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悪役令嬢の容赦ない追及にたじろいでいますわ

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「座って、正座で」
機械の様に無機質な声、だが、従わざるを得まい。俺は渋々、彼女に従い、居住まいを正し、床の上に座る。
木と違って、熱をあまり吸わない石の床の上であるから、正した両足を通じて、全身に寒気が通じ、思わず鳥肌が立ってしまう。
「あ、あの寒いので、もう立ってーー」
「まだ寒い季節じゃないよ?まぁ、とにかく、もう少しそこに居てよ」
オリビア嬢は笑顔で言ったが、その笑顔には黒いものが含まれてある事を俺はよーく知っている。正直に言えば、今すぐにでも逃げ出したい程だ。
「で、浅○くん。どうして、キミは殿下にあんな口調を聞いたのかな?」
『○倉くん』これは、俺が十三人のヒーローが争う有名作品の中に登場するアウトローヒーローに変身する男の名前をオリビア嬢が俺のあだ名として決めたものだ。
なんでも、俺の前世が蛇のアウトローヒーローが好きだった事に由来するらしい。
が、まぁ、今はそんなあだ名の話などどうでも良い。
問題は、今、黒い笑みを口元で歪め、俺に迫る悪役令嬢の方だ。
なんと返したらいいのだろう。イライラした所に立っていた王子が悪い、とか。
いやいや、アウトローヒーローの真似などしたとしても、火に油を注ぐ結果となるのは明白。
そんな事を実行するほど、俺は馬鹿ではない。
では、この場をどう切り抜けるか、クールになれ、俺。
脳内会議も間に合わない以上は、ここはひとまず、あの借金ヒーローもやった方法で切り抜けるしかない。
俺の中で俺が土下座をする格好がはっきりと見えた。
俺は頭を地面の上に擦り付け、三角にした両手を地面の上に擦り付け、掠れた声で叫ぶ。
「心の底から申し訳ございませんでした!」と。
だが、俺は頭の中でのみっともない姿を見て、思わず首を横に振って、その姿を否定する。
駄目だ、あまりにもみっともなく、それでいて哀れだ。そればかりではなく、そんな姿を見たオリビア嬢はいよいよ、俺に失望の念さえも抱くだろう。
地獄の卒業パーティーを控えている身としては、そんな事になる事だけは避けたい。
なので、俺は謝らず、それどころか、どうして、サミュエルに対し、あの様な口調になったのかを説明していく。
彼女は目を細め、俺を睨んでいたが、やがて、小さな溜息を落とすと、もう一度、改まって、俺の方に向き直る。
「ふーん、私は何がいいのかしれないけど、浅○くんの覚悟の程が知れたよ。すごいよね。キミは」
掛けられた言葉を素直に受け取れば、俺の事を褒めているのだろう。
だが、その声はどこか低く冷たい。まるで、冬の日に傘の隙間から体にかかる雨粒の様に。
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