13 / 68
別離
謎のお出かけ
しおりを挟む
「ごめん、今日は一緒に出かけたいから起きて。」
朝日が昇るころにやっと眠りについたのに、朝8時にアシュリーの声がした気がして、昨日の光景がまた脳裏をよぎってぱっちりと目が覚めてしまう。
部屋についている鏡ごしに自分を見るとまだ目が開ききっていないのに、頭はすっきりと覚めていた。むしろ冴えすぎて色々とまた考え始めてしまう。
どこかに出かけると言っていた気がするので(まず今まで彼な起こされたことさえないので彼のことを考えすぎて聞いた空耳かもしれない)、一応顔を洗って歯を磨くと、クローゼットの中を漁って前にアシュリーに着せてもらったコートに合う服を選ぶ。
洋服を脱ごうとするが部屋で着替えると寒すぎるので、暖炉の前で着替えることにして着替えを持って階段を降りる。
「おはよう。出かけるところって?」
アシュリーはもう支度も済ませ、やはりまた変装をしていた。見るのは数回目でもまったく慣れない。
「ちょっと、昨日のパイをくれた知り合いのところに。
少し顔色が悪いね。外出られそう?」
顔色…悪いか?朝自分で鏡を見たときは普通だったと思うけど。
しかし昨日よく寝られなかったのは事実なので、素直にその違いに気づいたというのならさすがだ。
「問題ない。すぐ着替える。」
暖炉のそばで服を温め、着替える。温かくて離れたくなくなってしまうので、素早く。
「終わった。」
「じゃあ、行こうか。」
コートを着て、前も履いたブーツを履いて外へ出る。そしてなんらかの違和感を覚えた。
何がおかしいのだろう。前と同じように繋いだ手、変装したアシュリー、家から出て歩く道さえも、同じだ。…耳元のピアス?…でもないか。
彼の手に引かれ、商店街を抜け、その先へ進んでいく。そして、おかしさの意味に気づいた。
アシュリーがさっきから一度も話していないのだ。そしてなんとなく彼の歩く速さも前と比べて遅い気がする。
昨日のこともありなんとなく彼と目を合わせるのを避けていたのだが、まったく彼の顔が見えなかったのは自分が避けていたせいだけではないだろう。
「アシュリー、こっち向いて。」
「え?あ、ああ…。」
彼は決まり悪そうにこっちを向くと、すぐに違う方を向こうとした。僕はそれに構わず両頬にしっかり手を当てて固定し、じっと顔覗き込む。
「…どうして泣いてるの。」
真っ赤に腫れた目は、寒さのせいだと思う主張するには大げさすぎる。おまけに頬にはくっきり涙痕があり、心なしか目元が潤んでいる。
「結構ピアスが痛くて。」
「昨日は痛そうじゃなかった。」
「寝ている間に結構擦れたみたいで。」
「そんなに寝相悪くないでしょ?」
「寒くて。」
「いきなり変えたってことはさっきのは嘘?」
「…ごめん。」
俯いて謝られても、何を謝られているのかわからない。
その理由を嘘でごまかすようなことで泣いていたのだ。嘘をついたことにあやまったのか、僕に言えないからあやまったことなのか。
「ついた先で、話すから。」
そう告げる声は震えているように感じて、それ以上何も言えなくなった。静かに雪が降り注ぐ中で、アシュリーの手に引かれながら、無言でゆっくりと歩いていく。
朝日が昇るころにやっと眠りについたのに、朝8時にアシュリーの声がした気がして、昨日の光景がまた脳裏をよぎってぱっちりと目が覚めてしまう。
部屋についている鏡ごしに自分を見るとまだ目が開ききっていないのに、頭はすっきりと覚めていた。むしろ冴えすぎて色々とまた考え始めてしまう。
どこかに出かけると言っていた気がするので(まず今まで彼な起こされたことさえないので彼のことを考えすぎて聞いた空耳かもしれない)、一応顔を洗って歯を磨くと、クローゼットの中を漁って前にアシュリーに着せてもらったコートに合う服を選ぶ。
洋服を脱ごうとするが部屋で着替えると寒すぎるので、暖炉の前で着替えることにして着替えを持って階段を降りる。
「おはよう。出かけるところって?」
アシュリーはもう支度も済ませ、やはりまた変装をしていた。見るのは数回目でもまったく慣れない。
「ちょっと、昨日のパイをくれた知り合いのところに。
少し顔色が悪いね。外出られそう?」
顔色…悪いか?朝自分で鏡を見たときは普通だったと思うけど。
しかし昨日よく寝られなかったのは事実なので、素直にその違いに気づいたというのならさすがだ。
「問題ない。すぐ着替える。」
暖炉のそばで服を温め、着替える。温かくて離れたくなくなってしまうので、素早く。
「終わった。」
「じゃあ、行こうか。」
コートを着て、前も履いたブーツを履いて外へ出る。そしてなんらかの違和感を覚えた。
何がおかしいのだろう。前と同じように繋いだ手、変装したアシュリー、家から出て歩く道さえも、同じだ。…耳元のピアス?…でもないか。
彼の手に引かれ、商店街を抜け、その先へ進んでいく。そして、おかしさの意味に気づいた。
アシュリーがさっきから一度も話していないのだ。そしてなんとなく彼の歩く速さも前と比べて遅い気がする。
昨日のこともありなんとなく彼と目を合わせるのを避けていたのだが、まったく彼の顔が見えなかったのは自分が避けていたせいだけではないだろう。
「アシュリー、こっち向いて。」
「え?あ、ああ…。」
彼は決まり悪そうにこっちを向くと、すぐに違う方を向こうとした。僕はそれに構わず両頬にしっかり手を当てて固定し、じっと顔覗き込む。
「…どうして泣いてるの。」
真っ赤に腫れた目は、寒さのせいだと思う主張するには大げさすぎる。おまけに頬にはくっきり涙痕があり、心なしか目元が潤んでいる。
「結構ピアスが痛くて。」
「昨日は痛そうじゃなかった。」
「寝ている間に結構擦れたみたいで。」
「そんなに寝相悪くないでしょ?」
「寒くて。」
「いきなり変えたってことはさっきのは嘘?」
「…ごめん。」
俯いて謝られても、何を謝られているのかわからない。
その理由を嘘でごまかすようなことで泣いていたのだ。嘘をついたことにあやまったのか、僕に言えないからあやまったことなのか。
「ついた先で、話すから。」
そう告げる声は震えているように感じて、それ以上何も言えなくなった。静かに雪が降り注ぐ中で、アシュリーの手に引かれながら、無言でゆっくりと歩いていく。
0
お気に入りに追加
67
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
お兄ちゃんはお兄ちゃんだけど、お兄ちゃんなのにお兄ちゃんじゃない!?
すずなり。
恋愛
幼いころ、母に施設に預けられた鈴(すず)。
お母さん「病気を治して迎えにくるから待ってて?」
その母は・・迎えにくることは無かった。
代わりに迎えに来た『父』と『兄』。
私の引き取り先は『本当の家』だった。
お父さん「鈴の家だよ?」
鈴「私・・一緒に暮らしていいんでしょうか・・。」
新しい家で始まる生活。
でも私は・・・お母さんの病気の遺伝子を受け継いでる・・・。
鈴「うぁ・・・・。」
兄「鈴!?」
倒れることが多くなっていく日々・・・。
そんな中でも『恋』は私の都合なんて考えてくれない。
『もう・・妹にみれない・・・。』
『お兄ちゃん・・・。』
「お前のこと、施設にいたころから好きだった・・・!」
「ーーーーっ!」
※本編には病名や治療法、薬などいろいろ出てきますが、全て想像の世界のお話です。現実世界とは一切関係ありません。
※コメントや感想などは受け付けることはできません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
※孤児、脱字などチェックはしてますが漏れもあります。ご容赦ください。
※表現不足なども重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけたら幸いです。(それはもう『へぇー・・』ぐらいに。)
3人の弟に逆らえない
ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。
主人公:高校2年生の瑠璃
長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。
次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。
三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい?
3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。
しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか?
そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。
調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
女装とメス調教をさせられ、担任だった教師の亡くなった奥さんの代わりをさせられる元教え子の男
湊戸アサギリ
BL
また女装メス調教です。見ていただきありがとうございます。
何も知らない息子視点です。今回はエロ無しです。他の作品もよろしくお願いします。
【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】
海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。
発情期はあるのに妊娠ができない。
番を作ることさえ叶わない。
そんなΩとして生まれた少年の生活は
荒んだものでした。
親には疎まれ味方なんて居ない。
「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」
少年達はそう言って玩具にしました。
誰も救えない
誰も救ってくれない
いっそ消えてしまった方が楽だ。
旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは
「噂の玩具君だろ?」
陽キャの三年生でした。
イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?
すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。
病院で診てくれた医師は幼馴染みだった!
「こんなにかわいくなって・・・。」
10年ぶりに再会した私たち。
お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。
かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」
幼馴染『千秋』。
通称『ちーちゃん』。
きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。
千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」
自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。
ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」
かざねは悩む。
かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?)
※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。
想像の中だけでお楽しみください。
※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。
すずなり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる