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練習期間という地獄はいつまで続くのだろうか

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今日から、お前は!変われ!
長年の盟友にあそこまで言われては、仕方があるまい。まさか、盟友がパチンコが終わった後に家でダラダラしてた堕落主人公を叱る恩人みたいな目で見られては、変わるしかあるまい。
俺は平日の昼間から、腹を出して、和室でグースカ寝てる堕落主人公とは訳が違うのだ。
挙げ句の果てに、かつての仲間から裏切られ、涙を流しながら『働きもしないで(以下略)』と罵倒された主人公の様にはなりたくないからな。
それに、よくよく考えれば、俺だって一応は男爵家というそこそこの家の家系の貴族に生まれたわけだ。
ならば、貴族としての責任は果たせねばなるまい。
そう考えて、ダンスの練習に取り組む事になったのはよいが、勉強に剣の稽古に、読書と続く中にこれが挿入されるのは正直言って辛い。
だが、有名麻雀打ちも口に拳銃を咥えながら、こう言っている
『狂気の沙汰ほど面白い』と。
俺は最強の麻雀打ちと自分を重ねながら、そんなハードスケジュールをこなしていく。
まぁ、俺自身のダンスの腕前はあまり上がらず、直前まで、やっていた、という始末である。
これに関しては、脳内最高評議会も荒れ、元の性悪女などは、これをきっかけに『体の指揮権を譲れ!』と要求し、それに関する緊急投票が行われる羽目になった。
多数決の結果、脳内最高評議会の面々と元のグレース嬢が『現状維持』の票に票を入れてくれたのだから、今はここでこうしているのだが。
その事に関しては肩の力を抜いていいのだが、それよりも、もっと大きな問題が俺の両肩にのしかかっていく。
そう、それは舞踏会。それも、他国の王族を招いての重要な外交の場である。
普通は男爵家にはお呼びは掛からない。掛からない……筈なのだが、
なんでも、俺を推挙したのは次期、公爵ガブリエル・カーナボンだそうで、彼曰く『彼女なしでは、舞踏会が上手く出来ない』という事だそうだ。
この件で俺の好感度を上げたいと思ったのならば、ちょうどいい、言ってやろう。
『そんな事で好きになるものか!』と。
それどころか、こんな慣れない場所と重い責任を負わされ、不満の言葉しか出まい。
俺はそんな事を考えながら、馬車を降りる。
御者に手を引かれ、降り立った俺を出迎えたのは空にも届かんばかりに聳え立つ白い塔と、我が家の庭が10個くらいは入りそうなくらいの広々とした庭である。
庭の全ては土の匂いを感じられる芝生であり、もし、大の字になって寝転べば、新鮮な土の匂いをかげそうだ。
こんな格好でなければ、俺はすぐにでも飛び込みたい。
庭の魅力はそればかりではない。あちらこちらに庭師により、綺麗に手入れされた木々や花が並んでおり、見るものを引き込ませている。
我が家の庭師が悪いわけではないが、王宮で使っている庭師と比べるとなると、少し酷かもしれない。
そんな事を思いながら、この光景を眺めていると、俺の前にガブリエルが現れる。
ガブリエルは俺の前に跪くと、俺の手を取り、その手の甲に口付けを落とす。
俺は、思わず頬を赤く染めてしまう。普段、チャラ男である彼を見慣れているからこそのギャップにときめいているのだろうか。
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