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死へと向かい、生へと戻る2
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「どういうこと・・・。」
「・・・・・。」
モグラはセレンの問いかけに黙る。なんと話せば良いものか。修行の内容は人のそれでは無い。おおよそ伝説で語られているようなものだった。信じる信じないじゃない。なぜならば証拠がある。
「なるほど・・・ガルナ君が言ってたのはそのことか?」
「女将が?」
「ああ、私は彼女の宿屋でしか呑まんからな。情報収集・・・と言ったら聞こえは良いが、主に新人の勧誘だな。彼女の宿屋に泊まれる者は見込みがある。誠実なるものは余計な物は飾らない。たとえ態度が横暴だとしても、部屋の使い方で全てが分かる。これは私の親友が言っていたことだよ。」
「周さんの友人ですか!?」
ガタっと音を立てながら立ち上がる。モグラにとって、その言葉は傷であり、救いだった。忘れるわけが無い。
「君は周を知っているのだな?彼は元気にしているのか?」
「・・・いえ・・・周さんは死にました。」
「何だと!?」
セレンは何を言ってるのか分からないと言った感じの顔をファイゼンベルグに向ける。その視線に気が付き置いてけぼりにしていることに気が付くと「実を言うと」と言って説明をした。
ギルド長の本当の肩書きはある令嬢の執事をしている。ただ、今は情報を得るためにギルド協会に入り、こうして長をしている。4年前、令嬢率いる海軍とある国が戦ったときの海戦で敗北した。令嬢は何度も戦線に立ち勝利の女神と呼ばれていたが、その海戦の敗北により多くの物を失った。逃げて逃げて生き延びたが、家の失墜により彼女を恨む者達が多くの刺客を送り込み、もはやここまでと思った時だった。一人のオーガが現れて刺客達を一掃した。その時に助けてくれたオーガが周だった。
「周君には助けられてね、色々と世話をしてもらったんだよ。」
「・・・そうでしたか。」
「・・・・。」
セレンは黙って聞いていた。ふと、モグラの顔を見ると罪人が処刑される前の顔をしている。この話は核心だとセレンは思った。彼が生きているのはその周とやらが助けてくれたからだ。そして、その人は死んでいる。きっと原因は・・・。
「彼が私を救ってくれた。その命と引き換えに・・・。ただ、今は話せません。」
そうかと言ってギルド長は俯いてこう言った。
「彼ほどの傑物が死んだ。その事を話してくれてありがとう。」
紅茶を一口のみ、話しを戻そうと言った。
「それで何で君は生きているのか・・・。その傷は心臓、肺、腸を貫き、切られている。そして君は剣聖・・・いや、侍の称号を得ている。オーガの試練は里の強者であっても命を落とすと聞いた。話してもらおうか?君がもし、アンデッドになっていたら、ギルドに登録はできない。セレン君には申し訳ないが・・・。」
「それでも問題ありません。」
「え?」
「は?」
二人は同時にセレンを見た。
「どういうことかな?確かに君は初めて会ったときから変・・・いや、おかしな子だなと思っていたが、まさか例のスキルを遣う気じゃ・・・無かろうね?」
ファイゼンベルグの持つティーカップがカチャカチャと音を出すほど震えていた。モグラは少し考えるとそう言えばセレンは実力でスキルを取得するという変わった一面を持っていたなと、一時期小さい魔物を飼っていたなと・・・それを思い出したとき、モグラの背中に寒気が走った。
「飼います。私が飼いますから!」
ファイゼンベルグはカップを落とし見事に真っ二つに割れた。それは二人の心の距離を現すかのようだった。
「・・・・・。」
モグラはセレンの問いかけに黙る。なんと話せば良いものか。修行の内容は人のそれでは無い。おおよそ伝説で語られているようなものだった。信じる信じないじゃない。なぜならば証拠がある。
「なるほど・・・ガルナ君が言ってたのはそのことか?」
「女将が?」
「ああ、私は彼女の宿屋でしか呑まんからな。情報収集・・・と言ったら聞こえは良いが、主に新人の勧誘だな。彼女の宿屋に泊まれる者は見込みがある。誠実なるものは余計な物は飾らない。たとえ態度が横暴だとしても、部屋の使い方で全てが分かる。これは私の親友が言っていたことだよ。」
「周さんの友人ですか!?」
ガタっと音を立てながら立ち上がる。モグラにとって、その言葉は傷であり、救いだった。忘れるわけが無い。
「君は周を知っているのだな?彼は元気にしているのか?」
「・・・いえ・・・周さんは死にました。」
「何だと!?」
セレンは何を言ってるのか分からないと言った感じの顔をファイゼンベルグに向ける。その視線に気が付き置いてけぼりにしていることに気が付くと「実を言うと」と言って説明をした。
ギルド長の本当の肩書きはある令嬢の執事をしている。ただ、今は情報を得るためにギルド協会に入り、こうして長をしている。4年前、令嬢率いる海軍とある国が戦ったときの海戦で敗北した。令嬢は何度も戦線に立ち勝利の女神と呼ばれていたが、その海戦の敗北により多くの物を失った。逃げて逃げて生き延びたが、家の失墜により彼女を恨む者達が多くの刺客を送り込み、もはやここまでと思った時だった。一人のオーガが現れて刺客達を一掃した。その時に助けてくれたオーガが周だった。
「周君には助けられてね、色々と世話をしてもらったんだよ。」
「・・・そうでしたか。」
「・・・・。」
セレンは黙って聞いていた。ふと、モグラの顔を見ると罪人が処刑される前の顔をしている。この話は核心だとセレンは思った。彼が生きているのはその周とやらが助けてくれたからだ。そして、その人は死んでいる。きっと原因は・・・。
「彼が私を救ってくれた。その命と引き換えに・・・。ただ、今は話せません。」
そうかと言ってギルド長は俯いてこう言った。
「彼ほどの傑物が死んだ。その事を話してくれてありがとう。」
紅茶を一口のみ、話しを戻そうと言った。
「それで何で君は生きているのか・・・。その傷は心臓、肺、腸を貫き、切られている。そして君は剣聖・・・いや、侍の称号を得ている。オーガの試練は里の強者であっても命を落とすと聞いた。話してもらおうか?君がもし、アンデッドになっていたら、ギルドに登録はできない。セレン君には申し訳ないが・・・。」
「それでも問題ありません。」
「え?」
「は?」
二人は同時にセレンを見た。
「どういうことかな?確かに君は初めて会ったときから変・・・いや、おかしな子だなと思っていたが、まさか例のスキルを遣う気じゃ・・・無かろうね?」
ファイゼンベルグの持つティーカップがカチャカチャと音を出すほど震えていた。モグラは少し考えるとそう言えばセレンは実力でスキルを取得するという変わった一面を持っていたなと、一時期小さい魔物を飼っていたなと・・・それを思い出したとき、モグラの背中に寒気が走った。
「飼います。私が飼いますから!」
ファイゼンベルグはカップを落とし見事に真っ二つに割れた。それは二人の心の距離を現すかのようだった。
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