贖罪のセツナ~このままだと地獄行きなので、異世界で善行積みます~

鐘雪アスマ

文字の大きさ
上 下
166 / 326
第3章謎の少女とダンジョン革命

137・身の危険①

しおりを挟む
「突然だがかくまわれてくれないか?」

ある日、突然私達『金色の黎明』のメンバーは、
伯爵夫人に呼び出された。
そして開口一番そう言われた。

「え、何ですか」
「そうだ。ちょっときな臭い噂を聞いてな。
しばらく匿われて欲しい」
「きな臭い噂って何ですか?」
「実は咎の輪廻教が動くかもしれん」
「咎の輪廻教?」
「え、あのやばい宗教の?」

エドナが驚いた顔をして言った。

「それって前に聞いたことがあります。
どんな宗教なんですか」
「わりと最近出来た新興宗教だ。
地獄の王を崇拝している」
「それって地獄神アビスですか?」

そう言うと伯爵夫人はぎょっとした顔をした。

「おい、うかつに名前を言うな。
とにかくお前の言った神を崇拝していて、
ただ崇拝するならともかく、各地でテロを起こしたりしているんだ」
「いわゆるやばい宗教ってことですか?」
「そうだな。奴らは神殿の教義を間違ったように解釈しているんだ。
かつて破壊の神によって世界が滅ぼされたように、
世界はまもなく滅び、
世界が滅ぼされたのちに、
選ばれた人間のみが生きることが出来ると説いているんだ」
「ああ、いわゆるこの宗教を信仰しないと、
死んじゃうよって脅すアレですね」

新興宗教でよくある手口だが、
世界はまもなく滅び、このままだと死んでしまうと人を脅し、
この宗教をやれば生き残ることが出来ると救いの手を差し伸べる。
そして気が付いた時にはどっぷりハマっているという寸法だ。
私のお母さんは仕事柄そういう相談を受けることが多かったので、
そういう話はよく聞いている。

「それに厄介なことに奴らにとって人殺しは良いことなんだ」
「は? 良いこと?」
「人間というのは生きているうちに人を騙したり、人を傷つけたりするだろ。
だから人間というのはその罰で輪廻転生を繰り返すと奴らは思っているんだ。
それから救われるには、咎の輪廻教の使者が救済するしかない。
ここで言う救済とは殺すことだな。
殺すことで殺した人間は輪廻から解放され、楽園に行けると奴らは思っている。
だから人殺しが良いことなんだ」
「はぁ? そんなことを信じるなんて馬鹿げてますよ」
「まぁな。だが奴らは本気だ。
本気でその馬鹿げた教えを信じているんだ。
だから各地でテロを起こしているわけだ」

うわぁ、どうしようもないな。
でも本人達はこれが良いことだと信じているから…厄介だよな。

「しかも奴らが狙う人間は徳の高い人間が多いんだ」
「あ、そっか、良い人も輪廻に縛られているから、
助けるつもりで殺すのですね」
「そうだ。そしてお前のような聖眼持ちは奴らにとっては特別でな。
あいつらは地獄の王を崇拝している。
だから天上界の神々から力を与えられたと、
思われているお前達聖眼持ちは奴らの宿敵なんだ」
「え? 宿敵?」
「咎の輪廻教は地獄の王を崇拝している。
だから地獄の王を追放した天上界の神を憎んでいて、
悪魔のように思っている。
実際に奴らの手によって3日前に聖眼持ちが1人殺された」
「え?」
「神殿を出て娼館に居る所をやられたらしい」
「そうなんですか」
「それでお前ら聖眼持ちの人間は狙われる危険性がある。
お前達はメンバーに3人も聖眼持ちが居るだろう。
まず間違いなく次のターゲットはお前達だ。
だから安全のためこの屋敷で匿われてくれ」
「え、じゃあ冒険者としての仕事は…」
「それはダメだ。犯人が捕まってお前達の安全が保証されるまで、
この屋敷に監禁されてくれ」

えー…言いたいことは分かるけど、
監禁って穏やかじゃないな。

「いいか、お前らは普通の冒険者ではない。
なんせ神に選ばれた聖眼持ちだ。
それがもし奴らの手にかかって死んだとなったら…、
想像するのも恐ろしい…。
いいか、私個人もお前達には死んでほしくない。
だからこれは領主命令だと思って従ってくれ」
「分かりました。みんなもこれでいいよね」
「良いも何も従うしかないだろう」
「そうね。ここは従いましょう」
「私はセツナの意見を尊重するのだ」
「わたくしも異論はありません」

そうして私達はみんなこの町で、
一番警備が厳しい領主邸に泊まることになった。





「ヒマですー」

領主邸の一番大きい部屋そこに私達は集まっていた。
ちなみに何で1カ所にいるかというと、
その方が護衛しやすいからだ。
部屋の中と外、そこには警備の兵士達が立って居た。
ちなみにイオも聖眼持ちではないがここに居る。

「私達なら警備とかいらないんだと思うけど」
「甘いですよ。セツナ。
あなたは暗殺者に出会ったことがないでしょう。
どんな剣豪も毒を盛られれば死にます。
あなたも例外ではありません」
「確かに私も暗殺者とは出会ったことはあるけど…厄介な相手よ」
「私に毒は効かないから大丈夫ですよ。
でもこの状況ってどこまで続くんでしょうか?」
「うーん、咎の輪廻教が潰れるまでじゃない?」
「えー、それじゃあ何年かかるんですかー。
まぁでもみんなで寝れられるなんて修学旅行みたいですね」

その時、ドスっという音がした。

「え?」

窓の外を見ると、そこに矢文が刺さっていた。

「何それ」
「読んで見ますね。
なになに、お目にかかりたく存じ上げるエドナ殿。
時計塔跡で待つ。タツキより」
「え、タツキってあなたの言っていた人よね」
「会いに行ってみましょうか」
「何言ってるの!?
私達は命が狙われているのよ!」
「タツキさんには会ってみたいんです。《飛翔》」

そう言うと私は飛翔魔法で窓から外に出た。

「ダメよ。戻りなさい!!」
「身を守る魔道具があるので大丈夫です」

そう言うと私は時計塔跡に向かった。

「お前って本当に無鉄砲だな」
「ガイ、ついてきたんですか?」
「まぁな、お前の暴走は俺が止めないとな」

そうして時計塔跡に向かった。





「おや、妾はエドナ殿を呼んだのじゃが」

待ち合わせ場所にはタツキが立っていた。

「あなたに用があるんです」
「やれやれ妾に何の用じゃ?」

扇子で口元を隠してタツキはそう言った。

「あなたに聞きたいことがあります。
あなたは黄竜騎士の刺客ですね」
「は? 何じゃその勘違いは?」

キョトンとした顔でタツキはそう言った。
あれ黄竜騎士かと思ったが違うのか?

「妾はヤトノカミから来たと言ったじゃろう」
「ではどうして私達に付きまとうんですか?
私達に何の目的があるんですか」
「じゃから、聞きたいことがあると言ったじゃろう。
竜殺しのエドナなら妾の知りたいことを知っているかもしれん」

いや、その竜殺しってデマなんだけど…。

「エドナが何を知っているというのですか?」
「それをお主に話す義理はない。
妾はただ真実を知りたいだけよ。
傾いた天秤は戻さぬといけないのじゃ」

そう言うタツキの目は冷徹なまでに冷たかった。
彼女がどういうつもりでエドナに用があるのか知らないが、
何となく嫌な予感がした。

「一体どんな目的があるというのです?」
「さぁな。お主がどんな人間かも知らず、
うかつに話して良いことではない」

タツキは手にした扇子であおぐ動作をした。
それを見て本当に話す気はないのだと私は感じた。

「何ですか、気になるじゃないですか」
「こういうのを異世界風に言うと、
プライバシーの侵害じゃな。
余計な詮索は身を滅ぼすぞ」
「何で異世界のことをあなたが知っているんですか!?」
「それも答える義理もないな。
それとも今ここで妾と戦って、脅して聞き出すか?」

タツキがじろりとこちらを見る。
その目には鋭い殺気のようなものがあった。

「…そんなことしませんよ」
「そうか」

そう言うとタツキは宙に浮いた。

「では妾は帰る故にお主も帰り道に気を付けるのじゃぞ」
「待ってください話はまだ…」
「また会おう」

そうしてタツキは夜の闇に消えていった。

謎が分かるどころか謎が増えた気がしたのはきっと気のせいじゃないだろう。
そう思った1日だった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

魔力∞を魔力0と勘違いされて追放されました

紗南
ファンタジー
異世界に神の加護をもらって転生した。5歳で前世の記憶を取り戻して洗礼をしたら魔力が∞と記載されてた。異世界にはない記号のためか魔力0と判断され公爵家を追放される。 国2つ跨いだところで冒険者登録して成り上がっていくお話です 更新は1週間に1度くらいのペースになります。 何度か確認はしてますが誤字脱字があるかと思います。 自己満足作品ですので技量は全くありません。その辺り覚悟してお読みくださいm(*_ _)m

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

前世の記憶さん。こんにちは。

満月
ファンタジー
断罪中に前世の記憶を思い出し主人公が、ハチャメチャな魔法とスキルを活かして、人生を全力で楽しむ話。 周りはそんな主人公をあたたかく見守り、時には被害を被り···それでも皆主人公が大好きです。 主に前半は冒険をしたり、料理を作ったりと楽しく過ごしています。時折シリアスになりますが、基本的に笑える内容になっています。 恋愛は当分先に入れる予定です。 主人公は今までの時間を取り戻すかのように人生を楽しみます!もちろんこの話はハッピーエンドです! 小説になろう様にも掲載しています。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

婚約破棄され、平民落ちしましたが、学校追放はまた別問題らしいです

かぜかおる
ファンタジー
とある乙女ゲームのノベライズ版悪役令嬢に転生いたしました。 強制力込みの人生を歩み、冤罪ですが断罪・婚約破棄・勘当・平民落ちのクアドラプルコンボを食らったのが昨日のこと。 これからどうしようかと途方に暮れていた私に話しかけてきたのは、学校で歴史を教えてるおじいちゃん先生!?

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

処理中です...