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訳の分からない言い分を男爵令嬢から言われれば、困惑はするだろうが、頼む、ピンチなんだ!俺が45組に落ちるか、落ちないのかの瀬戸際なんだ!
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「あの、魔法学園の守護を司るロイヤル・ウェントワース様ですよね?」
「ええ、そうですが……」
我が騎士団長閣下は訝しげに俺を見つめる。大方、貴族の令嬢が“火遊び”をしたいと言い出したと勘違いしたのだろう。
確かに、俺が記憶を思い出す前、あの性悪女ならば、そんな事を考えたかもしれない。
だが、前世は男で、しかも、健全な高校生であった俺は全然別の問題で、彼の元を訪れたのだ。
俺は息を吸い込み、神経を落ち着かせると、彼の目に向かって真剣な表情で告げた。
「あの、私に剣術を教えていただきたいのです!!」
「け、剣術ですか!?」
団長は明らかに困惑した声を出していた。それはそうだろう。貴族の令嬢が、そんな突拍子もない事を突然、言い出したのだから。
俺の言い出した事が理解できずに、戸惑う団長に対し、俺は団長には理解できない会話を交えて、正当へと畳み掛ける。
「お願いします!団長!あなたが助けてくれないと、私はヤk……じゃなかった、オリビア様に東京湾に沈められてしまうんです!」
「えっ、ええ!?」
「それだけじゃあないんです!もし、団長が剣術を教えてくれずに、私と父が捕まえられたら、私も父も班長の陰謀で、45組に落とされてしまうんです!貴重な嗜好品である角砂糖にも泥をかけられ、着替えの服も汚され、あまつさえは命も狙われるでしょう!私はカイ○と違って、チンチロなんてできません!あなたです、あなただけが頼りなんです!」
半分以上は漫画『カ○ジ』の引用で、もう半分は有名借金ヒーローの無心文句だ。
正直に言えば、『公爵と公爵令嬢が逮捕される』だの『東京湾』だの『チンチロ』だのと言った訳の分からない単語を交えた怪文書を絶え間なく言われれば、首を傾げられるではあろうが、少なくとも、切羽詰まった様子だけは伝わるであろうから、少なくとも、同じ様に剣の指導を頼んだ他の兵士達のように、俺を苦笑しながら、追い払うなんて事はしないだろう。
ロイヤルは焦った様子であったが、大きな溜息を吐いた後は黙って腰に下げていた剣を抜いて、その剣を宙に掲げて、
「事情はよく分かりませぬが、今からでも、剣術をお教え致しましょう。ですが、私は公爵令嬢だからという理由で、或いは女性が相手だからという理由では、一切手を抜きませんぞ、そのおつもりでかかってきなされ」
ロイヤルはそう言うと、剣を鞘に仕舞い、学園の庭に存在する騎士団所の詰所により、二本の木剣を手にして戻ってきた。
ロイヤルは木剣を俺に渡すと、そのまま木剣を構えて叫ぶ。
「いざ、参らん!」
「望むところよ!」
俺は大きな木剣を振り上げて、ロイヤルへと向かっていく。
こうして、放課後はロイヤルとの剣の稽古が日課となった。
「ええ、そうですが……」
我が騎士団長閣下は訝しげに俺を見つめる。大方、貴族の令嬢が“火遊び”をしたいと言い出したと勘違いしたのだろう。
確かに、俺が記憶を思い出す前、あの性悪女ならば、そんな事を考えたかもしれない。
だが、前世は男で、しかも、健全な高校生であった俺は全然別の問題で、彼の元を訪れたのだ。
俺は息を吸い込み、神経を落ち着かせると、彼の目に向かって真剣な表情で告げた。
「あの、私に剣術を教えていただきたいのです!!」
「け、剣術ですか!?」
団長は明らかに困惑した声を出していた。それはそうだろう。貴族の令嬢が、そんな突拍子もない事を突然、言い出したのだから。
俺の言い出した事が理解できずに、戸惑う団長に対し、俺は団長には理解できない会話を交えて、正当へと畳み掛ける。
「お願いします!団長!あなたが助けてくれないと、私はヤk……じゃなかった、オリビア様に東京湾に沈められてしまうんです!」
「えっ、ええ!?」
「それだけじゃあないんです!もし、団長が剣術を教えてくれずに、私と父が捕まえられたら、私も父も班長の陰謀で、45組に落とされてしまうんです!貴重な嗜好品である角砂糖にも泥をかけられ、着替えの服も汚され、あまつさえは命も狙われるでしょう!私はカイ○と違って、チンチロなんてできません!あなたです、あなただけが頼りなんです!」
半分以上は漫画『カ○ジ』の引用で、もう半分は有名借金ヒーローの無心文句だ。
正直に言えば、『公爵と公爵令嬢が逮捕される』だの『東京湾』だの『チンチロ』だのと言った訳の分からない単語を交えた怪文書を絶え間なく言われれば、首を傾げられるではあろうが、少なくとも、切羽詰まった様子だけは伝わるであろうから、少なくとも、同じ様に剣の指導を頼んだ他の兵士達のように、俺を苦笑しながら、追い払うなんて事はしないだろう。
ロイヤルは焦った様子であったが、大きな溜息を吐いた後は黙って腰に下げていた剣を抜いて、その剣を宙に掲げて、
「事情はよく分かりませぬが、今からでも、剣術をお教え致しましょう。ですが、私は公爵令嬢だからという理由で、或いは女性が相手だからという理由では、一切手を抜きませんぞ、そのおつもりでかかってきなされ」
ロイヤルはそう言うと、剣を鞘に仕舞い、学園の庭に存在する騎士団所の詰所により、二本の木剣を手にして戻ってきた。
ロイヤルは木剣を俺に渡すと、そのまま木剣を構えて叫ぶ。
「いざ、参らん!」
「望むところよ!」
俺は大きな木剣を振り上げて、ロイヤルへと向かっていく。
こうして、放課後はロイヤルとの剣の稽古が日課となった。
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