上 下
220 / 315
第4章起業しましょう。そうしましょう

189・女たらし

しおりを挟む
その日いつものように、
『金色の黎明』のメンバーと一緒に、
ギルドに入ると、何やら女の子がたくさん集まっていた。

「どうしたんですか、何か騒がしいですが」
「ああラザルス目当ての女の子が出待ちしているんや」

そう冒険者のアニタが言った。
アニタとは以前、一緒に依頼を受けたことがあったので、
顔見知りとなっている。

「ラザルス?」
「最近アアルに来た冒険者のチームのリーダーで、
かなりのイケメンで、
ちまたでは爽やかイケメン貴公子って呼ばれているんや」
「ふぅん、そうですか」

私は特にイケメンには興味が無いので、
その時は何とも思わなかった。

「それよりアンタに聞きたいことがあるんやけどええか?」
「何ですか?」
「セツナ」

その時私とアニタの前にフォルトゥーナが出る。

「この女を信用してはいけません」
「え、何で?」
「いいですから聞きなさい。
たまには私の忠告に従った方がいいですよ」

そうフォルトゥーナが言った時だった。
その時きゃーと女の子達が騒ぎ出した。
ギルドに誰かが入ってきたのだ。

「噂をすれば影やね。
あれがラザルスや」

あれがラザルスか、確かにイケメンだな。
絶世の美少年である地獄神には適わないけど。
髪は腰まである金髪で後ろで髪をくくっていた。
目の色は緑だった。
背もすらりと高くてまるでおとぎ話に出てくる王子様みたいだった。

「やぁ、みなさんごきげんよう」
「きゃー!」
「かっこいい!」

ラザルスの言葉に出待ちしていた女の子は黄色い歓声を上げる。
ラザルスはギルドの中に入ると何故か私達の方に真っ直ぐ来て、
フォルトゥーナの前で止まった。

「やぁ、君がフォルトゥーナだね。
どうか僕のチームに入ってくれないかい?」
「わたくしがですか?」
「ああ、君のような回復魔法の使い手は是非とも欲しいからね」

そう言うとラザルスはウインクをした。
するとそれを見た女の子がきゃーとまた歓声を上げる。
中には興奮しすぎて倒れる子も居た。

「どうだい、僕のチームに入る気になっただろう?」
「醜いですね」
「は?」

フォルトゥーナは汚物でも見るかのような目でラザルスを見た。

「ああ、目が見えにくいってことかな。
確かに僕のようなイケメンを目にしたらそうなるのも無理はないけど」
「違います。醜悪さを意味する醜いと言ったんです。
あなたの心は醜いです。
ていうか自分で自分のことをイケメンって言う時点で気持ち悪いです」
「はは、耳が悪くなったのかな。
今気持ち悪いって聞こえたんだけど…?」
「はい、あなたは自意識過剰で気持ち悪いです。
仲間になる件ですが、きっぱりお断りします。
あなたのような女たらしと居たら、
いつ犯されるか分かりませんし」
「おい、フォルトゥーナ言い過ぎだろ!
こいつぷるぷるしてるぞ!」

ガイが焦ったようにそう言った。

「い、言わせておけばこのアバズレが!
女のくせに生意気なんだよ!」

ラザルスは怒ってフォルトゥーナの首元を掴んだ。

「僕が醜いだと!?
ふざけたことを言うな!
僕は美しいんだ。だから女はみんな僕に従えばいいんだよ!」
「ラザルスさん、落ち着いてください。
みんな見てますよ!」

その時1人の少年がラザルスとフォルトゥーナの間に入って仲裁した。
少年の言葉で我に返ったのか、ラザルスが手を離した。

「チッ、僕は家に戻る。
エディ。お前はいつものように適当に依頼を選んでおけ」
「はい、分かりました」

そう言うとラザルスはギルドを去って行った。

「あのラザルスさんが申し訳ありませんでした!」

そう言うと少年が頭を下げた。

「ん? あなたはそもそも誰ですか?」
「僕はラザルスさんと同じチームに入っているエディと言います」

私は改めてエディを見る。
髪は焦げ茶色に近い短髪で、目の色は水色だった。
容姿は可愛らしく、年は12、3歳ぐらいに見えた。
背中には大きなリュックを背負っており、
頭にはバンダナを巻いていた。

「そうですか、それよりフォルトゥーナ。
あんな言い方したらダメですよ。傷つくでしょ」
「あれぐらい言わないとしつこく付きまとってきそうだったので」

私が言うとフォルトゥーナはしれっとそう返した。

「それにあの男、中身は最低のゲス野郎ですよ。
頭の中は性欲まみれで、
女のことは性欲を解消する道具としか思っていません」
「え、何であなた達がそのことを知っているんですが?」
「えっとフォルトゥーナの言うとおりなんですか?」
「はい、ラザルスさんは女たらしなんです。
僕も困っているんです」
「その話詳しく聞きたいです。
聞かせてもらえませんか」
「はい、分かりました」

そうしてギルドにある酒場の方に移動した。
そしてテーブル席に座る。

「それでラザルスって本当に女たらしなんですか?」
「はい、ラザルスさんの女好きには困ったものです。
ファンの女の子に手を出すことも多くて、
1回抱いたら、やり捨ててしまうこともよくあるんです」
「うわ最低ですね」

人は見かけにはよらないとは言うが、
あのイケメンが女たらしと聞いて驚いた。

「だからいつも僕が代わりに謝ったりしているんですが、
ラザルスさんが、手を出した女性の中には、
子供を孕んでしまった人も居るんです。
でもラザルスさんは責任を取りたくないって言って、
孕んだのは全部その子のせいにして逃げたんです」
「最低のクズ野郎ね」

エドナが吐き捨てるようにそう言った。

「だからラザルスさんの代わりに、
僕が毎月養育費を払っているんです」
「はぁ!? それ変ですよ!
何であなたが代わりに払うんですか。
ラザルスが払えばいいじゃないですか!」
「ラザルスさんが払いたくないって言うから、
僕が代わりに払っているんです」
「えっとそれ何人分ですか?」
「4人分です。
1人につき銀貨10枚払っています」

1人に10万円も!?
それも自分のポケットマネーで?
絶対おかしいだろ!!

「それと実は僕達のチームには女性が3人入っているんですが、
実はみんなラザルスさんと関係を持っています」
「え、3股ってこと?」
「はい、でもみんなラザルスさんが3股をしていることや、
隠し子がいることは知らなくて…」
「はぁ? 何で知らないんですか?
同じチームに居たら、
すぐ恋人だってバレそうな気もしますが」
「自分が恋人っていうことは秘密ってことになってるからです。
だからみんな知らないんです」
「ああそういうこと、それならもうばらしたら?」
「いえ、僕の口からはとても言えません…」

確かにあなたの彼氏は3股してますよーって言いにくいよな。
でも納得出来ない。何でエディが犠牲にならないといけないんだ。

「あのですね。そんなクズとは縁を切った方がいいですよ」
「でも僕がいるチームは僕にとって最高の場所なんです。
だから大丈夫です。それじゃあまた」

そう言ってエディは去っていった。

「あれはもうだめですね。
骨の髄まで洗脳されてます」

フォルトゥーナがそう言った。

「助けてあげたいけどどうしたらいいかな」
「うーん、思ったのだが、
セツナが関わったんだから、
善人のあの子は放っておいても幸せになると思うのだ」
「イオ。それはデマって言いましたよね…?」

禍福の女王なんてただのデマだ。
私が関わっても幸せになることなんてない。

と思っていたがまさかあんなことになるなんて、
思ってもみなかったのだった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

あなたの冒険者資格は失効しました〜最強パーティが最下級から成り上がるお話

此寺 美津己
ファンタジー
祖国が田舎だってわかってた。 電車もねえ、駅もねえ、騎士さま馬でぐーるぐる。 信号ねえ、あるわけねえ、おらの国には電気がねえ。 そうだ。西へ行こう。 西域の大国、別名冒険者の国ランゴバルドへ、ぼくらはやってきた。迷宮内で知り合った仲間は強者ぞろい。 ここで、ぼくらは名をあげる! ランゴバルドを皮切りに世界中を冒険してまわるんだ。 と、思ってた時期がぼくにもありました…

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ユウ
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

二度目の転生は傍若無人に~元勇者ですが二度目『も』クズ貴族に囲まれていてイラッとしたのでチート無双します~

K1-M
ファンタジー
元日本人の俺は転生勇者として異世界で魔王との戦闘の果てに仲間の裏切りにより命を落とす。 次に目を覚ますと再び赤ちゃんになり二度目の転生をしていた。 生まれた先は下級貴族の五男坊。周りは貴族至上主義、人間族至上主義のクズばかり。 …決めた。最悪、この国をぶっ壊す覚悟で元勇者の力を使おう…と。 ※『小説家になろう』様、『カクヨム』様にも掲載しています。

辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します

潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる! トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。 領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。 アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。 だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう 完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。 果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!? これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。

処理中です...