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第4章起業しましょう。そうしましょう

257・再会

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「事の発端となったのは、
この島に1人の男がやってきたことでした。
どうもこの島の結界が古くなっていたようで、
結界の裂け目から偶然1人の男が流されてきました。
最初は殺そうかと思いましたが、
その男は重傷を負っていました。
それを哀れに思った我々は男を介抱しました。
しかしそれが間違いだったのです」

顔に苦渋を浮かべて男は言った。

「そして怪我が治った時、
男は故郷に帰るための船が欲しいと言いました。
我々は男のために一族総出で立派な船を作りました。
男は感謝の言葉を言いました。しかし…」
「何があったんですか?」
「あろうことかその男は我々が産み、
育てていた翼族の卵を盗んだのです」
「卵? 翼族は卵生なの?」

エドナがそう聞いた。

「はい…翼族の寿命は千年と長いのですが、
一生に産む卵は一個だけです。
卵の孵化には時間がかかるので、
卵は3つとも1つの部屋にまとめて置かれていました」
「え、一生に産む卵は1つなんですよね?
何で3つあるんですか」
「ああ、それぞれ3組の夫婦が同時期に卵を産んだんですよ。
それを男が盗み出し、我々が作った船に乗ってどこかに行きました。
我々が卵が盗まれたことを知った時にはもう全てが遅かったのです」

ああ、だから私と最初に出会った時警戒していたわけだ。
大切な卵を盗まれたのだ。警戒するのも無理は無い。

「しかしとんだ恩知らずね…。
助けてもらったのに大切な卵を盗むなんて」
「まぁ翼の生えた人間の卵なんて珍しいし、
売れると思ったんじゃない?」

エドナとリンはそう言った。

「ところでその男がどこに行ったのか知ってますか」
「男はクロノ聖王国出身だと行っていましたから、
今頃はクロノ聖王国に居るのではないでしょうか」
「ん? クロノ聖王国?」

私はヒナタのことを思い出した。
もしかして盗まれた3つのうちの1つってヒナタのことじゃないか?

「あのー、盗まれた卵のうち、1つは知っているかもしれません」

これにはみんなびっくり仰天だった。

「ええ!?」
「本当ですか!?」
「うちの子を知っているんですか!?」

そう矢継ぎ早に言われて、私は慌てて訂正した。

「私の仲間に翼が生えた子が居るんです。
その子はクロノ聖王国に居たので、
もしかしたら盗まれた卵のうち1つかもしれません」
「その子は今どこに居るんですか!?
私の子かもしれません!」

そう言った女性はヒナタに顔がそっくりだった。

「うーん、あなたに顔がそっくりなので、
あなたの子かもしれません」
「本当ですか!?
ああ、神様ありがとう!!」

そう女性と傍らにいた男性は涙を流して、
神様にお礼を言った。
ううっ、これだけ期待させておいて、
実は違っていたらどうしよう…。

「えっと、じゃあ連れてきますね。
転移魔法で移動するので待っていてください」

そう言うと私は転移魔法で私の家に転移する。

「どうしたんですか」
「ヒナタ居ませんか?」
「…私がどうかしたの」

そう言うと家の奥からヒナタがやってきた。

「ヒナタの両親が見つかりました」
「え、私は親に捨てられたんじゃあ…」
「違います。捨てられたんじゃなくて、盗まれたんです」

そう言うと私は事情をヒナタに説明した。

「そうだったの?」
「はい、だからご両親に会ってみませんか?」
「………」

そう言うとヒナタは黙り込んだ。

「今まで親には捨てられたって言われて育った。
そう簡単には納得出来ない…」
「そうですか、でもあなたの両親はあなたのことをずっと想ってましたよ」
「…分かった。会うだけ会ってみる」
「じゃあ行きましょう。《転移》」

そう言うと私は転移魔法で島に戻った。

「あ…ああ、間違いないわ!」

ヒナタを見ると女性はヒナタを抱きしめた。

「ああ、間違いなく私の子供だわ…!」
「無事で良かった…うぅ」

そうヒナタの両親は号泣してヒナタを抱きしめた。
ヒナタは固まったまま、抱きしめられていた。

「うぅ…良かったわね」

エドナ、もらい泣きしてるよ…。

「本当にありがとうございます!
何とお礼を言ったらいいのか…」
「あの私なら行方不明になった、
他の卵の居場所も分かるかもしれません」
「それは本当ですか!?」
「ただそのためには相手の名前を知っている必要があるんです。
卵に名前は付けていましたか?」
「残念ながら名前は付けていません…。
生まれてから名前を付けるのが風習でして…」
「そうですか、私は冒険者ですから色々な所を旅をします。
翼の生えた人間は珍しいですから、
そのうちどこかで噂を聞くかもしれません。
その時には絶対に探すと約束しましょう」
「本当ですね?
期待してもいいんですよね」
「多分時間はかかると想います。
でも絶対に見つけると約束しましょう」
「ああ、本当に感謝します。
私はずっとこの島を出て、子供を探そうと想っていたんです」

そう最初に槍を突きつけてきた翼族の男性は言った。

「え、ということはあなたの子供も?」
「ええ、盗まれました。
しかし私は族長の息子ですから、
この島を離れるわけにはいきませんでした。
しかし子供を探したい気持ちと、
族長として島の皆を守らなくてはいけない気持ち。
その板挟みにずっと苦しんできました」

後で聞いたがこの人名前はルカルカァさんらしい。
族長の息子で、子供を盗まれた被害者らしい。

「ところで卵を盗んだ男の名前知りませんか、
名前が分かれば居場所も分かります」
「…その男ならもう死んでる」

そうヒナタが言った。

「え、死んでる?」
「そう前に王が言っていたのを聞いたことがある。
珍しい卵を持ってきたけど、
大金を要求してきたから殺したって言ってた」
「あちゃー、じゃあもう手がかりはないですね」
「まぁあなたなら見つけられるんじゃないでしょうか。
トラブル体質ですし」

フォルトゥーナはそう言った。
まぁ私には幸運のスキルがあるので、
私が願えばそのうち見つかるかもしれないな。
しかし卵を盗んだ男は幸せにはなれなかったようだな。
まぁ自業自得なので仕方ないが、
裏切るようなことをしなければ、普通に生きていられたのに、
そう思った私だった。

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