13 / 71
勇者とギルド3
しおりを挟む
「早く行け!この、のろま共!」
魔王軍七将の一人が目の前に現れるとはこの時は誰も予想していなかった。まだ開戦してから1時間も立っていない。それなのにも関わらず魔王軍最大戦力が前線の騎士やAランク冒険者を薙ぎ倒し、勇者パーティーにまで到達していた。戦力は十分整えていた。作戦も王国兵やギルドと3日程かけて練った。その全てを圧倒的な力で飲み込むギルティアは最早自然災害そのものだった。
(せめてこいつらだけでも)
「私は残る!残って戦うわ!」
セレンはそう言うと呪文を唱え始めたが、それを遮るようにレオンは大声で言った。
「おい屑!何してんだ!荷物持ちのお前なら遁走スキル使って逃がすことくらいできんだろ!」
「でもレオン、君は!」
「っ!!!」
遁走スキル。その名の通り強敵が現れたときにどんな状態だったとしてもその場からパーティーを逃がすことが出来る切り札的なスキルだが、これには致命的な欠陥がある。勇者のスキル、勇気の神髄が発動した者は、あらゆるマイナスのデバフの魔術、スキルの効果、例えば毒や威圧などを全て無効化する。一見、最強のスキルではあるが、遁走や他人からのステータス表示などのマイナス効果になるスキルなども防いでしまうため、使用するときはよほどのことが無い限りに限定される。つまりレオンは逃げられない。
ジークやセレンはまっすぐな性格でこういった状況では説得することが出来ない事を知っている。その為、レオンは絶対に打ってはならない悪手に手を染めることを選んだ。
「おい、爆乳魔術師、街に戻ったらやらせろ。」
「あんた何言って・・・」
「前からその身体、抱きたいと思ってたんだよ!」
ゲスな表情で舐め回すように魔術師リースの身体を見る。これには盾役のジョナサンも激高した。
「貴様、リースに何かしたら殺すからな!ジークこんな奴ほっといて逃げるぞ!」
「でも!」
「もう付き合ってられない!ジーク!」
「ジーク!ダメ!」
ジークはレオンを見た。彼は剣をギルティアに向けたまま振り替えらない。ただ、最後の言葉はジークに確かに聞こえたのだった。
「行け!ジーク!」
それからレオンの姿を見た者は誰も居ない。
「ん・・・。」
朝日が窓から差し込むとセレンは目を覚ました。一気飲みをした彼女はそこから全く記憶が無かった。意識がハッキリしてくると何か柔らかいものが側頭部に当たっていることに気が付いた。
(私・・・あのまま床で寝ちゃったんだ。)
そう思っていると、上から声が聞こえてくる。
「気が付いたでござるか。」
「え!?」
セレンは驚いて仰向けになると、その声の主と顔を見合わせる。一瞬、硬直すると今の状況がどう言った事かが頭を駆け巡った。膝枕。古今東西、そういった状況は恋人がうんぬんかんぬん。
「ごめん!いえ、ごめんなさいでした!」
大声を出して起き上がり、そしてそのまま土下座した。
「いや!滅相もござらん。私も申し訳なかった。」
モグラも土下座した。レーナは何事かと酒場のカウンターから飛び起きて、ガルナは全くどうしたんだいと部屋から出てきた。二人はその光景見ると、意図せず口を合わせてこう言った。
「いや、どういう状況やねん。」
魔王軍七将の一人が目の前に現れるとはこの時は誰も予想していなかった。まだ開戦してから1時間も立っていない。それなのにも関わらず魔王軍最大戦力が前線の騎士やAランク冒険者を薙ぎ倒し、勇者パーティーにまで到達していた。戦力は十分整えていた。作戦も王国兵やギルドと3日程かけて練った。その全てを圧倒的な力で飲み込むギルティアは最早自然災害そのものだった。
(せめてこいつらだけでも)
「私は残る!残って戦うわ!」
セレンはそう言うと呪文を唱え始めたが、それを遮るようにレオンは大声で言った。
「おい屑!何してんだ!荷物持ちのお前なら遁走スキル使って逃がすことくらいできんだろ!」
「でもレオン、君は!」
「っ!!!」
遁走スキル。その名の通り強敵が現れたときにどんな状態だったとしてもその場からパーティーを逃がすことが出来る切り札的なスキルだが、これには致命的な欠陥がある。勇者のスキル、勇気の神髄が発動した者は、あらゆるマイナスのデバフの魔術、スキルの効果、例えば毒や威圧などを全て無効化する。一見、最強のスキルではあるが、遁走や他人からのステータス表示などのマイナス効果になるスキルなども防いでしまうため、使用するときはよほどのことが無い限りに限定される。つまりレオンは逃げられない。
ジークやセレンはまっすぐな性格でこういった状況では説得することが出来ない事を知っている。その為、レオンは絶対に打ってはならない悪手に手を染めることを選んだ。
「おい、爆乳魔術師、街に戻ったらやらせろ。」
「あんた何言って・・・」
「前からその身体、抱きたいと思ってたんだよ!」
ゲスな表情で舐め回すように魔術師リースの身体を見る。これには盾役のジョナサンも激高した。
「貴様、リースに何かしたら殺すからな!ジークこんな奴ほっといて逃げるぞ!」
「でも!」
「もう付き合ってられない!ジーク!」
「ジーク!ダメ!」
ジークはレオンを見た。彼は剣をギルティアに向けたまま振り替えらない。ただ、最後の言葉はジークに確かに聞こえたのだった。
「行け!ジーク!」
それからレオンの姿を見た者は誰も居ない。
「ん・・・。」
朝日が窓から差し込むとセレンは目を覚ました。一気飲みをした彼女はそこから全く記憶が無かった。意識がハッキリしてくると何か柔らかいものが側頭部に当たっていることに気が付いた。
(私・・・あのまま床で寝ちゃったんだ。)
そう思っていると、上から声が聞こえてくる。
「気が付いたでござるか。」
「え!?」
セレンは驚いて仰向けになると、その声の主と顔を見合わせる。一瞬、硬直すると今の状況がどう言った事かが頭を駆け巡った。膝枕。古今東西、そういった状況は恋人がうんぬんかんぬん。
「ごめん!いえ、ごめんなさいでした!」
大声を出して起き上がり、そしてそのまま土下座した。
「いや!滅相もござらん。私も申し訳なかった。」
モグラも土下座した。レーナは何事かと酒場のカウンターから飛び起きて、ガルナは全くどうしたんだいと部屋から出てきた。二人はその光景見ると、意図せず口を合わせてこう言った。
「いや、どういう状況やねん。」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
冤罪をかけられ、彼女まで寝取られた俺。潔白が証明され、皆は後悔しても戻れない事を知ったらしい
一本橋
恋愛
痴漢という犯罪者のレッテルを張られた鈴木正俊は、周りの信用を失った。
しかし、その実態は私人逮捕による冤罪だった。
家族をはじめ、友人やクラスメイトまでもが見限り、ひとり孤独へとなってしまう。
そんな正俊を慰めようと現れた彼女だったが、そこへ私人逮捕の首謀者である“山本”の姿が。
そこで、唯一の頼みだった彼女にさえも裏切られていたことを知ることになる。
……絶望し、身を投げようとする正俊だったが、そこに学校一の美少女と呼ばれている幼馴染みが現れて──
冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない
一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。
クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。
さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。
両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。
……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。
それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。
皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。
※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる