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プロローグ
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目の前でひたすら笑顔で話してくれる男性を見る。
きっと、優しい人
私に屈託のない笑顔をくれる、飾り気のない人
周りの結婚ラッシュに焦った友人と一緒になって登録したマッチングアプリで知り合い、今日が初めての顔合わせだと言うのに、そんなことがわかるほど彼の一挙一動には優しさが滲み出ていた。
この人なら、
「ゆあ、さん?」
そこまで考えていたところで目の前の男性が、あまりに話に反応しない私を気にしたのか私の名を呼んだ。
…確実に聞いていないのがわかっているだろうに、そんな時に呼ぶ声まで優しい
「すみません、ボーッとしちゃって…」
「俺、話しすぎですよね…
すみません、疲れてしまいましたか?」
…優しすぎる。
「あ、いいえ。
ちょっと、なんというか、考え事をしてしまって…」
あまりにも、優しすぎる。
「俺もよく考え事します、1人でものを考える時間って大事ですよね。」
優しすぎて、
「…すみません」
あの人を忘れられないじゃないか。
「こちらこそ、1人で舞い上がってしまってすみません。
…色々、ゆあさんのこと、知りたいんです。」
彼はそう言って少し照れたように笑いながら、私を見て目があうと、はは、と笑う。
見るからに好青年で周りの人に恵まれて生きてきたんだな、とわかる笑顔。
話も聞いてなかったのに、目が合うだけで照れながら笑ってくれる。
胸が苦しい。
でも、それじゃだめなの。
あの人を忘れるために
たくさんの男の人と出会っているのに
他の男の人に会うたびに
あの人がより濃く思い出される
あの匂いも
あの肌も
あの、私を呼ぶ低い声も
『ゆあ』
たまに見せる、笑顔も。
全部が、全てが、私の全てだった。
やめて。
出てこないで
しまったはずなんだから
しまわなきゃいけないんだから
だから
だから
だから
「ゆあ」
「…っえ、」
一瞬たりとも忘れたことのないあの声が、私を、呼んだ。
きっと、優しい人
私に屈託のない笑顔をくれる、飾り気のない人
周りの結婚ラッシュに焦った友人と一緒になって登録したマッチングアプリで知り合い、今日が初めての顔合わせだと言うのに、そんなことがわかるほど彼の一挙一動には優しさが滲み出ていた。
この人なら、
「ゆあ、さん?」
そこまで考えていたところで目の前の男性が、あまりに話に反応しない私を気にしたのか私の名を呼んだ。
…確実に聞いていないのがわかっているだろうに、そんな時に呼ぶ声まで優しい
「すみません、ボーッとしちゃって…」
「俺、話しすぎですよね…
すみません、疲れてしまいましたか?」
…優しすぎる。
「あ、いいえ。
ちょっと、なんというか、考え事をしてしまって…」
あまりにも、優しすぎる。
「俺もよく考え事します、1人でものを考える時間って大事ですよね。」
優しすぎて、
「…すみません」
あの人を忘れられないじゃないか。
「こちらこそ、1人で舞い上がってしまってすみません。
…色々、ゆあさんのこと、知りたいんです。」
彼はそう言って少し照れたように笑いながら、私を見て目があうと、はは、と笑う。
見るからに好青年で周りの人に恵まれて生きてきたんだな、とわかる笑顔。
話も聞いてなかったのに、目が合うだけで照れながら笑ってくれる。
胸が苦しい。
でも、それじゃだめなの。
あの人を忘れるために
たくさんの男の人と出会っているのに
他の男の人に会うたびに
あの人がより濃く思い出される
あの匂いも
あの肌も
あの、私を呼ぶ低い声も
『ゆあ』
たまに見せる、笑顔も。
全部が、全てが、私の全てだった。
やめて。
出てこないで
しまったはずなんだから
しまわなきゃいけないんだから
だから
だから
だから
「ゆあ」
「…っえ、」
一瞬たりとも忘れたことのないあの声が、私を、呼んだ。
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