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2度目の泊まりと初めての会話②

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話によると、彼は“自分以外に2人以上の人がいると声が出なくなってしまう”らしい。

確かに前に三澤と訪ねた時は礼人のほかに三澤もいたし、他にも授業を受けようとしている学科の学生がたくさん室内にいた。

__…でも、わざわざそれを僕に言わなくてもいいのに…。

礼人はふと疑問に思う。

そのうえ彼は自分の作業をしながら礼人に少しずつレポートの助言をしてくれた。

「…あの、どうしてこんなに親切にしてくれるんですか?」

彼が作業を終えPCの電源を切った後、気になって彼に尋ねてみた。

出会ったばかりの自分に、勉強も、彼自身のこともこんなにも教えてくれるのはどうしてかと。

彼はなにかを迷うように視線を泳がせた後、少し切なげに微笑む。

それからそっと礼人の頭に右の手のひらを乗せて。

「君が頑張っていたから、ついお節介を焼いてしまいました。」

そう言い残し、帰ってしまった。

大きな手の温もりに、どうしてかまた胸が不自然にざわつきだす。

その胸の騒ぎも、前まではただ気になるというだけだったが、今回は何か別の感情を孕んでいるように思えた。

“君が頑張っていたから。”

その言葉が、頭を撫でる仕草が、とても嬉しくて。

耳に残る吐息を含んだ低く穏やかな彼の声は、触れた途端にすっと溶ける淡雪のように心地よく耳に馴染んで、その声を何度も反芻しているうちに、礼人は眠りに落ちた。

★☆★

「…あれ、寝てた…。」

PC室で目を覚ました礼人は、スマホを見て現在の時間が午前4時30分であることを確認し、首を傾げた。

ほとんど眠っていないはずなのに、やけに頭がすっきりしている。

__…まだ日は昇っていないから、もう少しレポートに向き合ってみようかな…。

そう思って机を見るとしっかりと完成されているレポートが目に入り、それとともに礼人は昨夜の出来事を思い出す。

昨夜礼人は氷王子と呼ばれる彼と話をし、北瀬きたせ莉杜りとという名前と、彼が一対一でしか他人と話すことができないことを聞いた。

一対一でしか話せないということは、彼にとってきっと簡単に他人に教えられることではないはずだろう。でも、彼は礼人にちゃんと説明をしてくれた。

それに、彼は帰り際親切の理由を“礼人が頑張っていたから”だと言ってくれて。

__…これ、なんだろう…。

また胸が不自然にざわつき、礼人は首を傾げる。

ぎゅっと胸が締め付けられるような、しかしそれでいて不快感は伴っていない、不思議な感覚。

__…もしかして、好き、とか…。でも北瀬先輩は男で…。

ぐるぐると考えを巡らせたものの結局答えは見つからないまま朝日が昇り、あとで葵に会ったら聞いてみようかなと思いつつ礼人は家に帰ったのだった。
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