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第3章謎の少女とダンジョン革命

171・精霊の指輪

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「ちょっとアイテムボックスの整理をしよう」

求婚騒動が起こった日の晩、
私はアイテムボックスを開いてみた。
アイテムボックスの中は風化がしないし、容量は無制限なので、
ついつい色々買ってしまったが、
いらないものも結構あるので、その整理をすることにした。

「ん、これは」

私はアイテムボックスから精霊の指輪を取り出す。
施設騒動の時の報酬としてもらったものだ。
アイテムボックスに入れて以来ずっと存在を忘れていた。

「つけてみようか」

そうして精霊の指輪をつけると、
部屋に飾っている花の上に半透明な小人が見えた。

「もしもし?」
「え、私のことが見えるの?」
「もしかしてあなたが精霊さんですか」
「そうよ。あなたはセツナさんよね」
「え、なんで私の名前を知っているんですか?」
「だってあなた私達精霊の中では有名人よ。
森を焼き払った人ってことで」
「うっ、それはすみませんでした…」

私はこの世界に来たばかりの時、
間違って森の一部を焼いたことがある。
すぐに消火して事なきを得たが、
この子はその時のことを言っているのだろう。

「まぁ別にいいわ。
でも私達の姿が見えるなら助けてほしい人がいるの」
「助けてほしい人?」
「カシス村って知ってる?」

そう言われて思い出すのに時間がかかった。
ああ、そういえばせっかく水と食料を届けたのに、
女だからと罵倒された村だったと思う。

「そこに助けてほしい人がいるの。
名前はネルって言って、10~12歳ぐらいの女の子で、
髪は金髪よ。片足が悪くていつも引きずっているわ」
「何で私に頼むんですか?」
「何でかというとあの子は特別な子だからよ。
存在しているだけで私達精霊を助けているわ。
それに他の人間に頼もうにも、
精霊である私達の姿は大多数の人間には見えないのよ。
だからあなたに頼むしかないの…」
「そういう事情なら分かりましたけど、
いきなり行っても、
カシス村の人が受け入れてくれるとは思えませんし、
助けたら人さらいだと言われるんじゃないでしょうか?」
「いいえ、受け入れるわ。
近いうちにあの村から依頼が来るからそれを受けてちょうだい。
あなたしかネルを助けられる人はいないの。
だから頼んだわ」

そう言うと精霊は消えたのだった。

そして三日後、
『金色の黎明』のメンバーと一緒にギルドに行くと、
ギルドマスターのリーアムさんと、
元ギルドマスターのアレックさんが居た。

「何があったんですか?」
「カシス村の近くで色違いの魔物が見つかった」

そう深刻な顔でギルドマスターは言った。

「あのすみません。色違いの魔物って何ですか?」

そう聞くと周囲から驚きの声が上がった。

「そうだな。色違いの魔物というのは魔物の突然変異種のことだ」

アレックさん曰く色違いの魔物というのは、
通常にはない髪や肌の色をしている魔物のことだ。
通常魔物は例えばゴブリンだったら、茶色い肌をしているけど、
まれに違う肌のゴブリンも現れる。
それが色違いの魔物らしい。
色違いの魔物の恐ろしい点は通常の魔物と比べてかなり強いことと、
人間には劣るが知能があり、
他の魔物を操って町や村を襲撃することがあるらしい。

今回目撃されたのはハーピーという、
女性の顔と胸を持ち、手が翼で鳥の下半身を持つという魔物だ。
通常のハーピーはランクはCランクで、
谷などに生息し、群れで襲いにくるという魔物だ。
そのハーピーの色違いがカシス村の近くで見つかったのだ。
村で起こる被害を考えると早く討伐した方がいいが、
色違いの魔物は格段に強い。
倒すなら個人ではなく、
チームで倒すことになるだろうとアレックさんは言った。

「それでギルドでは、
色違いの魔物を倒すための討伐隊を組もうと思っている。
そこで嬢ちゃんに頼みがある。
魔族を倒す時に使った補助魔法を俺達にかけて欲しい。
それと転移魔法で俺達を村の近くに転移させてくれ」
「分かりました」

今までも他の冒険者に頼まれたら、
補助魔法はかけていたのでそれに異論は無い。

「じゃあ、作戦を説明する。
アアルから転移魔法でカシス村まで向かい、
ハーピーの巣に移動する。
そして色違いの魔物を討伐する」
「報酬は?」
「1人銀貨30枚だ
討伐の証明には魔石を要求するから気をつけろ」

日本円で30万ぐらいか、結構高いな。

「じゃあ、討伐隊を決める。
まず嬢ちゃんとエドナ、イオ、
お前達3人が今回の作戦の要だ。
お前らには魔物を殲滅してほしい」
「分かりました」
「そしてフォルトゥーナは回復役に回れ」
「了解です」
「そして次は…誰か立候補する奴はいるか」
「はい、うちも立候補するで」
「あ、俺も」

その場に居た1人の黒髪の女性と、
トッドがそう言った。

「分かったじゃあアニタとトッドは補佐に回れ」
「分かった」
「了解やで」
「俺とさっき選んだ6人と俺でハーピーの討伐に向かう。
明日の朝、7時にギルドの前に集合だ。遅刻するなよ」
「あの質問があるんですけどいいですか?」

そう私はアレックさんにそう言う。

「俺とって言いましたよね。
アレックさんも戦うんですか?」
「ああ、戦うぞ。これが冒険者に復職した初めての依頼になるだろう」
「それとこの依頼って誰が持ってきたんですか?」
「ああ、ハーピーに気がついたカシス村の奴が持ってきたらしい」
「…あの村はとても冒険者を受け入れてくれるとは思えないんですけど」

確か前に行った時よそ者は入れないと聞いた気がする。
それにあの偏屈な村長が村に人を受け入れるとは思えない。

「確かにあの村はよそ者は入れないが、事態が事態だ。
それに色違いの魔物の事を伝えたのはカシス村の村人だ。
俺達に何とかしてくれと依頼しておいて、
村に受け入れないというのもおかしな話だからな。
今回ばかりは特例として受け入れてくれるだろう」
「分かりました」
「では、質問がなければこれで解散だ。
呼ばれた6人は明日必ずギルドに来るように」

そうしてその場は解散となった。

「しかし色違いの魔物ですか、どれぐらい強いんですか?」
「そうね。村の一つぐらいだったら確実に滅ぶわね」
「そんなにヤバイんですか」
「色違いの魔物は数は少ないけど、
一度現れれば厄介な魔物よ。
私がかつて戦ったアークデーモンも色違いの魔物だったし、
あれはもう倒せたのが奇跡といってもよかったぐらいよ」

そうして私は色違いの魔物の討伐作戦に参加するのだった。

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