89 / 261
14-4
しおりを挟む
パンパンのハンバーグにナイフを入れた瞬間、ジュワッと透明な肉汁が流れ出して、目の前に座っていた谷津が目をキラキラさせた。
「めっっっっちゃくちゃ美味しそうじゃん!!幹斗一口ちょうだい!!」
「いいよ。はい、フォーク。」
「ありがと!!失礼します…って、んっまー!!!!!」
ほっぺたをおさえながら満面の笑みでモグモグと口を動かす姿はとても幸せそうだ。
なぜ谷津が(自分でハンバーグ屋さんって言っておきながら)オムライスを頼んだのかは甚だ疑問だが、突っ込むのはやめておく。
ちなみに俺が頼んだのはデミグラスソースハンバーグで、東弥が頼んだのは中にチーズが入っているハンバーグだ。
「幹斗、俺とも交換しない?」
「いいよ。」
隣に座っている東弥に尋ねられ、今度は東弥の方に皿を近づける。
東弥は一口含んで、美味しいね、と笑ってくれた。
正直つらい。頭痛と吐き気とこみ上げる自傷衝動を、これ以上抑えるのはもう無理だとすら思う。けれどそれを言うわけにもいかなくて。
…あ、ハンバーグ用のナイフ。あれで肌を思いきり切りつけたら、きっと…
ナイフに手を伸ばし、その歯を呆然と見つめていると、突然、ナイフを持っていた右手首を掴まれた。
「…?」
ぼうっとしていて自分が周りからどう見えているのかもわからない俺は、もちろんなぜ手を掴まれたのかもわからず、首を傾げる。
「幹斗、ちょっとこっち。谷津、明日払うからお金払っといて。」
東弥の声がして、ナイフを奪われ、腕を引いてその場に立たされた。
「りょーかい!!残り全部食べていい?」
「もちろん。」
「オムライス頼んで良かったー!!」
続いて元気の良い谷津の声がする。
俺は東弥にぐいぐいと腕を引っ張られ、何故だか外へ連れ出された。
「東弥、どうした?」
聞いても返事はない。しかも何故か東弥は繋いでいない方の手で俺のリュックを持っている。
手を引っ張られながら歩くこと5分。
とあるアパートのドアの前まで来ると彼はやっと足を止め、鍵を開け、俺を中へと引っ張った。
そうして周りに誰もいなくなってもまだ東弥は口を開かず、代わりに俺の左手を持ち上げて、爪痕だらけの手の甲を晒す。
「どうした、はこっちの台詞。こんなになるまで放っておいて…。
頼ってって言ったよね?俺。」
彼の声は普段よりずっと低く、明らかに怒っているのがわかった。
「めっっっっちゃくちゃ美味しそうじゃん!!幹斗一口ちょうだい!!」
「いいよ。はい、フォーク。」
「ありがと!!失礼します…って、んっまー!!!!!」
ほっぺたをおさえながら満面の笑みでモグモグと口を動かす姿はとても幸せそうだ。
なぜ谷津が(自分でハンバーグ屋さんって言っておきながら)オムライスを頼んだのかは甚だ疑問だが、突っ込むのはやめておく。
ちなみに俺が頼んだのはデミグラスソースハンバーグで、東弥が頼んだのは中にチーズが入っているハンバーグだ。
「幹斗、俺とも交換しない?」
「いいよ。」
隣に座っている東弥に尋ねられ、今度は東弥の方に皿を近づける。
東弥は一口含んで、美味しいね、と笑ってくれた。
正直つらい。頭痛と吐き気とこみ上げる自傷衝動を、これ以上抑えるのはもう無理だとすら思う。けれどそれを言うわけにもいかなくて。
…あ、ハンバーグ用のナイフ。あれで肌を思いきり切りつけたら、きっと…
ナイフに手を伸ばし、その歯を呆然と見つめていると、突然、ナイフを持っていた右手首を掴まれた。
「…?」
ぼうっとしていて自分が周りからどう見えているのかもわからない俺は、もちろんなぜ手を掴まれたのかもわからず、首を傾げる。
「幹斗、ちょっとこっち。谷津、明日払うからお金払っといて。」
東弥の声がして、ナイフを奪われ、腕を引いてその場に立たされた。
「りょーかい!!残り全部食べていい?」
「もちろん。」
「オムライス頼んで良かったー!!」
続いて元気の良い谷津の声がする。
俺は東弥にぐいぐいと腕を引っ張られ、何故だか外へ連れ出された。
「東弥、どうした?」
聞いても返事はない。しかも何故か東弥は繋いでいない方の手で俺のリュックを持っている。
手を引っ張られながら歩くこと5分。
とあるアパートのドアの前まで来ると彼はやっと足を止め、鍵を開け、俺を中へと引っ張った。
そうして周りに誰もいなくなってもまだ東弥は口を開かず、代わりに俺の左手を持ち上げて、爪痕だらけの手の甲を晒す。
「どうした、はこっちの台詞。こんなになるまで放っておいて…。
頼ってって言ったよね?俺。」
彼の声は普段よりずっと低く、明らかに怒っているのがわかった。
11
お気に入りに追加
695
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる