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由良さんの目を見て初めて人に支配されたいと思ったこと。思わず跪いてしまったこと。プレイをして欲しいと強く願ったこと。
それを一瞬のうちに全て、隠すことなく話してしまった。
だって、従いたいと思ったDomだ。その命令に逆らえるわけがない。
…ああ、終わった…。
いろいろな思いが交錯し、さらに涙が出そうになる。
やっと、glareが効いたのに。初めて誰かに支配されたいと思ったのに。
連絡先を交換して、ゆっくり距離を縮めて、もしかしたらパートナーになれるんじゃないかなんて小さなチャンスを夢見ることすら俺には叶わないのか。
彼の顔を見ることができなくて、目を瞑る。
なんだか無性に虚しくて。
「そんなに怯えないで、こっちを見て。」
ふと、柔らかい口調で諭すように言われ、ふわりと頭を撫でられた。
…気持ちいい。
気持ち良さについ身を委ねてしまった俺に、由良さんは言った。
「まずはお試し期間ということで…。
よろしくね。幹斗君。」
…え?
彼は今なんて…?
思考が追いつかず、脳がフリーズする。
多分空耳だ。だって俺が今聞いた通りだとあまりにも都合が良すぎるから。
「あの、えっと… 」
何と返していいかわからず戸惑っている俺に、由良さんは座りながら優しく微笑んで、
「セーフワードは?…まあ、プレイ前に決めればいいか。考えておいて。」
と言ってきた。
セーフワードはSubがプレイに耐えきれない時に中止を促す言葉だ。どうやら空耳ではなかったらしい。
「それと、背中を見せて。」
今度は表情を硬くして言われた。
「…?」
「痛むでしょう?背中。ずっと庇ってる。そこに寝ちゃっていいから。」
…痛いけど、放っておけば治るし…。
「…あの、大丈夫です。」
おそらく鬱血しているであろうそこは、他人に見せられるようなものじゃない。
「commandされたい?」
頑なに首を振っていると、由良さんが大人っぽく微笑みながら聞いてきた。
かっこいいけれど、目が笑っていない。それどころか少しglareが漏れてるような…。
そもそもcommandを出されたら従う以外に選択肢がなくなるので、その前に大人しくシャツのボタンを外し、ソファーにうつ伏せになる。
「Good boy.」
由良さんの目尻が下がり、柔らかく口角が持ち上げられる。
その言葉をかけられた途端、嬉しさがこみ上げてきて胸がギュッと締め付けられた。
…忠誠を捧げたい主人に褒められるのは、Subにとって大きな喜びなのだと、どこかの教科書で読んだけれど、本当だったんだ。
由良さんがソファを立ち上がり、俺のそばまでくる。
なにをされるのかと思ったら、ひんやりとした感触が背中に触れた。
「…いけないよ。しっかり冷やさないと。」
耳元で優しい声が囁く。少し遅れて、自分の背中に触れているのが由良さんの指だと悟った。その指は静かに俺の傷痕を滑る。まるで大切な宝物に触れるかのように、優しく。
「んっ… 」
くすぐったいような感覚に、思わず変な声が漏れてしまった。
頭がふわふわと酩酊し、だんだんと眠気が押し寄せてくる。
「…やっと、見つけた。」
由良さんが何かを言ったが、何を言ったのかは全く聞き取れず、俺はそのまま深い眠りへと落ちていった。
それを一瞬のうちに全て、隠すことなく話してしまった。
だって、従いたいと思ったDomだ。その命令に逆らえるわけがない。
…ああ、終わった…。
いろいろな思いが交錯し、さらに涙が出そうになる。
やっと、glareが効いたのに。初めて誰かに支配されたいと思ったのに。
連絡先を交換して、ゆっくり距離を縮めて、もしかしたらパートナーになれるんじゃないかなんて小さなチャンスを夢見ることすら俺には叶わないのか。
彼の顔を見ることができなくて、目を瞑る。
なんだか無性に虚しくて。
「そんなに怯えないで、こっちを見て。」
ふと、柔らかい口調で諭すように言われ、ふわりと頭を撫でられた。
…気持ちいい。
気持ち良さについ身を委ねてしまった俺に、由良さんは言った。
「まずはお試し期間ということで…。
よろしくね。幹斗君。」
…え?
彼は今なんて…?
思考が追いつかず、脳がフリーズする。
多分空耳だ。だって俺が今聞いた通りだとあまりにも都合が良すぎるから。
「あの、えっと… 」
何と返していいかわからず戸惑っている俺に、由良さんは座りながら優しく微笑んで、
「セーフワードは?…まあ、プレイ前に決めればいいか。考えておいて。」
と言ってきた。
セーフワードはSubがプレイに耐えきれない時に中止を促す言葉だ。どうやら空耳ではなかったらしい。
「それと、背中を見せて。」
今度は表情を硬くして言われた。
「…?」
「痛むでしょう?背中。ずっと庇ってる。そこに寝ちゃっていいから。」
…痛いけど、放っておけば治るし…。
「…あの、大丈夫です。」
おそらく鬱血しているであろうそこは、他人に見せられるようなものじゃない。
「commandされたい?」
頑なに首を振っていると、由良さんが大人っぽく微笑みながら聞いてきた。
かっこいいけれど、目が笑っていない。それどころか少しglareが漏れてるような…。
そもそもcommandを出されたら従う以外に選択肢がなくなるので、その前に大人しくシャツのボタンを外し、ソファーにうつ伏せになる。
「Good boy.」
由良さんの目尻が下がり、柔らかく口角が持ち上げられる。
その言葉をかけられた途端、嬉しさがこみ上げてきて胸がギュッと締め付けられた。
…忠誠を捧げたい主人に褒められるのは、Subにとって大きな喜びなのだと、どこかの教科書で読んだけれど、本当だったんだ。
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なにをされるのかと思ったら、ひんやりとした感触が背中に触れた。
「…いけないよ。しっかり冷やさないと。」
耳元で優しい声が囁く。少し遅れて、自分の背中に触れているのが由良さんの指だと悟った。その指は静かに俺の傷痕を滑る。まるで大切な宝物に触れるかのように、優しく。
「んっ… 」
くすぐったいような感覚に、思わず変な声が漏れてしまった。
頭がふわふわと酩酊し、だんだんと眠気が押し寄せてくる。
「…やっと、見つけた。」
由良さんが何かを言ったが、何を言ったのかは全く聞き取れず、俺はそのまま深い眠りへと落ちていった。
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