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第二部

突然の別れ⑤(東弥side)

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__あれ、俺…。

身体が酷く重たい気がする。

自分が今どんな状態か分からなくて、東弥は戸惑いながらもゆっくりまぶたを開いた。

静留はもう起きているだろうか。

「…あっ、東弥、やっと起きた!もう!こんなに寝て!!心配したんだからー。」

目を開いた先、海外にいるはずの母が映って東弥は口をぽかんと開ける。

しかし消毒薬の匂いと今いる部屋を見てなにがあったのかを思い出し、慌てて身体をおこした。

「母さん!静留は!?」

この場にいないのは、ただ単に少し離れているだけなのか、それとも家に帰ってしまったのか。

家に帰ったなら一人で彼が生活していけるわけがないし、そもそも帰れたのかも怪しい。

例えばお手洗いに行っているとして、変な男に絡まれたりしていたら…。

「…しずる?なによ。とりあえずまだ横になってなさい。」

彼のことを知らないような母の口ぶりに、さらに焦る。

「長い黒髪で、すごく綺麗な男の子!いたでしょう!?」

「…ああ、あの子。とりあえず追い出しておいたわよ。」

__追い出した?静留を?

「なんで!!俺の恋人なのに!!」

思わず声を荒げてしまった。

親に対してこんなにも大きな声で反発したのは、人生で初めてかもしれない。

母が唇を尖らせて眉間にシワを寄せる。

「だってあの子Subでしょう?collarもしてないし。大切な相手ならcollarくらい渡すものでしょう?男だし、子供ができてるわけでもあるまいし。」

母に痛いところを突かれて言葉に詰まった。

付き合って半年。まだcollarを渡してないなんておかしい。

それは確かにそうだ。

でも東弥だって静留に自分のパートナーの証であるcollarをつけたいと考えている。

しかしそれには一つ壁があって、結果東弥はまだ静留にcollarを渡すことができていないのだ。

「…collarはいずれ渡すよ。でもともかく俺には静留以外いないんだ。静留が今どこにいるか教えて。」

「知るわけないじゃない。大体あの日ここから出して以来ここには来てないわよ。」

__そんな…。

では今静留はどこにいるのだろうか。

枕元に置いてあったスマートフォンの電源ボタンを押すと、光がついた。

誰が繋いでくれたのかはわからないが、ありがたいことに充電器に繋がれている。

通知を見ると幹斗と谷津から大量のメッセージが入っていた。

ひとまずそれを見て安心した。静留は幹斗の家にいるらしい。

「友達の家にいるみたい。今から行ってくる。」

腕に繋がれている点滴が邪魔で抜こうとすると、母に強く押さえつけられ止められた。

いつものノリでそのまま怒鳴られると思ったが、なぜか突然笑い声が聞こえてきて、東弥は戸惑う。

「なにもおかしくないし、静留に会いに行きたいんだけど。」

「ごめんっ…、なんか嬉しくて。貴方がそんな向こう見ずな行動をするなんて、その子のこと、本当に大切なのね。追い返してごめんなさい。

でもcollarは渡してあげなきゃダメよ。そんなに大切な相手なら尚更、相手に対して不誠実だわ。

あと、無理したらかえって退院までの期間が延びるんだから、ここを抜け出したりしないこと。

あー、とりあえず安心したし先生呼んだら私ホテルに戻るわ。お正月はその子も連れてかえってきなさい。じゃあね。」

母はそのまま軽やかな足取りで東弥に手を振ると、ドアの方へ歩いていった。

「あのっ。」

思わず呼び止めると、彼女が振り向く。

「?」

「…その、…ありがとう。」

「はーい。じゃあね。」

なんとも軽い返事をして、今度こそ出て行ってしまった。

相変わらず嵐のような人だなと思う。

__とりあえず母さんとのことは後で考えるとして…。

母が部屋から出てすぐに、幹斗に連絡を入れた。おそらく昼休みだが大学にいるはずなのでLINEに留めておく。

“すぐに静留君と会いに行く。”

10秒もたたないうちに既読がつき、簡潔なメッセージが返ってきた。

“真鍋さん、入りますよ。”

ノックの音とともに医師が入ってくる。

静留のことを心配しながらも、東弥はスマホを棚の上に置いた。
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