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第3章謎の少女とダンジョン革命

170・求婚

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「ああ、セツナかい、ちょうど良いところに来た」

いつも通り『金色の黎明』のメンバーと一緒に、
ギルドに入ると受付嬢のイザベラがそう言った。

「そう言うことは何かあったんですか」
「いやね、新しいギルドマスターが来たんだよ」

ああ、そういえば前のギルドマスターのアレックさんは、
ギルドマスターを辞めて、
冒険者に復職するって言っていたな。
そして新しいギルドマスターが決まったのだろう。

「そうだったんですか」
「それで新しいギルドマスターがセツナと会いたいってさ」
「え、何でですか?」
「さぁ何だか分からないけど、
とにかく会えば分かるよ」

そうして私達は奥の部屋に行くことにした。
そこには人形が棚いっぱいに飾られていた。
そして椅子には人の形をした何かが白い布をかぶっていた。

「やぁセツナさんだね」

そう言ったのは青い髪をした1人の男性だった。
30代ぐらいの男性で、メガネをかかけていた。

「あなたが新しいギルドマスターですか?」
「ああ、リーアム・エメリックと言う。
よろしくね」
「ん? 名字があるということは貴族ですか?」
「そうなるね。まぁ貴族といっても三男だから、
家を継ぐことは出来ないけどね。
別に貴族だからと堅苦しくする必要は無いよ」
「この人形ってあなたの?」

エドナがそう聞いた。

「ああ、私は人形や機械が大好きでね。
集めるのが趣味なんだ」
「それで私に用というのは?」
「まずこれを見てほしい」

そう言うとリーアムさんは白い布を取った。
そこにはラプラスと、
同じ顔をしたアンドロイドがそこに座って居た。

「これはラプラス?」
「君達がダンジョンの管理人と呼んでる個体と、
同一のものだと思う。
とある遺跡の中で見つかったものだよ。
まぁ見ての通り動かないけどね」
「そうなんですか」
「見ての通り美しいだろう。
こんなに美しいのに機械だから驚きだよ。
まさに僕にとっての理想の女性だ」
「え? 理想の女性?」
「僕は昔、美人局に引っかかってね。
落ち込んでいる時にこれを見つけたんだ」

美人局って、確か付き合って肉体関係をもった彼女に、
実は他に男がいて、
何、人の女性に手を出しているんだ。慰謝料払えって感じで、
脅して金品を奪い取る詐欺行為だ。
ちなみにびじんきょくではなく、つつもたせと読む。

「そして気がついたんだ。
機械こそ、僕の伴侶にふさわしいと」
「え、機械が?」
「そう人間と違って機械なら絶対に裏切らない。
機械と僕は結婚したいと思っているんだよ。
だからラプラスに会わせてくれないかい?」

え、機械と結婚したいって、何かすごいこと言うなこの人。

「うーん、分かりました。
そういうことなら会わせでもいいです」
「本当かい、ありがとう!」

そうしてみんなで白のダンジョンに転移し、中に入った。

「セツナ来てくれたのね!」

入るとさっそくラプラスが現れた。

「この人がラプラスだね」
「そうです」
「ラプラスさん、僕と結婚してください!」
「は?」

ラプラスはリーアムさんの突然の告白に驚く。

「一体どういうことなの?」
「実は…」

私はラプラスに事情を説明する。

「人間より機械が良いって変わってるわね」
「あなたは本当に理想の女性だ!
どうか僕と一緒になってください!」
「それは無理よ。
だって私ダンジョンの外には出られないし、
そもそも体の構造だって人間と違うのよ。
結婚なんて無理よ」
「ああ、確かに子供とか作れないですしね」
「いいえ、子供は作れることは作れるわ。
妊娠はしないけど行為そのものなら出来ることは出来るし、
まぁ卵子を生み出すことは出来ないから、
第三者に卵子を提供してもらって、
それを受精させることは出来るわ。
まぁ体内では育てられないから、
試験管で育てることになるけど」
「あ、そうなんですか」
「ハッ、しまった。
妊娠出来ないって言っておけば断る理由になったのに…」
「断る? 何でだい?」
「いやだって私は他に好きな人いるし…」

え、それは初耳だ。
もしかしてラプラスが好きな人は、
ダンジョンによく来る冒険者だろうか。

「好きな人は誰のことなんだ!?」
「えっとまぁ秘密よ…」

何故か私の方を見てラプラスがそう言った。

「お願いだ!
君は本当に僕が探し求めていた理想の女性だ!
だから結婚してくれ!!」
「嫌よ」
「そんなこと言わずにお願いだ!」
「ていうか機械と結婚なんて家族は嫌がるんじゃないの?」
「ああ、僕の性癖については家族はもう諦めているから大丈夫だ。
だから君が嫁に来ても何の問題もないんだ!!」
「………」

ラプラスは考え込んだように黙り込んだのだった。





私、ラプラスは久しく忘れていた感情を思い出していた。
一万年も生きてきて、久しく忘れていた感情だった。

この一万年間は私はずっと自分には感情がないと言い聞かせてきた。
そうでもしないと耐えられなかった。
だから自分には感情がないと思って生きてきていた。

しかし今本当に思いだした。
胸の奥からあふれ出る思いを、心の底から出るこの気持ちを。

「気持ち悪いってこういう感情だったのね」

そう心底思った私だった。





「気持ち悪いって、え?」

私、セツナは思わずそう聞き返す。
突然黙っていたラプラスが気持ち悪いと言ったのだから。

「あなたみたいな人は生理的に無理よ」

そう言うとラプラスは消えた。

「ああ、なんてつれないんだ!
そういうところも素敵だ!」

リーアムさんはそう感動したように言った。

「えっとこれで良かったんでしょうか」

そう私が言うとフォルトゥーナが言った。

「まぁ良かったんじゃないですか、
自分の理想とした人に会えたんですから、
この三角関係の恋がどうなるのか楽しみですね」

そうフォルトゥーナが言った。

「三角関係?」
「あー気がついていないならいいです。
しかしラプラスもかわいそうですね。
恋の相手に全く気がつかれてないんですから」
「うーん、でも何でラプラスに好かれている人は、
気がついてないんですか?」
「「「はぁ…」」」

そう言うとガイ、エドナ、フォルトゥーナにため息をつかれた。

「何でため息をつくんですか?」
「「「はぁ…」」」
「いや、だからその意味深なため息は一体何ですか!?」

そう聞くが何故か仲間達に、
深いため息をつかれた私だった。
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