279 / 315
第4章起業しましょう。そうしましょう
248・友情崩壊
しおりを挟むそれから私達はマイアの町に戻った。
ちなみに何故か当然のごとくプロムもついてきた。
目と角を見られると魔族だとすぐに分かってしまうため、
幻惑魔法で普通の目に見えて、
角は見えないように変えておいた。
そしてギルドに行って、依頼を報告しておいた。
あのタコ人間にされた冒険者達も、
無事家族の元に帰ることができた。
「さてと次はアアルに戻らないといけないな」
「何で戻るんですか?」
「エドナとジーンさん達を会わせないといけませんから」
「それはわたくしは反対します」
「え、フォルトゥーナ、何で?」
「今更家族と出会ったところで何になるっていうんですか?
エドナは会いたくないと思いますよ」
「でも仲直り出来るならしたいですよ」
「はぁこれだから天然は…。
後で絶対後悔しますよ」
そう言われたが、私はエドナとジーンさん達を会わせることにした。
事前にジーンさん達に頼んで屋敷の中で待ってもらうことにした。
他の仲間達も同様に屋敷の中で待つことにした。
そして私は転移魔法でアアルに戻った。
「セツナどうしたの?」
「エドナちょっといいですか」
そう言うとエドナと一緒にジーンさんの居る屋敷に転移した。
「ここはどこ?」
そうエドナが言った。
さすがに幼い時に勘当されたせいか、
そこが自分がかつて暮らしていた屋敷だと気がついていないみたいだ。
「エドナに会わせたい人が居るんです」
そう言うと私達は屋敷の中に入った。
「エドナよ。久しぶりだな…」
「…お母様!?」
ジーンさんを見てエドナは驚いているようだった。
「何でお母様がここに…まさかセツナ、謀ったわね!?」
エドナは怒ったようにそう言った。
「私は2度と家族に会うつもりはないって言ったわよね!?
なのに何で引き合わせたのよ!?」
「それはジーンさん達がエドナに謝りたいって言って…」
「そんなことはどうでもいい!
私は確かにあなたに言ったわよね!
2度と家族に会うつもりは無いって!
それなのにこれは一体どういうつもりなの!」
「エドナ、落ち着いてくれ私がセツナに頼んだことなんだ」
そうジーンさんは言った。
「聞きたくない!
どうせ伝えたいのは私への恨み言でしょう!?
私が生まれてこなければ良かったとでも言うんでしょう!?」
普段冷静なエドナがここまで怒っているには見たことがない。
それを見てフォルトゥーナの言った通りになったと私は気がついたが、
もう何もかもが遅かった。
「違う、そんなことは思ってな…」
「じゃあだったら何で今更会いたがるのよ!
私のことが憎いんでしょう!」
「落ち着いてエドナ」
「そうだよ。落ち着け」
「そんなことジーンさんは思っていないのだ」
「うるさい! 聞きたくない!」
仲間の言葉もエドナには届いていないようだった。
「セツナ、あなた私を裏切ったわね!!」
「え…、裏切った…?」
「私はあなたのことを信じていた。
友達だと思っていた…。
なのにあなたは私のことを裏切った!」
エドナは涙を流してそう言った。
「そんなことは…」
「無いって言わせないわよ!
私は確かにあなたに2度と家族と関わるつもりはないって言ったわ!
でもあなたは私を裏切った…!
もう心の底から失望したわ!
もう顔も見たくない!
2度と私の前に姿を見せないで!!」
そう言うとエドナは廊下を走ってどこかに行ってしまう。
私は膝から崩れ落ちた。
ショックだった。エドナに裏切ったと言われた。
でも私は裏切ったつもりなんてない。
なのに裏切ったと言われた。
「あーあー、だから言ったのにこういうことになりましたね」
フォルトゥーナがやれやれといった様子でそう言った。
「そんな…私はただ仲直り出来たらいいのにと思って…」
「仲良く? 勘当された娘とその後妻が、
今更仲良くなんて出来ると思っているんですか?
ハッ、心の底から脳天気な頭をしていますね。
羨ましいですよ」
フォルトゥーナは鼻で笑ってそう言った。
「脳天気…? 私が?」
「セツナ、あなたはエドナと仲が良かったです。
でもどんなに仲良くても、
ふとしたきっかけで友情なんてもろく崩れるものです。
特に女同士の友情なんて薄皮1枚よりも脆い絆で出来ているんです」
「でも私はエドナが喜んでくれると思って…!」
「それをエドナが望みましたか?」
「で、でも…」
「セツナあなたは例え相手がエドナであっても、
見られたくないこと、知られたくないことはあるでしょう?
いくら仲が良い友人でも踏み込んではいけない禁域があるんです。
あなたは今回エドナにとって最も踏み込んではいけない領域に、
土足で踏み込んで、身勝手な善意を押しつけた。
エドナがぶち切れるのも当然のことです。
もう以前のような関係には戻れないでしょうね」
私はサーシャに言われた予言を思い出した。
金色の夜明け、
それを取り囲むうちの1人が最悪な別れ方をするであろう。
それってまさかこのことを意味していたのか?
「そ、そんな、じゃあもう私とエドナは仲良く出来ないの?」
「そうです。どんなに高く積み上げた信頼も、
崩れる時は地の底まで落ちます。
もうあなたとエドナは元のような関係には戻れないでしょう」
「そ、そんな…」
足下がガラガラと崩れるような感覚だった。
「そういえばこんな言葉をご存じですか?
地獄への道は善意で舗装されている。
人を地獄に突き落とす行為の発端となる感情が、
皮肉にも善意によるものだったという意味です。
時に純粋な悪意よりも、
純粋な善意の方が時に人を地獄へと突き落とします」
その言葉は私の胸に深く突き刺さった。
私が良かれと思ってやった行動は、
エドナとの関係に亀裂が入るどころか、
友情が崩壊する結果となった。
私はエドナを本気で怒らして泣かせてしまった。
たしかに全部フォルトゥーナの言う通りだ。
脳天気だった。
「フォルトゥーナはちょっと言い過ぎなのだ。
セツナ大丈夫か?」
そうイオが言った。
「はぁこうは言いましたが、
わたくしは別にあなたをいじめたいわけではありません。
それに今ここでエドナが抜けるのはちょっとわたくしも困るので、
間に入ってエドナを説得してあげますよ」
「説得…?」
「あなたとエドナが仲直り出来るように尽力します」
そうフォルトゥーナが言ってくれたが、
私は自分への怒りと、後悔で気分は沈んだままだった。
0
お気に入りに追加
51
あなたにおすすめの小説
『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる
農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」
そんな言葉から始まった異世界召喚。
呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!?
そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう!
このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。
勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定
私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。
ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。
他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。
なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。
まったく知らない世界に転生したようです
吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし?
まったく知らない世界に転生したようです。
何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?!
頼れるのは己のみ、みたいです……?
※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。
私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。
111話までは毎日更新。
それ以降は毎週金曜日20時に更新します。
カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。
あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話
此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。
電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。
信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。
そうだ。西へ行こう。
西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。
ここで、ぼくらは名をあげる!
ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。
と、思ってた時期がぼくにもありました…
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)
荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」
俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」
ハーデス 「では……」
俺 「だが断る!」
ハーデス 「むっ、今何と?」
俺 「断ると言ったんだ」
ハーデス 「なぜだ?」
俺 「……俺のレベルだ」
ハーデス 「……は?」
俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」
ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」
俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」
ハーデス 「……正気……なのか?」
俺 「もちろん」
異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。
たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ユウ
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~
K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。
次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。
生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。
…決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。
※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる