上 下
67 / 99
第6章 魔法学校の章

第67話 王都に向かった

しおりを挟む
 俺とキサラは今のところ順調に王都へと向かっていた。ロングウッドから王都アステアールまでは馬車で約10日というところだ。

 途中いくつかの街を通ったが、咎められることもなく普通に通過できた。俺への手配書か回収されたのかも知れない。

 ということは『赤い太陽の雫』は無事シルザール公の手元に戻ったという事だろう。

 あれ?何か忘れてないか?

「あっ」

「どうなさいました、コータロー様」

「いや、ちょっと嫌なことを思い出しただけだ」

「嫌なこと?」

「そうだ。『赤い太陽の雫』の件は師匠がちゃんと立ち回ってくれたんじゃないかと思うんだが、もう一つ俺か手配されていることを思い出した」

「ああ、セリス様のことですね」

「今でも俺はセリス誘拐の犯人、それも二度も攫った凶悪犯だと思われているかも知れない」

 ダンテが上手く俺の関与を否定してくれていればいいんだが、俺の手配がそのままの可能性も高い。今のところ、どこの街でも捕まったりはしていないので、手配が取り下げられた可能性もあるにはあるんだが。

「でも、それは事実では?」

「事実だなぁ、間違いなく俺が犯人だ」

「まあ逃げるしかないですね」

 キサラは割と厳しい。

 旅は順調だった。こんなに順調だと逆に何か起こって欲しい気分にさえなる。

 そしてとうとうアステアールに着いてしまった。

 アステアールに着いのでまずは落ち着ける先を探す。ボワール商会の建物の一部を使わせてもらえることになった。勿論キサラの手配だ。ワリス・ボワール伯爵からも連絡がちゃんと来ていて助かった。

「で、コータロー様、王都で何をされるおつもりですか?」

 道中、キサラの魔法修行はちゃんとして来たが王都に向かう目的は何も伝えていなかった。

「いや、特に何も考えていない」

 これは本当だった。まあ何となくエル・ドアンの顔でも見れれば、とかは考えていたんだが。

「魔法学校にでも行ってみようか」

 キサラと出来れば俺も魔法学校に入学でもできればいいのだが、どうすれば入学できるのか判らない。せめてキサラだけでも入学できれば彼女の修行には効果があるだろう。

「魔法学校ですか。一応私は地方の魔法学校は出ているのですが」

「そうなのか」

「ええ。私の出身は南方のロスドルという街なのですが、そこにも魔法学校があって、一応そこを卒業してからボワール家にお世話になっていました。元々孤児だった私を魔法学校に入れてくださったのが伯爵様だったんです」

 ワリスさんは足長おじさんみたいなことをやってたのか。ただの商売人では無いな。

「じゃあ恩は返さないとな」

「はい。そのためにコータロー様の元で修業をさせてもらことにしたんですから、せめて上級になって伯爵様のお役に立ちたいのです」

「特級まで行くか?」

 今の俺は何級なんだろう、とか思いながらキサラを炊き付ける。

「私が特級?飛んでもない」

「ちゃんと真面目に取り組めば行けるんじゃないか?」

「中級と上級には相当な開きがあるんですよ。上級と特級にはもっとです。昇級試験なんて難しくてなかなか通りません」

 そうか、級を確定するには試験が有るのか。それすら知らなかった。

「試験があるんだな」

「そうです。中級までは地方の魔法学校でも受験できますが上級からは王都でしか試験が受けられません。だからいつかは私も王都に来て試験を受けたいとは思っていたんです」

 俺の提案は渡りに船だったのか。

「今のキサラなら上級でも行けるんじゃないか?」

 俺は無責任なことを言う。自分の階級も判っていないのだ。

「そんなことは無いと思いますよ。でもコータロー様は上級は余裕だと思いますが」

「そうなのか?俺は独学だからそのあたりが全く判らないんだが」

「えっ、独学なんですか?ヴァルドア様の弟子じゃなかったですか?」

「師匠は師匠だけど、それほど教えて貰ってないからな」

 伝説級魔法士ヴァルドア・サンザールからはもっと色々と教えてもらいたかったがバタバタしてあまり修行を付けてもらえなかった。

「なんとか王都の魔法学校に入学できないものかな」

「それならコータロー様なら問題ないと思いますよ。入学にも試験は有りますが絶対通ると思います」

「そんなに簡単な試験なのか?」

「そうですね、コータロー様の場合、その以上に多いマナの量だけでも通りそうです」

「じゃあ一回一緒に上級を受けてみるか」

「そうですね、私も今の実力を測るためにはいいかも知れません。一緒に受けてみましょう」

 こうして俺とキサラは王都で魔法士の昇級試験を受けることになった。 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

クラス転移したひきこもり、僕だけシステムがゲームと同じなんですが・・・ログアウトしたら地球に帰れるみたいです

こたろう文庫
ファンタジー
学校をズル休みしてオンラインゲームをプレイするクオンこと斉藤悠人は、登校していなかったのにも関わらずクラス転移させられた。 異世界に来たはずなのに、ステータス画面はさっきやっていたゲームそのもので…。

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

月が導く異世界道中extra

あずみ 圭
ファンタジー
 月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。  真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。  彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。  これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。  こちらは月が導く異世界道中番外編になります。

序盤でボコられるクズ悪役貴族に転生した俺、死にたくなくて強くなったら主人公にキレられました。え? お前も転生者だったの? そんなの知らんし〜

水間ノボル🐳
ファンタジー
↑「お気に入りに追加」を押してくださいっ!↑ ★2024/2/25〜3/3 男性向けホットランキング1位! ★2024/2/25 ファンタジージャンル1位!(24hポイント) 「主人公が俺を殺そうとしてくるがもう遅い。なぜか最強キャラにされていた~」 『醜い豚』  『最低のゴミクズ』 『無能の恥晒し』  18禁ゲーム「ドミナント・タクティクス」のクズ悪役貴族、アルフォンス・フォン・ヴァリエに転生した俺。  優れた魔術師の血統でありながら、アルフォンスは豚のようにデブっており、性格は傲慢かつ怠惰。しかも女の子を痛ぶるのが性癖のゴミクズ。  魔術の鍛錬はまったくしてないから、戦闘でもクソ雑魚であった。    ゲーム序盤で主人公にボコられて、悪事を暴かれて断罪される、ざまぁ対象であった。  プレイヤーをスカッとさせるためだけの存在。  そんな破滅の運命を回避するため、俺はレベルを上げまくって強くなる。  ついでに痩せて、女の子にも優しくなったら……なぜか主人公がキレ始めて。 「主人公は俺なのに……」 「うん。キミが主人公だ」 「お前のせいで原作が壊れた。絶対に許さない。お前を殺す」 「理不尽すぎません?」  原作原理主義の主人公が、俺を殺そうとしてきたのだが。 ※ カクヨム様にて、異世界ファンタジージャンル表紙入り。5000スター、10000フォロワーを達成!

はずれスキル『模倣』で廃村スローライフ!

さとう
ファンタジー
異世界にクラス丸ごと召喚され、一人一つずつスキルを与えられたけど……俺、有馬慧(ありまけい)のスキルは『模倣』でした。おかげで、クラスのカースト上位連中が持つ『勇者』や『聖女』や『賢者』をコピーしまくったが……自分たちが活躍できないとの理由でカースト上位連中にハメられ、なんと追放されてしまう。 しかも、追放先はとっくの昔に滅んだ廃村……しかもしかも、せっかくコピーしたスキルは初期化されてしまった。 とりあえず、廃村でしばらく暮らすことを決意したのだが、俺に前に『女神の遣い』とかいう猫が現れこう言った。 『女神様、あんたに頼みたいことあるんだって』 これは……異世界召喚の真実を知った俺、有馬慧が送る廃村スローライフ。そして、魔王討伐とかやってるクラスメイトたちがいかに小さいことで騒いでいるのかを知る物語。

特殊スキル持ちの低ランク冒険者の少年は、勇者パーティーから追い出される際に散々罵しった癖に能力が惜しくなって戻れって…頭は大丈夫か?

アノマロカリス
ファンタジー
少年テイトは特殊スキルの持ち主だった。 どんなスキルかというと…? 本人でも把握出来ない程に多いスキルなのだが、パーティーでは大して役には立たなかった。 パーティーで役立つスキルといえば、【獲得経験値数○倍】という物だった。 だが、このスキルには欠点が有り…テイトに経験値がほとんど入らない代わりに、メンバーには大量に作用するという物だった。 テイトの村で育った子供達で冒険者になり、パーティーを組んで活躍し、更にはリーダーが国王陛下に認められて勇者の称号を得た。 勇者パーティーは、活躍の場を広げて有名になる一方…レベルやランクがいつまでも低いテイトを疎ましく思っていた。 そしてリーダーは、テイトをパーティーから追い出した。 ところが…勇者パーティーはのちに後悔する事になる。 テイトのスキルの【獲得経験値数○倍】の本当の効果を… 8月5日0:30… HOTランキング3位に浮上しました。 8月5日5:00… HOTランキング2位になりました! 8月5日13:00… HOTランキング1位になりました(๑╹ω╹๑ ) 皆様の応援のおかげです(つД`)ノ

処理中です...