よくある悪役令嬢ものの性悪ヒロインのポジにTS転生してしまったので、前世で培った知識を活用して、破滅フラグを回避しようと思います！

大変です！！このままでは、彼女が断罪されかねません！！

あわや大惨事。このまま、俺は死ぬのかと思ったのだが、そこに予想外の人物が待ったを掛けた。
なんと、完璧王子のサミュエルが俺とガブリエル、エリアーナの間に割って入り、彼女の刃物を剣で弾き飛ばしたのだった。
サミュエルは床の上に転がった刃物を蹴り飛ばすと、弾き飛ばされた衝撃で手を震わせる彼女に剣先を突き付け、真剣な声で言う。
「次はないと言いましたよね？どうして、またグレース嬢に剣を向けているんですか？エリアーナ」
「そ、その女が勝手に……ッ！私はわるくありませんわ！」
「人に刃物を向けて追い掛けたんですよ？下手をすれば、一生、心に残るかもしれない傷を負わせようとしたんですよ！」
それを聞くと彼女は思わずたじろぐ。だが、彼女は瞳に涙を溜めながら、ブンブンと首を横に振って、
「違います！私はその最低女に正義の鉄槌を下してやろうとしただけですわ！」
「最低女？正義の鉄槌？未だに自分が悪いとは思わないんですね？」
彼女の歯軋りする音が聞こえる。同時に下唇を噛み締める姿も。
一度は不問にされたものの、こうなってしまっては、あの完璧王子は容赦しないだろう。
王子の手で、彼女の実家にもとうとうメスが入り、彼女の家はコナーとかいう新人の兵士がクソデカボイスで『開けろ！デトロイト市○だ！』とか叫んで、入っていくのを切っ掛けに、次々と兵士が押し入っていくという状況になるのだろうか。
或いは、ヤクザみたいに怖い声と声をした兵士が、
「早よ開けんかいッ！ゴルァ！」と扉を叩いて、人々に『どっちが犯罪者かわからん』と誤認させる様な真似をしてから、押し入っていくのだろうか。
いずれにしろ、腹黒王子の手に掛かれば、明るい物ではないだろう。
忠臣蔵に例えたら、殿中で吉良に斬り掛かった浅野内匠頭の様なものだからな。
彼女のこの所業も断罪される上に、彼女の父親が俺同様に真っ暗であるならば、王子の手で両方とも逮捕されるだろう。
いずれにしても、気の毒としか言えない結末だ。
泣き叫びながら、彼女は連行されていく。
その様が妙に哀れだ。それを感じた瞬間に、俺は泣き叫ぶ彼女の姿が他人事とは思えなくなってしまう。
本来であるならば、俺もこの先に断罪され、ああやって兵士に連れて行かれる身。
一応、現時点では対策を施しているとはいえ、本来のルートならばあれは未来の俺なのだ。
その考えに行き着いた瞬間に、俺は思わず某弁護士ゲームのとんがり頭の弁護士の様に勢いよく叫ぶ。
「異議あり！」と。
廊下の中に俺の声が響き渡り、集まった面々が一斉に俺に視線を向けていく。