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急遽考えた脳内芝居のせいで、俺の小テストはボロボロだー

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「ここに、グレース・ベンフォール並びにその父親の公金横領の罪が記された紙が存在している!」
サミュエル王子は卒業パーティーに集まった全ての人々に証拠の記された紙を突き付けて叫ぶ。
だが、俺は顔を青ざめもしなければ、王子に縋ったりもしない。そして、みっともない弁解さえもしない。
黙って、この王子が言い続けるのを見つめていく。
なぜ、俺が何も言わないのか。それは、ある一つの台詞を言うためである。
絶好のタイミングでそれを言うのを俺は待っているのだ。
だからこそ、こうして、黙って、こいつが俺が弾劾する様を見ているのだ。
やがて、サミュエル王子が俺の目と鼻の先に証拠の紙を突きつけて、
「なんとか、言ったらどうなんです!?」
と、問い掛けた時を見計らって、俺はサミュエルの胸ぐらを掴む。
そして、思いっきり大きな声で叫んでやるのだ。
「ザミュエルサァーン!オンドゥルルラギッタンディスカー!アンダドーゥレハ!アカマジャナカッタンデェスカー!」
正しい訳としては『サミュエルさん、なんで裏切ったんですか!あんたと俺は仲間じゃなかったんですか!』という事になる。
だが、オンドゥル語に変換されたそれを聞いた途端にサミュエルは笑いを吹いて倒れ込む。
腹を抱えて笑っているタイミングを見計らって、俺は逃走し、その場で青い顔をして戸惑っている親父の腕を引っ張り、一気に会場の外へと駆け出す。
その後は港まで逃げ、用意していた船に二人で飛び込む。
親父は波の飛沫で眠れない様だから、デッキに連れ出し、一晩中語り明かす。
うん、悪くはない。
これは、一番いいプランだろう。
次のプランは世界観をぶち壊して、俺が変身能力を手に入れ、サミュエルとオリビアを倒し、親父と共に逃げるという作戦である。
中々、いい作戦ではないだろうか。俺は妄想の中で、交換した電気の腕でビビった二人を怯ませ、逃げる場面は爽快だ。
俺がニタニタと笑っていると、頭を扇子……ではなく、教科書で叩かれてしまう。
「ミス・ベンフォール!あなたは何していらっしゃるのですか!?先程から、ずっとニヤニヤしていますが、授業は聞いているのですか!?」
「ええ、アッハッハッ」
俺は頭をかき、笑って誤魔化そうとしたが、教師は俺を睨んで、
「ミス・ベンフォール、小テストは明日ですが、ちゃんとできるんですよね!今はその明日の小テストの説明をしていたんですが」
大層、ご立腹な態度を見せる先生に俺はもう笑うしかなかった。
というか、ヤバい、完全に聞いていなかった。明日は小テストは無事に解けるのだろうか。
いや、解ける可能性はゼロだ。俺はまた苦笑いをした。
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