194 / 261
第2部
帰省①
しおりを挟む
…あれ、コーヒーの匂い。
目を開けると、すでに着替えを済ませた由良さんが、ソファーでスノーバックスのコーヒーを飲みながらパソコンに向かっている、
アラームは鳴っていないのにやけに明るいなと思いながらスマホを開いた俺は、時計が午前9時を示していることに気がつき慌てて上体を起こした。
おかしい。7時にアラームをかけたはずなのに。
「あの、由良さん…。」
尋ねれば、ゆっくりと彼の顔が上がり、俺の方を向く。
「おはよう、幹斗君。」
そのまま端正な顔立ちが穏やかに微笑みを浮かべ、俺の鼓動を加速させた。
微笑むだけでこんなにもドキドキさせてくる相手が自分の彼氏だなんて、と、思わず少女漫画顔負けのモノローグをつけてしまいそうだ。
…って、そうじゃない。
「…アラーム止めました?」
「うん。10時に出るなら、準備にかかるのは1時間くらいでしょう?どうして7時に?」
言いながら由良さんがこちらに向かって歩いてくる。
シトラスの香がほのかに鼻を掠め、それがまた大きく俺の心臓をどくんと一回脈打たせた。
彼が一歩近づくたびにどきどきして頭が混乱し、偏差値が1下がる気がする。
どうしよう。0になる前に早く答えないと。
「だって朝食を作って洗濯と掃除と…んんっ…。」
あたふたしながらやっとの思いで答えたのに、途中で唇を塞がれた。
視界いっぱいに映し出された深海を映したような藍の瞳にどうしようもなく惹きつけられ、言葉を失う。
固まってしまった俺のうなじを由良さんの親指が緩く擦り、彼のものである証、collarを優しくつけてくれた。
普段自分で何気なくつけているけれど、パートナーにそれをしてもらうとその行為がとても特別に思えて、うっかり嬉し泣きしそうになる。
行為の次の日の彼は、いつも底なしに甘い。
「した次の日の家事は僕がするって約束でしょう。身体は大丈夫?朝食は買ってきたよ。」
そのあとベッドサイドに跪き上目遣いで言われ、思わず俺はお姫様ですか、と突っ込みそうになった。
そもそもSubの前で跪くDomなんてどうかしてるし、その上“昨日は頑張ってくれたもんね”、と色っぽい声で囁かれてしまえばたまったものではない。
何も言い返せなくなってしまう。
…あれ、でも…。
「由良さん、体調大丈夫ですか?」
一瞬彼の瞳が不安げに揺らいでいる気がして、尋ねてみた。
「いつも通りだよ。どうして?」
そっか、よかった。気のせいなら、それで…。
「いえ、なんでもないです。家事と朝食、ありがとうございます。いただきます。」
気を取り直しベッドから起き上がると、由良さんがエスコートするみたいに俺をソファーまで誘導してくれる。
「うん、どうぞ。」
ソファー前の机に並べられた朝食は、バケットのサンドイッチにキャラメルマキアート、デザートのチーズケーキ。
俺が好きなものばっかりだ。
幸せな朝を過ごした後、手を繋いで家を出る。
雲ひとつない秋晴れの空がどこまでも澄んでいるのを何故だかとても美しく感じて、なんとなく写真に収めてみた。
優しい1日になるといいな。
目を開けると、すでに着替えを済ませた由良さんが、ソファーでスノーバックスのコーヒーを飲みながらパソコンに向かっている、
アラームは鳴っていないのにやけに明るいなと思いながらスマホを開いた俺は、時計が午前9時を示していることに気がつき慌てて上体を起こした。
おかしい。7時にアラームをかけたはずなのに。
「あの、由良さん…。」
尋ねれば、ゆっくりと彼の顔が上がり、俺の方を向く。
「おはよう、幹斗君。」
そのまま端正な顔立ちが穏やかに微笑みを浮かべ、俺の鼓動を加速させた。
微笑むだけでこんなにもドキドキさせてくる相手が自分の彼氏だなんて、と、思わず少女漫画顔負けのモノローグをつけてしまいそうだ。
…って、そうじゃない。
「…アラーム止めました?」
「うん。10時に出るなら、準備にかかるのは1時間くらいでしょう?どうして7時に?」
言いながら由良さんがこちらに向かって歩いてくる。
シトラスの香がほのかに鼻を掠め、それがまた大きく俺の心臓をどくんと一回脈打たせた。
彼が一歩近づくたびにどきどきして頭が混乱し、偏差値が1下がる気がする。
どうしよう。0になる前に早く答えないと。
「だって朝食を作って洗濯と掃除と…んんっ…。」
あたふたしながらやっとの思いで答えたのに、途中で唇を塞がれた。
視界いっぱいに映し出された深海を映したような藍の瞳にどうしようもなく惹きつけられ、言葉を失う。
固まってしまった俺のうなじを由良さんの親指が緩く擦り、彼のものである証、collarを優しくつけてくれた。
普段自分で何気なくつけているけれど、パートナーにそれをしてもらうとその行為がとても特別に思えて、うっかり嬉し泣きしそうになる。
行為の次の日の彼は、いつも底なしに甘い。
「した次の日の家事は僕がするって約束でしょう。身体は大丈夫?朝食は買ってきたよ。」
そのあとベッドサイドに跪き上目遣いで言われ、思わず俺はお姫様ですか、と突っ込みそうになった。
そもそもSubの前で跪くDomなんてどうかしてるし、その上“昨日は頑張ってくれたもんね”、と色っぽい声で囁かれてしまえばたまったものではない。
何も言い返せなくなってしまう。
…あれ、でも…。
「由良さん、体調大丈夫ですか?」
一瞬彼の瞳が不安げに揺らいでいる気がして、尋ねてみた。
「いつも通りだよ。どうして?」
そっか、よかった。気のせいなら、それで…。
「いえ、なんでもないです。家事と朝食、ありがとうございます。いただきます。」
気を取り直しベッドから起き上がると、由良さんがエスコートするみたいに俺をソファーまで誘導してくれる。
「うん、どうぞ。」
ソファー前の机に並べられた朝食は、バケットのサンドイッチにキャラメルマキアート、デザートのチーズケーキ。
俺が好きなものばっかりだ。
幸せな朝を過ごした後、手を繋いで家を出る。
雲ひとつない秋晴れの空がどこまでも澄んでいるのを何故だかとても美しく感じて、なんとなく写真に収めてみた。
優しい1日になるといいな。
1
お気に入りに追加
695
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる