153 / 210
人と異形とが争いを繰り広げる惑星『ボーガー』
12
しおりを挟む
朝廷での混乱も収まらぬ中で、修也たちは貿易続行の見返りとして行うことになった紅晶を狙った犯人探しを行うことになっていた。その過程で修也たちが同じ部屋に揃い、持っていくための荷物を纏めていた時のことだ。
突然コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
「あの、すいません。少しよろしいでしょうか?」
恐る恐るといった様子で扉に身を隠し、外から声をかけてきたのは紅晶公主だった。彼女は怯えたような目で修也たちを見つめていたものの、決して目を逸らすこともなく上目遣いに見つめていた。
「は、はい。なんでしょうか。公主殿下」
怯えているのは向こうの方であるのに、皇女に話しかけられたという緊張もあってか、ジョウジは声を震わせながら答えた。
「私もあなた方の探索に加わりたいのです」
紅晶はそれまでの上目遣いを改め、きっちりと視線と視線とを合わせながら言った。
「いえいえ、そんなこれは我々の問題ですので、殿下が混じる必要はありませんよ」
ジョウジは優しい口調で紅晶の申し出を突っぱねようとしたのだが、彼女は聞く耳を持たなかった。
その証拠に彼女は勢いよく頭を下げて懇願するように言った。
「どうか……どうかお願い致します! 私の不始末は私自身で片をつけたいのです」
ジョウジはここまでの言葉を仲間たちに翻訳して伝えたのだが、仲間たちは困ったような顔を浮かべるばかりだった。
というのも、彼女はまだ若いし、それに皇女を加えての犯人探しなど例を見ないことだ。
シーレの件はあくまでも例外のようなものである。今後は避けなければならない案件だ。色々なことが錯綜し、容易に収拾がつけられない事態にあったとはいえシーレが一時的に仲間に加わり、修也たちが惑星カメーネの勢力図を変えてしまったことは事実である。
ここで、反論の言葉を付け加えった。カエデによれば惑星カメーネはフランスの大企業が加わっていたとはいえ自分たちが積極的に加わることになったのは確かだが、今回に至っては巻き込まれただけである。
ここで懇願してくる皇女を突っぱね、自分たちだけで向かえば、まだそれだけで完結するはずだ。
少なくとも惑星そのものに危害が加わるようなことはないだろう。
仕事を終え、着実に貿易を終えた後で惑星ボーガーの商品を地球へと持って帰ればいいのだ。
しかし彼女を無碍にするのは申し訳のなさが残る。こちらはいわば感情論だ。感情と客観的視点を秤に掛ければ客観的視点の方へ重点が傾くのは当然であるが、そこはやはり人間。小さな子の意思を突っぱねるのは気の毒だという考えが湧いてきたのだ。
しかも見捨ててしまえば本初が新しく放った刺客の手によって死んでしまうので後味が悪いというような大したものではない。意思を突っぱねたら可哀想だという小規模なものだ。
仲間たちが頭を痛めていた時のことだ。
「ねぇ、あたし思ったんだけど……もしこのままあたしたちがこの子を見捨てたら昨日の超能力者たちに狙われるんじゃないのかな?」
この時の麗俐が発した言葉はその場にいた全員が納得するような説得力を持っていた。全員が首肯し、紅晶を受け入れることにしたのだった。
皇帝のお膝元へと繰り出す修也たちと共に紅晶は市民用の平素な服へと着替えて、犯人探しへと向かっていった。
宇宙から来た人々の饗応役であった孫本初と元丞相である董仲達の両名は刺客として放った文單と顔淵の両名が戻ってこなかったことを悟り、夜のうちへと屋敷に戻ると、そのまま王都を脱出したのであった。
もちろん王都の入り口前には門番がいるが、金を握らせれば通ることは温泉の滝の下を潜るよりも容易なことであった。
大量の財宝と食料を積み、護衛に囲まれた両名はあろうことかこれまで「猿」と見下してきた種族の元へと逃げ込んだのであった。
しかし猿たちにとって両名にとっては迷い込んできた蝶どころか蜘蛛に等しい存在であったに違いない。
両名は本初や仲達、そしてその護衛や使用人たちに向かって槍や矛を構えていった。
「これはこれは随分とご丁寧な挨拶ですな」
仲達は皮肉を込めた言い方で彼らに向かって言った。
「当たり前だろう。お前たちは招かれざる客などという可愛いものではない。帝を害そうとし、公主殿下のお命まで奪おうとするお前らなどは帝の元へと送り返してやる」
友好的な姿勢を見せる仲達とは対照的に猿たちのリーダーは敵意を剥き出しにしながら言った。
「フッ、やはり猿だな。飼い主の言うことには逆らえんと見える」
侮辱を受けたからか、仲達は小馬鹿にしたような笑みを浮かべて言った。
「貴様! 長に向かってなんてことをッ!」
『長』というのが彼らのリーダーの正式な名称であるようだ。仲達も本初も初めてその由来を知ったが、別にそんなことは問題ではなかった。
問題はここからである。その後の展開次第では今後の待遇が天とも地とも変わる。
本初も仲達もそんな危険な賭けに自ら臨むほど弁舌に自信などなかった。
代わりに背後から現れたのは獲物を狙う鮫のように鋭い両目の目立つ男だった。男には白髪の目立つ壮年の年齢であったが、歳を感じさせない貫禄というものが備わっていた。
男はゆっくりと頭を下げた後で長を睨みながら言った。
「初めまして、私は沮元結と申します。以後お見知り置きを」
「挨拶は良い。それよりも主人と共にこれから帝都へ送り返されるとはお主も不憫よのぅ。待ち侘びているのは死罪のみであろうというのに」
長の嘲笑めいた態度に対して元結は怒りを見せることもなく、あくまでも落ち着いた口調で話を進めていった。
「お言葉ですが、我々は都になど帰るつもりはありませんよ」
「往生際が悪いな。これも運命だとお主も潔く腹を括ったらどうじゃ?」
「腹を括るのは貴方様の方でしょう?」
元結の口元がひらがなで例えるところの「う」の字に唇が歪められていった。同時にそれは氷のような冷たさを含んでおり、目の前にいる長を嘲笑うかのようであった。
元結の人を食ったような態度を見て長は怒りに押されたらしい。ブルブルと拳を震わせたと思うと、周囲に響き渡るような大きな声で元結を怒鳴り付けた。
「何がおかしいッ!」
長の閻魔大王が地獄にいる亡者を怒鳴り付けんばかりの声を聞いて周りの猿たちは震え上がるような態度を見せていた。
だが、元結は引かなかった。周りの空気が静まり返ろうと、それまで鳴いていた虫たちが声を止めようとも冷笑を携えながら長を見つめていた。
そればかりか、
「話はそれで終わりですかな?」
と、小馬鹿にしたように言った。
その姿を見た長は悟ったのだろう。元結の人を食ったような態度を見てこの男には言葉が通じないのだ、と。
この時の長の心境を表す諺として日本には『糠に釘』だとか『暖簾に腕押し』という言葉があるが、当然ながら長は日本の事など知らないので知りようがなかった。それ故に適切な慣用句が思い浮かばなかったといってもいい。
元結は長が言葉に詰まっていることを悟り、更なる反撃を試みた。
「長、あなたは一族の主人としてまた、種族を束ねる者としては相応しくないように思える」
「どういうことじゃ!?」
「一つはあなたがあまりにも人間に媚を売っていること、二つはあなたの態度があまりにも軟弱すぎるということだ。仲間が殺されているにも関わらず、せっかく王都に来たにも関わらず、皇帝を殺しもせず、頭を下げるなどまるで家畜ではないか」
元結が何気なさそうに発した言葉を聞いて猿たちに動揺が走っていく。もちろん中には純粋に自分の長を侮辱されて怒り、拳を上げる者もいたのだが、中には否定しきれない人物がいたのも事実である。
あの時は全員が長の決定に従ったものの、納得がいかない部分があったのも事実である。今この瞬間に猿たちの勢力は元結の手によって分断へ追い込まれたといってもいい。
親人間派と反人間派の両派へ、と。
ただし、この時点ではまだ無意識のうちである。猿たちが葛藤を行なっていた時のことだ。
「諸君らに問う!! 我々は皇帝に逆らった身である! それ故に追われる立場にあることは同じだ! だが、私には考えがある! それは諸君らと同盟を結び、皇帝の首を奪うことで諸君らの帝国を築き上げることだッ!」
元結の発した『帝国』という言葉に猿たちの胸が躍っていく。『東の中でも最大の力を持つ帝国を打ち倒し、その上で自分たちの国を持てる』という劇薬は理性を吹き飛ばすには十分だった。
「そのためには今ここで皇帝に媚びへつらう長を打ち倒さねばならない! そうしなくては我々はいつまで経っても背後の敵に短剣を突き付けられ、世界最大の帝国を築くことなど不可能となるのだッ!」
元結はここでハッキリと敵の存在を明示した。これによって無意識のうちにあった分断が意識の外へと現れたといってもいい。
元結によって扇動され、凶悪な怪物と化した猿たちは矛や槍を握り締めて、それを自分たちの長や自分たちに同意を示さなかった仲間たちへと憎悪を向けていった。
たった一度の演説が猿たちの世界を大きく変えてしまったといっても過言ではなかった。
元結が演説を起こすまでは心の底からとは言わずともリーダーとして敬意を示し、慕っていた長やその仲間たちに向かって簡単に武器を突き付けていったのだ。
それを見た元初は愚かな猿たちを見て小馬鹿にしたような笑みを浮かべつつも、心配になったことがあって密かに元結へと小声で耳打ちを行う。
「よいのか、今後のためとはいえ猿どもに皇帝の地位を約束するなど」
「なぁに心配はいりませぬよ、閣下。たとえこの謀反が上手くいったとしてもです。猿どもに人間の政が務まるはずもありませぬ。我々が裏からそれを操ればいいだけの話です」
「なるほど、流石は我が参謀よ。頭の切れというのはワシよりも鋭いようじゃ」
「恐れ入りまする。閣下」
元結はしてやったりとばかりの笑みを浮かべながら頭を下げた。
突然コンコンと扉を叩く音が聞こえた。
「あの、すいません。少しよろしいでしょうか?」
恐る恐るといった様子で扉に身を隠し、外から声をかけてきたのは紅晶公主だった。彼女は怯えたような目で修也たちを見つめていたものの、決して目を逸らすこともなく上目遣いに見つめていた。
「は、はい。なんでしょうか。公主殿下」
怯えているのは向こうの方であるのに、皇女に話しかけられたという緊張もあってか、ジョウジは声を震わせながら答えた。
「私もあなた方の探索に加わりたいのです」
紅晶はそれまでの上目遣いを改め、きっちりと視線と視線とを合わせながら言った。
「いえいえ、そんなこれは我々の問題ですので、殿下が混じる必要はありませんよ」
ジョウジは優しい口調で紅晶の申し出を突っぱねようとしたのだが、彼女は聞く耳を持たなかった。
その証拠に彼女は勢いよく頭を下げて懇願するように言った。
「どうか……どうかお願い致します! 私の不始末は私自身で片をつけたいのです」
ジョウジはここまでの言葉を仲間たちに翻訳して伝えたのだが、仲間たちは困ったような顔を浮かべるばかりだった。
というのも、彼女はまだ若いし、それに皇女を加えての犯人探しなど例を見ないことだ。
シーレの件はあくまでも例外のようなものである。今後は避けなければならない案件だ。色々なことが錯綜し、容易に収拾がつけられない事態にあったとはいえシーレが一時的に仲間に加わり、修也たちが惑星カメーネの勢力図を変えてしまったことは事実である。
ここで、反論の言葉を付け加えった。カエデによれば惑星カメーネはフランスの大企業が加わっていたとはいえ自分たちが積極的に加わることになったのは確かだが、今回に至っては巻き込まれただけである。
ここで懇願してくる皇女を突っぱね、自分たちだけで向かえば、まだそれだけで完結するはずだ。
少なくとも惑星そのものに危害が加わるようなことはないだろう。
仕事を終え、着実に貿易を終えた後で惑星ボーガーの商品を地球へと持って帰ればいいのだ。
しかし彼女を無碍にするのは申し訳のなさが残る。こちらはいわば感情論だ。感情と客観的視点を秤に掛ければ客観的視点の方へ重点が傾くのは当然であるが、そこはやはり人間。小さな子の意思を突っぱねるのは気の毒だという考えが湧いてきたのだ。
しかも見捨ててしまえば本初が新しく放った刺客の手によって死んでしまうので後味が悪いというような大したものではない。意思を突っぱねたら可哀想だという小規模なものだ。
仲間たちが頭を痛めていた時のことだ。
「ねぇ、あたし思ったんだけど……もしこのままあたしたちがこの子を見捨てたら昨日の超能力者たちに狙われるんじゃないのかな?」
この時の麗俐が発した言葉はその場にいた全員が納得するような説得力を持っていた。全員が首肯し、紅晶を受け入れることにしたのだった。
皇帝のお膝元へと繰り出す修也たちと共に紅晶は市民用の平素な服へと着替えて、犯人探しへと向かっていった。
宇宙から来た人々の饗応役であった孫本初と元丞相である董仲達の両名は刺客として放った文單と顔淵の両名が戻ってこなかったことを悟り、夜のうちへと屋敷に戻ると、そのまま王都を脱出したのであった。
もちろん王都の入り口前には門番がいるが、金を握らせれば通ることは温泉の滝の下を潜るよりも容易なことであった。
大量の財宝と食料を積み、護衛に囲まれた両名はあろうことかこれまで「猿」と見下してきた種族の元へと逃げ込んだのであった。
しかし猿たちにとって両名にとっては迷い込んできた蝶どころか蜘蛛に等しい存在であったに違いない。
両名は本初や仲達、そしてその護衛や使用人たちに向かって槍や矛を構えていった。
「これはこれは随分とご丁寧な挨拶ですな」
仲達は皮肉を込めた言い方で彼らに向かって言った。
「当たり前だろう。お前たちは招かれざる客などという可愛いものではない。帝を害そうとし、公主殿下のお命まで奪おうとするお前らなどは帝の元へと送り返してやる」
友好的な姿勢を見せる仲達とは対照的に猿たちのリーダーは敵意を剥き出しにしながら言った。
「フッ、やはり猿だな。飼い主の言うことには逆らえんと見える」
侮辱を受けたからか、仲達は小馬鹿にしたような笑みを浮かべて言った。
「貴様! 長に向かってなんてことをッ!」
『長』というのが彼らのリーダーの正式な名称であるようだ。仲達も本初も初めてその由来を知ったが、別にそんなことは問題ではなかった。
問題はここからである。その後の展開次第では今後の待遇が天とも地とも変わる。
本初も仲達もそんな危険な賭けに自ら臨むほど弁舌に自信などなかった。
代わりに背後から現れたのは獲物を狙う鮫のように鋭い両目の目立つ男だった。男には白髪の目立つ壮年の年齢であったが、歳を感じさせない貫禄というものが備わっていた。
男はゆっくりと頭を下げた後で長を睨みながら言った。
「初めまして、私は沮元結と申します。以後お見知り置きを」
「挨拶は良い。それよりも主人と共にこれから帝都へ送り返されるとはお主も不憫よのぅ。待ち侘びているのは死罪のみであろうというのに」
長の嘲笑めいた態度に対して元結は怒りを見せることもなく、あくまでも落ち着いた口調で話を進めていった。
「お言葉ですが、我々は都になど帰るつもりはありませんよ」
「往生際が悪いな。これも運命だとお主も潔く腹を括ったらどうじゃ?」
「腹を括るのは貴方様の方でしょう?」
元結の口元がひらがなで例えるところの「う」の字に唇が歪められていった。同時にそれは氷のような冷たさを含んでおり、目の前にいる長を嘲笑うかのようであった。
元結の人を食ったような態度を見て長は怒りに押されたらしい。ブルブルと拳を震わせたと思うと、周囲に響き渡るような大きな声で元結を怒鳴り付けた。
「何がおかしいッ!」
長の閻魔大王が地獄にいる亡者を怒鳴り付けんばかりの声を聞いて周りの猿たちは震え上がるような態度を見せていた。
だが、元結は引かなかった。周りの空気が静まり返ろうと、それまで鳴いていた虫たちが声を止めようとも冷笑を携えながら長を見つめていた。
そればかりか、
「話はそれで終わりですかな?」
と、小馬鹿にしたように言った。
その姿を見た長は悟ったのだろう。元結の人を食ったような態度を見てこの男には言葉が通じないのだ、と。
この時の長の心境を表す諺として日本には『糠に釘』だとか『暖簾に腕押し』という言葉があるが、当然ながら長は日本の事など知らないので知りようがなかった。それ故に適切な慣用句が思い浮かばなかったといってもいい。
元結は長が言葉に詰まっていることを悟り、更なる反撃を試みた。
「長、あなたは一族の主人としてまた、種族を束ねる者としては相応しくないように思える」
「どういうことじゃ!?」
「一つはあなたがあまりにも人間に媚を売っていること、二つはあなたの態度があまりにも軟弱すぎるということだ。仲間が殺されているにも関わらず、せっかく王都に来たにも関わらず、皇帝を殺しもせず、頭を下げるなどまるで家畜ではないか」
元結が何気なさそうに発した言葉を聞いて猿たちに動揺が走っていく。もちろん中には純粋に自分の長を侮辱されて怒り、拳を上げる者もいたのだが、中には否定しきれない人物がいたのも事実である。
あの時は全員が長の決定に従ったものの、納得がいかない部分があったのも事実である。今この瞬間に猿たちの勢力は元結の手によって分断へ追い込まれたといってもいい。
親人間派と反人間派の両派へ、と。
ただし、この時点ではまだ無意識のうちである。猿たちが葛藤を行なっていた時のことだ。
「諸君らに問う!! 我々は皇帝に逆らった身である! それ故に追われる立場にあることは同じだ! だが、私には考えがある! それは諸君らと同盟を結び、皇帝の首を奪うことで諸君らの帝国を築き上げることだッ!」
元結の発した『帝国』という言葉に猿たちの胸が躍っていく。『東の中でも最大の力を持つ帝国を打ち倒し、その上で自分たちの国を持てる』という劇薬は理性を吹き飛ばすには十分だった。
「そのためには今ここで皇帝に媚びへつらう長を打ち倒さねばならない! そうしなくては我々はいつまで経っても背後の敵に短剣を突き付けられ、世界最大の帝国を築くことなど不可能となるのだッ!」
元結はここでハッキリと敵の存在を明示した。これによって無意識のうちにあった分断が意識の外へと現れたといってもいい。
元結によって扇動され、凶悪な怪物と化した猿たちは矛や槍を握り締めて、それを自分たちの長や自分たちに同意を示さなかった仲間たちへと憎悪を向けていった。
たった一度の演説が猿たちの世界を大きく変えてしまったといっても過言ではなかった。
元結が演説を起こすまでは心の底からとは言わずともリーダーとして敬意を示し、慕っていた長やその仲間たちに向かって簡単に武器を突き付けていったのだ。
それを見た元初は愚かな猿たちを見て小馬鹿にしたような笑みを浮かべつつも、心配になったことがあって密かに元結へと小声で耳打ちを行う。
「よいのか、今後のためとはいえ猿どもに皇帝の地位を約束するなど」
「なぁに心配はいりませぬよ、閣下。たとえこの謀反が上手くいったとしてもです。猿どもに人間の政が務まるはずもありませぬ。我々が裏からそれを操ればいいだけの話です」
「なるほど、流石は我が参謀よ。頭の切れというのはワシよりも鋭いようじゃ」
「恐れ入りまする。閣下」
元結はしてやったりとばかりの笑みを浮かべながら頭を下げた。
0
お気に入りに追加
48
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

びるどあっぷ ふり〜と!
高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。
どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。
ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね?
※すでになろうで完結済みの小説です。
―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》
EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。
歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。
そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。
「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。
そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。
制刻を始めとする異質な隊員等。
そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。
元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。
〇案内と注意
1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。
3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。
4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。
5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。

ダンジョン配信スタッフやります!〜ぼっちだった俺だけど、二次覚醒したのでカリスマ配信者を陰ながら支える黒子的な存在になろうと思います〜
KeyBow
ファンタジー
舞台は20xx年の日本。
突如として発生したダンジョンにより世界は混乱に陥る。ダンジョンに涌く魔物を倒して得られる素材や魔石、貴重な鉱物資源を回収する探索者が活躍するようになる。
主人公であるドボルは探索者になった。将来有望とされていたが、初めての探索で仲間のミスから勝てない相手と遭遇し囮にされる。なんとか他の者に助けられるも大怪我を負い、その後は強いられてぼっちでの探索を続けることになる。そんな彼がひょんなことからダンジョン配信のスタッフに採用される。
ドボルはカリスマ配信者を陰ながら支えようと決意するが、早々に陰謀に巻き込まれ危険な状況に陥る。絶体絶命のピンチの中で、ドボルは自分に眠る力を覚醒させる。この新たな力を得て、彼の生活は一変し、カリスマ配信者を陰から支え、奮闘する決意をする。果たして、ドボルはこの困難を乗り越え、配信を成功させることができるのか?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

お荷物認定を受けてSSS級PTを追放されました。でも実は俺がいたからSSS級になれていたようです。
幌須 慶治
ファンタジー
S級冒険者PT『疾風の英雄』
電光石火の攻撃で凶悪なモンスターを次々討伐して瞬く間に最上級ランクまで上がった冒険者の夢を体現するPTである。
龍狩りの一閃ゲラートを筆頭に極炎のバーバラ、岩盤砕きガイル、地竜射抜くローラの4人の圧倒的な火力を以って凶悪モンスターを次々と打ち倒していく姿は冒険者どころか庶民の憧れを一身に集めていた。
そんな中で俺、ロイドはただの盾持ち兼荷物運びとして見られている。
盾持ちなのだからと他の4人が動く前に現地で相手の注意を引き、模擬戦の時は2対1での攻撃を受ける。
当然地味な役割なのだから居ても居なくても気にも留められずに居ないものとして扱われる。
今日もそうして地竜を討伐して、俺は1人後処理をしてからギルドに戻る。
ようやく帰り着いた頃には日も沈み酒場で祝杯を挙げる仲間たちに報酬を私に近づいた時にそれは起こる。
ニヤついた目をしたゲラートが言い放つ
「ロイド、お前役にたたなすぎるからクビな!」
全員の目と口が弧を描いたのが見えた。
一応毎日更新目指して、15話位で終わる予定です。
作品紹介に出てる人物、主人公以外重要じゃないのはご愛嬌()
15話で終わる気がしないので終わるまで延長します、脱線多くてごめんなさい 2020/7/26

目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう
果 一
ファンタジー
目立つことが大嫌いな男子高校生、篠村暁斗の通う学校には、アイドルがいる。
名前は芹なずな。学校一美人で現役アイドル、さらに有名ダンジョン配信者という勝ち組人生を送っている女の子だ。
日夜、ぼんやりと空を眺めるだけの暁斗とは縁のない存在。
ところが、ある日暁斗がダンジョンの下層でひっそりとモンスター狩りをしていると、SSクラスモンスターのワイバーンに襲われている小規模パーティに遭遇する。
この期に及んで「目立ちたくないから」と見捨てるわけにもいかず、暁斗は隠していた実力を解放して、ワイバーンを一撃粉砕してしまう。
しかし、近くに倒れていたアイドル配信者の芹なずなに目撃されていて――
しかも、その一部始終は生放送されていて――!?
《ワイバーン一撃で倒すとか異次元過ぎw》
《さっき見たらツイットーのトレンドに上がってた。これ、明日のネットニュースにも載るっしょ絶対》
SNSでバズりにバズり、さらには芹なずなにも正体がバレて!?
暁斗の陰キャ自由ライフは、瞬く間に崩壊する!
※本作は小説家になろう・カクヨムでも公開しています。両サイトでのタイトルは『目立つのが嫌でダンジョンのソロ攻略をしていた俺、アイドル配信者のいる前で、うっかり最凶モンスターをブッ飛ばしてしまう~バズりまくって陰キャ生活が無事終了したんだが~』となります。
※この作品はフィクションです。実在の人物•団体•事件•法律などとは一切関係ありません。あらかじめご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる