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第4章起業しましょう。そうしましょう

248・友情崩壊

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それから私達はマイアの町に戻った。
ちなみに何故か当然のごとくプロムもついてきた。
目と角を見られると魔族だとすぐに分かってしまうため、
幻惑魔法で普通の目に見えて、
角は見えないように変えておいた。
そしてギルドに行って、依頼を報告しておいた。
あのタコ人間にされた冒険者達も、
無事家族の元に帰ることができた。

「さてと次はアアルに戻らないといけないな」
「何で戻るんですか?」
「エドナとジーンさん達を会わせないといけませんから」
「それはわたくしは反対します」
「え、フォルトゥーナ、何で?」
「今更家族と出会ったところで何になるっていうんですか?
エドナは会いたくないと思いますよ」
「でも仲直り出来るならしたいですよ」
「はぁこれだから天然は…。
後で絶対後悔しますよ」

そう言われたが、私はエドナとジーンさん達を会わせることにした。
事前にジーンさん達に頼んで屋敷の中で待ってもらうことにした。
他の仲間達も同様に屋敷の中で待つことにした。
そして私は転移魔法でアアルに戻った。

「セツナどうしたの?」
「エドナちょっといいですか」

そう言うとエドナと一緒にジーンさんの居る屋敷に転移した。

「ここはどこ?」

そうエドナが言った。
さすがに幼い時に勘当されたせいか、
そこが自分がかつて暮らしていた屋敷だと気がついていないみたいだ。

「エドナに会わせたい人が居るんです」

そう言うと私達は屋敷の中に入った。

「エドナよ。久しぶりだな…」
「…お母様!?」

ジーンさんを見てエドナは驚いているようだった。

「何でお母様がここに…まさかセツナ、謀ったわね!?」

エドナは怒ったようにそう言った。

「私は2度と家族に会うつもりはないって言ったわよね!?
なのに何で引き合わせたのよ!?」
「それはジーンさん達がエドナに謝りたいって言って…」
「そんなことはどうでもいい!
私は確かにあなたに言ったわよね!
2度と家族に会うつもりは無いって!
それなのにこれは一体どういうつもりなの!」
「エドナ、落ち着いてくれ私がセツナに頼んだことなんだ」

そうジーンさんは言った。

「聞きたくない!
どうせ伝えたいのは私への恨み言でしょう!?
私が生まれてこなければ良かったとでも言うんでしょう!?」

普段冷静なエドナがここまで怒っているには見たことがない。
それを見てフォルトゥーナの言った通りになったと私は気がついたが、
もう何もかもが遅かった。

「違う、そんなことは思ってな…」
「じゃあだったら何で今更会いたがるのよ!
私のことが憎いんでしょう!」
「落ち着いてエドナ」
「そうだよ。落ち着け」
「そんなことジーンさんは思っていないのだ」
「うるさい! 聞きたくない!」

仲間の言葉もエドナには届いていないようだった。

「セツナ、あなた私を裏切ったわね!!」
「え…、裏切った…?」
「私はあなたのことを信じていた。
友達だと思っていた…。
なのにあなたは私のことを裏切った!」

エドナは涙を流してそう言った。

「そんなことは…」
「無いって言わせないわよ!
私は確かにあなたに2度と家族と関わるつもりはないって言ったわ!
でもあなたは私を裏切った…!
もう心の底から失望したわ!
もう顔も見たくない!
2度と私の前に姿を見せないで!!」

そう言うとエドナは廊下を走ってどこかに行ってしまう。
私は膝から崩れ落ちた。
ショックだった。エドナに裏切ったと言われた。
でも私は裏切ったつもりなんてない。
なのに裏切ったと言われた。

「あーあー、だから言ったのにこういうことになりましたね」

フォルトゥーナがやれやれといった様子でそう言った。

「そんな…私はただ仲直り出来たらいいのにと思って…」
「仲良く? 勘当された娘とその後妻が、
今更仲良くなんて出来ると思っているんですか?
ハッ、心の底から脳天気な頭をしていますね。
羨ましいですよ」

フォルトゥーナは鼻で笑ってそう言った。

「脳天気…? 私が?」
「セツナ、あなたはエドナと仲が良かったです。
でもどんなに仲良くても、
ふとしたきっかけで友情なんてもろく崩れるものです。
特に女同士の友情なんて薄皮1枚よりも脆い絆で出来ているんです」
「でも私はエドナが喜んでくれると思って…!」
「それをエドナが望みましたか?」
「で、でも…」
「セツナあなたは例え相手がエドナであっても、
見られたくないこと、知られたくないことはあるでしょう?
いくら仲が良い友人でも踏み込んではいけない禁域があるんです。
あなたは今回エドナにとって最も踏み込んではいけない領域に、
土足で踏み込んで、身勝手な善意を押しつけた。
エドナがぶち切れるのも当然のことです。
もう以前のような関係には戻れないでしょうね」

私はサーシャに言われた予言を思い出した。
金色の夜明け、
それを取り囲むうちの1人が最悪な別れ方をするであろう。
それってまさかこのことを意味していたのか?

「そ、そんな、じゃあもう私とエドナは仲良く出来ないの?」
「そうです。どんなに高く積み上げた信頼も、
崩れる時は地の底まで落ちます。
もうあなたとエドナは元のような関係には戻れないでしょう」
「そ、そんな…」

足下がガラガラと崩れるような感覚だった。

「そういえばこんな言葉をご存じですか?
地獄への道は善意で舗装されている。
人を地獄に突き落とす行為の発端となる感情が、
皮肉にも善意によるものだったという意味です。
時に純粋な悪意よりも、
純粋な善意の方が時に人を地獄へと突き落とします」

その言葉は私の胸に深く突き刺さった。
私が良かれと思ってやった行動は、
エドナとの関係に亀裂が入るどころか、
友情が崩壊する結果となった。
私はエドナを本気で怒らして泣かせてしまった。
たしかに全部フォルトゥーナの言う通りだ。
脳天気だった。

「フォルトゥーナはちょっと言い過ぎなのだ。
セツナ大丈夫か?」

そうイオが言った。

「はぁこうは言いましたが、
わたくしは別にあなたをいじめたいわけではありません。
それに今ここでエドナが抜けるのはちょっとわたくしも困るので、
間に入ってエドナを説得してあげますよ」
「説得…?」
「あなたとエドナが仲直り出来るように尽力します」

そうフォルトゥーナが言ってくれたが、
私は自分への怒りと、後悔で気分は沈んだままだった。
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