
それなりの出来だが、ナツキの為に打った一本だ。
ついでに持ってってくれ。」
そういって気前よく渡してくれる。
ついでって、ナツキの為ってどういうことだろうと思ったが、すぐ解決する。
「では、出来たのですね!?」
「ああ、自信作だ。
お前さんの要望通りの重さ、固さ、切れ味。
切れ味に関しては想像を上回るだろう。」
お前さんの実力ならな、と付け加える。
目を輝かせて刀を持つナツキは、クリスマスプレゼントを貰った子供のようだ。
「この刀はアルトさんが打ったんですか?」
疑問をぶつける。
「当然だ、俺はこの街一番の鍛冶師だぜ!」
胸を叩いてそういう。
ナツキの反応を見るに、あながち間違いでもないのだろう。
これまた後で聞いた話だが、薬師にしても、鍛冶師にしても、生産専門で行う職人もいれば、自らお店を開く人もいるのだとか。
考えてみれば当然だよな、自分の頭がいかに凝り固まっているかを思い知らされる。
「お店は基本的にアルミラさんとアルトさんの弟さんの奥さんが切り盛りして、アルトさんと弟さんは鍛冶職が本業、直接店頭販売しているからモノによってかなりお買い得なんです。」
すごいな…
素直にそう思う。
元々はアルト、アルミラ夫婦が細々とやっていた武器屋にこの街に住み始めた弟夫婦が加わり、万事屋として拡大したのだとか。
「たまに素材の依頼なんかも来るから、お互いに御贔屓さんってとこ!」
ミーシャが胸を張る。
人と人との繋がり。
前の世界では忙しさを理由に蔑ろにしてしまっていたものだ。
まずはナツキとミーシャ、二人との関係から大切にしていこうと思った。
「さっきは聞けなかったけど、「風の民」はエルフとは違うの?」
「少し複雑なのですが、元は同じ種族です。
所謂エルフは「森の民」と呼ばれ、自然を愛し肉を食しません。
「風の民」は窮屈を望まず放浪したり自分たちの街を新たに作ったりと、自由奔放な種族です。」
「とっても仲が悪いんだよ!」
ミーシャが横やりを入れる。
「自由奔放な「風の民」は、しきたりを重視して正当なエルフを主張する「森の民」を「引きこもり」と呼んでるし。
「森の民」からしたら、エルフとしての伝統を軽んじる「風の民」を「罰当たり」と呼んでるし。」
つまり、種族としては同じだが一緒にされたくないという事だろう。
ーーーーーーーーーー
そうこうしているうちに目的地に着く。
「ここが私がよく来る万事屋アルト。
この街にいくつかある万事屋のなかでは一番信頼できる。」
「うれしいこと言ってくれるじゃない、ナツキちゃん。」
後ろから声が聞こえる。
振り向くろ、少しふくよかな女性が経っている。
「お久しぶりです、アルミラさん。」
「久しぶり、街に帰って来てたんだね。
さ、入って。」
大きな荷物を両手に抱えているにも関わらず器用にドアを開ける。
「アルミラさんも、ここのご主人のアルトさんも「ドワーフ」なんです。」
イメージしていたドワーフとはだいぶ違う。
アルミラさんは体型こそふくよかだが、身長は小さいとは言えず、170㎝はあるのではないだろうか。
中に入りもっと驚いたのは主人のアルトさんだ。
身長は180cmはあるだろう、少しぽっちゃりしているが、その体型でも筋肉は際立っていた。
後で教えてもらった事なのだが、「トーラドワーフ」と言う人間族などとあまり変わらない背丈の種族らしい。
「いらっしゃい、ナツキ、ミーシャ。
新しい仲間かい?
サービスするよ。」
先ほどの会話を奥さんから教わったのか、えらく上機嫌だ。
「彼の為に剣を新調したい。」
「よし分かった。
ちょっと待ってろ。」
そういって奥へ下がる。
その間店内を見廻すが、どれもこれも見たことのないものばかりだ。
「お待たせっ、てそうでもないか?」
興味津々で店内を物色している俺を見て笑う。
「すみません、田舎者なので…」
「いいって、兄ちゃん。
どんどん見てくれ、うちはお値段以上間違いなしの良心価格だ。」
そういって奥から刀を持ってきていた。
この世界にも刀があるのかと驚いたが、他の「迷い人」が持ち込んだのだとしたら不思議でもない。
「これは自信作、の一歩手前ってところだ。
それなりの出来だが、ナツキの為に打った一本だ。
ついでに持ってってくれ。」
そういって気前よく渡してくれる。
ついでって、ナツキの為ってどういうことだろうと思ったが、すぐ解決する。
「では、出来たのですね!?」
「ああ、自信作だ。
お前さんの要望通りの重さ、固さ、切れ味。
切れ味に関しては想像を上回るだろう。」
お前さんの実力ならな、と付け加える。
目を輝かせて刀を持つナツキは、クリスマスプレゼントを貰った子供のようだ。
「この刀はアルトさんが打ったんですか?」
疑問をぶつける。
「当然だ、俺はこの街一番の鍛冶師だぜ!」
胸を叩いてそういう。
ナツキの反応を見るに、あながち間違いでもないのだろう。
これまた後で聞いた話だが、薬師にしても、鍛冶師にしても、生産専門で行う職人もいれば、自らお店を開く人もいるのだとか。
考えてみれば当然だよな、自分の頭がいかに凝り固まっているかを思い知らされる。
「お店は基本的にアルミラさんとアルトさんの弟さんの奥さんが切り盛りして、アルトさんと弟さんは鍛冶職が本業、直接店頭販売しているからモノによってかなりお買い得なんです。」
すごいな…
素直にそう思う。
元々はアルト、アルミラ夫婦が細々とやっていた武器屋にこの街に住み始めた弟夫婦が加わり、万事屋として拡大したのだとか。
「たまに素材の依頼なんかも来るから、お互いに御贔屓さんってとこ!」
ミーシャが胸を張る。
人と人との繋がり。
前の世界では忙しさを理由に蔑ろにしてしまっていたものだ。
まずはナツキとミーシャ、二人との関係から大切にしていこうと思った。
0
お気に入りに追加
230
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
周りの女子に自分のおしっこを転送できる能力を得たので女子のお漏らしを堪能しようと思います
赤髪命
大衆娯楽
中学二年生の杉本 翔は、ある日突然、女神と名乗る女性から、女子に自分のおしっこを転送する能力を貰った。
「これで女子のお漏らし見放題じゃねーか!」
果たして上手くいくのだろうか。
※雑ですが許してください(笑)
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話
赤髪命
大衆娯楽
少し田舎の土地にある女子校、華水黄杏女学園の1年生のあるクラスの乗ったバスが校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれてしまい、急遽トイレ休憩のために立ち寄った小さな公園のトイレでクラスの女子がトイレを済ませる話です(分かりにくくてすみません。詳しくは本文を読んで下さい)
校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが集団お漏らしする話
赤髪命
大衆娯楽
※この作品は「校外学習の帰りに渋滞に巻き込まれた女子高生たちが小さな公園のトイレをみんなで使う話」のifバージョンとして、もっと渋滞がひどくトイレ休憩云々の前に高速道路上でバスが立ち往生していた場合を描く公式2次創作です。
前作との文体、文章量の違いはありますがその分キャラクターを濃く描いていくのでお楽しみ下さい。(評判が良ければ彼女たちの日常編もいずれ連載するかもです)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
おしっこ我慢が趣味の彼女と、女子の尿意が見えるようになった僕。
赤髪命
青春
~ある日目が覚めると、なぜか周りの女子に黄色い尻尾のようなものが見えるようになっていた~
高校一年生の小林雄太は、ある日突然女子の尿意が見えるようになった。
(特にその尿意に干渉できるわけでもないし、そんなに意味を感じないな……)
そう考えていた雄太だったが、クラスのアイドル的存在の鈴木彩音が実はおしっこを我慢することが趣味だと知り……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる