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第1章 始まりの章
第5話 始まりの街で就活してみた
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ゼノンも戻って幸太郎と会話した途端、違和感に驚いた。流暢に話す幸太郎は違和感しかなかったからだ。
「なんだ、元々話せたのか?」
「いや、今日話せるようになったんだ。スキルを1個得た、ってことだよ。」
「なんのスキルも持っていないて言ってたじゃないか。」
ゼノンにはスキルとか異世界でのお決まり設定のことは結構ゼノンに話してあったから、普通に通じる。
「なんだか、忘れてたとか言って今日急に例の閻魔小百合が出て来て話せるようにだけして帰ったんだ。」
「それだけ?」
「それだけだ。」
そんなものはチートでもなんでもないじゃないか。」
「だからチートなんてないらしいって。」
「でもジョンは此処の言葉も最初から話せたし魔法も結構というか相当使えたぞ。」
「ジョン?ああ、前にあったっていうアメリカ人か。そう言えば名前は聞いてなかったな。ジョンっていうんだ。」
「そうだ。ジョン・ドウと名乗っていた。」
「ジョン・ドウだと?」
「なんだ、知っているのか?」
ジョン・ドウ。それは日本で言えば名無しの権兵衛というのと一緒だ。
「それは本名じゃないな。」
「そうなのか?なんで判るんだ?」
「こっちでは何というかちょっと判らないけど、名前がない人間、という意味だよ。日本だと名無しの権兵衛って言うんだ。」
「そうなのか。俺は騙させていたっていうことか。」
「まあ、自分の名前に意味を持たすのが嫌だったんじゃないかな。それと俺の幸太郎は本名だからな
。」
「コータローはコータローなのだな。それは俺を信用してくれた、ということか。」
「いやただ偽るのが面倒だっただけだよ。」
ジョン・ドウの気持ちも判らなくはなかった。異世界に転生してきて、元の世界での名前なんて捨てたかったんじゃないか。俺は正直どっちでもよかっただけだ。
「それで?」
「それで?」
「いやいや、そんなに流暢に話せるようになったんだ、いつまで居候でいるつもりだ?」
しまった、今まで何もしない俺を放置していたのは話せないことがネックになっていたからなのか。普通に話せるのなら確かに働くことは可能だ。
「直ぐに、とは言わんが、何か仕事を見つけて働いてみないか?いつまでもここで遊んでいる訳には行かないだろうに。」
ゼノンの表情からするとマジのようだ。働かざる者食うべからず、か。まあ、仕方ない。元の世界の話をするだけでずっと養ってくれとは言えないか。
「判ったよ、明日から仕事を探してみよう。紹介してくれてもいいんだがな。」
「自分で自分に合った仕事を探すのが一番だ。コータローが何が得意なのか、俺には判らないからな。」
得意なものなどなかった。日曜大工も料理もやったことがない。地上げ専門の不動産業のことしか判らない。その道で40年働いてきたのだ、他のことは知らなかった。うむ、器用さもなく体力もなく年齢過多で老眼で、etc.
「一体何だったら出来るんだ?」
「さて、自分では判らないな。何かの店番とかなら座っているだけでいいから出来るかも。」
「店番か。うむ、心当たりを少し探してみよう。一応働く気がある、ということでいいんだな。」
「気がない訳ではない、という程度だと思ってもらおうか。」
「何でお前が強気なんだ。まあいい、明日あたり自分でも街を回って探してみろ。」
「判った、散歩がてら街を歩いてみるよ。」
次の日、俺はケルンの街を中心から北へ歩いてみた。一日中歩いても街を制覇できるはずもない。とりあえず北だ、北には行ったことが無かったからだ。
街の北には所謂一般人が住んでいた。街の周辺に広がる農地で農業を営む人夫ではない経営している階級の者。城に務めているが貴族ではなく役人をしている者。南街の商店を経営している者も結構住んでいる。北街では仕事はなかなか見つかりそうにもない。
なぜ北街から探しているのか。本気で探す気がないからだ。それと行ったことが無かったという、ただの好奇心だった。行ってみると普通の街だった。活気もないが騒がしくもない。中流家庭の多い街という感じだ。
次の日は東街に行ってみた。東街は騎士団員や守護隊員などの武人が多く住む街だった。純然たる貴族は中心街に住んでいるが貴族でない者は主に東街に住んでいる。ゼノンは一応貴族なので中心街に屋敷を構えているのだ。
武人の屋敷に仕事があるとしたら、貴族の屋敷と同様メイドや執事、使用人の類だろう。貴族のように料理人がいたり庭師がいたりはしない。まあストラトス家も貴族待遇なだけなので執事とメイドしか居なかったが。
俺は連日北街、東街と探す気がない就活を続けていたが、次は西街に行ってみた。ここは少し収入が低い人々が小さな集合住宅に犇めき合って住んでいた。奴隷とまでは行かないが、それほど違いはない人々が多い。奴隷は各々仕える貴族の屋敷に住んでいるので西街には居ない。商店の使用人や住み込みではない(住まわせてもらえない)大きな屋敷の下働きとかが多い。
西街を歩いていると俺のように服装もちゃんとしている者は少なかった。みんな少し草臥れた服装をしている。だから俺がここを歩くは目立ってしまう。場合によっては襲われて身ぐるみ剥がれてしまうかも知れない。金目のものは持っていなかったが、持っていないことによって命を奪われてしまうこともあるようだ。ゼノンからは西街には近づかないように言われていた。俺が此処に来たのは就活の口実もあったが、やはりただの好奇心だ。
そして俺は『好奇心猫を殺す』ということを身をもって知ることになる。
「なんだ、元々話せたのか?」
「いや、今日話せるようになったんだ。スキルを1個得た、ってことだよ。」
「なんのスキルも持っていないて言ってたじゃないか。」
ゼノンにはスキルとか異世界でのお決まり設定のことは結構ゼノンに話してあったから、普通に通じる。
「なんだか、忘れてたとか言って今日急に例の閻魔小百合が出て来て話せるようにだけして帰ったんだ。」
「それだけ?」
「それだけだ。」
そんなものはチートでもなんでもないじゃないか。」
「だからチートなんてないらしいって。」
「でもジョンは此処の言葉も最初から話せたし魔法も結構というか相当使えたぞ。」
「ジョン?ああ、前にあったっていうアメリカ人か。そう言えば名前は聞いてなかったな。ジョンっていうんだ。」
「そうだ。ジョン・ドウと名乗っていた。」
「ジョン・ドウだと?」
「なんだ、知っているのか?」
ジョン・ドウ。それは日本で言えば名無しの権兵衛というのと一緒だ。
「それは本名じゃないな。」
「そうなのか?なんで判るんだ?」
「こっちでは何というかちょっと判らないけど、名前がない人間、という意味だよ。日本だと名無しの権兵衛って言うんだ。」
「そうなのか。俺は騙させていたっていうことか。」
「まあ、自分の名前に意味を持たすのが嫌だったんじゃないかな。それと俺の幸太郎は本名だからな
。」
「コータローはコータローなのだな。それは俺を信用してくれた、ということか。」
「いやただ偽るのが面倒だっただけだよ。」
ジョン・ドウの気持ちも判らなくはなかった。異世界に転生してきて、元の世界での名前なんて捨てたかったんじゃないか。俺は正直どっちでもよかっただけだ。
「それで?」
「それで?」
「いやいや、そんなに流暢に話せるようになったんだ、いつまで居候でいるつもりだ?」
しまった、今まで何もしない俺を放置していたのは話せないことがネックになっていたからなのか。普通に話せるのなら確かに働くことは可能だ。
「直ぐに、とは言わんが、何か仕事を見つけて働いてみないか?いつまでもここで遊んでいる訳には行かないだろうに。」
ゼノンの表情からするとマジのようだ。働かざる者食うべからず、か。まあ、仕方ない。元の世界の話をするだけでずっと養ってくれとは言えないか。
「判ったよ、明日から仕事を探してみよう。紹介してくれてもいいんだがな。」
「自分で自分に合った仕事を探すのが一番だ。コータローが何が得意なのか、俺には判らないからな。」
得意なものなどなかった。日曜大工も料理もやったことがない。地上げ専門の不動産業のことしか判らない。その道で40年働いてきたのだ、他のことは知らなかった。うむ、器用さもなく体力もなく年齢過多で老眼で、etc.
「一体何だったら出来るんだ?」
「さて、自分では判らないな。何かの店番とかなら座っているだけでいいから出来るかも。」
「店番か。うむ、心当たりを少し探してみよう。一応働く気がある、ということでいいんだな。」
「気がない訳ではない、という程度だと思ってもらおうか。」
「何でお前が強気なんだ。まあいい、明日あたり自分でも街を回って探してみろ。」
「判った、散歩がてら街を歩いてみるよ。」
次の日、俺はケルンの街を中心から北へ歩いてみた。一日中歩いても街を制覇できるはずもない。とりあえず北だ、北には行ったことが無かったからだ。
街の北には所謂一般人が住んでいた。街の周辺に広がる農地で農業を営む人夫ではない経営している階級の者。城に務めているが貴族ではなく役人をしている者。南街の商店を経営している者も結構住んでいる。北街では仕事はなかなか見つかりそうにもない。
なぜ北街から探しているのか。本気で探す気がないからだ。それと行ったことが無かったという、ただの好奇心だった。行ってみると普通の街だった。活気もないが騒がしくもない。中流家庭の多い街という感じだ。
次の日は東街に行ってみた。東街は騎士団員や守護隊員などの武人が多く住む街だった。純然たる貴族は中心街に住んでいるが貴族でない者は主に東街に住んでいる。ゼノンは一応貴族なので中心街に屋敷を構えているのだ。
武人の屋敷に仕事があるとしたら、貴族の屋敷と同様メイドや執事、使用人の類だろう。貴族のように料理人がいたり庭師がいたりはしない。まあストラトス家も貴族待遇なだけなので執事とメイドしか居なかったが。
俺は連日北街、東街と探す気がない就活を続けていたが、次は西街に行ってみた。ここは少し収入が低い人々が小さな集合住宅に犇めき合って住んでいた。奴隷とまでは行かないが、それほど違いはない人々が多い。奴隷は各々仕える貴族の屋敷に住んでいるので西街には居ない。商店の使用人や住み込みではない(住まわせてもらえない)大きな屋敷の下働きとかが多い。
西街を歩いていると俺のように服装もちゃんとしている者は少なかった。みんな少し草臥れた服装をしている。だから俺がここを歩くは目立ってしまう。場合によっては襲われて身ぐるみ剥がれてしまうかも知れない。金目のものは持っていなかったが、持っていないことによって命を奪われてしまうこともあるようだ。ゼノンからは西街には近づかないように言われていた。俺が此処に来たのは就活の口実もあったが、やはりただの好奇心だ。
そして俺は『好奇心猫を殺す』ということを身をもって知ることになる。
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