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第4章起業しましょう。そうしましょう
205・イオの誕生日大作戦
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「セツナ達に相談したいことがあるのだ…」
その日の朝、イオがそう言った。
心なしか顔も暗かった。
「どうしたんですか?」
「最近家族が何だか冷たいのだ」
「冷たいってイオの家族が?」
「そうなのだ。
私が家に帰ってきても普段は大喜びしてくれるのに、
最近はそっけないのだ」
「確かにイオは出稼ぎでここに暮らしていて、
週に1日家に帰っているんですよね」
「家族とあまり時間が取れてないから、
家族関係が希薄になったんじゃないのかい?」
確かにリンの言う通り、
家族のために仕事を頑張っていたら、
家族と居る時間が減り、
家族関係が希薄になってしまったというのはよく聞く話だ。
「でも出稼ぎといっても週に一度は帰っているし、
そんなに寂しい想いはさせてないと思うのだ」
「うーんもう少し家族と居る時間を増やしてはどうですか?
子供達も寂しいから冷たくしているだけかもしれませんし」
「でも私は見てしまったのだ」
「何を見たんだ?」
「アランが…夫が他の女性と店に入っているところを…」
「ええー!! それって浮気ですか!?」
「だと思うのだ。私は本当にどうしたらいいのか分からないのだ。
アランは浮気するような人じゃないと思っていたのに…」
「うーん、妻の居ない間に夫が浮気…難しい問題ね」
「もし浮気していたらイオはどうするんですか?」
「うーん、浮気されて結婚生活を続ける自信がないのだ。
でも子供達は私1人では育てられないのだ…」
「待ってください。一度本人に話を聞いてみたらどうですか?」
フォルトゥーナがそう言った。
「女性と店に入っていたということは、
もしかしたらただの女友達と会っていただけかもしれませんし、
女性と店に入っていったから離婚まで考えるのは軽率ですよ」
「うーん確かにそうですね」
「わたくしが会って質問してみます。
心の読めるわたくしの前ではどんな浮気も隠せません」
「え、心が読めるってどういうこと?」
ああ、そうだ。リンにはまだフォルトゥーナが心を読めることは、
説明していなかったな。
「まぁそれは後で説明します。
それよりみんなでイオの家に行きましょう」
そうしてイオを除いた全員で、イオの家に向かうことにした。
◆
「《転移》」
私は転移魔法でイオの家の前に来た。
するとアランさん、イオの夫が出迎えてくれた。
「あれ、みなさん、どうしたんですか?」
「イオについて聞きにきたんです」
「え、まさか、あのことがバレたんですか?」
「…何だ」
その時フォルトゥーナが失望したような顔をする。
「え? どうしたの?」
「わたくしとしては血で血を洗うもっとドロドロとしたものを期待していたのに、
真実がこれとは期待して損しました」
フォルトゥーナはやや呆れたようにそう言った。
「え、アランさんは浮気していたんじゃないですか」
「ちょっとセツナ、本人が目の前に居るのよ」
「あ…」
「浮気とはどういうことです?」
「えーと、イオが店に女性と一緒に、
あなたが入って行くところを見たと言っていて」
「女性と店に?
ああ、それは浮気でも何でもありませんよ。
イオに渡すプレゼントを選んでもらっていたんです」
「プレゼント?」
「イオの誕生日が近いからですよ」
「あ」
そういえばイオは1月が誕生日だと言っていたような気がする。
すっかり忘れていた。
「男性の僕には女性へのプレゼントはどういった物がいいか分からないので、
店員の女性にプレゼントを選んでもらったんです」
「え、でもイオは女性と一緒に店に入っていったと」
「僕が事前に頼んでおいたら、店の前で待っていてくれたんですよ」
「じゃあ浮気はイオの早とちりで…」
「僕は浮気なんて絶対しませんし、
そういう男に思われたのなら心外です」
「こ、これはすみませんでした」
私達は全員アランさんに謝った。
「でも何で冷たくしていたんですか?」
「ああ、イオからエドナさんの時の誕生日会の様子を聞いて、
あえて誕生日前に冷たくして、
後で喜ばせる作戦を聞いていたからです。
だからみんな誕生日までは冷たくしようって言っていたんです」
「ああ、なるほど。
でも誕生日が近いということはいつなんですか?」
「今日ですけど」
「きょ、今日?
すぐじゃないですか」
「ええ、もう誕生日パーティーの準備をしている最中です。
だから後はイオを呼ぶだけなんですが、
みなさんも参加しますか?」
「はい、喜んで。
あと待ってくれませんか、
私達もイオの誕生日プレゼントをすぐに買ってくるので」
それから急いで転移魔法でアアルに戻り、
イオのプレゼントを買って、それをアイテムボックスにしまい、
イオを呼びに行った。
「どうだったのだ?」
家に戻るとイオが不安げにそう聞いてきた。
「それより、イオに来てほしい場所があるんだけど、
目隠ししてほしいんですが」
「いいけど、何でなのだ?」
「まぁ見せたいものがあって」
私はイオを連れて、イオの家の前に転移する。
そうしてイオを目隠ししたまま家の中に入れる。
「「「「「「誕生日おめでとう!!」」」」」」
そうしてみんなでおめでとうと言う。
「な、何なのだ?」
「もう目隠し外していいですよ」
「え、どういうことなのだ?」
イオはびっくりしているようだ。
家にはアランさんとイオの子供達も含め、村の人も集まっていた。
「実はね。
みんながイオに冷たくしていたのは誕生日をお祝いするためです」
そうして私は種明かしをする。
「女性と店に入ったのも浮気じゃなくて、
イオの誕生日プレゼント選ぶためです」
「そ、そうだったのか、びっくりなのだ」
「お母さんいつもありがとう」
そうイオの子供達がプレゼントを持って現れる。
「ありがとうなのだ! すごく嬉しいのだ!」
イオは大喜びみたいだ。
「私達も誕生日プレゼントを用意しました」
「イオ、いつもありがとう」
私が選んだプレゼントはマグカップだ。
ガイはタオル、エドナは花、フォルトゥーナはお菓子、
リンは服をそれぞれプレゼントした。
「イオ、僕からはこれを」
そう言ってアランさんが1つの腕輪を見せる。
あ、そういえば結婚する時には、
この世界では指輪ではなく腕輪を送るんだった。
「結婚した時は貧しくて腕輪は用意してあげれなかったけど、
今日用意したんだ。
僕と結婚してくれてありがとう」
「アラン、本当にありがとうなのだ。
それと疑ってごめんなのだ!」
「別にいいよ。気にしてないから。
それよりこのケーキ君のために焼いたんだ。さぁ食べよう」
それからイオの誕生日会は大成功に終わったのだった。
その日の朝、イオがそう言った。
心なしか顔も暗かった。
「どうしたんですか?」
「最近家族が何だか冷たいのだ」
「冷たいってイオの家族が?」
「そうなのだ。
私が家に帰ってきても普段は大喜びしてくれるのに、
最近はそっけないのだ」
「確かにイオは出稼ぎでここに暮らしていて、
週に1日家に帰っているんですよね」
「家族とあまり時間が取れてないから、
家族関係が希薄になったんじゃないのかい?」
確かにリンの言う通り、
家族のために仕事を頑張っていたら、
家族と居る時間が減り、
家族関係が希薄になってしまったというのはよく聞く話だ。
「でも出稼ぎといっても週に一度は帰っているし、
そんなに寂しい想いはさせてないと思うのだ」
「うーんもう少し家族と居る時間を増やしてはどうですか?
子供達も寂しいから冷たくしているだけかもしれませんし」
「でも私は見てしまったのだ」
「何を見たんだ?」
「アランが…夫が他の女性と店に入っているところを…」
「ええー!! それって浮気ですか!?」
「だと思うのだ。私は本当にどうしたらいいのか分からないのだ。
アランは浮気するような人じゃないと思っていたのに…」
「うーん、妻の居ない間に夫が浮気…難しい問題ね」
「もし浮気していたらイオはどうするんですか?」
「うーん、浮気されて結婚生活を続ける自信がないのだ。
でも子供達は私1人では育てられないのだ…」
「待ってください。一度本人に話を聞いてみたらどうですか?」
フォルトゥーナがそう言った。
「女性と店に入っていたということは、
もしかしたらただの女友達と会っていただけかもしれませんし、
女性と店に入っていったから離婚まで考えるのは軽率ですよ」
「うーん確かにそうですね」
「わたくしが会って質問してみます。
心の読めるわたくしの前ではどんな浮気も隠せません」
「え、心が読めるってどういうこと?」
ああ、そうだ。リンにはまだフォルトゥーナが心を読めることは、
説明していなかったな。
「まぁそれは後で説明します。
それよりみんなでイオの家に行きましょう」
そうしてイオを除いた全員で、イオの家に向かうことにした。
◆
「《転移》」
私は転移魔法でイオの家の前に来た。
するとアランさん、イオの夫が出迎えてくれた。
「あれ、みなさん、どうしたんですか?」
「イオについて聞きにきたんです」
「え、まさか、あのことがバレたんですか?」
「…何だ」
その時フォルトゥーナが失望したような顔をする。
「え? どうしたの?」
「わたくしとしては血で血を洗うもっとドロドロとしたものを期待していたのに、
真実がこれとは期待して損しました」
フォルトゥーナはやや呆れたようにそう言った。
「え、アランさんは浮気していたんじゃないですか」
「ちょっとセツナ、本人が目の前に居るのよ」
「あ…」
「浮気とはどういうことです?」
「えーと、イオが店に女性と一緒に、
あなたが入って行くところを見たと言っていて」
「女性と店に?
ああ、それは浮気でも何でもありませんよ。
イオに渡すプレゼントを選んでもらっていたんです」
「プレゼント?」
「イオの誕生日が近いからですよ」
「あ」
そういえばイオは1月が誕生日だと言っていたような気がする。
すっかり忘れていた。
「男性の僕には女性へのプレゼントはどういった物がいいか分からないので、
店員の女性にプレゼントを選んでもらったんです」
「え、でもイオは女性と一緒に店に入っていったと」
「僕が事前に頼んでおいたら、店の前で待っていてくれたんですよ」
「じゃあ浮気はイオの早とちりで…」
「僕は浮気なんて絶対しませんし、
そういう男に思われたのなら心外です」
「こ、これはすみませんでした」
私達は全員アランさんに謝った。
「でも何で冷たくしていたんですか?」
「ああ、イオからエドナさんの時の誕生日会の様子を聞いて、
あえて誕生日前に冷たくして、
後で喜ばせる作戦を聞いていたからです。
だからみんな誕生日までは冷たくしようって言っていたんです」
「ああ、なるほど。
でも誕生日が近いということはいつなんですか?」
「今日ですけど」
「きょ、今日?
すぐじゃないですか」
「ええ、もう誕生日パーティーの準備をしている最中です。
だから後はイオを呼ぶだけなんですが、
みなさんも参加しますか?」
「はい、喜んで。
あと待ってくれませんか、
私達もイオの誕生日プレゼントをすぐに買ってくるので」
それから急いで転移魔法でアアルに戻り、
イオのプレゼントを買って、それをアイテムボックスにしまい、
イオを呼びに行った。
「どうだったのだ?」
家に戻るとイオが不安げにそう聞いてきた。
「それより、イオに来てほしい場所があるんだけど、
目隠ししてほしいんですが」
「いいけど、何でなのだ?」
「まぁ見せたいものがあって」
私はイオを連れて、イオの家の前に転移する。
そうしてイオを目隠ししたまま家の中に入れる。
「「「「「「誕生日おめでとう!!」」」」」」
そうしてみんなでおめでとうと言う。
「な、何なのだ?」
「もう目隠し外していいですよ」
「え、どういうことなのだ?」
イオはびっくりしているようだ。
家にはアランさんとイオの子供達も含め、村の人も集まっていた。
「実はね。
みんながイオに冷たくしていたのは誕生日をお祝いするためです」
そうして私は種明かしをする。
「女性と店に入ったのも浮気じゃなくて、
イオの誕生日プレゼント選ぶためです」
「そ、そうだったのか、びっくりなのだ」
「お母さんいつもありがとう」
そうイオの子供達がプレゼントを持って現れる。
「ありがとうなのだ! すごく嬉しいのだ!」
イオは大喜びみたいだ。
「私達も誕生日プレゼントを用意しました」
「イオ、いつもありがとう」
私が選んだプレゼントはマグカップだ。
ガイはタオル、エドナは花、フォルトゥーナはお菓子、
リンは服をそれぞれプレゼントした。
「イオ、僕からはこれを」
そう言ってアランさんが1つの腕輪を見せる。
あ、そういえば結婚する時には、
この世界では指輪ではなく腕輪を送るんだった。
「結婚した時は貧しくて腕輪は用意してあげれなかったけど、
今日用意したんだ。
僕と結婚してくれてありがとう」
「アラン、本当にありがとうなのだ。
それと疑ってごめんなのだ!」
「別にいいよ。気にしてないから。
それよりこのケーキ君のために焼いたんだ。さぁ食べよう」
それからイオの誕生日会は大成功に終わったのだった。
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