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異国の剣士3
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「んーぅ、はぁ。もうそろそろ一休み入れようか。フェルト、お茶入れて。」
そう言うと、厨房の奥から耳の長い金髪の少年が笑顔でお茶を持ってくる。
「ガルナさん、はいお茶。」
「うむ。いつも悪いね。今日のお茶うけわっと・・・・チーズケーキかい。」
「嫌でしたか?」
「イヤイヤ、大好きさね!」
そう言いながら豪快に貪る。ここは街の外れにある宿屋。赤髪、長髪、高身長の女主人ガルナが切り盛りしている。昼と夜は酒場で繁盛しているが、宿に泊まる者は冒険者か旅人で、宿屋としてと言うよりは食事と酒がメインの儲けだった。従業員は主人と厨房を任されている少年エルフの二人だけ。それでもガルナは酒場ではなくここは宿屋だと言い切っていた。
「あんたの料理はいつも上手いね。雇って正解だったよ。」
「ありがとうございます。」
耳の先を赤らめながら、礼を言う。いつもの光景。いつもの平和。ただ、ガルナはこの日常が何時までも続く訳ではないことを感じていた。最近、泊まりに来る冒険者が帰って来ないことがある。どこか別の場所に行ったか、あるいわ・・・・。
「そう難しい顔をしないで下さい。きっと無事ですよ。」
「悪いね。ただ、顔なじみの客もあまり来なくなったからね。」
冒険者であれば普通のこと。ただ、先週、ギルドの受付嬢が酒を飲みながら、Aランク冒険者の一人が死んだと嘆いていた。期は近い。先日、自分の使っていた戦斧を武器屋に持っていき調整してもらっていた。
「使いたくないね。」
いつも強気な女性が弱音を吐いた。しかし、戦える者が戦わなければ街は滅ぶ。それがわかっているからこそ、逃げることが出来なかった。
「・・・・・。」
フェルトは自分の無力さを知っている。自分は戦えない。使えるのは初歩の魔法のみ。戦えば足手まといになることはわかっている。だからこそ逃げるしかないのだ。戦いが始まったら教会に逃げる。駄目なら自害する。それがこの時代の普通だった。
カランカラン。
「お、いらっしゃい。お一人かい。」
そう言ってハッとする。歴戦の者だからこそわかる。オーガだ。和服と呼ばれる着物を着て腰に3本の剣を携えるその姿はこの大陸に一人としていない。そして、聞いたことがあった。島から出られる者は強者のみ。思わず一瞬身構えるが、ここは宿屋だ。目を閉じて深呼吸する。そして、目を開けたときガルナは時が止まったかのような感覚に襲われた。
「あんた、死んだんじゃないのかい?」
「・・・・。拙者にはわからないことだ。別人だな。」
そう話すと男はガルナの前に立つ。
「申し訳ないが拙者はオーガだ。角もある。髪の色は金だが、この色のために島から出されてしまってな。」
ガルナは二本の角を確かめる。確かに疑いようがない。彼はオーガだ。だが、顔は似ている。いや瓜二つと言ってもいい。ただ、そこでガルナは追求するのをやめた。あることに気が付いた。
「・・・そうかい。で、何しにここへ。」
「一週間ほど泊まりたい。宿代はこれで問題ないか?」
料金を手渡しでもらうと、それを握りしめる。
「いいよ。部屋は2階だ。202号室だよ。」
「かたじけない。では、使わせてもらおう。」
「そうだ。名前はなんて言うんだい?一応最近物騒だからね。」
一瞬黙ってしまった。彼女にはそれだけで何を意味するかを知る十分な間だった。
「・・・獅子神モグラ、それが拙者の名前だ。」
そういうと彼は階段を上り、自分の部屋に行った。ガルナは溜まらなく悲しそうな表情で留めておけ無い気持ちを吐き出した。
「あんな傷、普通じゃ着かないよ。あの後何が合ったんだい。」
「えっと・・・」
エルフの少年はどうしたのかを聞こうとしたが、その先は虚空に消えた。
そう言うと、厨房の奥から耳の長い金髪の少年が笑顔でお茶を持ってくる。
「ガルナさん、はいお茶。」
「うむ。いつも悪いね。今日のお茶うけわっと・・・・チーズケーキかい。」
「嫌でしたか?」
「イヤイヤ、大好きさね!」
そう言いながら豪快に貪る。ここは街の外れにある宿屋。赤髪、長髪、高身長の女主人ガルナが切り盛りしている。昼と夜は酒場で繁盛しているが、宿に泊まる者は冒険者か旅人で、宿屋としてと言うよりは食事と酒がメインの儲けだった。従業員は主人と厨房を任されている少年エルフの二人だけ。それでもガルナは酒場ではなくここは宿屋だと言い切っていた。
「あんたの料理はいつも上手いね。雇って正解だったよ。」
「ありがとうございます。」
耳の先を赤らめながら、礼を言う。いつもの光景。いつもの平和。ただ、ガルナはこの日常が何時までも続く訳ではないことを感じていた。最近、泊まりに来る冒険者が帰って来ないことがある。どこか別の場所に行ったか、あるいわ・・・・。
「そう難しい顔をしないで下さい。きっと無事ですよ。」
「悪いね。ただ、顔なじみの客もあまり来なくなったからね。」
冒険者であれば普通のこと。ただ、先週、ギルドの受付嬢が酒を飲みながら、Aランク冒険者の一人が死んだと嘆いていた。期は近い。先日、自分の使っていた戦斧を武器屋に持っていき調整してもらっていた。
「使いたくないね。」
いつも強気な女性が弱音を吐いた。しかし、戦える者が戦わなければ街は滅ぶ。それがわかっているからこそ、逃げることが出来なかった。
「・・・・・。」
フェルトは自分の無力さを知っている。自分は戦えない。使えるのは初歩の魔法のみ。戦えば足手まといになることはわかっている。だからこそ逃げるしかないのだ。戦いが始まったら教会に逃げる。駄目なら自害する。それがこの時代の普通だった。
カランカラン。
「お、いらっしゃい。お一人かい。」
そう言ってハッとする。歴戦の者だからこそわかる。オーガだ。和服と呼ばれる着物を着て腰に3本の剣を携えるその姿はこの大陸に一人としていない。そして、聞いたことがあった。島から出られる者は強者のみ。思わず一瞬身構えるが、ここは宿屋だ。目を閉じて深呼吸する。そして、目を開けたときガルナは時が止まったかのような感覚に襲われた。
「あんた、死んだんじゃないのかい?」
「・・・・。拙者にはわからないことだ。別人だな。」
そう話すと男はガルナの前に立つ。
「申し訳ないが拙者はオーガだ。角もある。髪の色は金だが、この色のために島から出されてしまってな。」
ガルナは二本の角を確かめる。確かに疑いようがない。彼はオーガだ。だが、顔は似ている。いや瓜二つと言ってもいい。ただ、そこでガルナは追求するのをやめた。あることに気が付いた。
「・・・そうかい。で、何しにここへ。」
「一週間ほど泊まりたい。宿代はこれで問題ないか?」
料金を手渡しでもらうと、それを握りしめる。
「いいよ。部屋は2階だ。202号室だよ。」
「かたじけない。では、使わせてもらおう。」
「そうだ。名前はなんて言うんだい?一応最近物騒だからね。」
一瞬黙ってしまった。彼女にはそれだけで何を意味するかを知る十分な間だった。
「・・・獅子神モグラ、それが拙者の名前だ。」
そういうと彼は階段を上り、自分の部屋に行った。ガルナは溜まらなく悲しそうな表情で留めておけ無い気持ちを吐き出した。
「あんな傷、普通じゃ着かないよ。あの後何が合ったんだい。」
「えっと・・・」
エルフの少年はどうしたのかを聞こうとしたが、その先は虚空に消えた。
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