305 / 318
第5章波乱と激動の王都観光
271・死の山へ
しおりを挟む
そして翌朝、私達は朝食を食べていた。
「まずい、ここの料理はまずすぎる」
そうレオンが文句を言っていたが、
サクッとスルーした。
確かに味は悪かったが、
別に食べられないほどではないと思うのだけれども、
結局レオンは一口食べただけで、全部残してしまった。
そのせいかさっきから、
宿の女将さんに睨まれていて居心地が悪い。
「それより死の山へ、
実際に行くならガイドを雇った方がいいでしょうか」
「ガイド?」
「山を案内してくれる人のことですよ」
「この町に来てから調べましたけど、
残念ながらガイドという仕事はこの町には無いそうです。
あっても料金だけ受け取って姿を消したりするそうです」
「そうなんですか」
「そもそも死の山自体が、神の山だと言われていて、
神聖な山だとされているので、
特別な日以外に山に登るのは天罰が下ると言われているのです。
だからこの町の人は特別な時を除いて、
死の山には登ったりしないそうです」
そうフォルトゥーナが言った。
ああ、だから町の人が登山客には冷たいのか。
「でも毎年かなりの人が亡くなっているんですよね。
山に登る人がいて大丈夫なんですか?」
「ああ、入るのを禁止してしても、効果が無かったので、
もう禁止にするより、
山に登るのは自己責任という形になったそうです。」
「そうですか、確かに禁止にしても無視する人って居ますからね。
下手に禁止したら逆効果かもしれませんね」
「とりあえず死の山に入るなら、
もしはぐれても大丈夫なように、
数日分の食料と水はみんな持っていった方がいいでしょう」
「それとじゃが、セツナ、補助魔法を妾達にかけてくれないか。
お主の補助魔法なら早く着くじゃろう」
「分かりました」
そうして朝食を食べると早速死の山まで行くこととなった。
ちなみに危険なので、
クライド君とアマンダさんは町で待ってもらうことにした。
私達は山登りは大丈夫だと思うが、
あまり鍛えていない素人は足手まといとなるので、
残ってもらうことにした。
ちなみにガイは私のポケットに避難しているので問題はない。
「商業都市アアルに住むセツナ・カイドウと言います。
このたびは山に登らせてもらいますのでよろしくお願いします」
そう山に向かって私はお辞儀した。
「何やっているんだ?」
「山に挨拶をしたんですよ。
お母さんが危険な山に登る時は、
絶対にそうした方がいいって言っていたんです」
「はぁ、山なんかに挨拶するなんてお前おかしいぞ」
そうレオンは言ったが、山は自然そのもの。
自然には人間の都合や道理は通用しない。
挨拶しておいて損はないだろう。
それから私はみんなに体を強化する補助魔法をかけた。
それから山を登っていくことになったのだが、
意外なことにすぐに音を上げるだろうと思っていたレオンは、
間に休憩を挟みながらも何とか登山を続けていた。
「今日はここで休みましょう」
暗くなってきたので私はそう言った。
「えっ、こんな所に泊まるのか!?
ベッドも椅子も机も無いのに!?」
レオンがそう言った。
「もしかして野宿は初めてなんですか?」
「当たり前だろう!
こんな所でどうやって泊まるんだ!?」
「何って普通にテントを張ってだけど」
「テント…だって、そんなの聞いてない!」
「行くときに言ったじゃないですか、山登りはテントが要るって」
そう言うと私はアイテムボックスから大きなテントを取り出す。
組み立てれば10人は寝れらる大きなテントだ。
ちなみにかなり頑丈に作っておいたので、風で飛ばされることもない。
「こんな所で寝るのか、信じられない!」
「信じられないのはあなたの頭の中ですよ。
山に来てまで、王族らしい暮らしが出来ると思っていたんですか?」
フォルトゥーナが疲れているのか、
少しイライラした様子で言う。
「でもこんな所に泊まるなんて」
「文句を言うなら1人で山に登ってください」
「で、でも…」
「まぁまぁケンカするよりお腹減ったでしょう。
ご飯を食べましょうよ」
そう私はピリピリした空気をごまかすためにそう言う。
「じゃあ作りますよ」
作るのは海の素材を使った海鮮鍋だ。
私のアイテムボックスに入れておけば食材は腐らないので、
山の中でもお魚が食べられるのだ。
「さぁみんな食べましょう」
「ふぅ、山で食べる料理はおいしいのだ」
「そうね。いつもよりおいしく感じるわ」
そうしてみんな食べて行くがレオンだけは口をつけようとしない。
確か昼に食べた料理の時もそうだった。
「お腹減っているんですよね」
「これ野菜が入っている…」
「へ、野菜?
いや鍋には野菜でしょう」
「こんなの食えるか、作り直せ!」
「思った以上にお子ちゃまですね」
フォルトゥーナが冷たい目でそう言った。
「何だと! 野菜なんて平民が食べる物だろう!
王子である僕が食べられるものじゃない!」
「確かに王都の貴族や王族は、
あまり野菜は食べないものだと聞いています」
「え? そうなの?
でも伯爵夫人は普通に野菜は食べてましたよ」
「地方の貴族は平民と距離が近いので野菜は普通に食べますが、
王都に住む貴族や王族は肉食中心です」
「そうなんだ」
「とにかくこんな物食べられない!
野菜なんて食えるか!」
そう言うと王子が地面に料理が乗った容器を投げつける。
これには私もカチンときた。
「じゃあもう知りません!
勝手にしてください!」
「僕は王子なんだぞ!
無礼だぞ!」
「はぁ…」
エドナがこれ見よがしにため息をつく。
「何だそのため息は!」
「とにかく…食べたら早く寝ましょう。
明日に影響します」
そうしてぎゃーぎゃー騒ぐレオンを無視して、
私達は食事を済ませると、早めに眠りについたのだった。
そして翌朝、起きて私はまず朝食を作った。
しかし朝食を作ったがここでもレオンは口にすることはなかった。
一応レオンが食べられるように肉を使ったのだが、
一口食べると味が悪いと言って残してしまった。
まさかろくに食べずに登山を続けるのか?
「あの何か食べた方がいいですよ」
「うるさい…僕に命令するな」
そう言うと王子はそっぽを向く。
「フォルトゥーナ、どうしたらいいかな?」
「もう放っておきましょう。
相手にするだけ時間の無駄です」
そうしてテントをしまうと、私達は歩き出した。
そうしてしばらく歩いていると雪のあるエリアにたどり着いた。
「あれ雪が積もってますね」
「あれ…?
雪は頂上付近にしかないはずなのに、
何で雪がこんなに積もっているの?」
「今って春ですよね。雪なんて降るんですか」
「山の天候は変わりやすいって聞くからそれじゃない」
しかしエリアマップを見る限るここは頂上付近ではない。
というかむしろ山の中腹にもたどり着いていない。
「ここはワカンの出番ですね」
私はこの山に登る前に作っておいたワカンを取り出す。
このワカンには魔法が込められており、
雪の上を歩いても即座に地面が硬化し、足が沈まない作りとなっている。
それを全員の靴に取り付けると、
私は防寒着やゴーグルとグローブを全員分取り出して身につける。
「よし全員防寒着を着ましたね。
じゃあ行きましょう」
そうして雪の中を歩いていると、吹雪が吹いてきた。
しばらくは吹雪の中を進んでいたが、異変が起こった。
「うっ」
ふらりとレオンが倒れた。
「レオン陛下大丈夫ですか」
「は、腹が減った…」
そうレオンのお腹がぐーと鳴ったのだった。
「どうするの?」
「とりあえずテントを張って、何か料理を食べさせましょう」
そうして私達はテントを急いで張った。
ちなみにこのテントは特別製で、
どれだけ強風が吹いても飛ばされない構造になっている。
その中で私は料理を作った。
「ほら、食べてください」
「嫌だ…庶民が食うようなものが食べられるか…」
「いい加減にしてください!
食べないとあなたは死にますよ」
「うるさい、それより山を登るぞ…」
「そんな体で山を登るなんて自殺行為よ!」
「うるさい、俺は不死鳥に会いに行くんだ…」
「何でそこまでして不死鳥に会いたいんですか?」
「お前らに話せることじゃない…」
「いい加減にしてください!!」
フォルトゥーナがそう怒鳴った。
普段冷静なフォルトゥーナが、
怒鳴ることなんてめったに無いので、驚いてしまう。
「姉の病気を、不死鳥の血で治したいあなたの気持ちは、
よく分かりますが、
何故そんな大事なことをわたくし達に伝えないのですか!」
「え、姉の病気?」
「いつか伝えていれるだろう。
そう思っていましたがもう限界です。
レオン王子の姉は病気です。
その病気を伝説の不死鳥の血で治したいと思ったからこそ、
この死の山に登ることを決めたのです」
「え、何で誰にも言っていないのにそのことを…」
レオンは驚くが、フォルトゥーナは人の心が読めるのだ。
じゃあ最初からフォルトゥーナはレオンの目的を知っていたことになる。
「いいですか、あなたの心は醜くて醜くて吐き気がします。
冒険者なんて乱暴者の集まりだと馬鹿にして、
自分以外は全員馬鹿だと見下している、
あなたの心の声を聞いているだけで、不愉快になります」
フォルトゥーナはその顔を不快そうに歪めてそう言った。
「わたくし達だって感情があるんです。
あなたの道具なんかじゃない。
最初に理由さえ話してくれたのなら、
協力する気も起きましたが、
あなたは何でその理由を最初から話さないのですか!
理由も話さずただ山を登りたいというだけじゃ、
他の人達はさっぱり理由が分かりませんよ!」
フォルトゥーナはそうレオンに怒鳴りつける。
「何でそのことを知っているんだ…気持ち悪い」
「あっそう、そう言われるのは慣れてますよ。
あなたの心の中で考えていることは全て分かります。
例えばあなたはろくに勉強していないですね。
だからこの国のことについて何も知りません。
それはとてつもなく恥ずかしいことなんですよ」
「でも父上が勉強しなくていいって…」
「バーン王国にある都市の中で一番発展しているのはどこですか?」
「え…?」
「バーン王国の王の中で発明王と呼ばれたのは誰ですか?」
「………分からない」
「王族であり、将来王となるあなたよりもわたくしの方が、
この国について詳しい。
これがボロ宿に泊まるよりも恥ずかしいことだって、
何故気がつかないんですか」
「………ッ」
フォルトゥーナに指摘され、レオンの顔が真っ赤になっていく。
「で、でも父上は…!」
「父上、父上ってあなたは自分の意見が無いんですか、
もう10歳になるんですから、自分の意見ぐらい持ちなさい!」
「…うるさい!
僕は間違ってなんかない!
間違っているのはお前らだ!」
そう言うとレオンはテントを出て、
走ってどこかに行ってしまったのだった。
「あ、ちょっと!」
私は止めようと外に出るが、
吹雪の中、レオンの姿はあっという間に見えなくなったのだった。
「まずい、ここの料理はまずすぎる」
そうレオンが文句を言っていたが、
サクッとスルーした。
確かに味は悪かったが、
別に食べられないほどではないと思うのだけれども、
結局レオンは一口食べただけで、全部残してしまった。
そのせいかさっきから、
宿の女将さんに睨まれていて居心地が悪い。
「それより死の山へ、
実際に行くならガイドを雇った方がいいでしょうか」
「ガイド?」
「山を案内してくれる人のことですよ」
「この町に来てから調べましたけど、
残念ながらガイドという仕事はこの町には無いそうです。
あっても料金だけ受け取って姿を消したりするそうです」
「そうなんですか」
「そもそも死の山自体が、神の山だと言われていて、
神聖な山だとされているので、
特別な日以外に山に登るのは天罰が下ると言われているのです。
だからこの町の人は特別な時を除いて、
死の山には登ったりしないそうです」
そうフォルトゥーナが言った。
ああ、だから町の人が登山客には冷たいのか。
「でも毎年かなりの人が亡くなっているんですよね。
山に登る人がいて大丈夫なんですか?」
「ああ、入るのを禁止してしても、効果が無かったので、
もう禁止にするより、
山に登るのは自己責任という形になったそうです。」
「そうですか、確かに禁止にしても無視する人って居ますからね。
下手に禁止したら逆効果かもしれませんね」
「とりあえず死の山に入るなら、
もしはぐれても大丈夫なように、
数日分の食料と水はみんな持っていった方がいいでしょう」
「それとじゃが、セツナ、補助魔法を妾達にかけてくれないか。
お主の補助魔法なら早く着くじゃろう」
「分かりました」
そうして朝食を食べると早速死の山まで行くこととなった。
ちなみに危険なので、
クライド君とアマンダさんは町で待ってもらうことにした。
私達は山登りは大丈夫だと思うが、
あまり鍛えていない素人は足手まといとなるので、
残ってもらうことにした。
ちなみにガイは私のポケットに避難しているので問題はない。
「商業都市アアルに住むセツナ・カイドウと言います。
このたびは山に登らせてもらいますのでよろしくお願いします」
そう山に向かって私はお辞儀した。
「何やっているんだ?」
「山に挨拶をしたんですよ。
お母さんが危険な山に登る時は、
絶対にそうした方がいいって言っていたんです」
「はぁ、山なんかに挨拶するなんてお前おかしいぞ」
そうレオンは言ったが、山は自然そのもの。
自然には人間の都合や道理は通用しない。
挨拶しておいて損はないだろう。
それから私はみんなに体を強化する補助魔法をかけた。
それから山を登っていくことになったのだが、
意外なことにすぐに音を上げるだろうと思っていたレオンは、
間に休憩を挟みながらも何とか登山を続けていた。
「今日はここで休みましょう」
暗くなってきたので私はそう言った。
「えっ、こんな所に泊まるのか!?
ベッドも椅子も机も無いのに!?」
レオンがそう言った。
「もしかして野宿は初めてなんですか?」
「当たり前だろう!
こんな所でどうやって泊まるんだ!?」
「何って普通にテントを張ってだけど」
「テント…だって、そんなの聞いてない!」
「行くときに言ったじゃないですか、山登りはテントが要るって」
そう言うと私はアイテムボックスから大きなテントを取り出す。
組み立てれば10人は寝れらる大きなテントだ。
ちなみにかなり頑丈に作っておいたので、風で飛ばされることもない。
「こんな所で寝るのか、信じられない!」
「信じられないのはあなたの頭の中ですよ。
山に来てまで、王族らしい暮らしが出来ると思っていたんですか?」
フォルトゥーナが疲れているのか、
少しイライラした様子で言う。
「でもこんな所に泊まるなんて」
「文句を言うなら1人で山に登ってください」
「で、でも…」
「まぁまぁケンカするよりお腹減ったでしょう。
ご飯を食べましょうよ」
そう私はピリピリした空気をごまかすためにそう言う。
「じゃあ作りますよ」
作るのは海の素材を使った海鮮鍋だ。
私のアイテムボックスに入れておけば食材は腐らないので、
山の中でもお魚が食べられるのだ。
「さぁみんな食べましょう」
「ふぅ、山で食べる料理はおいしいのだ」
「そうね。いつもよりおいしく感じるわ」
そうしてみんな食べて行くがレオンだけは口をつけようとしない。
確か昼に食べた料理の時もそうだった。
「お腹減っているんですよね」
「これ野菜が入っている…」
「へ、野菜?
いや鍋には野菜でしょう」
「こんなの食えるか、作り直せ!」
「思った以上にお子ちゃまですね」
フォルトゥーナが冷たい目でそう言った。
「何だと! 野菜なんて平民が食べる物だろう!
王子である僕が食べられるものじゃない!」
「確かに王都の貴族や王族は、
あまり野菜は食べないものだと聞いています」
「え? そうなの?
でも伯爵夫人は普通に野菜は食べてましたよ」
「地方の貴族は平民と距離が近いので野菜は普通に食べますが、
王都に住む貴族や王族は肉食中心です」
「そうなんだ」
「とにかくこんな物食べられない!
野菜なんて食えるか!」
そう言うと王子が地面に料理が乗った容器を投げつける。
これには私もカチンときた。
「じゃあもう知りません!
勝手にしてください!」
「僕は王子なんだぞ!
無礼だぞ!」
「はぁ…」
エドナがこれ見よがしにため息をつく。
「何だそのため息は!」
「とにかく…食べたら早く寝ましょう。
明日に影響します」
そうしてぎゃーぎゃー騒ぐレオンを無視して、
私達は食事を済ませると、早めに眠りについたのだった。
そして翌朝、起きて私はまず朝食を作った。
しかし朝食を作ったがここでもレオンは口にすることはなかった。
一応レオンが食べられるように肉を使ったのだが、
一口食べると味が悪いと言って残してしまった。
まさかろくに食べずに登山を続けるのか?
「あの何か食べた方がいいですよ」
「うるさい…僕に命令するな」
そう言うと王子はそっぽを向く。
「フォルトゥーナ、どうしたらいいかな?」
「もう放っておきましょう。
相手にするだけ時間の無駄です」
そうしてテントをしまうと、私達は歩き出した。
そうしてしばらく歩いていると雪のあるエリアにたどり着いた。
「あれ雪が積もってますね」
「あれ…?
雪は頂上付近にしかないはずなのに、
何で雪がこんなに積もっているの?」
「今って春ですよね。雪なんて降るんですか」
「山の天候は変わりやすいって聞くからそれじゃない」
しかしエリアマップを見る限るここは頂上付近ではない。
というかむしろ山の中腹にもたどり着いていない。
「ここはワカンの出番ですね」
私はこの山に登る前に作っておいたワカンを取り出す。
このワカンには魔法が込められており、
雪の上を歩いても即座に地面が硬化し、足が沈まない作りとなっている。
それを全員の靴に取り付けると、
私は防寒着やゴーグルとグローブを全員分取り出して身につける。
「よし全員防寒着を着ましたね。
じゃあ行きましょう」
そうして雪の中を歩いていると、吹雪が吹いてきた。
しばらくは吹雪の中を進んでいたが、異変が起こった。
「うっ」
ふらりとレオンが倒れた。
「レオン陛下大丈夫ですか」
「は、腹が減った…」
そうレオンのお腹がぐーと鳴ったのだった。
「どうするの?」
「とりあえずテントを張って、何か料理を食べさせましょう」
そうして私達はテントを急いで張った。
ちなみにこのテントは特別製で、
どれだけ強風が吹いても飛ばされない構造になっている。
その中で私は料理を作った。
「ほら、食べてください」
「嫌だ…庶民が食うようなものが食べられるか…」
「いい加減にしてください!
食べないとあなたは死にますよ」
「うるさい、それより山を登るぞ…」
「そんな体で山を登るなんて自殺行為よ!」
「うるさい、俺は不死鳥に会いに行くんだ…」
「何でそこまでして不死鳥に会いたいんですか?」
「お前らに話せることじゃない…」
「いい加減にしてください!!」
フォルトゥーナがそう怒鳴った。
普段冷静なフォルトゥーナが、
怒鳴ることなんてめったに無いので、驚いてしまう。
「姉の病気を、不死鳥の血で治したいあなたの気持ちは、
よく分かりますが、
何故そんな大事なことをわたくし達に伝えないのですか!」
「え、姉の病気?」
「いつか伝えていれるだろう。
そう思っていましたがもう限界です。
レオン王子の姉は病気です。
その病気を伝説の不死鳥の血で治したいと思ったからこそ、
この死の山に登ることを決めたのです」
「え、何で誰にも言っていないのにそのことを…」
レオンは驚くが、フォルトゥーナは人の心が読めるのだ。
じゃあ最初からフォルトゥーナはレオンの目的を知っていたことになる。
「いいですか、あなたの心は醜くて醜くて吐き気がします。
冒険者なんて乱暴者の集まりだと馬鹿にして、
自分以外は全員馬鹿だと見下している、
あなたの心の声を聞いているだけで、不愉快になります」
フォルトゥーナはその顔を不快そうに歪めてそう言った。
「わたくし達だって感情があるんです。
あなたの道具なんかじゃない。
最初に理由さえ話してくれたのなら、
協力する気も起きましたが、
あなたは何でその理由を最初から話さないのですか!
理由も話さずただ山を登りたいというだけじゃ、
他の人達はさっぱり理由が分かりませんよ!」
フォルトゥーナはそうレオンに怒鳴りつける。
「何でそのことを知っているんだ…気持ち悪い」
「あっそう、そう言われるのは慣れてますよ。
あなたの心の中で考えていることは全て分かります。
例えばあなたはろくに勉強していないですね。
だからこの国のことについて何も知りません。
それはとてつもなく恥ずかしいことなんですよ」
「でも父上が勉強しなくていいって…」
「バーン王国にある都市の中で一番発展しているのはどこですか?」
「え…?」
「バーン王国の王の中で発明王と呼ばれたのは誰ですか?」
「………分からない」
「王族であり、将来王となるあなたよりもわたくしの方が、
この国について詳しい。
これがボロ宿に泊まるよりも恥ずかしいことだって、
何故気がつかないんですか」
「………ッ」
フォルトゥーナに指摘され、レオンの顔が真っ赤になっていく。
「で、でも父上は…!」
「父上、父上ってあなたは自分の意見が無いんですか、
もう10歳になるんですから、自分の意見ぐらい持ちなさい!」
「…うるさい!
僕は間違ってなんかない!
間違っているのはお前らだ!」
そう言うとレオンはテントを出て、
走ってどこかに行ってしまったのだった。
「あ、ちょっと!」
私は止めようと外に出るが、
吹雪の中、レオンの姿はあっという間に見えなくなったのだった。
0
お気に入りに追加
55
あなたにおすすめの小説
異世界でも男装標準装備~性別迷子とか普通だけど~
結城 朱煉
ファンタジー
日常から男装している木原祐樹(25歳)は
気が付くと真っ白い空間にいた
自称神という男性によると
部下によるミスが原因だった
元の世界に戻れないので
異世界に行って生きる事を決めました!
異世界に行って、自由気ままに、生きていきます
~☆~☆~☆~☆~☆
誤字脱字など、気を付けていますが、ありましたら教えて頂けると助かります!
また、感想を頂けると大喜びします
気が向いたら書き込んでやって下さい
~☆~☆~☆~☆~☆
カクヨム・小説家になろうでも公開しています
もしもシリーズ作りました<異世界でも男装標準装備~もしもシリーズ~>
もし、よろしければ読んであげて下さい
転生5回目!? こ、今世は楽しく長生きします!
実川えむ
ファンタジー
猫獣人のロジータ、10歳。
冒険者登録して初めての仕事で、ダンジョンのポーターを務めることになったのに、
なぜか同行したパーティーメンバーによって、ダンジョンの中の真っ暗闇の竪穴に落とされてしまった。
「なーんーでーっ!」
落下しながら、ロジータは前世の記憶というのを思い出した。
ただそれが……前世だけではなく、前々々々世……4回前? の記憶までも思い出してしまった。
ここから、ロジータのスローなライフを目指す、波乱万丈な冒険が始まります。
ご都合主義なので、スルーと流して読んで頂ければありがたいです。
セルフレイティングは念のため。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
ゴミスキルでもたくさん集めればチートになるのかもしれない
兎屋亀吉
ファンタジー
底辺冒険者クロードは転生者である。しかしチートはなにひとつ持たない。だが救いがないわけじゃなかった。その世界にはスキルと呼ばれる力を後天的に手に入れる手段があったのだ。迷宮の宝箱から出るスキルオーブ。それがあればスキル無双できると知ったクロードはチートスキルを手に入れるために、今日も薬草を摘むのであった。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
チート転生~チートって本当にあるものですね~
水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!!
そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。
亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる