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第3章謎の少女とダンジョン革命
179・伯爵夫人の誕生日大作戦①
しおりを挟む「はぁ…」
「どうしたんですか?」
朝起きてキッチンに向かうとエドナがため息をついていた。
「毎年この時期は本当に憂鬱になるわ」
「何でですか?」
「何でって今日は鎮魂祭だからよ」
ああ、地獄神と人間に殺されたアデルに、
許しを乞う祭りだった気がする。
確か丸一日絶食しないといけないんだったっけ。
鎮魂祭は年の終わりには必ずあるので、
この時期はみんな憂鬱になる。
「ああ、本当に嫌になるわ」
確かに食べることが生きがいのエドナからすれば、
食べることが出来ないのは辛いだろう。
「確かに何も食べないのは人間にはきつそうだな」
「確かにガイの言うとおりですね。
エドナさん本当に食いしん坊ですから」
「何も食べたらいけないなんてもう拷問に近いわよ。
嫌になるわ」
「まぁ今日だけですし、
終わったらおいしいお菓子でも食べましょう」
「そうね。一応言っておくけど今日は何も食べたらダメよ」
「食べたらどうなるんですか?」
「恐ろしい天罰が来るっていうわ。
水ぐらいなら飲んでもいいけど、
紅茶とかコーヒーとかはダメだからね」
「なるほど気をつけます」
「それと今日は仕事は休みましょう。
働いたらお腹がすくから」
「確かに仕事したら余計にお腹がすきそうですね」
「今日は私も家でゆっくりするわ」
「そうですか、私もそうしましょうか」
「おい、その前に税金払わないとヤバイんじゃないのか」
「あ! そうでした」
税金は今日までに必ず払わないといけないのだ。
この世界では15歳で成人なので私には納税義務がある。
すっかり忘れていた。
「あらあら、忘れていたんですか?」
そう言ってフォルトゥーナが現れる。
「えーとどれぐらい納税しないといけないんでしたっけ?」
「ああ、それならもう計算して代わりに払っておきましたよ」
「え?」
「ええ、わたくしが立て替えておきました」
「え、ありがとうございます。
助かりました」
「じゃあ後で払ってくださいね」
「今すぐ銀行に行ってお金を出してきます」
「そんなに急がなくて大丈夫ですよ」
「いいや、お金のことはちゃんとしないとダメです。
ちょっと銀行に行ってきます」
そうして家を出て私は銀行に行くことにした。
◆
「ふぅ、無事お金がおろせて良かったです」
今日は銀行がやっていて良かった。
おかげでフォルトゥーナにお金を払うことが出来る。
「しかしどの店も今日は休みですね」
「当たり前だろ。今日は年末なんだから」
今日は12月31日だ。
この日は鎮魂祭のため何も食べてはダメなので、
どの飲食業の店も休んでいた。
この日から来年の1月3日まで休みをとる店が多かった。
「さすがに出歩いている人も少ないですね。ん?」
その時見知った人を見つけた。
「あれオリヴァーさんじゃないですか」
「ああ、セレンさん、こんにちは」
いや、私の名前はセツナなんだけど、
一体いつになったら名前覚えてくれるんだろう。
「どうしたんですか?」
「いや、やってる店がないか捜しているんだけど、
どこも閉まっていてね」
「何で捜しているんですか」
「実は今日はマティルダの誕生日なんだ」
「え、伯爵夫人の?」
「実はうっかりしていて、誕生日のことをすっかり忘れていたんだ。
で、今朝思い出して、慌てて開いてる店がないか捜していたんだが、
年末だからどこも閉まっていて困っているんだ。
おかげでケーキも誕生日プレゼントも何も用意出来ていないんだ」
「それは困りましたね」
「だから何とかしてくれないかい」
「え、何で私が」
「セレンさんは禍福の女王なんだろう。
どうか人助けと思って、プレゼントとケーキを用意してくれないかい」
「いや、禍福の女王っていうのはデマですから」
「お願いだ。このままだと夫婦の間に亀裂が入る。
どうか助けてくれ」
「うーん、分かりました。
仲間に相談してみます」
そうして依頼を受けることとなったのだった。
「お前って年末でもトラブルに巻き込まれるんだな」
確かにガイの言うとおりだなと思ったが、
困っている人は放っておけない私だった。
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