よくある悪役令嬢ものの性悪ヒロインのポジにTS転生してしまったので、前世で培った知識を活用して、破滅フラグを回避しようと思います！

泣いて昨日を振り返るよりは、黙って、明日の歌を歌おうと思います

どうすれば良いのだろうか。分からない。嘘を器用には平気には生きられん。
俺は以上の事をペーターに告げたが、彼も首を捻らせた。
「私にはどうする事もできませんよ。私に出来る事はといえば、馬車を運転する事くらいで……」
それを聞いた瞬間、よく漫画とかで見る電柱が光っていく。
「それですわ！馬車を運転すれば、追っ手を振り切って、逃げられますわよ！」
「む、無茶ですよぉ～第一、こんな大きな屋敷の何処に馬車があるんですか！」
俺は早くも諦めムードが漂うペーターを世界的有名タイムトラベル映画に登場する主人公の友人である天才科学者の言葉を用いて、激励する。
「『為せばなる』ですわ！」
「な、為せばなるって……そんな無茶苦茶な……」
しみどもろな様子のペーターに向かって続きの言葉を叫ぶ。
「その続きはあまり知られていませんから、言わせてもらえますわよ！『為さねば、ならん、何事も！』ですわ！」
今の俺の声があのツンデレ妹キャラの声で再生されないのがショックでしかない。
最も、ペーターはそんな事は分からないだろうが……。
気を取り直し、俺はペーターに俺が考えた脱出計画を語っていく。
脱出の手段としては、馬車を見たいと訴え、この部屋から馬車がある場所までのルートを模索した後で、数日経った日の夜に、ペーターと共に部屋を抜け出し、ペーターに馬車を操らせて、ここから逃げるという算弾である。
その日の夜ではなく、数日後に脱出を決行するというのは、その我儘を言い出した日は恐らく、あの執事なり、あの貴族の男なりが、俺やペーターに警戒の目を向けると考えたからだ。
数日後なのは、その警戒が少しでも解けるかと思ったからだ。
某スパイゲームの様に、ダンボール箱があれば別なのだろうが、生憎と、乙女ゲームの世界にはそんなものはない。
だから、当日ではなく、数日後に決行するのだ。
その計画の第一段階である馬車の見学をペーターを連れて、部屋に帰る前の執事に馬車の見学を提案したのだが、執事はニッコリと笑って、
「申し訳ありません。ご主人様は機密保持のため、馬車を持っておりません。移動のための馬車は常に、街まで歩いて、レンタルの馬車を使っておりますので」
どうやら、俺の計画は計画の第一歩でつまづいてしまったらしい。
がっくりと肩を落とす、俺は止むを得ずに台車の上に載った朝飯を見る。
今日も中々に豪華だ。重要な計画は最初の第一歩で破綻してしまったが、取り敢えず、この後の事は食べてから考える事にしよう。
俺は慌てて食事に手を付けた。