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第1章過去と前世と贖罪と
73・前世との決別
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領主邸の広々とした庭があった。
広さとしては体育館ぐらいだろうか。
普段であれば色とりどりの花が咲き乱れているのだが、
今は雪に覆われていて、花壇と地面との区別がついていない。
領主邸の結界自体は建物に覆われているので、
庭は対象外としていたが、
まさか最後になってここに来るとは思わなかった。
「お前を倒すことが、私の前世の償いだ!!」
その庭の中心でエドナは魔族であるレイラを殴りつけると、
そう叫んだ。
「は? 意味わかんないし」
レイラはそう言うと、その両手から凝縮された吹雪が吹き荒れる。
私は急いで手から突風を出し、吹雪を相殺する。
相殺といっても、周囲に凄まじい風が広がり、地面の雪が舞う。
それは立っているのもやっとといった風だった。
「セツナ…頼みがあるの…!」
その時、エドナが耳元でそう言った。
「ここからは私に戦わせて…!」
「え?」
「あいつは私自身の手で決着をつけたいの…!」
危機迫る表情でエドナにそう言われ、私は驚いた。
ただでさえあいつは…強力な魔族なのに…そんなこと。
「お願い…!」
縋り付くような目で見られ、私は反射的に頷いた。
「分かりました。でも本当に危なくなったら私が助けます」
やがて風が止み、レイラの姿がはっきりと見えた。
「なぁに、話してるのかな?」
レイラがニヤニヤと笑って言った。
その姿をエドナはキッと睨み付けた。
「よくも…そんなことが言えたものね」
エドナは雷丸を構えた。
その表情は普段の彼女から考えられない程、
絶対的な殺気に満ちていた。
「何を怒ってるの? 意味わかんないし…」
「あなたは今までどれだけの人間を殺してきたの?」
エドナは殺気のこもった眼差しをレイラに向ける。
「あんたはさぁ、道端の踏みつけた雑草の数を覚えてるの?」
レイラは馬鹿にしたような顔でそう言った。
「殺す…!」
エドナはそう言うと、レイラに向かって斬りかかった。
レイラは笑いながら、後ろに飛び抜けてそれをかわす。
どういうことなんだ…。私は突然の状況に困惑していた。
さっきの言葉は一体――まさかエドナは前世の記憶を…?
「あはははは! ゆっくりじっくり嬲ってあげる!」
そう言うと彼女は、再び吹雪を纏い――。
「させるかぁ!!」
だが一瞬のうちにエドナは間合いを詰め、刀で斬りかかる。
「…ッ!?」
「うらぁ!」
エドナがレイラの胸元を狙って、斬りかかる。
だが直前でかわされるが、レイラの右腕を切り落とすことに成功した。
「…ッ」
レイラは信じられないといった様子で右腕を見た。
その右腕が再生し始めるが、再生速度が前より格段に遅い。
その隙も見逃さず、エドナはレイラの首を狙って切りつけるが、
レイラが後ろに飛び退く方が先だった。
「こんなバカなことが…」
「お前は殺す…」
エドナは本気でレイラを殺す気なのか、
殺気のこもった目で睨みつけた。
「…うっとうしいなぁ!!」
そう言うとレイラは体に吹雪をまとった。
その纏う風の強さは、
近くにいる私でも立つのが難しいぐらいの風だった。
「お前を見ているとイライラするんだよ!!」
そう言うとレイラは吹雪をまとったまま、
エドナに飛び入りをお見舞いするが、
エドナはすれすれの状態でかわし、後ろに飛びのいた。
レイラは明らかに弱っている。
前の彼女なら目にも止まらぬ速さで移動していただろうが、
私が能力低下魔法をかけたというのもあるが、
おそらく体内にある魔力が切れかけているんだろう。
その証拠に周囲の雪は止んでいた。
だが弱っているからとは言え、油断出来ない。
手負いの獣ほど恐ろしいものはないのだ。
だから一人で戦うなんて無茶すぎる。
「くらえ!!」
そう言うとレイラはエドナに向かって人の身長ほどある巨大な氷の塊を飛ばした。
「エドナ!!」
エドナの体には、私が事前に補助魔法と結界魔法をかけているが、
いくらなんでもこれは避けられない――そう思って助けようとした時だった。
「手出ししないで!!」
そういうとエドナは氷の塊を刀で一刀両断に切断した。
「なっ…」
確かに何でも切れるようにはしておいたが、
まさかあんなでかい氷の塊を叩き切るとは思わなかった。
びっくりしている私の肩に何かが触れた。
「見守ってやろうぜ」
「が、ガイ!?」
そこにいたのは間違いなくガイだった。
「どうしてあなたがここに、妖精の里に居たんじゃ…!?」
というかこの町に居るのは危険なので、
妖精の里の柱にロープでグルグル巻きにしてくくりつけておいたし、
さらには妖精の女王に事情を説明していたから、
そう簡単には脱出出来ないはずだったのに…。
「見張りの妖精に頼んで、ロープを解いてもらった。
で、自力でここまで来たんだよ。
つっても俺の体格だと、かなりかかったけど」
確かに手のひらサイズじゃ、
アリアドネの森からアアルにまで来るのは大変だったろう。
「そうだったんですか」
「それより今どうなっているんだ?
あれは魔族だよな…」
「話せば長くなりますけど、
あの魔族はエドナさんの前世のお姉さんです」
「……なんか複雑な事情がありそうだな」
「だから自分自身で戦いたいと、言ってるんですけど。
魔族は私にしか倒せないと地獄神が言っていたんです」
「それは本当に確かなものなのか?」
「え?」
「ここに来るまで、あいつを追い詰めたのはお前だろ?
確かにお前がいなければ魔族はあそこまで追いつめられなかった。
だからとどめはあいつに譲ってやろうぜ。
それに自分自身で決着をつけないと、
あいつも踏ん切りがつかないだろう」
「ですが…」
「信じてやろうぜ」
ガイにそう言われ、私は考える。
確かにこれはエドナの戦いなんだ――。
私自身が手を出してはいけない。
そうだ。私のことを信じてくれた彼女を私が信じないでどうするんだ。
私に出来る事はただ一つだけ、エドナを信じる事だけだ。
エドナはレイラに駆け寄り、胸を切りつける。
「くっ、魔力が…」
レイラが苦痛に満ちた顔で、後ろを飛び退くが、
エドナはそれを予測していたのか、そうなる前に足払いをかける。
「ぐぁ」
レイラが床に倒れる。それをエドナは冷たい眼差しで見ていた。
「千の言葉も…万の言葉も…あなたには、もう通じないでしょう」
エドナは刀を構えると、そう言った。
「だから私が…ここで終わらせる!!」
「馬鹿にするなぁ!!」
レイラがエドナに飛びかかる。
それは以前のようなスピードがなく、動きが鈍っていた。
「この馬鹿野郎が!!」
エドナはレイラの顔を思いっきり殴りつける。
「どうしてそんな姿になってしまったの!!」
そして激情のままにレイラの胸に刀を突き立てようとしたが、
それより先に、
レイラの回し蹴りがエドナの顎に命中し、エドナは地面に倒れこんだ。
「エドナ!!」
だがその蹴りは以前よりかなり威力が弱っているのか、
以前ならばはるか遠くまで吹っ飛ばされていただろうか、
エドナは地面に倒れただけだった。
元々エドナの体には私が結界魔法をかけたので、
エドナはすぐに起き上がった。
「あなたの子供が今の貴方を見たら、とても悲しむでしょうね!!」
そう言ってエドナは斬りかかるが、レイラは後ろに宙返りしてそれをかわす。
「子供だってぇ?
確かに、子供は好きだよぉ…。
痛めつけると色んな反応が見れて楽しいしぃ…。
親を目の前で殺した時の反応なんて最高ね…!」
エドナの言葉にレイラはケラケラと笑う。
それを見て私は胸が痛くなった。
レイラ…。もう彼女は…堕ちるところまで堕ちてしまった。
人間だった頃なら決して出来なかったであろうことが、
出来るようになってしまったんだ。
私がもしもこの世界にやって来なかったら彼女はこうはならなかった――。
「この馬鹿野郎!!」
エドナは早口で詠唱する。空中に浮かび上がった火の玉がレイラに向かうが、
レイラはニヤリと笑うと、空中に飛び上がり、それをかわした。
「さっきから意味わかんないことばっかり…うるさいんだよぉッ!!」
そして再び吹雪を身に纏うと、エドナに向かって突進した――!!
「雷よ!!」
エドナもレイラに向かって、斬りかかり、雷を放つ――。
2人の力がぶつかり合うその時――。
私はエドナの持っていた雷丸が砕け散るのが見えた。
◆
土埃が舞う。そしてそれが収まっていた時、
立っていたのは魔族であるレイラだった。
「…うぅ」
エドナは地面に倒れ、動いていなかった。
「エドナ…!!」
私はもう耐えきれず、エドナに駆け寄った。
その時に驚いた。結界魔法が消えてしまっている。
再度また新たな魔法をかけようとした時、エドナに手を払われた。
「手出しは…無用よ!!」
そう言うと、折れた刀を持ってエドナはレイラに向かっていった。
明らかに無茶だ――。死ぬつもりなのかもしれない。
もうここは私が止めるべきだ――、
このままだと絶対にエドナはまた死んでしまう。
「今ここであいつを止めたら…あいつの誇りを傷つけることになるぞ」
「わかっています…」
ガイにそう言われ、私は俯いた。
これはエドナの戦いなんだ。
彼女が自分自身で決着をつけたいんだ。
だとしたら私に出来る事は――この戦いを見守ることだけ。
だけどただ見るだけで、
何も出来ないというのは何て苦しいんだろう。
「この!!」
エドナは折れた刀でレイラへと向かう。
「うっとうしいなぁ!!」
そう言うレイラももう限界が近づいているのか、
エドナに先ほど切られた傷が再生せず、そのままになっている。
本来であればすぐに逃げた方がいいのに、
よっぽど頭に血が上っているのか、
彼女の頭には逃げるという文字が消えてしまったようだった。
「うらぁ!!」
エドナが持っていた刀の柄でレイラの顔を殴る。
だがそれと同時にレイラの跳び蹴りがエドナの顔にぶち当たる。
血が舞う。だがそれでもエドナはひるまずにまた殴りかかった。
「くらえ!!」
そう言うとエドナはレイラの腕をつかみ、
そのまま地面にぶち当てる。
私の世界で言う一本背負いにも似た動きだった。
「うるさい!!」
だがその時、レイラの蹴りがエドナの腹に激突した。
「ぐはっ」
服を着ていてもその衝撃は体に伝わったのだろう。
エドナが膝をついた。
「うっとうしいなぁ…」
レイラが怒りに満ちた目でエドナを見た。
「こんなにイライラしたのは…お前が初めてだよッ!!」
そう言うとレイラはエドナに向かって殴りかかろうとした――。
「エドナ!!」
私がそう叫んだ時だった。
「がんばれー!」
突然した声援にレイラは驚いた顔をしていた。
気がつけば領主邸の前に人だかりが出来ていた。
あれは町の人達なのか…?
よく見れば私の知り合いも何人かいる。
「がんばれー!!」
「魔族を倒してくれー!!」
おそらく屋敷の前で魔族と戦っていることに気がついたのか、
たくさんの人が声援に駆けつけていた。
それを見てハッとした。そうだ。この戦いはエドナの戦い――。
私は絶対に手を出してはいけない。でもそんな私でもやれることがある。
「エドナ、がんばってー!!」
「お前なら倒せる!! がんばれー!!」
私とガイはエドナに声援を送った。
「何なんだよお前らは…」
レイラは困惑したような顔をした。
「どうして恐がってないんだよ…。
あたしが現れれば、皆逃げ惑い、
平気で他者を押しのけて助かろうとするのに…!」
「それが分からないのなら、あなたはもうレイラではないわ…」
エドナはゆらりと起き上がった。
その目には強い意思が宿っていた。
アーウィンが絶対に私を助け出そうとしたように、
何を犠牲にしたとしても、
絶対にレイラを倒す――そんな強い意志が現れていた。
「分からない…。分からない…」
レイラは錯乱したかのように、髪の毛を掻きむしった。
「人間なんて…。
あたしを見れば剣を持って追い回すか、逃げ惑うだけ…。
誰もあたしの心を溶かしてなんてくれなかった!
話を聞こうともしなかった!!」
レイラは心底動揺しているのか、激しく取り乱していた。
「家族って何? 愛情って何? ぬくもりって何?
どうしてあんたら人間はいつもいつも、それを持っている…!!
あたしは持っていないのに!!」
レイラは血を吐くようにそう叫んだ。
私はその言葉の一つ一つが胸に突き刺さった。
魔族は人間だった時の感情を失ってしまうと地獄神は言った。
だがひょっとしたら、彼女はずっと寂しかったんじゃないだろうか。
こうして人が多い所に現れるのも、
ひょっとしたら人の温もりに飢えていたんじゃないだろうか。
もうどうしようも出来ないこととは言え、
――そうなる前に彼女の心を救う方法はなかったんだろか。
「ごめんなさい…」
謝ってもどうしようも出来ない。
でも私がこの世界に来なければきっとレイラは――。
「過去はもう戻せない」
その時、静かなエドナの声が聞こえた。
見ればエドナは強い意志のこもった目で、レイラを見ていた。
「あなたは魔族になってしまった。
この事実はもう消せない。
ここで情に捕らわれ、あなたを逃せば、
あなたはこれからも多くの人を殺し続ける。
あなたの業がこれ以上深くならないように、
かつての弟として、あなたを討つ!!」
そう言うと、エドナは折れた刀を持ち、レイラに向かって走り出した。
「わからないよ…」
「な!?」
その時、レイラの体から先が鋭い氷のつららが生まれる。
それはレイラの体を突き破り、さらに質量を持って増えていく。
「もう、一緒に死んでよ…」
レイラは何もかもに諦めた顔をした。
まさか残った魔力を解き放ち自爆する気か――。
私は急いで、そうなると前にレイラを止めようと魔法使おうとした――が。
「ぐあ!」
魔法を使おうとした瞬間、猛烈な吐き気と頭痛がして、立っていることも難しくなった。
「どうした!?」
ガイが心配そうに駆け寄ってきたが、私にもどうしてこうなったのかわからなかった。
まさか――魔力が切れかかってる?
この症状は前に聞いた魔力切れの症状によく似ている。
でも私の魔力は膨大にあるはず、
確認のためにステータス魔法を使ってみたら驚くべき結果が書かれていた。
【セツナ・カイドウ】
【年齢】17才 【種族】人間 【属性】火、水、風、地、闇、無
【職業】Fランク冒険者。
【称号】無実の贖罪者。
【レベル】12
【体力】306/306
【魔力】∞/∞
【筋力】F 【防御力】F 【精神力】F
【判断力】E 【器用さ】B 【知性】A 【魅了】S
【状態】禁断症状
【カルマ値】9999(判定不可)
【スキル】地獄神の加護、超回復、各種免疫、言語理解、空間術、幸運、創造、魅了、所有不可。
禁断症状…? どういうことだ。
詳細は…。
【禁断症状】1度に魔力を膨大に使い過ぎて、肉体に限界にきてしまった症状。
速やかな休息が望まれる。
こんなこと聞いてない…。
くそ、地獄神め、ちゃんと手帳に書いておけよ!!
「ふふふふ」
氷の量はさらに増えていた。もう完全にエドナを巻き込む気なのか、
レイラは笑っていた。
「くっ」
エドナは動こうとするが、
足元が凍りついてしまっているせいでそれが出来ない。
私も魔法を使うことも出来ない。
もはや絶体絶命のピンチだった――。
「え?」
その時だった。私の足元に黒い魔方陣が浮かんだと思うと、
そこに一本の大剣が置かれていた。
これが何のためにあるのか、何のためにいきなり現れたのかわからない。
でも剣は私に自分を使えと、言っているようにも感じた。
「エドナァ!」
私が残っていた力で、大剣を持ち上げると、エドナに向かって投げた。
事前に筋力強化の魔法を使っておいてよかったと思った。
そのままの私だったら絶対に持ち上げることも出来なかったと思うから。
私の言葉に反応したエドナは両手でそれを受け取った。
「これは…!」
そしてその大剣を見て、非常に驚いた顔した。
「それを使って、レイラを救ってあげて!!」
その言葉にエドナは頷き、大剣の鞘を抜いた。
もうすでに氷は莫大な質量持って、迫っていた。
まるでハリセンボンの棘のように、鋭い氷のつららが数を増していく。
エドナは大剣で迫る氷を砕くと、速い速度で詠唱する。
そして炎の魔法を自分の足元に向かって使った。
「くっ…」
おそらくそうしないと、足に凍り付いた氷が解けないと思ったのだろう。
だが、靴の上からとは言え、かなり熱かったのだろう。
エドナは顔を歪めたが、すぐにレイラに向かって走り出した。
「ああああー!!」
そして自分の方向に向かってくる氷のつららを根こそぎ、大剣で砕いていく。
そうして中心にいるレイラに向かって、一気に距離を縮めた――。
「これでぇぇッ!!!」
氷のつららがエドナに向かってきたが、エドナは直前でそれをかわす。
だが、頬にそれがかすり血が流れるが、
エドナはそれにひるむことなく、大剣を振り下ろした――!
「終わりだァッ!!!」
エドナの大剣がレイラの胸に突き刺さったのだった――。
広さとしては体育館ぐらいだろうか。
普段であれば色とりどりの花が咲き乱れているのだが、
今は雪に覆われていて、花壇と地面との区別がついていない。
領主邸の結界自体は建物に覆われているので、
庭は対象外としていたが、
まさか最後になってここに来るとは思わなかった。
「お前を倒すことが、私の前世の償いだ!!」
その庭の中心でエドナは魔族であるレイラを殴りつけると、
そう叫んだ。
「は? 意味わかんないし」
レイラはそう言うと、その両手から凝縮された吹雪が吹き荒れる。
私は急いで手から突風を出し、吹雪を相殺する。
相殺といっても、周囲に凄まじい風が広がり、地面の雪が舞う。
それは立っているのもやっとといった風だった。
「セツナ…頼みがあるの…!」
その時、エドナが耳元でそう言った。
「ここからは私に戦わせて…!」
「え?」
「あいつは私自身の手で決着をつけたいの…!」
危機迫る表情でエドナにそう言われ、私は驚いた。
ただでさえあいつは…強力な魔族なのに…そんなこと。
「お願い…!」
縋り付くような目で見られ、私は反射的に頷いた。
「分かりました。でも本当に危なくなったら私が助けます」
やがて風が止み、レイラの姿がはっきりと見えた。
「なぁに、話してるのかな?」
レイラがニヤニヤと笑って言った。
その姿をエドナはキッと睨み付けた。
「よくも…そんなことが言えたものね」
エドナは雷丸を構えた。
その表情は普段の彼女から考えられない程、
絶対的な殺気に満ちていた。
「何を怒ってるの? 意味わかんないし…」
「あなたは今までどれだけの人間を殺してきたの?」
エドナは殺気のこもった眼差しをレイラに向ける。
「あんたはさぁ、道端の踏みつけた雑草の数を覚えてるの?」
レイラは馬鹿にしたような顔でそう言った。
「殺す…!」
エドナはそう言うと、レイラに向かって斬りかかった。
レイラは笑いながら、後ろに飛び抜けてそれをかわす。
どういうことなんだ…。私は突然の状況に困惑していた。
さっきの言葉は一体――まさかエドナは前世の記憶を…?
「あはははは! ゆっくりじっくり嬲ってあげる!」
そう言うと彼女は、再び吹雪を纏い――。
「させるかぁ!!」
だが一瞬のうちにエドナは間合いを詰め、刀で斬りかかる。
「…ッ!?」
「うらぁ!」
エドナがレイラの胸元を狙って、斬りかかる。
だが直前でかわされるが、レイラの右腕を切り落とすことに成功した。
「…ッ」
レイラは信じられないといった様子で右腕を見た。
その右腕が再生し始めるが、再生速度が前より格段に遅い。
その隙も見逃さず、エドナはレイラの首を狙って切りつけるが、
レイラが後ろに飛び退く方が先だった。
「こんなバカなことが…」
「お前は殺す…」
エドナは本気でレイラを殺す気なのか、
殺気のこもった目で睨みつけた。
「…うっとうしいなぁ!!」
そう言うとレイラは体に吹雪をまとった。
その纏う風の強さは、
近くにいる私でも立つのが難しいぐらいの風だった。
「お前を見ているとイライラするんだよ!!」
そう言うとレイラは吹雪をまとったまま、
エドナに飛び入りをお見舞いするが、
エドナはすれすれの状態でかわし、後ろに飛びのいた。
レイラは明らかに弱っている。
前の彼女なら目にも止まらぬ速さで移動していただろうが、
私が能力低下魔法をかけたというのもあるが、
おそらく体内にある魔力が切れかけているんだろう。
その証拠に周囲の雪は止んでいた。
だが弱っているからとは言え、油断出来ない。
手負いの獣ほど恐ろしいものはないのだ。
だから一人で戦うなんて無茶すぎる。
「くらえ!!」
そう言うとレイラはエドナに向かって人の身長ほどある巨大な氷の塊を飛ばした。
「エドナ!!」
エドナの体には、私が事前に補助魔法と結界魔法をかけているが、
いくらなんでもこれは避けられない――そう思って助けようとした時だった。
「手出ししないで!!」
そういうとエドナは氷の塊を刀で一刀両断に切断した。
「なっ…」
確かに何でも切れるようにはしておいたが、
まさかあんなでかい氷の塊を叩き切るとは思わなかった。
びっくりしている私の肩に何かが触れた。
「見守ってやろうぜ」
「が、ガイ!?」
そこにいたのは間違いなくガイだった。
「どうしてあなたがここに、妖精の里に居たんじゃ…!?」
というかこの町に居るのは危険なので、
妖精の里の柱にロープでグルグル巻きにしてくくりつけておいたし、
さらには妖精の女王に事情を説明していたから、
そう簡単には脱出出来ないはずだったのに…。
「見張りの妖精に頼んで、ロープを解いてもらった。
で、自力でここまで来たんだよ。
つっても俺の体格だと、かなりかかったけど」
確かに手のひらサイズじゃ、
アリアドネの森からアアルにまで来るのは大変だったろう。
「そうだったんですか」
「それより今どうなっているんだ?
あれは魔族だよな…」
「話せば長くなりますけど、
あの魔族はエドナさんの前世のお姉さんです」
「……なんか複雑な事情がありそうだな」
「だから自分自身で戦いたいと、言ってるんですけど。
魔族は私にしか倒せないと地獄神が言っていたんです」
「それは本当に確かなものなのか?」
「え?」
「ここに来るまで、あいつを追い詰めたのはお前だろ?
確かにお前がいなければ魔族はあそこまで追いつめられなかった。
だからとどめはあいつに譲ってやろうぜ。
それに自分自身で決着をつけないと、
あいつも踏ん切りがつかないだろう」
「ですが…」
「信じてやろうぜ」
ガイにそう言われ、私は考える。
確かにこれはエドナの戦いなんだ――。
私自身が手を出してはいけない。
そうだ。私のことを信じてくれた彼女を私が信じないでどうするんだ。
私に出来る事はただ一つだけ、エドナを信じる事だけだ。
エドナはレイラに駆け寄り、胸を切りつける。
「くっ、魔力が…」
レイラが苦痛に満ちた顔で、後ろを飛び退くが、
エドナはそれを予測していたのか、そうなる前に足払いをかける。
「ぐぁ」
レイラが床に倒れる。それをエドナは冷たい眼差しで見ていた。
「千の言葉も…万の言葉も…あなたには、もう通じないでしょう」
エドナは刀を構えると、そう言った。
「だから私が…ここで終わらせる!!」
「馬鹿にするなぁ!!」
レイラがエドナに飛びかかる。
それは以前のようなスピードがなく、動きが鈍っていた。
「この馬鹿野郎が!!」
エドナはレイラの顔を思いっきり殴りつける。
「どうしてそんな姿になってしまったの!!」
そして激情のままにレイラの胸に刀を突き立てようとしたが、
それより先に、
レイラの回し蹴りがエドナの顎に命中し、エドナは地面に倒れこんだ。
「エドナ!!」
だがその蹴りは以前よりかなり威力が弱っているのか、
以前ならばはるか遠くまで吹っ飛ばされていただろうか、
エドナは地面に倒れただけだった。
元々エドナの体には私が結界魔法をかけたので、
エドナはすぐに起き上がった。
「あなたの子供が今の貴方を見たら、とても悲しむでしょうね!!」
そう言ってエドナは斬りかかるが、レイラは後ろに宙返りしてそれをかわす。
「子供だってぇ?
確かに、子供は好きだよぉ…。
痛めつけると色んな反応が見れて楽しいしぃ…。
親を目の前で殺した時の反応なんて最高ね…!」
エドナの言葉にレイラはケラケラと笑う。
それを見て私は胸が痛くなった。
レイラ…。もう彼女は…堕ちるところまで堕ちてしまった。
人間だった頃なら決して出来なかったであろうことが、
出来るようになってしまったんだ。
私がもしもこの世界にやって来なかったら彼女はこうはならなかった――。
「この馬鹿野郎!!」
エドナは早口で詠唱する。空中に浮かび上がった火の玉がレイラに向かうが、
レイラはニヤリと笑うと、空中に飛び上がり、それをかわした。
「さっきから意味わかんないことばっかり…うるさいんだよぉッ!!」
そして再び吹雪を身に纏うと、エドナに向かって突進した――!!
「雷よ!!」
エドナもレイラに向かって、斬りかかり、雷を放つ――。
2人の力がぶつかり合うその時――。
私はエドナの持っていた雷丸が砕け散るのが見えた。
◆
土埃が舞う。そしてそれが収まっていた時、
立っていたのは魔族であるレイラだった。
「…うぅ」
エドナは地面に倒れ、動いていなかった。
「エドナ…!!」
私はもう耐えきれず、エドナに駆け寄った。
その時に驚いた。結界魔法が消えてしまっている。
再度また新たな魔法をかけようとした時、エドナに手を払われた。
「手出しは…無用よ!!」
そう言うと、折れた刀を持ってエドナはレイラに向かっていった。
明らかに無茶だ――。死ぬつもりなのかもしれない。
もうここは私が止めるべきだ――、
このままだと絶対にエドナはまた死んでしまう。
「今ここであいつを止めたら…あいつの誇りを傷つけることになるぞ」
「わかっています…」
ガイにそう言われ、私は俯いた。
これはエドナの戦いなんだ。
彼女が自分自身で決着をつけたいんだ。
だとしたら私に出来る事は――この戦いを見守ることだけ。
だけどただ見るだけで、
何も出来ないというのは何て苦しいんだろう。
「この!!」
エドナは折れた刀でレイラへと向かう。
「うっとうしいなぁ!!」
そう言うレイラももう限界が近づいているのか、
エドナに先ほど切られた傷が再生せず、そのままになっている。
本来であればすぐに逃げた方がいいのに、
よっぽど頭に血が上っているのか、
彼女の頭には逃げるという文字が消えてしまったようだった。
「うらぁ!!」
エドナが持っていた刀の柄でレイラの顔を殴る。
だがそれと同時にレイラの跳び蹴りがエドナの顔にぶち当たる。
血が舞う。だがそれでもエドナはひるまずにまた殴りかかった。
「くらえ!!」
そう言うとエドナはレイラの腕をつかみ、
そのまま地面にぶち当てる。
私の世界で言う一本背負いにも似た動きだった。
「うるさい!!」
だがその時、レイラの蹴りがエドナの腹に激突した。
「ぐはっ」
服を着ていてもその衝撃は体に伝わったのだろう。
エドナが膝をついた。
「うっとうしいなぁ…」
レイラが怒りに満ちた目でエドナを見た。
「こんなにイライラしたのは…お前が初めてだよッ!!」
そう言うとレイラはエドナに向かって殴りかかろうとした――。
「エドナ!!」
私がそう叫んだ時だった。
「がんばれー!」
突然した声援にレイラは驚いた顔をしていた。
気がつけば領主邸の前に人だかりが出来ていた。
あれは町の人達なのか…?
よく見れば私の知り合いも何人かいる。
「がんばれー!!」
「魔族を倒してくれー!!」
おそらく屋敷の前で魔族と戦っていることに気がついたのか、
たくさんの人が声援に駆けつけていた。
それを見てハッとした。そうだ。この戦いはエドナの戦い――。
私は絶対に手を出してはいけない。でもそんな私でもやれることがある。
「エドナ、がんばってー!!」
「お前なら倒せる!! がんばれー!!」
私とガイはエドナに声援を送った。
「何なんだよお前らは…」
レイラは困惑したような顔をした。
「どうして恐がってないんだよ…。
あたしが現れれば、皆逃げ惑い、
平気で他者を押しのけて助かろうとするのに…!」
「それが分からないのなら、あなたはもうレイラではないわ…」
エドナはゆらりと起き上がった。
その目には強い意思が宿っていた。
アーウィンが絶対に私を助け出そうとしたように、
何を犠牲にしたとしても、
絶対にレイラを倒す――そんな強い意志が現れていた。
「分からない…。分からない…」
レイラは錯乱したかのように、髪の毛を掻きむしった。
「人間なんて…。
あたしを見れば剣を持って追い回すか、逃げ惑うだけ…。
誰もあたしの心を溶かしてなんてくれなかった!
話を聞こうともしなかった!!」
レイラは心底動揺しているのか、激しく取り乱していた。
「家族って何? 愛情って何? ぬくもりって何?
どうしてあんたら人間はいつもいつも、それを持っている…!!
あたしは持っていないのに!!」
レイラは血を吐くようにそう叫んだ。
私はその言葉の一つ一つが胸に突き刺さった。
魔族は人間だった時の感情を失ってしまうと地獄神は言った。
だがひょっとしたら、彼女はずっと寂しかったんじゃないだろうか。
こうして人が多い所に現れるのも、
ひょっとしたら人の温もりに飢えていたんじゃないだろうか。
もうどうしようも出来ないこととは言え、
――そうなる前に彼女の心を救う方法はなかったんだろか。
「ごめんなさい…」
謝ってもどうしようも出来ない。
でも私がこの世界に来なければきっとレイラは――。
「過去はもう戻せない」
その時、静かなエドナの声が聞こえた。
見ればエドナは強い意志のこもった目で、レイラを見ていた。
「あなたは魔族になってしまった。
この事実はもう消せない。
ここで情に捕らわれ、あなたを逃せば、
あなたはこれからも多くの人を殺し続ける。
あなたの業がこれ以上深くならないように、
かつての弟として、あなたを討つ!!」
そう言うと、エドナは折れた刀を持ち、レイラに向かって走り出した。
「わからないよ…」
「な!?」
その時、レイラの体から先が鋭い氷のつららが生まれる。
それはレイラの体を突き破り、さらに質量を持って増えていく。
「もう、一緒に死んでよ…」
レイラは何もかもに諦めた顔をした。
まさか残った魔力を解き放ち自爆する気か――。
私は急いで、そうなると前にレイラを止めようと魔法使おうとした――が。
「ぐあ!」
魔法を使おうとした瞬間、猛烈な吐き気と頭痛がして、立っていることも難しくなった。
「どうした!?」
ガイが心配そうに駆け寄ってきたが、私にもどうしてこうなったのかわからなかった。
まさか――魔力が切れかかってる?
この症状は前に聞いた魔力切れの症状によく似ている。
でも私の魔力は膨大にあるはず、
確認のためにステータス魔法を使ってみたら驚くべき結果が書かれていた。
【セツナ・カイドウ】
【年齢】17才 【種族】人間 【属性】火、水、風、地、闇、無
【職業】Fランク冒険者。
【称号】無実の贖罪者。
【レベル】12
【体力】306/306
【魔力】∞/∞
【筋力】F 【防御力】F 【精神力】F
【判断力】E 【器用さ】B 【知性】A 【魅了】S
【状態】禁断症状
【カルマ値】9999(判定不可)
【スキル】地獄神の加護、超回復、各種免疫、言語理解、空間術、幸運、創造、魅了、所有不可。
禁断症状…? どういうことだ。
詳細は…。
【禁断症状】1度に魔力を膨大に使い過ぎて、肉体に限界にきてしまった症状。
速やかな休息が望まれる。
こんなこと聞いてない…。
くそ、地獄神め、ちゃんと手帳に書いておけよ!!
「ふふふふ」
氷の量はさらに増えていた。もう完全にエドナを巻き込む気なのか、
レイラは笑っていた。
「くっ」
エドナは動こうとするが、
足元が凍りついてしまっているせいでそれが出来ない。
私も魔法を使うことも出来ない。
もはや絶体絶命のピンチだった――。
「え?」
その時だった。私の足元に黒い魔方陣が浮かんだと思うと、
そこに一本の大剣が置かれていた。
これが何のためにあるのか、何のためにいきなり現れたのかわからない。
でも剣は私に自分を使えと、言っているようにも感じた。
「エドナァ!」
私が残っていた力で、大剣を持ち上げると、エドナに向かって投げた。
事前に筋力強化の魔法を使っておいてよかったと思った。
そのままの私だったら絶対に持ち上げることも出来なかったと思うから。
私の言葉に反応したエドナは両手でそれを受け取った。
「これは…!」
そしてその大剣を見て、非常に驚いた顔した。
「それを使って、レイラを救ってあげて!!」
その言葉にエドナは頷き、大剣の鞘を抜いた。
もうすでに氷は莫大な質量持って、迫っていた。
まるでハリセンボンの棘のように、鋭い氷のつららが数を増していく。
エドナは大剣で迫る氷を砕くと、速い速度で詠唱する。
そして炎の魔法を自分の足元に向かって使った。
「くっ…」
おそらくそうしないと、足に凍り付いた氷が解けないと思ったのだろう。
だが、靴の上からとは言え、かなり熱かったのだろう。
エドナは顔を歪めたが、すぐにレイラに向かって走り出した。
「ああああー!!」
そして自分の方向に向かってくる氷のつららを根こそぎ、大剣で砕いていく。
そうして中心にいるレイラに向かって、一気に距離を縮めた――。
「これでぇぇッ!!!」
氷のつららがエドナに向かってきたが、エドナは直前でそれをかわす。
だが、頬にそれがかすり血が流れるが、
エドナはそれにひるむことなく、大剣を振り下ろした――!
「終わりだァッ!!!」
エドナの大剣がレイラの胸に突き刺さったのだった――。
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