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一章〜ギルド設立を目指して〜
十一話 冒険者適正⑥
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★
次の日ーー。
日暮れ前になり、テントから私達は移動した。
試験監視官の元へ向かうと、そこには既に他のチームが集まり私達『15』番が最後だった。
「遅いじゃないか君達」
「あっれ。今日は昨日の奴と違うんな」
「試験内容毎に違う。今日は、チーム対抗で崖の上のフラッグを取ってもらう、フラッグ争奪戦だ。だから私だ」
「いや、しんねーし」
昼寝していたシュートは、あくびしながら鼻をほじり、自分から振っておいて全く聞き耳を立てていない。
自由気まま、悪く言えば自由奔放ーー個性派揃いの私達は、遅刻よろしくの迷惑チーム。そんな空気が作られている。
でもそんなのお構いなし、むしろ気にも止めない。
ネネが唯一の常識人であることが、大遅刻を免れることに繋がったが、それでも遅刻しているのでそのうち失格処分を受けるがオチな気がする。
それはさておき、私達が集まったところで監視官は咳払いして、今日の試験内容に入る。
「ええ、じゃあ全チーム揃ったところで今日の試験内容に入る」
「はい、先生!」
「……黙っていることはできないか君達。なんだ」
「何で夜ばっかなんですか、そこから説明してください」
私が手を挙げ、質問すると監視官はため息を大きく吐いた。
「夜は危険がつきものとなる。だからこそチームワークが試される、それだけだ」
「納得です、先生! 話を止めてしまい、申し訳ありませんでしたっ!」
「うむ。ーーああ、そうだ。昨夜、5番チームがズタボロにされ、試験続行が不可能となった。何処のチームとやり合ったかーーやり合ったチームは手を挙げるように」
昨夜、私達は『5』とやり合っている。
しかし、あれはやり合ったというのではなく、追っ払ったが正しい。
それでも、やり合ったと言われるのなら手を挙げるしかなかった。
手を挙げると、周りから色々な声が飛び交い出す。
ーーマジか、あの荒くれチームを?
ーーねえ、あの赤髪って……。
ーー俺昨日たまたま見たけど、あのリーダーの小娘……。
ーーもしかして、強いの?
私達に全視線が向けられる。
ネネが怯えきってしまい、私の背中に隠れフードを深々と被ってしまった。
私達を勝手に注目するのは勝手だ。しかしそれで、こうして怯える子がいることに気づいて欲しい。
そして、『5』だか5番だか、あのチームは確かに荒くれチームだったがそこら辺でうじゃうじゃ生きている小型モンスター並でしかないーーそのことにも気づくべきだ。
「……君達がやったのか」
「殺してはいないから、ノー問題でしょ?」
「ルール上、そうだな。いや、あいつら何処とやり合ったか聞くと黙ったのでな、うん、把握した。で、今日の試験内容について話を戻すーー今日は、フラッグ争奪戦。チームワークが昨日以上に試されることとなる」
話が一気に、無理矢理に戻された。
私達は手を下ろし、話が長くなりそうだとその場に勝手に座り込む。
監視官は私達が座り込んだので、困ったと頭を抱えため息を吐き、
「じゃあ簡潔に纏めよう」
「ありがとうございまーす」
「君達なあ……! んっんんんっ! えー、フラッグは崖上に刺してあり、赤色だ。フラッグを手にしたら終わりではなく、ここまで持ち帰ってくること。いつ何時でも奪い合うことを許可とし、チームワークをフルに発揮して頑張ってくれ。何か質問は?」
ーーはい、ですよ。
私の傍らから、ネネが手を挙げた。
「あのう、もしそれで、フラッグを手にする以外の他のチーム全てが試験続行不可能となったら……どうなるのですよ?」
「そんなことが現実に起こるわけないだろ? まあ、そうなった場合はその時点で試験は強制終了となるだけだ」
「じゃあ手加減いらないねー」
「だな。うーし、早速やろうぜ」
「そうね。それなら遠慮はいらないわね」
「き、君達……」
監視官は肩を落とす。
やる気満々ーーみんなそれぞれ、使う身体の節々をほぐしだす。
周りは、私達は異常だと空気で察する。
フラッグ争奪戦ーーつまり、喧嘩よろしくの取り合い。
それを好むかのように、それが楽勝であるかのように、私達は四人が四人共、笑っている。ネネだけは苦笑だけど。
「あまり調子に乗って怪我するなよ。まだ最終の明日があるんだ」
「心配御無用」
「明日は多分ないわあ」
「あーでも、そうしたら明日暇になっちゃうから、手加減して明日も残さないとーーなんて、甘い事誰が言うかっての!」
「い、行きますですよ~!」
合図がされていないのに、私達は勝手にここから見える崖に向かって私のランタン一つで向かいだす。
「おーい! まだ合図……はあ。勝手な野郎達だ、では始め……」
後ろから元気の無い監視官の声が聞こえてきた。
多分、自由奔放過ぎる私達に呆れきったか疲れたかのどちらかだ。
監視官が試験開始としたので、私達の後方からは当然足音が響き近づいてくる。
「じゃあ俺達も走るかー」
「仕方ないわね」
「良いじゃない、たまには。さてーー飛ばすわよー!」
「は、はいなのですよー!」
全員、クラウチングスタートで構えた。
後方から走ってくる大勢の冒険者が私達を避けて走り抜けて行くーー。
が、それも数秒のことーー。
「魔力を足に集中ーー」
「飛ばすわよ? 崖についたら、一気に駆け上がる」
「フラッグ取ったら後は行く手を阻む者全てタコ殴り」
「明日はないのですよ」
足に魔力が集中していき、全員の脹脛と太腿から赤色のオーラが発生する。
リーダーの私が先頭を走ることは、当然だった。
私が走り出すのを合図に、三人も着いてスタートを切った。
一番後ろから、一瞬で風の如く人混みを走り抜け、私達は最前線へと抜け出した。
一番前に出てからも、そのまま失速せず速度を持続して崖に突っ込んでいく。
崖は地面と垂直にできており、大きさが不揃いの岩でできている。
勢いのみで登る必要がある。
ロッククライミングで呑気にフラッグを目指していたら、何処かで小岩などが崩れ登り直しがオチだ。
今や人間ロケットとなった私達は、他のチームに差を大きくつけて試験開始からものの少しで崖の前に到着した。
そして、ここからは男のシュートが頑張る番となった。
シュートが先頭に入れ替わり、崖を登っていく。
私達は速度を落とし、後ろから着いていく。
「ーーあ、やべっ」
私の前に居るシュートが、小さく声を漏らした。
「悪い、足滑らかした。ごめんちゃい?」
「ええええ!?」
シュートが足を滑らかし、私に向かって背中から落ちてくる。
咄嗟のことで驚いたが、私はシュートを抱きしめ、体勢を立て直して着地に入る。
ネネとアリアータは言うまでもなく流石ーー。
二人はしっかりと私の動きに反応して、崖を一蹴りし反転して正面から着地に入る。
先に着地した二人が、私とシュートを受け止めてくれる。
「わ、悪い……足、攣った……」
「馬鹿! あれで死んだらどうするつもりよ、私達泣くわよっ!?」
「アハハ……死なねーよ流石に……」
シュートは空見上げながら、笑う。
その間に、ぞろぞろと追い着いてきた他のチームが崖を一斉に登りだす。
足が遅い冒険者達はまだまだ崖に向かって走ってきているがーーやっと追い着いてきてくれた。そう思った。
「今だ! あいつらが動けない間にーー」
「フラッグを取れーー」
「我らが先にフラッグをーー」
各チームのリーダー達が、崖を登りながら士気を上げようと声を貼る。
しかしーー彼ら彼女らは、気づく。
崖の下から、一匹の猫が崖を軽快にーーそれは舞うように登ってくることを。
「ーー茶番は終わりよっ! 明日は無いってーー言ったじゃない?」
「行くですよおおおお! ニャアアアア!!」
ネネの手足は、猫のように変化しており肉球もある。だから崖を登っても、衝撃が吸収され、それを猫族特有の変化魔法を使い筋肉を強化していく。
登っていくにつれ、速度が上がっていく。
そして、とうとうネネは崖を仲良く横一列に登る他のチームのリーダー達と同じ高さまで登った。
「なんだあいつーー……まさか、猫族!?」
「ニャッハハハハッ! そうなのですよ、猫族なのですよ! ニャッハハハハッ! ニャア……ごめんなさいですよ、手加減できないーーですよっ!?」
ネネはピョンと、崖の頂上目掛けて真っ縦にジャンプする。
「やってやりなさーいネネ!」
ここにきて、明かすとしよう。
シュートが崖から落ちるアクシデントは最初から仕組んでいたもので、他のチームの冒険者を崖に登らせるための芝居だった。
そもそも、二日目の試験内容がフラッグ争奪戦であることは今日の今朝には分かっていた。
目の良いアリアータが、凝らして見てくれた際、既にフラッグが刺さっていたのだ。
何故崖を見たのかーーそれについては触れて欲しくない。
まあ、ロマンチックな試験後の思い出浸りの場所に、この崖を使ってみようかなーーとかなんとか。それだけのこと。
「ーーと、リーダーから言われてはやるしかないですよ。ニャッハハハハッ! ニャンドレイン……!」
ネネは崖の中腹より少し上の辺りで、爪を岩に食い込ませて地面に向いて止まった。
岩に爪を食い込ませているとはいえ、重力に逆らってはいないだろうか?
「ドレインーー? ……やばい! 全員引け!」
ドレインと聞き、一人の女リーダーが男らしい低い声で叫んだ。
叫んだには叫んだーーが、その時には遅かった。
ネネのニャンドレインは、放たれる微粒の電磁波が人に触れ、すると皮膚から精気を吸い取る。
エナジードレインの猫バージョン。
伝説上の怪物である、吸血鬼が血を飲む際に使うのがエナジードレインとも言われている。
ネネのニャンドレインは、崖を登る者に次々触れていき精気を吸い取っていく。
精気を吸い取られた冒険者達は、岩のように崖から落ちていき、下の冒険者達に受け止められる。
「ニャッハハハハッ! フラッグゲットなのですよー」
いつの間にか目を黄金色に輝かせ、尻尾も生やしたネネは猫のように頬を手ですりすりしながら、フラッグを上着の中に旗の部分だけ見せて仕舞っていた。
次の日ーー。
日暮れ前になり、テントから私達は移動した。
試験監視官の元へ向かうと、そこには既に他のチームが集まり私達『15』番が最後だった。
「遅いじゃないか君達」
「あっれ。今日は昨日の奴と違うんな」
「試験内容毎に違う。今日は、チーム対抗で崖の上のフラッグを取ってもらう、フラッグ争奪戦だ。だから私だ」
「いや、しんねーし」
昼寝していたシュートは、あくびしながら鼻をほじり、自分から振っておいて全く聞き耳を立てていない。
自由気まま、悪く言えば自由奔放ーー個性派揃いの私達は、遅刻よろしくの迷惑チーム。そんな空気が作られている。
でもそんなのお構いなし、むしろ気にも止めない。
ネネが唯一の常識人であることが、大遅刻を免れることに繋がったが、それでも遅刻しているのでそのうち失格処分を受けるがオチな気がする。
それはさておき、私達が集まったところで監視官は咳払いして、今日の試験内容に入る。
「ええ、じゃあ全チーム揃ったところで今日の試験内容に入る」
「はい、先生!」
「……黙っていることはできないか君達。なんだ」
「何で夜ばっかなんですか、そこから説明してください」
私が手を挙げ、質問すると監視官はため息を大きく吐いた。
「夜は危険がつきものとなる。だからこそチームワークが試される、それだけだ」
「納得です、先生! 話を止めてしまい、申し訳ありませんでしたっ!」
「うむ。ーーああ、そうだ。昨夜、5番チームがズタボロにされ、試験続行が不可能となった。何処のチームとやり合ったかーーやり合ったチームは手を挙げるように」
昨夜、私達は『5』とやり合っている。
しかし、あれはやり合ったというのではなく、追っ払ったが正しい。
それでも、やり合ったと言われるのなら手を挙げるしかなかった。
手を挙げると、周りから色々な声が飛び交い出す。
ーーマジか、あの荒くれチームを?
ーーねえ、あの赤髪って……。
ーー俺昨日たまたま見たけど、あのリーダーの小娘……。
ーーもしかして、強いの?
私達に全視線が向けられる。
ネネが怯えきってしまい、私の背中に隠れフードを深々と被ってしまった。
私達を勝手に注目するのは勝手だ。しかしそれで、こうして怯える子がいることに気づいて欲しい。
そして、『5』だか5番だか、あのチームは確かに荒くれチームだったがそこら辺でうじゃうじゃ生きている小型モンスター並でしかないーーそのことにも気づくべきだ。
「……君達がやったのか」
「殺してはいないから、ノー問題でしょ?」
「ルール上、そうだな。いや、あいつら何処とやり合ったか聞くと黙ったのでな、うん、把握した。で、今日の試験内容について話を戻すーー今日は、フラッグ争奪戦。チームワークが昨日以上に試されることとなる」
話が一気に、無理矢理に戻された。
私達は手を下ろし、話が長くなりそうだとその場に勝手に座り込む。
監視官は私達が座り込んだので、困ったと頭を抱えため息を吐き、
「じゃあ簡潔に纏めよう」
「ありがとうございまーす」
「君達なあ……! んっんんんっ! えー、フラッグは崖上に刺してあり、赤色だ。フラッグを手にしたら終わりではなく、ここまで持ち帰ってくること。いつ何時でも奪い合うことを許可とし、チームワークをフルに発揮して頑張ってくれ。何か質問は?」
ーーはい、ですよ。
私の傍らから、ネネが手を挙げた。
「あのう、もしそれで、フラッグを手にする以外の他のチーム全てが試験続行不可能となったら……どうなるのですよ?」
「そんなことが現実に起こるわけないだろ? まあ、そうなった場合はその時点で試験は強制終了となるだけだ」
「じゃあ手加減いらないねー」
「だな。うーし、早速やろうぜ」
「そうね。それなら遠慮はいらないわね」
「き、君達……」
監視官は肩を落とす。
やる気満々ーーみんなそれぞれ、使う身体の節々をほぐしだす。
周りは、私達は異常だと空気で察する。
フラッグ争奪戦ーーつまり、喧嘩よろしくの取り合い。
それを好むかのように、それが楽勝であるかのように、私達は四人が四人共、笑っている。ネネだけは苦笑だけど。
「あまり調子に乗って怪我するなよ。まだ最終の明日があるんだ」
「心配御無用」
「明日は多分ないわあ」
「あーでも、そうしたら明日暇になっちゃうから、手加減して明日も残さないとーーなんて、甘い事誰が言うかっての!」
「い、行きますですよ~!」
合図がされていないのに、私達は勝手にここから見える崖に向かって私のランタン一つで向かいだす。
「おーい! まだ合図……はあ。勝手な野郎達だ、では始め……」
後ろから元気の無い監視官の声が聞こえてきた。
多分、自由奔放過ぎる私達に呆れきったか疲れたかのどちらかだ。
監視官が試験開始としたので、私達の後方からは当然足音が響き近づいてくる。
「じゃあ俺達も走るかー」
「仕方ないわね」
「良いじゃない、たまには。さてーー飛ばすわよー!」
「は、はいなのですよー!」
全員、クラウチングスタートで構えた。
後方から走ってくる大勢の冒険者が私達を避けて走り抜けて行くーー。
が、それも数秒のことーー。
「魔力を足に集中ーー」
「飛ばすわよ? 崖についたら、一気に駆け上がる」
「フラッグ取ったら後は行く手を阻む者全てタコ殴り」
「明日はないのですよ」
足に魔力が集中していき、全員の脹脛と太腿から赤色のオーラが発生する。
リーダーの私が先頭を走ることは、当然だった。
私が走り出すのを合図に、三人も着いてスタートを切った。
一番後ろから、一瞬で風の如く人混みを走り抜け、私達は最前線へと抜け出した。
一番前に出てからも、そのまま失速せず速度を持続して崖に突っ込んでいく。
崖は地面と垂直にできており、大きさが不揃いの岩でできている。
勢いのみで登る必要がある。
ロッククライミングで呑気にフラッグを目指していたら、何処かで小岩などが崩れ登り直しがオチだ。
今や人間ロケットとなった私達は、他のチームに差を大きくつけて試験開始からものの少しで崖の前に到着した。
そして、ここからは男のシュートが頑張る番となった。
シュートが先頭に入れ替わり、崖を登っていく。
私達は速度を落とし、後ろから着いていく。
「ーーあ、やべっ」
私の前に居るシュートが、小さく声を漏らした。
「悪い、足滑らかした。ごめんちゃい?」
「ええええ!?」
シュートが足を滑らかし、私に向かって背中から落ちてくる。
咄嗟のことで驚いたが、私はシュートを抱きしめ、体勢を立て直して着地に入る。
ネネとアリアータは言うまでもなく流石ーー。
二人はしっかりと私の動きに反応して、崖を一蹴りし反転して正面から着地に入る。
先に着地した二人が、私とシュートを受け止めてくれる。
「わ、悪い……足、攣った……」
「馬鹿! あれで死んだらどうするつもりよ、私達泣くわよっ!?」
「アハハ……死なねーよ流石に……」
シュートは空見上げながら、笑う。
その間に、ぞろぞろと追い着いてきた他のチームが崖を一斉に登りだす。
足が遅い冒険者達はまだまだ崖に向かって走ってきているがーーやっと追い着いてきてくれた。そう思った。
「今だ! あいつらが動けない間にーー」
「フラッグを取れーー」
「我らが先にフラッグをーー」
各チームのリーダー達が、崖を登りながら士気を上げようと声を貼る。
しかしーー彼ら彼女らは、気づく。
崖の下から、一匹の猫が崖を軽快にーーそれは舞うように登ってくることを。
「ーー茶番は終わりよっ! 明日は無いってーー言ったじゃない?」
「行くですよおおおお! ニャアアアア!!」
ネネの手足は、猫のように変化しており肉球もある。だから崖を登っても、衝撃が吸収され、それを猫族特有の変化魔法を使い筋肉を強化していく。
登っていくにつれ、速度が上がっていく。
そして、とうとうネネは崖を仲良く横一列に登る他のチームのリーダー達と同じ高さまで登った。
「なんだあいつーー……まさか、猫族!?」
「ニャッハハハハッ! そうなのですよ、猫族なのですよ! ニャッハハハハッ! ニャア……ごめんなさいですよ、手加減できないーーですよっ!?」
ネネはピョンと、崖の頂上目掛けて真っ縦にジャンプする。
「やってやりなさーいネネ!」
ここにきて、明かすとしよう。
シュートが崖から落ちるアクシデントは最初から仕組んでいたもので、他のチームの冒険者を崖に登らせるための芝居だった。
そもそも、二日目の試験内容がフラッグ争奪戦であることは今日の今朝には分かっていた。
目の良いアリアータが、凝らして見てくれた際、既にフラッグが刺さっていたのだ。
何故崖を見たのかーーそれについては触れて欲しくない。
まあ、ロマンチックな試験後の思い出浸りの場所に、この崖を使ってみようかなーーとかなんとか。それだけのこと。
「ーーと、リーダーから言われてはやるしかないですよ。ニャッハハハハッ! ニャンドレイン……!」
ネネは崖の中腹より少し上の辺りで、爪を岩に食い込ませて地面に向いて止まった。
岩に爪を食い込ませているとはいえ、重力に逆らってはいないだろうか?
「ドレインーー? ……やばい! 全員引け!」
ドレインと聞き、一人の女リーダーが男らしい低い声で叫んだ。
叫んだには叫んだーーが、その時には遅かった。
ネネのニャンドレインは、放たれる微粒の電磁波が人に触れ、すると皮膚から精気を吸い取る。
エナジードレインの猫バージョン。
伝説上の怪物である、吸血鬼が血を飲む際に使うのがエナジードレインとも言われている。
ネネのニャンドレインは、崖を登る者に次々触れていき精気を吸い取っていく。
精気を吸い取られた冒険者達は、岩のように崖から落ちていき、下の冒険者達に受け止められる。
「ニャッハハハハッ! フラッグゲットなのですよー」
いつの間にか目を黄金色に輝かせ、尻尾も生やしたネネは猫のように頬を手ですりすりしながら、フラッグを上着の中に旗の部分だけ見せて仕舞っていた。
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