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第2章翼蛇の杖と世界の危機

101・フォルトゥーナの提案

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そんなこんなで私達はギルドを出た。
フォルトゥーナのために受けた依頼を、
解決するために外に行かないといけない。

「それにしてもBランクの依頼って遠征の依頼が多いですよね」
「おい」

実際Bランクの依頼ってFランクの依頼とはちょっと違うんだよな。
Fランクは庭の草むしりとか、おつかいレベルの依頼がほとんどだ。
Bランクの場合魔物退治や馬車の護衛依頼など、
一日では解決出来ない依頼がほとんどだ。
その分報酬も多いのだが、少し面倒くさいのは確かだ。

「そうよね。まぁすぐに慣れるわよ」
「おい、無視するな」

でもせっかくBランクになったんだから、
もっとすごい依頼を受けたいよな。
こう竜を倒したり、私にしか出来ない依頼をやってみたい。

「じゃあ行きましょう」
「だから無視するな!」

その叫び声に私達は後ろを振り向く。
そこにハンクが立っていた。

「何ですか、いきなり?」
「お前、体は大丈夫なのかよ?」
「はぁ? 私の体のことと、あんたと何が関係あるんです?」
「聞いたぞ。お前ここのところ無理してたから倒れたって、
で、療養のためにアアルを離れたって」
「はぁ? そんな馬鹿な噂、誰が流したんですか?」

そういえば伯爵夫人が、
私がアアルを離れても、
印象が良いようにするって言ってたけど、まさかな…。

「ということはお前、体は大丈夫なのか?」
「だから私の体調が悪いと何が問題なんですか?」
「いや、それは…とっとにかく困るんだよ!」

相変わらずコイツの言うことは意味分からん。
少し気が触れているんじゃないだろうか。

「フフッ」

そう思っているとフォルトゥーナが吹き出したように笑った。

「何で笑うの?」
「彼が考えていることが、
あまりにあなたに伝わってないので、つい…」

そういえばフォルトゥーナは心が読めるんだった。
ということはハンクの考えていることもお見通しか。

「伝わってないって何が?」
「まぁあえて言うなら、ラブでしょうか」

なんじゃそりゃ。まるで意味分からん。
ハンクも意味不明だが、フォルトゥーナはもっと意味分からん。
いつも不機嫌そうなコイツが、ラブなんて抱くはずがないだろ。

「この子には何を言っても無駄よ。もう完全に鈍いんだから」

何が鈍いのよ。エドナ。ここに来て金属の話?

「まぁとにかく私達は依頼をこなさないといけないので失礼します」
「あ、おい」

そんなこんなでハンクを置いて私達は町を出る。
町を出て依頼の品である薬草を採取するため、近くの森の中に入る。
すると魔物がわんさか現れた。

「行くわよ。セツナ」
「はい!」

私は周囲の自然を傷つけないように気をつけながら魔法を放つ。

「《風よ。切り裂け》」

現れたかまいたちが魔物を切り裂いていく。
だがそれの攻撃をくぐり抜けた魔物がフォルトゥーナに近づく。

「フォ…」
「《聖槍(ホーリーランス)》」

現れた光の槍が魔物を串刺しにする。
フォルトゥーナ…ちゃんと戦えたんだ。
回復魔法が得意なので、攻撃魔法は苦手かと思ったがそんなことは無かった。
まぁもし倒せなくても、私が結界魔法を体に張っておいたので大丈夫だが。

「わたくしは自分で言うのも何ですが、強いですよ」

そう私の思考を読んだフォルトゥーナはしたり顔でそう言う。

「分かった。じゃあ魔物を倒そう!」

そうして魔物を倒していると、あっという間に昼になった。
魔物が居なくなると私はアイテムボックスから、大きな袋を取り出す。
すると地面に落ちた魔石が袋に吸い込まれていく。
この袋の名前はすいこめーる君2号。
いちいち地面に落ちた魔石を回収するのも面倒くさいので作ったのだ。
これは2号だが、1号はあまりに強力すぎるので処分した。
だって地面の下にある魔石まで回収するから。
すぐ袋がいっぱいになるんだよ。
それどころか他人の持っている魔石まで回収しようとするからな…。
ごまかすのに苦労した。
その点、2号は人の持っている魔石は回収しないようにしてあるし、
効果も地面に落ちてある範囲にまでしてあるので安心だ。

「だいたいの魔物は倒しましたし、戻りますか」
「そうね。それにしても多いわね」

魔族が『ゲート』を開きまくった影響で、
アアルの近辺には魔物が多く発生していた。
さすがに町の中にあった『ゲート』は全て閉じてはいるものの、
町の周囲も至る所に『ゲート』が発生していた。
まぁそれら全ては私が閉じてはおいたものの、
ゲートから現れた魔物はそのままになっている。
まぁ大半を私やエドナや他の冒険者が倒したものの、
未だアアルの周囲には魔物が多く生息している。
まぁアアルには私が作った町をまもる君2号があるので、
魔物は町には近づけないのだが、魔物が多いと少し困るのは確かだ。

「じゃあ、昼ご飯にしよう」

そうして昼ご飯を作る。
まず取り出したのはキャベツ、それを千切りにして、お好み焼きを作る。
創造スキルて作ったホットプレートでお好み焼きを焼く。

「何の料理なのこれ?」
「これはお好み焼きといって私の世界の料理です」

私は焼けたお好み焼きをエドナの皿に入れる。

「このソースを付けて食べてみてください」

そういってソースを渡す。
お好み焼きソースなんてこの世界にないので、
事前に売られてある調味料を組み合わせて作ったソースだ。

「美味しい! 野菜がシャキシャキしてて、ソースと絡んでて美味しい」

そう感激した様子でエドナが言った。

「確かに美味しいです。こんなおいしいものは初めて食べました」

そうフォルトゥーナも言ってくれた。

「俺にも食わせてくれよ」
「あ、うん、はい食器」

そう言ってガイの食器を取り出して、ふとあることに気がついた。

「あのフォルトゥーナ。ちょっと言っておかないといけないことがある」
「何ですか?」

私はガイにかけられている隠密の魔法を解くように言う。

「妖精ですか」

特に驚いた様子もなくフォルトゥーナはそう言った。

「俺はガイっていうんだ。よろしくな」
「ガイのことは他の人に言わないでください」
「まぁ妖精ですからね。物珍しいのは分かりますよ。
誰にも言いません」
「そっか分かった」

私はガイの持っている魔道具に、
フォルトゥーナにはガイの姿も声も見えるように設定し直す。

「それよりアアルにはどうして雪が降っているんです?
ここら辺は暖かい地方のはずですが」
「実は魔族が降らしたんです。
魔族は私とエドナが倒したんだけど、雪は残ったままです」
「なるほどそれで雪がこんなに残っているんですか」

フォルトゥーナは森に残っている雪を見て言う。

「どうしたら雪が有効活用できるのかな」
「簡単なことですよ」

私の言葉にフォルトゥーナは答える。

「雪を売ればいいんです」
「え?」

思ってもみなかった言葉にその場に居た全員は耳を疑った。

「バーン王国は暖かい気候の国ですから、
雪を見たことのない人が大勢居ると思います。
そういう人に雪を売れば収入になると思いますよ」

確かにそれだと雪も無くなるし、お金は手に入るし一石二鳥だ。

「確かに雪を見に観光客も増えてるから、説得力もあるけど…」

実はアアルに雪が降ったということは近隣の村や町には伝わっている。
そのため雪を見ようと観光客が増加している。
なのでフォルトゥーナの言葉には説得力があった。

「じゃあ、ご飯を食べたらすぐに伯爵夫人の所に行こう」

そうしてお好み焼きを食べたら、すぐに伯爵夫人に会いにいった。

「セツナか、そこの人は?」

フォルトゥーナを見て、伯爵夫人はそう言った。

「わたくしはセツナのいとこです」
「は? お前も異世界から来たのか?」
「あのそういうことになってますけど、本当は赤の他人です。
そうじゃなくて、雪を無くす方法を見つけました」

私は伯爵夫人に雪を売る計画を話した。

「雪を売る…という発想は私には無かったな…」
「私もです」

私が暮らしていた日本では雪なんてもう見慣れた存在だったので、
売るっていう発想自体無かった。

「だがこの方法なら雪を減らせる上に金まで手に入るな」
「どうでしょうか。フォルトゥーナが思いついたんですけど…」
「ああ、最高のアイデアだ。早速雪を売るために行動を移そう」

こうしてアアルに降った雪は、箱に詰められ、
雪の降らなかった地域の町や村で売りに出されることになった。
ちなみに雪を入れる箱には、
私が保冷の魔道具を作っておいたので溶けることは無い。
こうしてアアルに降った雪は日本円で3000円ぐらいで販売されたが、
すぐに完売し、瞬く間に雪は減っていったのだった。
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