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第4章起業しましょう。そうしましょう

246・フェンリル

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「酷いことってどういうことですか」
「あの冒険者達はボクに酷いことをしようとした、
だからこれは正当防衛だよ」
「正当防衛?」
「あの冒険者達はボクの自宅にズカズカと土足で入ってきた。
仕方ないから対応したら、
上から目線でいきなりダンジョンを変えろって命令してきた。
断ったら、無理矢理体を押さえ込まれて、
ボクのこと集団で犯そうとしてきたんだよ。
だから返り討ちにして、モルモットにしてやった。
それだけのことだよ」
「で、でもそれはいくらなんでも」
「やりすぎだって言うの?
じゃあ何? 大人しく強姦されていたら良かったの?」
「そういう意味ではありません…」

私はどう言ったらいいのか言葉に迷う。
今回のことは明らかに悪いのは冒険者達だ。
自分達にもダンジョンが変えられると思うぐらいなのだ。
すごく傲慢な人であることは想像がつく。
でもだからといって、
モルモットにしてもいいかと言われても違うと思う。
私は考えながら言葉を出す。

「確かに私は個人的には女性に乱暴する男はどうかと思います。
でもだからと言ってモルモットにして良いというものでもありません」
「へー、ボクは女性に乱暴するような男は死ねばいいと思うけどね。
あの冒険者達、ボクを乱暴しようとした時、
手慣れてる感じがあったから、
きっとそういうことするの初めてではないと思うよ。
それでも助ける価値なんてあるのかな?」
「それは…」
「ボクは何も間違ったことしてないと思うよ。
それだけは声を大にして言える。
ボクは降りかかった火の粉を払っただけ。
なのにそのボクだけが責められるってそれおかしいと思うけど?」
「責めているわけではありません…」

この場合正しいのはどちら何だ?
私が間違っているのか。
分からなくなってきた。

「いいえ、あなたは間違っていません」

フォルトゥーナがそう言った。

「わたくしも女性に乱暴する男は死ねばいいと思います。
今回のことを一言で言うなら自業自得でしょう。
ですが、それとあなたを放っておけるかというのは話が別です」
「へぇじゃあ殺すってわけ?」
「そうじゃ。魔族は死ぬべきじゃ。
放っておけば伝染病のように不幸をまき散らす存在じゃからな」

タツキは扇で顔を隠しながらそう言った。

「そうか、じゃあボクは正当防衛しないといけないな」

そう言うとプロムは天井を指さす。

「ボクは魔族の中ではあんまり強くないけど、
魔物を作り出すことなら誰にも負けない。
現れろ!」

そうプロムが言うと、奥の扉が開いて、
何メートルもある白い狼が出てくる。

「じゃあ、お手並み拝見といこうか、
君達がどこまで戦えるか見てるねー」

プロムがそう言うと、プロムの体が浮き上がり、
天井に吸い込まれて消える。

「アオーン!!」

狼の魔物が遠吠えすると、周辺に吹雪が吹き荒れ、床と壁が凍り付く。

「さ、寒いのだ」
「とりあえず《鑑定》」

【複製体フェンリル】
【体力】15220/15220
【魔力】15220/15220
伝説とも言われる狼の魔物の複製体。
プロムによって作られ、
フェンリルの魔石から複製されたが、
実際にフェンリルより格段に弱体化しており、
致命的とも言える弱点を持っているが、
それを見つけ出すことは容易でないだろう。

え、その弱点が何なのか教えてくれないのかよ。
そう思っていると、
フェンリルがこちらに氷のつぶてを放ってきた。

「うわっ」

結界魔道具のおかげで攻撃は防がれたが、
攻撃があまりに早すぎて見えなかった。

「行くのだ!」

フェンリルに向かってイオが突進する。

「待ってください!
うかつに攻撃するのは…」

そう言うとフェンリルがイオを食べようと口を大きく開けて、
飛びかかってきた――。

「危ない!」

すんでのところでリンがイオを抱えて攻撃を回避する。

「行きます。《煉獄炎(インフェルノ)》」

私は炎魔法を使う。
しかしあまり効いていないようだった。

「え、炎は弱点じゃないんですか?」

氷を使ってくるなら、
絶対炎が弱点だとと思ったのだがどうも違うらしい。

「エドナはどう思いますか…って居ないんだった」

エドナがこの場に居たら持っている知識と経験から、
的確なアドバイスをくれるだろう。
しかし今彼女は居ないので私達で何とかするしかない。

「行くのだ!」

イオが思い切り、
フェンリルに斧をぶつけるが攻撃が効いていないのか、はじかれる。

「くっ、《サンダー》」

雷魔法も放ったが効いてない。
それから氷以外の属性魔法を片っ端からぶつけてみたが、
まるで効果がなかった。

「一体どうしたら…」
「セツナよ。妾が倒そうか?」
「待ってください。それなら、ヒントだけください」
「そうじゃの。セツナよ。
耐性があることと能力を使えることは別じゃ」
「え? どういう意味です?」
「まぁそれは自分で考えるのじゃ」

耐性があることとの能力があることは別?
意味が分からん。
耐性と能力…もしかして能力はあっても耐性が無いとしたら…。

「あ」

ひらめいた。確かにその方法は試していなかった。

「《氷檻(アイス・プリズン)》」

私は氷魔法をフェンリルにぶつけた。
するとフェンリルは氷漬けになり、砕け散った。

「え、何で死んだんだ?」
「ガイ、おそらくこのフェンリルは、
氷には耐性が無いんです」
「え、氷魔法が使えるのにか?」
「おそらくある程度の寒さには耐えられるんですが、
それ以上の寒さには耐えられないんでしょう。
さっき凍らせた時もフェンリルの周りだけ、凍っていませんでした」
「でも氷を操れるのに、寒さに弱いっておかしくない?」
「まぁ氷を操るなら寒さに弱いとは思いませんからね。
さっき属性魔法を片っ端からぶつけた時も、
氷だけは耐性があると思って、試しませんでしたから」

これはとある研究者が言っていたことだが、
漫画ではよく氷を操る能力の持ち主が出てくるが、
いくら氷を操れても、
その人自身が寒さに耐性があるとは限らないらしい。
というか自分の持っている能力のせいで、
凍死するという間抜けなことになってしまう可能性もある。
なのでもし氷系能力者が居たら、
自分の体温を回復させる手段を持つ必要があると、
その研究者が言っていた。

「いやー、すごいね」

パチパチと拍手をして、天井からプロムが降りてくる。

「本物のフェンリルの10分の1程度の力しかないとはいえ、
まさかこうも簡単に倒されるとはね」
「おい、てめぇ覚悟は出来ているんだよな」

そう俺、ゼロはセツナを押しのけて現れる。
それに伴い肉体も変化し、黒髪が腰まで伸び、
身長も180センチと高身長になる。

「服がきついな。魔力で変えるか」

そうして俺は服の大きさを変えた。

「え? アンタ誰?」
「ゼロだよ。人格が変わったら肉体も変化出来るようにしたんだよ」
「な、な、な」

何故かプロムが顔を真っ赤にさせた。

「おい、いいからとっとと戦――」
「惚れた! 君に惚れた!
ボクと結婚してくれ!!」
「はぁ?」

いきなり魔族に求婚されて唖然とする俺だった。

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