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突っ込みから始まる悪役令嬢との親睦

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「っていうか、いきなり歌う?あたしもビビるんだけど」
氷の様に冷たい声が廊下の端に響いていく。
「で、でも、その後のノリツッコミはようございましたわ」
「うるさい」
と、もう一度、手に持っていた扇で頭を小突かれる。
「あの場であんな曲歌われてもこの世界の人は多分、分かんないよ。訳の分からない異世界の歌のせいで、みんなが混乱して、授業に支障が出たら、あんたどう責任取るの?」
「つまり、全部、私のせいだ!オリビア様、全部、私のせいだ!ハッハッハッ」
「誰が、デ○ークをやれと言った!」
キレキレの突っ込みで、オリビア嬢は俺の頭を叩く。この銀○を思い起こさせるやり取り。悪くはない。
俺が小突かれた頭を優しく摩っていると、俺とオリビア嬢の前にクロエが現れた。
「あ、あの、先程はありがとうございます。私を助けるために、あの様な恥ずかしい真似をしてくださって……本当に感謝しております」
クロエは耳を赤く染めながら、俺に向かって丁寧に頭を下げる。
それから、俺が先程、歌った曲の一曲を口ずさむ。
メロディーといい、歌詞といい完璧だ。
俺が思わず感心していると、彼女は目を輝かせながら、
「グレース様、どうでしょうか!?あなた様が歌われた歌と同じでしょうか!?」
完璧だ。ビューティフル。これ、前世でカラオケ行って、あの二曲を歌ったら、確実に100点は取れるのではないだろうか。
そう思わせるくらい上手かった。感想を問われたので、俺はひたすらに褒めちぎった。
すると、彼女は嬉しそうに微笑んで、更に歌おうとした。
それを静止するオリビア嬢。彼女は眉を寄せると、
「さぁさぁ、次の授業が始まりますわよ。お二方、お急ぎなさいまし」
と、俺とクロエを嗜め、教場に向かわせていく。
各教場で授業が行われている間は令嬢たちも大人しいのだが、外れれば、どうしてもクロエ虐めに走ってしまう。
俺とオリビア嬢は共にクロエの虐めをやめさせたためか、徐々にエリアーナの気を悪くし、酷い噂が流れていく。
全く、陰湿な奴だ。陰湿ぶりだけなら、特撮ヒーローの悪役を越えるかもしれない。
こういう奴らは大抵、ヒーロー番組だと、直後に鏡怪物(直訳)に攫われたりとか、運命(直訳)シリーズの第四回の聖杯を巡る争いを描いた作品に出てくる連続殺人犯にやられたりとか、或いはその前に助け出され、改心したりとか、そんな風になるのだが、生憎とここはマンガの世界、そして、そのマンガの設定上ならば、乙女ゲームの世界。
そんな、世界だからこそ、そんな超常的、奇跡的な展開など期待せずに、真っ当な方法で挑むべきなのだ。
俺は改めて、その決意を固めていく。
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