279 / 309
第4章起業しましょう。そうしましょう
248・友情崩壊
しおりを挟むそれから私達はマイアの町に戻った。
ちなみに何故か当然のごとくプロムもついてきた。
目と角を見られると魔族だとすぐに分かってしまうため、
幻惑魔法で普通の目に見えて、
角は見えないように変えておいた。
そしてギルドに行って、依頼を報告しておいた。
あのタコ人間にされた冒険者達も、
無事家族の元に帰ることができた。
「さてと次はアアルに戻らないといけないな」
「何で戻るんですか?」
「エドナとジーンさん達を会わせないといけませんから」
「それはわたくしは反対します」
「え、フォルトゥーナ、何で?」
「今更家族と出会ったところで何になるっていうんですか?
エドナは会いたくないと思いますよ」
「でも仲直り出来るならしたいですよ」
「はぁこれだから天然は…。
後で絶対後悔しますよ」
そう言われたが、私はエドナとジーンさん達を会わせることにした。
事前にジーンさん達に頼んで屋敷の中で待ってもらうことにした。
他の仲間達も同様に屋敷の中で待つことにした。
そして私は転移魔法でアアルに戻った。
「セツナどうしたの?」
「エドナちょっといいですか」
そう言うとエドナと一緒にジーンさんの居る屋敷に転移した。
「ここはどこ?」
そうエドナが言った。
さすがに幼い時に勘当されたせいか、
そこが自分がかつて暮らしていた屋敷だと気がついていないみたいだ。
「エドナに会わせたい人が居るんです」
そう言うと私達は屋敷の中に入った。
「エドナよ。久しぶりだな…」
「…お母様!?」
ジーンさんを見てエドナは驚いているようだった。
「何でお母様がここに…まさかセツナ、謀ったわね!?」
エドナは怒ったようにそう言った。
「私は2度と家族に会うつもりはないって言ったわよね!?
なのに何で引き合わせたのよ!?」
「それはジーンさん達がエドナに謝りたいって言って…」
「そんなことはどうでもいい!
私は確かにあなたに言ったわよね!
2度と家族に会うつもりは無いって!
それなのにこれは一体どういうつもりなの!」
「エドナ、落ち着いてくれ私がセツナに頼んだことなんだ」
そうジーンさんは言った。
「聞きたくない!
どうせ伝えたいのは私への恨み言でしょう!?
私が生まれてこなければ良かったとでも言うんでしょう!?」
普段冷静なエドナがここまで怒っているには見たことがない。
それを見てフォルトゥーナの言った通りになったと私は気がついたが、
もう何もかもが遅かった。
「違う、そんなことは思ってな…」
「じゃあだったら何で今更会いたがるのよ!
私のことが憎いんでしょう!」
「落ち着いてエドナ」
「そうだよ。落ち着け」
「そんなことジーンさんは思っていないのだ」
「うるさい! 聞きたくない!」
仲間の言葉もエドナには届いていないようだった。
「セツナ、あなた私を裏切ったわね!!」
「え…、裏切った…?」
「私はあなたのことを信じていた。
友達だと思っていた…。
なのにあなたは私のことを裏切った!」
エドナは涙を流してそう言った。
「そんなことは…」
「無いって言わせないわよ!
私は確かにあなたに2度と家族と関わるつもりはないって言ったわ!
でもあなたは私を裏切った…!
もう心の底から失望したわ!
もう顔も見たくない!
2度と私の前に姿を見せないで!!」
そう言うとエドナは廊下を走ってどこかに行ってしまう。
私は膝から崩れ落ちた。
ショックだった。エドナに裏切ったと言われた。
でも私は裏切ったつもりなんてない。
なのに裏切ったと言われた。
「あーあー、だから言ったのにこういうことになりましたね」
フォルトゥーナがやれやれといった様子でそう言った。
「そんな…私はただ仲直り出来たらいいのにと思って…」
「仲良く? 勘当された娘とその後妻が、
今更仲良くなんて出来ると思っているんですか?
ハッ、心の底から脳天気な頭をしていますね。
羨ましいですよ」
フォルトゥーナは鼻で笑ってそう言った。
「脳天気…? 私が?」
「セツナ、あなたはエドナと仲が良かったです。
でもどんなに仲良くても、
ふとしたきっかけで友情なんてもろく崩れるものです。
特に女同士の友情なんて薄皮1枚よりも脆い絆で出来ているんです」
「でも私はエドナが喜んでくれると思って…!」
「それをエドナが望みましたか?」
「で、でも…」
「セツナあなたは例え相手がエドナであっても、
見られたくないこと、知られたくないことはあるでしょう?
いくら仲が良い友人でも踏み込んではいけない禁域があるんです。
あなたは今回エドナにとって最も踏み込んではいけない領域に、
土足で踏み込んで、身勝手な善意を押しつけた。
エドナがぶち切れるのも当然のことです。
もう以前のような関係には戻れないでしょうね」
私はサーシャに言われた予言を思い出した。
金色の夜明け、
それを取り囲むうちの1人が最悪な別れ方をするであろう。
それってまさかこのことを意味していたのか?
「そ、そんな、じゃあもう私とエドナは仲良く出来ないの?」
「そうです。どんなに高く積み上げた信頼も、
崩れる時は地の底まで落ちます。
もうあなたとエドナは元のような関係には戻れないでしょう」
「そ、そんな…」
足下がガラガラと崩れるような感覚だった。
「そういえばこんな言葉をご存じですか?
地獄への道は善意で舗装されている。
人を地獄に突き落とす行為の発端となる感情が、
皮肉にも善意によるものだったという意味です。
時に純粋な悪意よりも、
純粋な善意の方が時に人を地獄へと突き落とします」
その言葉は私の胸に深く突き刺さった。
私が良かれと思ってやった行動は、
エドナとの関係に亀裂が入るどころか、
友情が崩壊する結果となった。
私はエドナを本気で怒らして泣かせてしまった。
たしかに全部フォルトゥーナの言う通りだ。
脳天気だった。
「フォルトゥーナはちょっと言い過ぎなのだ。
セツナ大丈夫か?」
そうイオが言った。
「はぁこうは言いましたが、
わたくしは別にあなたをいじめたいわけではありません。
それに今ここでエドナが抜けるのはちょっとわたくしも困るので、
間に入ってエドナを説得してあげますよ」
「説得…?」
「あなたとエドナが仲直り出来るように尽力します」
そうフォルトゥーナが言ってくれたが、
私は自分への怒りと、後悔で気分は沈んだままだった。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】
Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。
でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?!
感謝を込めて別世界で転生することに!
めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外?
しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?!
どうなる?私の人生!
※R15は保険です。
※しれっと改正することがあります。
聖女にしろなんて誰が言った。もはや我慢の限界!私、逃げます!
猿喰 森繁
ファンタジー
幼いころから我慢を強いられてきた主人公。 異世界に連れてこられても我慢をしてきたが、ついに限界が来てしまった。 数年前から、国から出ていく算段をつけ、ついに国外逃亡。 国の未来と、主人公の未来は、どうなるのか!?
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
若返ったおっさん、第2の人生は異世界無双
たまゆら
ファンタジー
事故で死んだネトゲ廃人のおっさん主人公が、ネトゲと酷似した異世界に転移。
ゲームの知識を活かして成り上がります。
圧倒的効率で金を稼ぎ、レベルを上げ、無双します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる