贖罪のセツナ~このままだと地獄行きなので、異世界で善行積みます~

鐘雪アスマ

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第3章謎の少女とダンジョン革命

167・呪いの指輪

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その日、私達は伯爵夫人に呼び出されていた。

「どうしたんですか?」
「実はお前に特別功労賞が贈られることになった」
「特別功労賞?」
「町の発展に大きく貢献した人物に贈られる賞だ」
「え、私なんかで良いんですか?」
「ああ、会議でも満場一致で決まった。
だから受け取ってくれ」
「良いですけど、何日ですか?」
「12月26日だ。まぁあと二週間程だな。
私もこの賞はお前に贈られるべきだと思っている」
「何でですか?」
「何でって、お前がこの町にしたことはとんでもないことだぞ。
まず襲ってきた魔族の討伐に、
サーモンド男爵の逮捕に貢献したり、
異世界料理を町に広めたり、
そしてダンジョンを変えた。これが一番大きいな」
「そんなにすごいことですか?」
「おい…ここまで多くの人の人生に、
影響を与えておいてそれはないだろう」
「そうよ。あなたがしたことはすごいことよ」

伯爵夫人とエドナは呆れたようにそう言った。

「お前は本当に天然だな。
正直お前がダンジョンを変えてくれたおかげで、
観光客も増えたし、良いことばかりだ。
だからくれぐれも他の町に拠点を移すなよ」
「そんなことしませんって」
「あと頼みたいことがあるんだがいいか?」
「何ですか?」
「実は私の友人に呪われているのかと思う程に、
不運なことばかり起こる人がいてな。
お前ならその原因が分かるんじゃないのかと思ってな」
「私がですか?」
「ああ、これはお前にしか頼めないことだ。
だから頼みたい」
「分かりました。どれだけ力になれるか分かりませんが、
出来る限りのことはやってみます」

そうして話を聞いた私達は早速その人の屋敷に向かった。





「ここが例の屋敷ですか」
「何か暗いわね」

その貴族がいる屋敷は何だかどんよりしていた。
私はその屋敷のドアをノックする

「すみませーん。
マティルダ・フィールディングさんの紹介で来たセツナです」
「ああ、あなたがセツナさんですか」

そう言って現れたのは一人の女性だった。
年は30代後半ぐらいで、
見るからにやつれていて、痩せていた。

「話しは聞いています。
どうぞ中に入ってください」

そうして中に入ると、中もなんだかどんよりしていた。
私達は客室らしき部屋に通されるとソファに腰掛けた。

「呪われていると聞きましたが、
何があったんですか」
「実は私には夫が居るのですが、
外に愛人を作り、駆け落ちしてしまいました」
「うわ、酷い話しですね」
「それと父が正体不明の難病になってしまって、
寝たきりになってしまいました」
「お医者さんには見せたんですか?」
「見せましたけど、
原因が全く分からないとさじを投げてしまいました。
そして私には息子が居るのですが、
最近夜になると暴れるようになってしまって、
しかも本人は暴れている間の記憶が無いみたいなのです」
「それは大変ですね」
「その暴れている時の様子が…何だか別人みたいで、
何かに取り憑かれているんじゃないかと思うんです」
「そうですか…」
「そして私もここ最近不幸だと思うことが連続して起きていて、
何かに呪われているんじゃないかと思うんです」
「呪い…ね」
「一週間のうちにこんな出来事が起きるなんて変ですよね」
「え、もしかしてさっきの出来事は、
全部一週間のうちに起こった出来事なんですか?」
「そうです。立て続けにこんな不運なことが起きるなんて変ですよね。
だから誰かに呪われているんじゃないかと思うんです」
「分かりました。
じゃあ、呪いの正体を探ってみます。
では《鑑定》」

【グウィネス・ソロムコ】
【年齢】39才 【種族】人間 【属性】水
【職業】貴族
【称号】
【レベル】3
【体力】213/213 【魔力】165/165
【筋力】F 【防御力】F 【精神力】C
【判断力】C 【器用さ】B 【知性】B 【魅了】C
【状態】呪怨
【カルマ値】108
【スキル】

状態が呪怨になっている。
呪怨なんだ?

【呪怨】呪われている状態。

「呪怨…?
確かに呪われているみたいですね」
「やっぱりそうですよね。それで誰が私を呪っているんですか!?」
「誰かに恨まれるような心当たりはありますか?」
「え? そんなのありませんよ」
「でも現に呪われていますよね。
貴族ということで妬まれることはあると思います」

フォルトゥーナの指摘は最もだった。
確かに妬んだ誰かが呪いをかけてもおかしくない。

「うーん、恨まれる心当たりがないなら、何だろうな」
「もしかしたら人では無く、物かもしれません」
「フォルトゥーナ、どういうこと?」
「呪いが込められた呪物を手に入れた場合でも、
呪われる場合があります」
「あ、そういえば不幸なことが起きる前に、
美術館でルビーの指輪を買いました」
「それ見せてもらえますか!?」

早速指輪を見せてもらった。
指輪自体は大粒のルビーが入った指輪だった。

「《鑑定》」

【呪怨の指輪】
呪いの力が込められた指輪。
所有者とその周囲にいる人物に状態異常・呪怨を付加する。
破壊は難しく、
破壊すれば周囲3キロに呪いの力が放たれる。

「やっぱりそうだったか。
やっぱりこれ呪われているみたいです」
「え、これがですか?」
「しかも破壊すれば周囲に呪いの力が放たれるみたいです」
「え、じゃあ、どうすれば…」
「みんなどうしたらいいと思う」
「遠くの場所に捨てたら?」
「エドナ、それは無理です。
多分離しても呪いはかかったままだと思います」
「誰もいない場所で破壊するのはどうなのだ?」
「イオ、多分人気のない場所で破壊しても、
破壊した私達に呪いが降りかかると思います」
「思ったんですが、
所有者が変われば呪いのターゲットも変わるのでは?」
「フォルトゥーナ、それだと他の人が不幸になりますよ。
うーん、一体どうしたら」

その時私はひらめいた。
そうだ。あれがあるじゃないか。

「ちょっと失礼します!」
「え、セツナ、どこに行くの?」

私は指輪を持って屋敷を出ると、周囲に誰も居ないことを確認すると、
例のスイッチを取り出した。
このスイッチは地獄神に貰ったもので、
押せば3秒でベアトリクスさんが来てくれるものだ。

「えい」
「どうかしましたか?」

建物の影からベアトリクスさんは現れた。

「本当に来てくれましたね…」
「あの今仕事が山積みになっているので、
要件があるなら早くお願いします」
「この呪いの指輪を手に入れて不幸になった人がいるんですが、
どうしたらいいでしょうか?」

私はベアトリクスさんに指輪を見せた。

「ああ、それなら博物館や美術館に納めるといいですよ」
「え、そんなことをしたらお客さんが不幸になりませんか?」
「いいえ、この指輪というのは所有者を呪うという効果があります。
美術館では所有者がハッキリしていないので、
呪いの効果は発揮しないでしょう」
「ありがとうございます。ベアトリクスさん」
「ベアでいいですよ」
「じゃあベアさんって呼びますね」
「はい、それにしても呪いの指輪を手に入れるとは、
あなたのトラブル体質はピカイチですね」
「それ褒めてます?」
「褒めてますよ。
あ、それとこれ渡しておきます」

そう言うとベアさんは2つの指輪を渡した。

「エドナに魔力供給する指輪を改良してみました。
これを付けているだけで、
自動的にエドナにあなたの魔力が行き渡りますので、
いちいち魔力供給する必要は無くなるでしょう。
ちなみにどれだけ離れた場所に居ても魔力を届けてくれます」
「おお、それは便利ですね」

エドナは1度死んで私が生き返らせたので、
定期的に私の魔力を与えないといけないのだ。
いちいち魔力を与えるのは面倒だと思っていたが、
これがあれば全部自動でやってくれるのか、
良い物をもらった。

「ありがとうございます」
「それでは用が済んだのでこれで失礼しますね」

そう言ってベアさんは消えた。

その後は私は事情を話し、
呪いの指輪はそれを買った美術館に寄贈することになった。
指輪を手放したおかげで、
グウィネスさんのお父さんは元気になり、
息子さんも暴れることは無くなったみたいだ。
ちなみに駆け落ちしたグウィネスさんの旦那さんは、
愛人に騙されて一文無しになって泣きついてきたらしいが、
グウィネスさんは怒り心頭で家から追い出したらしい。
まぁ騙されていたとはいえ浮気することを選んだのは、
本人だから、まぁ自業自得だろう。
ちなみに指輪を寄贈した美術館には、
呪いの指輪のことを説明しておいたので、
今後は誰にも売らないと約束してくれた。
というか所有者が不幸になる呪いの指輪ということを、
美術館が売り文句にしたので、
呪いの指輪を見にくる観光客が少し増えたのだった。

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