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第二章 神殿の魔王、魔塔の賢者

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話を聞き終え、一番に口を開いたのはフレイルだった。
「はぁー、神殿の奴ら腐ってんな。自身の地位を押し上げんが為に、幼い子供を利用しようだなんざ、神職の風上にも置けんな」
オーレリアも同調して頷く。
「ええ、そうね。妹さんが心配ね」
「それよりクレマチスよ!教皇のクセに魔法使えなかったなんて、信じられない!」
エンヤの苛立たしげな声に呼応してアエラも語気を強めた。
「まったくだ、魔王を倒すほどの魔力を持っていると思っていたから、こちらサイドの国も大々的な戦争をふっかけたりしなかったのに、とんだペテン師じゃないか」
教皇クレマチスの事、聖女となったマリアの事、皆の口から出てくるのはそれに対しての感想ばかりだ。
そこに一石を投じたのは、ドルンストだった。
「ほっほっ。神殿側に魔王と称される者を目の前にしておるのに、お前たちは教皇や新たな聖女のことの方が気にかかるのかね」
「いや、魔王って言われても…ね?」
アエラはロッテンに一瞥を投げかけ、二の句を告げる。
「やばい!魔王だ倒さなきゃー!って脅威には見えないっていうか、さ」
コクコクと頷いてエンヤがそれに同意する。
「そうね…瘴気を身に纏って、その辺の精霊やら野獣を魔獣化させるとか、死体の兵士を伴って攻め入ってくるとか、魔王ってそんなイメージなのに、彼、普通なんだもの」
その言葉尻を捉えて、フレイルが皆が思うことをズバリと言い放った。
「だよなぁ、腐神の権化って本当に魔王なのか?教皇の見当違いじゃねぇのか?」
ロッテンは自身に向けられた視線に、苦笑いで応じるしかなかった。
「さあね?神殿ではそう認識されたから、魔塔側の国に逃げてきただけだし、よく分からない」
サルエルも、口を開いて補足を加える。
「一応、僕のエクソシストの術は、ロッテンくんにはよく効くよ。だから魔王だ!とは断言できないけどね。ただ、僕は教皇猊下を信じてるよ」
ここまでの流れをじっと黙って聞いていた、司会役のレガリアがひとまずの結論を出す。
「つまりは、この称号がなんなのかは分からないけど、神殿側はこの称号を魔王である証と認定したと言うことですね。では、魔塔側の見解は今後調査してから決めるとしましょう」
異論のあるものも無く、次にロッテンのスキルについての確認となった。
各スキルがどの様な効果を持つのか、どうやってそのスキルを手に入れたのかなどをロッテンは包み隠さず話した。
「つまり、腐属性判定を受けたとき、既に腐食と腐敗のスキルは持っていて、それ以外は自分で創造した、ということですね?」
レガリアは驚きの表情を見せ、ロッテンは頷く。
「他の属性のように、この属性といったらこのスキルっていうスキルツリーみたいなのが無いからな、なんとなくこれは腐が関係してるかな?っていう現象を魔力で発動させてみてるって感じだな」
片眉を上げて、楽しそうにドルンストは笑った。
「ほほっ、スキルの創造とは面白い」
「例えば、ガスボムはどうやって作り出したのかしら?」
オーレリアが椅子から腰を浮かせて前のめりで訪ねてくる。
「えっと、地元の牧場で牛が死んで、それを放置してたら腹が爆発したんだ。死ぬと何かの腐ったガスが腹に溜まって破裂するって知った、んで、その状況を腐敗スキルを使って自分で作り出したのがガスボム」
「ふうん、自然現象の観察、真理に照らしたスキルの解釈と、発想力、この子意外と侮れないわね」
エンヤがぶつぶつと、顔に見合わぬ難しい言葉を呟く。
「坊主、やるじゃねえか!スキルは神から与えられるもので、創造できるものじゃねぇってのがいままでの定説だったんだが、覆りそうだぜ」
顎を拭う素振りをして、フレイルが興奮気味に捲し立てた。
「え?そうなの?」
その事実を知らなかったロッテンは、今更驚きの顔をしてサルエルを見た。
「そうだよ、それが普通。でも、ロッテンくんは魔王だから、スキルを新たに創れるのかと思ってたんだよ」
レガリアが、それに続いて口を出す。
「ロッテン君の腐属性だからできるのか、"権化"という称号がそうさせて居るのか、全て検証が必要ですね」
「ほほ、その様じゃのぉ。とりあえず、魔王と神殿が認定しておる位じゃから、ひとまずレガリアの所で様子を見たらどうかね?」
ドルンストの提案に、皆が頷いた。
「分かりました。ではロッテン君は闇の部門で預からせていただきましょう。学園で魔法学の基礎知識を学んでもらいつつ、検証を進めてみることに致しますね」
ロッテンは、レガリアが差し出した手を、戸惑いながら握った。
「よ、よろしく?」
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