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第3章謎の少女とダンジョン革命
119・クレミー村
しおりを挟む「一体全体、どうしてここに?」
「それよりまだお腹すいてるので、
それ食べてもいいですか?」
おいおい、鍋一つ空にしておいてどんだけ食べるんだよ。
「セツナ、知り合いなのか?」
「まぁ知り合いというか…まぁそうですね」
イオの言葉に私は何と答えていいのか分からなかった。
前にも料理を食われたとは説明しにくい。
「あれ、その子って魔物ですか?」
「私は獣人なのだ。魔物ではないのだ」
「獣人ですか、ホントに居るんですね」
「まぁそんなことより、ここに座ってください。」
「はい」
私がそう言うとジェイミーはたき火の近くに来る。
うわ変な匂いがする。
なんか洗ってない犬みたいなそんな匂いだった。
「ちょっといいですか、《浄化(クリーン)》」
フォルトゥーナが魔法を使うと、
ジェイミーの体がみるみる綺麗になり、汚れが全て消えた。
「え、何やったんですか?」
「魔法で体を綺麗にしたんですよ」
「あとで私にもやってください。
それよりジェイミーさんはどうしてここに?
王都に戻ったんじゃないんですか」
「実はあの後遭難してしまって、
ちゃんと地図の通りに歩いていたんですけど…」
そう言って地図を見せるジェイミー。
おいおいこの地図、かなりボロボロだな。
ん、これは…。
「この地図、百年前の地図じゃないですか」
「え? あ、本当だ」
地図の書かれていた年号は今より百年前のものだった。
どうりで迷うわけだ。
今では使われていない道や、
舗装されて変わっている道なんかもあるからな。
しかもこの地図の書き方はどうも適当というかざっくりしている。
迷うはずだ。
「あー、安いから買ったんですけど、まさか百年前のものだとは…」
ちゃんと確認しろよ。なんていうかうっかりしているなこの人…。
「それで聖月草は無くしてないわよね」
「ちゃんと保存箱に入れているので大丈夫です。
ところで先輩達はどうしてここに?」
「私達は王樹の森に向かう途中なの」
「王樹の森? 止めといた方が良いですよ。
行く道中で聞いたんですけど、サイクロプスが出たって」
「サイクロプスが!?」
「何ですかそのサイクロプスって」
「ランクAに相当する魔物よ。
人間にも負けないぐらい知能があるの。
だから厄介な魔物よ」
「そうですか」
でもまぁ魔族を倒した私達の敵ではないだろう。
「まぁ大丈夫だと思います」
「セツナ、ランクAの魔物はかなり強いわよ。
Bランクとは比較にならないわ」
「でも私Aランク以上の魔物なら倒したことありますよ」
確かアリアドネの森で遭遇したが、苦戦はしたが何とか倒せた。
「あのね。Aランクの魔物でしかも知能があると強敵よ。
知能がある魔物というのは、知能が無い魔物より厄介なの。
こちらを罠にかけたり、道具を使ったりするのよ」
「へー、そうですか」
「一度アアルに戻って、装備を整えた方がいいかもしれないわ。
Aランクが相手になるんだもの。
万全の準備をした方がいいわ」
「えー、ここまで来たんですから、引き返すのもちょっと」
「まぁあなたがそう言うならそうするけど、警戒はした方がいいわよ」
まぁ何であれ私達の敵ではないだろう。
攻撃にはエドナとイオ、回復にはフォルトゥーナが居る。
エドナとイオはそこらの悪漢でもかなわないだろうし、
フォルトゥーナが居ればどんな怪我でもたちまち治ってしまう。
魔物にとってこれほど戦いにくい相手はいないだろう。
「えー、エドナ先輩。サイクロプスなんかと戦うんですか。
まぁ先輩なら勝てると思いますが、気を付けてくださいね」
そうジェイミーが心配そうに言った。
まぁ私達ならきっと大丈夫。
その時私は全く気がついていなかった。
知能を持った魔物というのが、どれだけ危険で危ういのかを。
◆
「それじゃあ、お世話になりました」
翌朝、旅支度をした私達に向かってジェイミーがそう言った。
「お世話になりっぱなしですみません」
「今度はちゃんとした地図ですから、ちゃんと王都まで着くと思います」
私は持っていた地図とコンパスをジェイミーに渡した。
地図は最新の物だし、コンパスは私が創造スキルで作った物だから、
今度こそ王都にたどり着けるだろう。
「いつかこの恩は返します」
そう言うとジェイミーは歩いていった。
それが見えなくなった時、私達は出発した。
「じゃあ行きましょうか」
「そうですね」
それから馬車に揺られながら進み、
途中で野宿したりしながら、
何とか王樹の森の麓にあるクレミー村に着くことが出来た。
「ここがクレミー村ですか」
見た感じは鉱山の村ということもあって、男しかいない。
それも背が低い人…多分ドワーフだろう。それが大半だった。
馬車は村の入り口に止めて、村の中に入る。
イオは目立つのでフードを被ってもらうことにした。
「おや、あんた達は…」
その時、一人の男性が話しかけてきた。
男性はドワーフなのか背が低く、ひげがもじゃもじゃしていた。
「悪いことは言わねぇ。
早く村を立ち去りな。この村の近くには魔物が居るんだ」
「そうですか、私達は木王樹を取りに来ました」
「バカを言うな。あんたなんかにあいつがどうにか出来るものか。
あんた達みたいな女は奴の大好物だ。
おかげで村の女はみんな奴に攫われてしまった…。
これ以上被害者を増やしたくないんだ」
「そうですか。ところでギルドはどこですか?」
「この村にはねぇよ。
人の集まる所だったら酒場だが、
おいまさか、あんた…」
「まぁ待っていてください。きっと朗報を届けてみますから」
そう言うと私達は酒場に向かう。
酒場の位置はエリアマップで分かった。
「私はこういう場所は苦手だから外で待っているのだ」
そう言ってイオは外で待つことにした。
酒場の中に入るとじろりと男達がこちらを睨み付けてきた。
「あのすみません。ここに王樹の森に詳しい方は居ますか?」
「それは俺だが、お前らは?」
ドワーフの男がそう言った。
顔はひげがもじゃもじゃしていて、
(というか酒場に居るドワーフはみんなひげがもじゃもじゃしている)
年は50代ぐらいに見えた。
「王樹の森に居る魔物。
私達なら倒せると思うんです」
そう言った瞬間、酒場に居る男達がどっと笑った。
「ははは! 倒すだと、女のお前らにはどうせ無理だ!」
「そう決めつけるのは簡単ですが、
キャシーさんのためにも木王樹が必要なんです」
「キャシーだと、まさかあのバカ娘か!!」
最初に話しかけてきたドワーフの男が怒ったように言った。
「女のくせに鍛冶がしたいと言って、
家出したバカ娘にわざわざ頼まれて来たのか!?」
え、じゃあ、この人はキャシーさんのお父さん?
うわっ、世間って狭いな。
「キャシーからの依頼なら、
余計にお前らを王樹の森に行かせるわけにはいかない!
さっさとこの村から出て行け!!」
男がそう言うと、私達は酒場を追い出された。
「大丈夫なのか?」
イオが心配そうに駆け寄ってきた。
「いてて…、取り付く島もないですね」
「まぁこうなることは分かっていたから、
私達だけで王樹の森に向かいましょう」
「しかしどうして女だから目の敵にするのだ?」
イオは男女平等の環境で育ったので、
今ひとつ男尊女卑のことがよく分かっていないみたいだった。
「まぁ全部が全部の男がそうってわけじゃないけど、
女だから侮る連中もいるのよ。
さ、王樹の森に行ってさっさと魔物を倒しましょう」
そう言うとエドナは歩き出した。
「その方向、王樹の森とは逆ですよ」
やれやれ相変わらずエドナの方向音痴は酷いな。
そうして私達は王樹の森に向かったのだった。
まさか行った先であんなことになるなんて、
この時の私は予想もしていなかった。
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