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第4章起業しましょう。そうしましょう

221・突然の逮捕

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「ちょっと待って、何でセツナが逮捕されるのよ!」

エドナが慌てたようにそう言った。

「2週間前、
チコの村の住民の全員が何者かによって石化された。
セツナ・カイドウはその容疑で逮捕する」
「何を言っているんですか、
私はそんなことしてません!」
「こちらとて、何も証拠が無くて決めつけているわけではない。
署まで同行してもらおうか。
抵抗すれば公務執行妨害で逮捕する」
「ここは従うしかありませんね…」

私は大人しく警察官の用意していた馬車に乗り込む。

「セツナ…」
「大丈夫です。きっとすぐに誤解は解けますから」

そう言って私は安心させるためにエドナ達に笑いかけ、
馬車に乗った。





「お前がやったんだろう!」
「だからそんなことしていません…!」

さっきからこの会話の繰り返しだ。
留置所に案内された私は警察官から取り調べを受けていたが、
ずっと休憩もなく取り調べを受けていた。

「そもそも私が犯人だという証拠はあるんですか」
「それならある」
「えっとあなたは?」
「ギル・ウェザースだ。
この警察署の警視をしている」

警視ってこのファンタジー世界には似合わないと思った。
まぁこれは後で知ったことだが、
タロウ=ヤマダがバーン王国の建国をした時に、
日本の警察制度を参考にして組織を作ったらしい。
といってもあくまで参考にしただけで、
日本の警察とは違うところもある。
例えば警察のトップには、
青竜騎士団が君臨しているところなんかがそうで、
完全にまねているわけではない。

「貴様が犯人である証拠は3つある。
1つは貴様自身が石化魔法を扱えるからだ。
チコの村の付近にいた盗賊を石化したことがあるらしいな」

あ、そういえば盗賊団を石化させて、
それを解除して警察署に引き渡したことがあった。
その話が広まっていても不思議ではない。

「石化魔法は使い手のほとんどいない魔法だ。
そんなものが使える時点で貴様が犯人であるようなものだ」
「そんな…」
「そして二つ目は貴様が事件が発生した時間のアリバイが無い」

アリバイなら正確にはあるが、
ヤトノカミに居たと言っても信じてはもらえないだろう。
だからアリバイについて、
聞かれても分からないとしか言えなかった。

「そして3つ目は貴様が転移魔法が使えるということだ。
転移魔法さえ使えば、お前がどこに居ようと、
チコの村に行くことが出来る。
どうだ。分かったか。
これだけの状況証拠がそろっているのだ。
貴様が犯人で間違いない」

私の持っている力は悪用すればとんでもないことになるのは知っていたが、
実際に犯人だと疑われるとは思わなかった。

「待ってください。状況証拠だけで逮捕は出来ないんじゃ…」
「何を言っている?
出来るに決まっているだろう」
「え? あ、そうか、この世界は文明が送れているから、
いい加減な捜査しかしていないんだ…」
「いい加減だと? ふざけたことを言うな。
お前が犯人で無かったら俺は裸で町を1周してやる。
それぐらいにお前が犯人だと確信しているのだ」
「そんな…」
「では貴様には牢屋に入ってもらう」
「え、牢屋に?」

牢屋と聞いて、ヒョウム国のことを思い出した。
またあんな所に戻るのか、
しかし嫌だと言っても、私の言葉は聞き入れられず、
私は牢屋に入ることになったのだった。





「最悪です…」

牢屋の固いベッドに腰掛けて私はそう言った。

「まぁそう落ち込むなって」
「でもガイが居てくれて良かったです」

今私は魔力を封じる首輪をつけており、
アイテムボックスが使えないように、
手も拘束されていた。
しかしガイが居てくれて良かった。
もし居なかったら精神的に不安定になっていただろうから

「セツナ」

その時1人の看守が近づいてきた。

「何ですか」
「しっ、わたくしですよ」

そう言うと看守の顔が変わりフォルトゥーナの顔になる。

「助けに来ました」

そう言うとフォルトゥーナが鍵を開けた。

「フォルトゥーナ、こんなことして大丈夫なの?」
「大丈夫です。本物の看守は酒に酔わせて眠らせましたから」
「エドナ達はどうしてるの?」
「みんなあなたのことを心配してましたよ。
エドナに至っては伯爵夫人に直訴してました。
伯爵夫人もあなたを釈放するように訴えたみたいですが、
警察の方から無理だと突っぱねられたみたいです」
「まぁ確かにあれだけ状況証拠がそろっていたら無理もないですね」
「あなたが逮捕されたことはすでに町中に広がっています。
あなたの知り合いは、
あなたがそんなことをするはずが無いと思っていますが、
あなたと特に接点のない人は、
あなたが犯人だと思い込んでいる人もいるみたいです」
「そっか…」
「とにかくこのままだとあなたは一生牢屋の中です。
便利な能力を持つのも考え物ですね。
とにかくあなたが無実であることを示すには、
真犯人を捕まえるしかありません」
「真犯人ってチコの村を石化させた犯人のこと?」
「はい、おそらく真犯人はあなたに強い恨みを持っています。
だからわたくしと入れ替わって、真犯人を捜してみてください」
「え、それだとフォルトゥーナが牢屋に閉じ込められることになりますよ。
それに変装してもすぐにバレるんじゃ…」
「あなたの姿に変化するから大丈夫です。
では着ている服を交換しましょう」

そう言うとフォルトゥーナが私そっくりの姿になったので驚いた。
それから着ている服を交換した。
魔封じの首輪も外してもらい、フォルトゥーナに付けた。
手の拘束もしておいた。

「でも何で私の姿に変装する必要があるんですか?
一緒に逃げたらいいじゃないですか」
「逃げたら、エドナ達が逃がした犯人だと疑われますよ。
それとこれは私の勝手な予想ですが、
近いうちに犯人は接触してくる気もするのです」
「そうか、これしか言えないけど、
本当にありがとう。すぐに真犯人を見つけてくるよ」

そう言うと私は牢に鍵をかけ、その場を後にした。





それから転移魔法を使い、
わりとあっさりと刑務所から出ることが出来た。
自宅に転移すると、
エドナ達が集まっていた。その中には伯爵夫人もいた。

「ああ、良かった。無事だったんだな」
「ええ、フォルトゥーナのおかげで出られました」
「しかし驚いたぞ。
まさか逮捕されるとはな」
「ええ、私もびっくりしました」
「すまないな。助けてやれなくて、
私もお前を助けようとはしたんだが、
ここまで状況証拠がそろっていると釈放は難しいと言われた」
「伯爵夫人が気にすることではありませんよ。
それより早く真犯人を見つけないと」
「チコの村に行ってみるのはどう?
あそこに何かの手がかりがあるかもしれないわ」
「そうですね。行ってみましょう」

そうして私達はチコの村に行くことにしたのだった。

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