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第2部
それから②
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ここ数日で全てが変わってしまった様な気がしていたのは俺だけで、大学の様子はごく普通だった。
自分だけが違う場所からやってきた様な違和感を覚えながら一限の授業を受け終え、二限の教室に行く。
二限が終わったら1週間ぶりに研究室に行くから、少し怖い。
怖いのは仙波君のことがあるからではなく、単純に1週間無断で欠勤してしまったという罪悪感があるからだ。
仙波君には申し訳ない気持ちもあるけれど、それ以上に由良さんが何度も“これでも妥協した”、と言い聞かせてくれたので、これでよかったのだと思えている。
「幹斗おはよ。…もう大丈夫?」
隣から声が聞こえて振り向くとその先に東弥がいた。
彼は荷物を下ろし俺の横に座る。
「おはよ、東弥。大丈夫。…その、東弥にもお世話になったみたいで、ありがとう。」
「いや俺はほとんど何も。仙波のこと呼び出しただけ。」
「…だけじゃないって。」
「じゃあ俺が刺された時の恩返し。静留がたくさんお世話になったから。」
「うん、じゃあそれで。本当にありがと。」
「こちらこそ。」
授業を終えて東弥と一緒に食事をとってから研究室に行くと、仙波君のことを伝えられた。どうやら俺は体調不良だということになっていたらしい。
実験室に行きしばらく実験をして、いい頃合いで家に帰る。
すごい挑戦をした気分なのに思った以上に普通の1日だった。
「ただいま。」
「お帰りなさい。お疲れ様、よくがんばったね。」
ドアを開けると由良さんが出迎えてくれて、そのまま強く抱きしめられた。
彼は俺の頭をたくさん撫でて、何度も“えらい”、“頑張ったね”、と言いながら甘いglareを注いでくれる。
まるで子供にするみたいだ。
そして、子供みたいにされているのに由良さんの顔が近いからどきどきする。
でも嬉しい。由良さんに褒められることは本当に好きだし、何より今日はがんばったから、頑張ったことを大好きな人に褒めてもらえると一番嬉しい。
「ありがとうございます。」
思わず笑顔になって言うと、由良さんも柔らかな笑みを浮かべる。
「ご飯にする?それとも…なんてね。」
「由良さんがいいです!」
照れ笑いを浮かべながら途中で言葉を切った由良さんに俺がそう即答すると、彼は切れ長の瞳を驚いたように大きく開いた。
そのまま数秒の沈黙が走る。
いつもはどんなに甘い台詞も平気な顔で言うくせになぜか照れている由良さんと、いつもは照れて黙ってばかりなのに何故か今日は勢いよく一番恥ずかしい返事をしてしまった俺。
恥ずかしいよりおかしさが先立って、顔を見合わせ同時に吹き出してしまった。
「…はー、おかしいっ…くくっ… 」
「なかなか新鮮だったね。
…で、僕がいいんだっけ?幹斗君は。」
今度はワントーン低い大人の声で、顎を持ち上げてそう言われた。
…まずい。
鼓動が急加速を始める。
そのまま噛み付く様に唇を奪われ、熱を帯びた紫紺の瞳が目の前に来た。
「んっ… 」
思わず声が漏れる。
呼吸が困難なほど深く舌を絡め合えば、頭がふわふわと酩酊した。
キスだけで他に何もしていないはずなのに、下腹部がひどく切なく疼く。
触れた部分と下腹部から全身に熱が回り、立つのさえ困難になった俺を、由良さんは軽々と抱き上げた。
「一緒にお風呂入ろうか。」
色香を帯びた声が鼓膜を震わせる。
そのあとの入浴が入浴だけで済まなかったのは言うまでもない。
自分だけが違う場所からやってきた様な違和感を覚えながら一限の授業を受け終え、二限の教室に行く。
二限が終わったら1週間ぶりに研究室に行くから、少し怖い。
怖いのは仙波君のことがあるからではなく、単純に1週間無断で欠勤してしまったという罪悪感があるからだ。
仙波君には申し訳ない気持ちもあるけれど、それ以上に由良さんが何度も“これでも妥協した”、と言い聞かせてくれたので、これでよかったのだと思えている。
「幹斗おはよ。…もう大丈夫?」
隣から声が聞こえて振り向くとその先に東弥がいた。
彼は荷物を下ろし俺の横に座る。
「おはよ、東弥。大丈夫。…その、東弥にもお世話になったみたいで、ありがとう。」
「いや俺はほとんど何も。仙波のこと呼び出しただけ。」
「…だけじゃないって。」
「じゃあ俺が刺された時の恩返し。静留がたくさんお世話になったから。」
「うん、じゃあそれで。本当にありがと。」
「こちらこそ。」
授業を終えて東弥と一緒に食事をとってから研究室に行くと、仙波君のことを伝えられた。どうやら俺は体調不良だということになっていたらしい。
実験室に行きしばらく実験をして、いい頃合いで家に帰る。
すごい挑戦をした気分なのに思った以上に普通の1日だった。
「ただいま。」
「お帰りなさい。お疲れ様、よくがんばったね。」
ドアを開けると由良さんが出迎えてくれて、そのまま強く抱きしめられた。
彼は俺の頭をたくさん撫でて、何度も“えらい”、“頑張ったね”、と言いながら甘いglareを注いでくれる。
まるで子供にするみたいだ。
そして、子供みたいにされているのに由良さんの顔が近いからどきどきする。
でも嬉しい。由良さんに褒められることは本当に好きだし、何より今日はがんばったから、頑張ったことを大好きな人に褒めてもらえると一番嬉しい。
「ありがとうございます。」
思わず笑顔になって言うと、由良さんも柔らかな笑みを浮かべる。
「ご飯にする?それとも…なんてね。」
「由良さんがいいです!」
照れ笑いを浮かべながら途中で言葉を切った由良さんに俺がそう即答すると、彼は切れ長の瞳を驚いたように大きく開いた。
そのまま数秒の沈黙が走る。
いつもはどんなに甘い台詞も平気な顔で言うくせになぜか照れている由良さんと、いつもは照れて黙ってばかりなのに何故か今日は勢いよく一番恥ずかしい返事をしてしまった俺。
恥ずかしいよりおかしさが先立って、顔を見合わせ同時に吹き出してしまった。
「…はー、おかしいっ…くくっ… 」
「なかなか新鮮だったね。
…で、僕がいいんだっけ?幹斗君は。」
今度はワントーン低い大人の声で、顎を持ち上げてそう言われた。
…まずい。
鼓動が急加速を始める。
そのまま噛み付く様に唇を奪われ、熱を帯びた紫紺の瞳が目の前に来た。
「んっ… 」
思わず声が漏れる。
呼吸が困難なほど深く舌を絡め合えば、頭がふわふわと酩酊した。
キスだけで他に何もしていないはずなのに、下腹部がひどく切なく疼く。
触れた部分と下腹部から全身に熱が回り、立つのさえ困難になった俺を、由良さんは軽々と抱き上げた。
「一緒にお風呂入ろうか。」
色香を帯びた声が鼓膜を震わせる。
そのあとの入浴が入浴だけで済まなかったのは言うまでもない。
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