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第5章波乱と激動の王都観光

275・誤解

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「ところで山神様は遭難した人を助けたりはしないんですか?」
「俺は精霊だからな。自然そのものでもあるのだ。
だから特別な事情が無い限りは、
基本的には人の人生に関わったりはしない」
「え、でも知り合いに精霊眼の子が居るんですが、
精霊は思いっきりその子に関わっていますよ」
「精霊眼の人間は特別だ。
精霊が守ってやらないと精霊眼の人間はすぐに死んでしまうからな。
だが俺もこの山で死ぬ人間の多さにはほとほと困っているんだ。
だがどうしたらいいのかも分からん。
お前らなら良いアイデアが思いつくんじゃないか?」
「うーん、直接現れて警告するのはどうですか?」
「それは今までに何度もやってきたが、逆効果だった。
精霊が居るなら不死鳥も居るに違いないと、
多くの人間が山に登ってきたことがあった。
それ以来あまり姿を現さないようにしている」
「うーん、それは困るわね…」
「こういう時は相談事はみんな解決。
アイデアの女神フォルトゥーナを頼ろう」
「女神だってことは認めますが、
わたくしのこと何だと思っているんですか」

フォルトゥーナがやや呆れ顔でそう言った。

「だっていつも困った時には、
フォルトゥーナが奇抜なアイデアを出して助けてくれたし、
今回もいけるかなーと思いまして」
「そうですね。
それならいっそ不死鳥伝説は、
デタラメだったってことにしたらどうでしょう」
「どういうこと?」
「実際に不死鳥は居たけれど、
山神様が飼っているただの色のついた鳥で、
人を不老不死にしたり、
病気を治す力は無いということにしてはどうでしょうか?」
「つまり不死鳥伝説はデマだってことにしたらいいわけか、
なるほど、さすがフォルトゥーナ。ナイスアイデアです!」
「待てその話には無理があるぞ」

タツキがそう言った。

「え? 良いアイデアだと思うけど」
「もしもお主が不死鳥伝説がデマだったこと広めたいなら、
確実な証拠が居る。
証拠も無いのにそんな話を聞いて信じられると思うか?」
「あ、確かにそれはそうですね」
「それならいっそ山神様に協力してもらいましょう」
「協力?」
「山神様の力を使えば、一瞬でトモロスに戻ることが出来ます。
その時に姿を見せてもらって、
私達が山神様と深い繋がりがあることを町の人にアピールします。
そしたらみんな話を聞いてくれると思います」
「おお、確かにそれだといけそうですね」
「そうだな。そのアイデアだとピーちゃんを狙う奴が減っていいが、
しかしな…」
「何か問題がありますか?」
「俺はその…トモロスの町の住民の前に出るのは、
その…恥ずかしいのだ」

そう真っ赤になって山神様は言った。

「あいつらは本当に俺のことを大切に思ってくれている。
それが分かっているが、
その…あいつらは俺を神聖視し過ぎなのだ」
「えーとつまり、
トモロスの人達が信じているイメージが実際とは違うと?」
「そうだ。実際に会ったらその失望されないだろうか。
俺には人間と同じような欠点があるし、完璧じゃないし…」
「そんなことないですよ。
欠点があるとむしろ親近感を抱いてもっと好きになりますよ」

私が大好きなギリシャ神話の神々だって欠点だらけだ。
でもだからこそ人はギリシャ神話に惹かれる。
だって完璧な人は居ないし、
神様も欠点があるんだって思うと安心するからだ。
そう私は山神様に説明した。

「そ、そうか…?
それなら行ってみてもいいが、
その…あまり期待しないでくれ…」
「じゃあ私達をトモロスの町に戻してください」
「分かった。じゃあ行くぞ」

その瞬間冷たい風が吹いたと思ったら、
トモロスの町に戻ってきていた。

「え!?」
「いきなり現れた!?」

町の人達はいきなり現れた私達に驚いていた。
みんな注目しているし、ちょうど良い。

「山神様、今ですよ」
「お。おい、何と言えばいいんだ?」
「いやだからここは神様らしく振る舞ったらどうですか?」
「いや、神様らしくと言われても」

そう言って山神様は真っ赤になる。
あれもしかしてこの人緊張しているのか。
大丈夫か?

「その顔は山神様!?」

その時1人の老人が私達に気がついた。

「お前はあの時の子供か?」
「はい、そうです。
子供の時、親の言いつけを破って死の山に登り、
遭難した私を山神様は助けてくださった。
ああ、そのお顔は間違いない。
山神様あの時は言えませんでしたが、
本当にありがとうございます」

そう老人は涙を流しながら頭を下げた。

「え、あれが山神様?」
「本当だ。本物の山神様だ!」

すると老人の話を聞いた人々が集まってきて、
山神様を崇め始めた。

「ああ、山神様…」
「ありがたや、ありがたや…」
「良かったですね。みんな喜んでくれてますよ」

そう言って後ろを振り返ると、
山神様はさっき見た時より赤くなっていた。
もう耳まで真っ赤だ。

「あの?」
「もうダメだ!
恥ずかしくて耐えられない!
後は任せた!!」

そう言うと山神様は消えた。

「え?」

後は任せたってどういうこと?

「おお、山神様が消えた?
後は任せたということはこの者らも山神様の仲間なのか」
「ああ、なんということだ。
山神様が増えたとは」

すると今度は町の人は私達を崇め始めた。

「え、どうしろと」

想像してみて欲しい町の人がみんな私達を崇める姿を、
最初にこの町に来て登山客なので冷たくあしらわれてことが嘘みたいだ。

「え、これどうしたらいいの?」

エドナが困惑して私を見たが、私もどうしたらいいのか分からない。
それから必死に私達は神ではなく、
普通の人間だと説明したが、なかなか信じてもらえず、
苦労したのだった。トホホ…。
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