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ss2「サンタさんの正体は」
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ss「サンタさんの正体は」
※テオが会社に勤め始めて1年ほど経った頃のお話です。最近文体を変えたのでテオ視点、三人称になっています。変わってしまい申し訳ありません…。そしてデザイン系の知識は作者にはありません。全て想像上のお話です。
机と椅子と紙とペン。ただそれだけの小さな一室で、窓の外を見てため息をつく。だいたい、デザインなんてこんな何もない部屋にいてもクリスマスをイメージしたデザインなんて思いつくわけがない。
そもそもクリスマスを祝うようになってからまだ10年経っていない自分にクリスマスシーズンのデザイン案なんて任せないでほしい…
他の社員には個室など用意されていないのに、社長にいたく気に入られているようで、テオだけ特別に職場に個室が用意されている。
かえってそれが迷惑になっていることに、当の本人だけが気づいていない。
まだ人がいる方がいくらかマシだ。できれば素材が手元にあった方がいい。1人で何もない部屋で想像力を働かせろなんて、そんなことができるはずもなかった。
…とりあえず外に出よう。
そう思いコートを着かけたところで、とんとん、とノック音が響き、そのまま返事を待たず勢いよくドアが開けられた。
「…返事を待たずに開けたら、ノックの意味がないでしょ…ロナルド…。」
「テオ、また外出?」
「ああ。ちょっと。」
「外は寒いし、働くときは社内にいるものだろ。」
「この何もない部屋で思いつくわけないでしょ…。ここで仕事したくないなんて言わないから、せめて他のデザイナーと同じ扱いにしてくれない?いつも言ってるけど。」
「それだとテオと2人きりで会えない。」
「はいはいわかりましたとりあえず何かアイデアが浮かぶまで出てくる。」
「えー、ちょっとくらい遊ぼ「仕事しなよ。」
「だってテオは外に行くんでしょ?俺も行く。」
「遊びで行くんじゃないし、社長は社長らしく仕事してて。」
「じゃあ、今日ディナーに付き添ってくれる?」
「ごめん、今夜は大切な人と過ごすんだ。」
アシュリーが8時ごろに帰ってきて、今夜は一緒に過ごす約束だ。久しぶりにゆっくり過ごせるな、と思うと、思わず口がほころんでしまう。
明日も、アシュリーが昼からだから、少し遅めの出勤にしてもらった。
「えっ、何その可愛い顔っ!
てか、大切なひとって!?まさか恋人!?聞いてなっ… 」
面倒臭いのでそのまま無理やりドアを閉め部屋を出る。からかっているのか褒めているつもりなのか知らないが、可愛い可愛いとアシュリー以外に言われても男として傷つくだけだ。
ロナルドは2年前から父親を継いで社長になったらしい。ロナルドが社長になってからはかなり業績が伸びたらしく、ここは今では業界最王手と謳われている。
彼の若い発想力は、どこからでも注目を集めている。そしてその発想力もさることながら、彼は非常に口がたつ。
そのうえ(世間曰く)ずば抜けて美しい容姿を持つのだから、自社の商品を纏い歩けばそれだけで宣伝になる始末。ファンも敵も多い。
テオに、「誰が着ても美しいスーツを一緒に作らないか」と持ちかけてきたのも彼だった。
常連客が実は社長(に最近なった人)で、しかもいきなりそんなことを言われたときは、びっくりしたものだ。
年もテオと2つうえで、まだ若い。
ちなみに彼がテオを気に入ってやたらと構うわけには謎が深い。
なんでも、ある日「かわいいね、俺とデートしない?」
なんて非常識なことを言ってきたから断ったら、
「俺の色気に魅了されない人なんているのかって、驚いたよ。男でもこのクオリティーに詰め寄られたら普通なびくだろ。」
と意味不明なことを言われた。
まあ、整った顔立ちはしているよな、と思う。アシュリーには全くかなわないけれど。
そんな迷惑な理由でテオはやたらと興味を持たれているのだった。個室を与えられるし忙しいくせにやたらこっちにきて構ってくれとせがむし夜は奢るからとディナーに誘いたがる。
外に出ると、途端に来た冷気に思わず身震いする。寒い。
「お、テオ、外出かい?今日もかわいいね。私とデートしよう。」
…害悪その2。
こちらは隣のオフィスの副社長。彼もまた、前の店の常連だった。ここで働き始めて職場が隣の建物だと判明したのを境にやたらと構ってくる。
ともかくここにきてからテオはやたらと可愛いという言葉を男女問わず投げかけられていて参っているのだった。
「仕事の邪魔です。」
「じゃあ、仕事終わったらディナーに行かないかい?」
…またか。
「夜は大切な人と過ごす約束があるんです。」
「えっ、そんなことは聞いてな「失礼します。」
満面の営業スマイルで頭を下げると、そそくさと彼から離れる。
もし今日アシュリーと夜過ごす約束がなかったら、睨みつけていたかもしれない。
テオはちょっとした有名人なため、男同士という関係上アシュリーに迷惑がかかるから恋人がいることを隠している。
対して女性への恐怖心はまだ完全には攻略できておらず、会話は成り立つが目を見て話すのは不可能だ。
そのうえ認めるのも癪だが不思議なことに誰からもかわいいかわいいと言われている。
これを総合して、男が好きだというあらぬ疑いをかけられているのだった。いや、アシュリーは男だからあらぬ疑いというわけでもないけれど…
そして迷惑なことに冗談で自社の社長と隣社の副社長に会うたびに口説き文句をささやかれからかわれている…
顔良し業績よし社会からの評判良しの2人が僕なんかをからかう暇があるだなんて、社会って難しい。放っておいてくれればいいのに。
2人が実は本気で口説いていることを知らないテオの感想は、面倒臭いの一言に尽きるのだった。
※テオが会社に勤め始めて1年ほど経った頃のお話です。最近文体を変えたのでテオ視点、三人称になっています。変わってしまい申し訳ありません…。そしてデザイン系の知識は作者にはありません。全て想像上のお話です。
机と椅子と紙とペン。ただそれだけの小さな一室で、窓の外を見てため息をつく。だいたい、デザインなんてこんな何もない部屋にいてもクリスマスをイメージしたデザインなんて思いつくわけがない。
そもそもクリスマスを祝うようになってからまだ10年経っていない自分にクリスマスシーズンのデザイン案なんて任せないでほしい…
他の社員には個室など用意されていないのに、社長にいたく気に入られているようで、テオだけ特別に職場に個室が用意されている。
かえってそれが迷惑になっていることに、当の本人だけが気づいていない。
まだ人がいる方がいくらかマシだ。できれば素材が手元にあった方がいい。1人で何もない部屋で想像力を働かせろなんて、そんなことができるはずもなかった。
…とりあえず外に出よう。
そう思いコートを着かけたところで、とんとん、とノック音が響き、そのまま返事を待たず勢いよくドアが開けられた。
「…返事を待たずに開けたら、ノックの意味がないでしょ…ロナルド…。」
「テオ、また外出?」
「ああ。ちょっと。」
「外は寒いし、働くときは社内にいるものだろ。」
「この何もない部屋で思いつくわけないでしょ…。ここで仕事したくないなんて言わないから、せめて他のデザイナーと同じ扱いにしてくれない?いつも言ってるけど。」
「それだとテオと2人きりで会えない。」
「はいはいわかりましたとりあえず何かアイデアが浮かぶまで出てくる。」
「えー、ちょっとくらい遊ぼ「仕事しなよ。」
「だってテオは外に行くんでしょ?俺も行く。」
「遊びで行くんじゃないし、社長は社長らしく仕事してて。」
「じゃあ、今日ディナーに付き添ってくれる?」
「ごめん、今夜は大切な人と過ごすんだ。」
アシュリーが8時ごろに帰ってきて、今夜は一緒に過ごす約束だ。久しぶりにゆっくり過ごせるな、と思うと、思わず口がほころんでしまう。
明日も、アシュリーが昼からだから、少し遅めの出勤にしてもらった。
「えっ、何その可愛い顔っ!
てか、大切なひとって!?まさか恋人!?聞いてなっ… 」
面倒臭いのでそのまま無理やりドアを閉め部屋を出る。からかっているのか褒めているつもりなのか知らないが、可愛い可愛いとアシュリー以外に言われても男として傷つくだけだ。
ロナルドは2年前から父親を継いで社長になったらしい。ロナルドが社長になってからはかなり業績が伸びたらしく、ここは今では業界最王手と謳われている。
彼の若い発想力は、どこからでも注目を集めている。そしてその発想力もさることながら、彼は非常に口がたつ。
そのうえ(世間曰く)ずば抜けて美しい容姿を持つのだから、自社の商品を纏い歩けばそれだけで宣伝になる始末。ファンも敵も多い。
テオに、「誰が着ても美しいスーツを一緒に作らないか」と持ちかけてきたのも彼だった。
常連客が実は社長(に最近なった人)で、しかもいきなりそんなことを言われたときは、びっくりしたものだ。
年もテオと2つうえで、まだ若い。
ちなみに彼がテオを気に入ってやたらと構うわけには謎が深い。
なんでも、ある日「かわいいね、俺とデートしない?」
なんて非常識なことを言ってきたから断ったら、
「俺の色気に魅了されない人なんているのかって、驚いたよ。男でもこのクオリティーに詰め寄られたら普通なびくだろ。」
と意味不明なことを言われた。
まあ、整った顔立ちはしているよな、と思う。アシュリーには全くかなわないけれど。
そんな迷惑な理由でテオはやたらと興味を持たれているのだった。個室を与えられるし忙しいくせにやたらこっちにきて構ってくれとせがむし夜は奢るからとディナーに誘いたがる。
外に出ると、途端に来た冷気に思わず身震いする。寒い。
「お、テオ、外出かい?今日もかわいいね。私とデートしよう。」
…害悪その2。
こちらは隣のオフィスの副社長。彼もまた、前の店の常連だった。ここで働き始めて職場が隣の建物だと判明したのを境にやたらと構ってくる。
ともかくここにきてからテオはやたらと可愛いという言葉を男女問わず投げかけられていて参っているのだった。
「仕事の邪魔です。」
「じゃあ、仕事終わったらディナーに行かないかい?」
…またか。
「夜は大切な人と過ごす約束があるんです。」
「えっ、そんなことは聞いてな「失礼します。」
満面の営業スマイルで頭を下げると、そそくさと彼から離れる。
もし今日アシュリーと夜過ごす約束がなかったら、睨みつけていたかもしれない。
テオはちょっとした有名人なため、男同士という関係上アシュリーに迷惑がかかるから恋人がいることを隠している。
対して女性への恐怖心はまだ完全には攻略できておらず、会話は成り立つが目を見て話すのは不可能だ。
そのうえ認めるのも癪だが不思議なことに誰からもかわいいかわいいと言われている。
これを総合して、男が好きだというあらぬ疑いをかけられているのだった。いや、アシュリーは男だからあらぬ疑いというわけでもないけれど…
そして迷惑なことに冗談で自社の社長と隣社の副社長に会うたびに口説き文句をささやかれからかわれている…
顔良し業績よし社会からの評判良しの2人が僕なんかをからかう暇があるだなんて、社会って難しい。放っておいてくれればいいのに。
2人が実は本気で口説いていることを知らないテオの感想は、面倒臭いの一言に尽きるのだった。
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