252 / 309
第4章起業しましょう。そうしましょう
221・突然の逮捕
しおりを挟む「ちょっと待って、何でセツナが逮捕されるのよ!」
エドナが慌てたようにそう言った。
「2週間前、
チコの村の住民の全員が何者かによって石化された。
セツナ・カイドウはその容疑で逮捕する」
「何を言っているんですか、
私はそんなことしてません!」
「こちらとて、何も証拠が無くて決めつけているわけではない。
署まで同行してもらおうか。
抵抗すれば公務執行妨害で逮捕する」
「ここは従うしかありませんね…」
私は大人しく警察官の用意していた馬車に乗り込む。
「セツナ…」
「大丈夫です。きっとすぐに誤解は解けますから」
そう言って私は安心させるためにエドナ達に笑いかけ、
馬車に乗った。
◆
「お前がやったんだろう!」
「だからそんなことしていません…!」
さっきからこの会話の繰り返しだ。
留置所に案内された私は警察官から取り調べを受けていたが、
ずっと休憩もなく取り調べを受けていた。
「そもそも私が犯人だという証拠はあるんですか」
「それならある」
「えっとあなたは?」
「ギル・ウェザースだ。
この警察署の警視をしている」
警視ってこのファンタジー世界には似合わないと思った。
まぁこれは後で知ったことだが、
タロウ=ヤマダがバーン王国の建国をした時に、
日本の警察制度を参考にして組織を作ったらしい。
といってもあくまで参考にしただけで、
日本の警察とは違うところもある。
例えば警察のトップには、
青竜騎士団が君臨しているところなんかがそうで、
完全にまねているわけではない。
「貴様が犯人である証拠は3つある。
1つは貴様自身が石化魔法を扱えるからだ。
チコの村の付近にいた盗賊を石化したことがあるらしいな」
あ、そういえば盗賊団を石化させて、
それを解除して警察署に引き渡したことがあった。
その話が広まっていても不思議ではない。
「石化魔法は使い手のほとんどいない魔法だ。
そんなものが使える時点で貴様が犯人であるようなものだ」
「そんな…」
「そして二つ目は貴様が事件が発生した時間のアリバイが無い」
アリバイなら正確にはあるが、
ヤトノカミに居たと言っても信じてはもらえないだろう。
だからアリバイについて、
聞かれても分からないとしか言えなかった。
「そして3つ目は貴様が転移魔法が使えるということだ。
転移魔法さえ使えば、お前がどこに居ようと、
チコの村に行くことが出来る。
どうだ。分かったか。
これだけの状況証拠がそろっているのだ。
貴様が犯人で間違いない」
私の持っている力は悪用すればとんでもないことになるのは知っていたが、
実際に犯人だと疑われるとは思わなかった。
「待ってください。状況証拠だけで逮捕は出来ないんじゃ…」
「何を言っている?
出来るに決まっているだろう」
「え? あ、そうか、この世界は文明が送れているから、
いい加減な捜査しかしていないんだ…」
「いい加減だと? ふざけたことを言うな。
お前が犯人で無かったら俺は裸で町を1周してやる。
それぐらいにお前が犯人だと確信しているのだ」
「そんな…」
「では貴様には牢屋に入ってもらう」
「え、牢屋に?」
牢屋と聞いて、ヒョウム国のことを思い出した。
またあんな所に戻るのか、
しかし嫌だと言っても、私の言葉は聞き入れられず、
私は牢屋に入ることになったのだった。
◆
「最悪です…」
牢屋の固いベッドに腰掛けて私はそう言った。
「まぁそう落ち込むなって」
「でもガイが居てくれて良かったです」
今私は魔力を封じる首輪をつけており、
アイテムボックスが使えないように、
手も拘束されていた。
しかしガイが居てくれて良かった。
もし居なかったら精神的に不安定になっていただろうから
「セツナ」
その時1人の看守が近づいてきた。
「何ですか」
「しっ、わたくしですよ」
そう言うと看守の顔が変わりフォルトゥーナの顔になる。
「助けに来ました」
そう言うとフォルトゥーナが鍵を開けた。
「フォルトゥーナ、こんなことして大丈夫なの?」
「大丈夫です。本物の看守は酒に酔わせて眠らせましたから」
「エドナ達はどうしてるの?」
「みんなあなたのことを心配してましたよ。
エドナに至っては伯爵夫人に直訴してました。
伯爵夫人もあなたを釈放するように訴えたみたいですが、
警察の方から無理だと突っぱねられたみたいです」
「まぁ確かにあれだけ状況証拠がそろっていたら無理もないですね」
「あなたが逮捕されたことはすでに町中に広がっています。
あなたの知り合いは、
あなたがそんなことをするはずが無いと思っていますが、
あなたと特に接点のない人は、
あなたが犯人だと思い込んでいる人もいるみたいです」
「そっか…」
「とにかくこのままだとあなたは一生牢屋の中です。
便利な能力を持つのも考え物ですね。
とにかくあなたが無実であることを示すには、
真犯人を捕まえるしかありません」
「真犯人ってチコの村を石化させた犯人のこと?」
「はい、おそらく真犯人はあなたに強い恨みを持っています。
だからわたくしと入れ替わって、真犯人を捜してみてください」
「え、それだとフォルトゥーナが牢屋に閉じ込められることになりますよ。
それに変装してもすぐにバレるんじゃ…」
「あなたの姿に変化するから大丈夫です。
では着ている服を交換しましょう」
そう言うとフォルトゥーナが私そっくりの姿になったので驚いた。
それから着ている服を交換した。
魔封じの首輪も外してもらい、フォルトゥーナに付けた。
手の拘束もしておいた。
「でも何で私の姿に変装する必要があるんですか?
一緒に逃げたらいいじゃないですか」
「逃げたら、エドナ達が逃がした犯人だと疑われますよ。
それとこれは私の勝手な予想ですが、
近いうちに犯人は接触してくる気もするのです」
「そうか、これしか言えないけど、
本当にありがとう。すぐに真犯人を見つけてくるよ」
そう言うと私は牢に鍵をかけ、その場を後にした。
◆
それから転移魔法を使い、
わりとあっさりと刑務所から出ることが出来た。
自宅に転移すると、
エドナ達が集まっていた。その中には伯爵夫人もいた。
「ああ、良かった。無事だったんだな」
「ええ、フォルトゥーナのおかげで出られました」
「しかし驚いたぞ。
まさか逮捕されるとはな」
「ええ、私もびっくりしました」
「すまないな。助けてやれなくて、
私もお前を助けようとはしたんだが、
ここまで状況証拠がそろっていると釈放は難しいと言われた」
「伯爵夫人が気にすることではありませんよ。
それより早く真犯人を見つけないと」
「チコの村に行ってみるのはどう?
あそこに何かの手がかりがあるかもしれないわ」
「そうですね。行ってみましょう」
そうして私達はチコの村に行くことにしたのだった。
0
お気に入りに追加
53
あなたにおすすめの小説
女神様から同情された結果こうなった
回復師
ファンタジー
どうやら女神の大ミスで学園ごと異世界に召喚されたらしい。本来は勇者になる人物を一人召喚するはずだったのを女神がミスったのだ。しかも召喚した場所がオークの巣の近く、年頃の少女が目の前にいきなり大量に現れ色めき立つオーク達。俺は妹を守る為に、女神様から貰ったスキルで生き残るべく思考した。
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
チートな幼女に転生しました。【本編完結済み】
Nau
恋愛
道路に飛び出した子供を庇って死んだ北野優子。
でもその庇った子が結構すごい女神が転生した姿だった?!
感謝を込めて別世界で転生することに!
めちゃくちゃ感謝されて…出来上がった新しい私もしかして規格外?
しかも学園に通うことになって行ってみたら、女嫌いの公爵家嫡男に気に入られて?!
どうなる?私の人生!
※R15は保険です。
※しれっと改正することがあります。
死霊王は異世界を蹂躙する~転移したあと処刑された俺、アンデッドとなり全てに復讐する~
未来人A
ファンタジー
主人公、田宮シンジは妹のアカネ、弟のアオバと共に異世界に転移した。
待っていたのは皇帝の命令で即刻処刑されるという、理不尽な仕打ち。
シンジはアンデッドを自分の配下にし、従わせることの出来る『死霊王』というスキルを死後開花させる。
アンデッドとなったシンジは自分とアカネ、アオバを殺した帝国へ復讐を誓う。
死霊王のスキルを駆使して徐々に配下を増やし、アンデッドの軍団を作り上げていく。
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました
紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。
国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です
更新は1週間に1度くらいのペースになります。
何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。
自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m
嫌われ聖女さんはとうとう怒る〜今更大切にするなんて言われても、もう知らない〜
𝓝𝓞𝓐
ファンタジー
13歳の時に聖女として認定されてから、身を粉にして人々のために頑張り続けたセレスティアさん。どんな人が相手だろうと、死にかけながらも癒し続けた。
だが、その結果は悲惨の一言に尽きた。
「もっと早く癒せよ! このグズが!」
「お前がもっと早く治療しないせいで、後遺症が残った! 死んで詫びろ!」
「お前が呪いを防いでいれば! 私はこんなに醜くならなかったのに! お前も呪われろ!」
また、日々大人も気絶するほどの魔力回復ポーションを飲み続けながら、国中に魔物を弱らせる結界を張っていたのだが……、
「もっと出力を上げんか! 貴様のせいで我が国の騎士が傷付いたではないか! とっとと癒せ! このウスノロが!」
「チッ。あの能無しのせいで……」
頑張っても頑張っても誰にも感謝されず、それどころか罵られるばかり。
もう我慢ならない!
聖女さんは、とうとう怒った。
聖女にしろなんて誰が言った。もはや我慢の限界!私、逃げます!
猿喰 森繁
ファンタジー
幼いころから我慢を強いられてきた主人公。 異世界に連れてこられても我慢をしてきたが、ついに限界が来てしまった。 数年前から、国から出ていく算段をつけ、ついに国外逃亡。 国の未来と、主人公の未来は、どうなるのか!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる