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職人の惑星『ヒッポタス』
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咄嗟のこともあってか、男は修也の突進を避けることができなかった。単純な体当たりといえども、装甲の重さも含めたそれなりの体重でぶつかれば男とて無事では済まないのだろう。ヨロヨロとしながら地面の上を転がっていった。
「ジョウジさん!」
修也が転倒したジョウジに向かって手を伸ばした時のことだ。背後から男が仕返しだとばかりに修也に向かって突進を行った。修也はよろめきながらもその場に踏み止まり、両手を広げて向かってくる男を受け止めようとしていた。つまりジョウジが起きて逃げ出すだけの時間を稼ごうとしていたのだ。
一方で男は待ち構えた修也を狙うこともせず、ただひたすらにジョウジを狙おうとしていた。
そこに修也が割り込み、男の体を止めたことでジョウジはそのまま二人に保護されることになった。
「あんたの相手は私だ。少し役不足かもしれんが、付き合ってもらえると嬉しいな」
「ほざくな! 下等生物がッ!」
男はこれまでに聞いたことがないような口汚い言葉を修也に向かって浴びせた。かと思うと、そのまま修也の顔に向かって殴り付けたのだ。
これまで男から喰らったどの右ストレートよりも強力であったので修也はその場に倒れそうになったが、寸前のところで踏み止まった。
そして今度は修也の方からもう一度強力な右ストレートを喰らわせたのだった。
男は悲鳴を上げながら地面の上へと転倒していく。その際に男が握っていたフレシュット・ピストルが地面の上に落ちていったのも見えた。これで男は唯一ともいえる武器も失ってしまう羽目になったのだ。
男は修也の拳を二度も喰らったものの、なんとか起き上がっていった。それでも戦うには厳しそうな様子で立ち上がっていくのが見えた。
男は修也をギラギラとした目で睨み付けたが、修也はそれを無視して飛び上がり、男の顔に向かって回し蹴りを喰らわせたのだった。
男はもう一度地面の上へと倒されていく羽目になった。その間にフレシュット・ピストルを拾い上げ、それを修也へと突き付けた。
「死ねッ!」
男はフレシュット・ピストルの引き金を引こうとした時だ。修也はそれよりも前にレーザーガンを突き付けていく。
互いに銃を突き付け合って睨み合う姿はさながら西部劇に出てくるガンマン同士の決闘場面を見ているかのようだった。
動いたのは男が最初だった。男はフレシュット・ピストルの引き金に手を当てようとした。
だが、それよりも先にジョウジが先に動いた。ジョウジはビームポインターを使って男の持っていたフレシュット・ピストルを地面の上へと叩き落としたのだった。
フレシュット・ピストルが地面の上へと落ちていく音を聞いた。つまり男はその手から完全に武器を失ったということになる。今だ。修也はここぞとばかりに身体を丸め、男に向かって猪のように真っ直ぐ突進を行っていく。
目の前から男が勢いよくぶつかろうとしてくるのだ。威嚇や牽制として使用したフレシュット・ピストルを構えていたとしても相手がそれを恐れなければ意味がない。
修也は無我夢中で男の体へ飛び掛かっていった。折り重なった両名は地面の上へと倒れていくことになった。二人同時に地面の上へと倒れてしまう羽目になってしまったが、修也はそのまま勢いに任せて男の顔を殴り付けた。
これで男は永遠に起き上がらない算段でいた。少なくとも修也の中では地面の上にへばりつくかのようにくっ付いて起き上がらないつもりでいた。
だが、男は身体を捻って起き上がり、唖然とした顔の修也に向かってお返しとばかりに拳を振るっていった。
勢いのある拳を喰らった修也は男の拳を喰らって地面の上を転がっていく。修也という重しが取り除かれたことによって男は自由を得た。
男は解放されると同時に全身の筋肉をパキパキと鳴らしながら修也の元へと近付いていく。それと同時に男の体から電気がバチバチと鳴り出していく音が聞こえた。どうやら例のバリアを再び身に付けたらしい。
あのバリアの厄介な点を挙げるとするのならば単に電気が生じていくばかりではなく、どのような攻撃も弾いていくという鉄壁の防御を誇るのだ。修也はかつての男と対峙した時に味わったバリアの恐ろしさを思い返し、思わず生唾を飲み込んだ。
攻守を兼ね備えた男に勝てるわけがない。先ほどまでの優位な立ち位置にあったことも忘れて修也は恐怖に囚われた。
そんな不甲斐ない修也の代わりに動いたのは子供たちだった。
麗俐も悠介もビームソードを抜いて男の元へと飛び掛かっていった。
「やめろ! この男に近付いたとしても勝てないッ!」
修也は愚かな行動に出た二人に向かって叱責を繰り出したが、それよりも二人が男へ飛び掛かる方が早かった。ビームソードの先端を下段へ向けていったのだ。
二人は男を串刺しにしようとしたに違いなかった。
だが、見えないバリアのため針串刺しの刑が執行されることはなかった。
二人は見えない壁の手によって背後へ弾かれてしまい、地面の上を転がっていくのが見えた。
「悠介! 麗俐!」
修也は子どもたちの名前を呼んだものの、応答はない。余程強く殴られたに違いなかった。
「おのれぇぇぇぇ~!!!」
修也は激昂した。先ほどまで感じていた恐怖の感情も忘れ、己のビームソードを強く握り締めながら男の元へと挑み掛かっていった。
修也が惨めにも挑み掛かろうとする姿を見て男は嘲笑を浮かべていた。
しかし奇妙であったのは男がなぜかフレシュット・ピストルを引っ込めたことだ。
怒りで我を忘れた修也にフレシュット弾をぶつけて死神が持つ死の鎌の元へと飛ばすなど朝飯前のはずだ。
だが、男は銃を使うことをしなかった。代わりに己のバリアを攻撃に利用して修也を葬ろうとしたのだ。
理由は分からなかった。全力で挑もうとする修也に対して敬意を払ったのかもしれないし、厄介な修也をここで確実に殺すためフレシュット・ピストルよりも強力な電気の力を用いようとしたのかもしれない。
詳細は不明だった。とにかくバリアを攻撃に転じて修也を始末しようとしたのは確かだった。
男は人差し指を修也に向かって突き付けて、その先端に電気を溜めていく。指の先でバチバチと電気が鳴る様子は地球でいうところの線香花火を彷彿とさせて面白かった。
日本人の修也を日本の伝統文化を模したやり方で葬るというのも洒落が効いていると思う。男はクックと笑いながら迫り来る修也に向かって電気を一斉に放出していった。
その時だ。男の胸元に向かって一筋の赤い光が突き刺していった。アイスピックのような細い光線だった。
男が漠然としているとそのまま自身の人差し指から放たれていったまばゆい稲光が目の前から向かう修也の目前で狙いが逸れ、青い空の上へと消えていくのが見えた。
「なっ、ば、馬鹿な……」
唖然とした顔を浮かべる男に向かってジョウジは得意げな顔を浮かべて言った。
「あなたがバリアを攻撃手段として外に放出する間はバリアそのものが無効になるんでしたよね?」
「ま、まさか……それを狙ったのか?」
男が声を震わせながら問い掛ける。その問い掛けに対してジョウジはいささかも躊躇うことなく首肯した。
胸元に小さな焦げ穴を宿した男はパクパクと口を開けながら何かを言いたそうにしていたが、言う気力というものが失われてしまったのだろう。
そのまま地面の上に吸い込まれるように倒れ込んでいった。
もう二度と起き上がることはないだろう。ジョウジは男の死を確信した。
これでこの惑星ヒッポタスに暗躍していた宇宙人は永遠に取り除かれてしまうことになったのだ。
ジョウジはビームポインターを懐の中へと仕舞い込み、男が手にしていた例のスイッチ回収しようとした時のことだ。
突然ジョウジを風圧が襲った。台風に襲われたのかと錯覚させるほどの凄まじい突風がジョウジを押し出したかと思うと、そのままスイッチを男の手から攫い取ったのだった。
しばらくの間、スイッチは風に吹かれて宙の上をフワフワと浮いていた。
だが、すぐにまた強い風に吹かれてしまい、そのまま空の彼方へと消えていった。
「逃してしまいましたか……」
ジョウジは悔しげな表情で思わぬ形での勝ち逃げを果たした宇宙人を睨んだ。
そのジョウジの元へ疲れ切った様子の修也が戻ってきた。
「ジョウジさん、ありがとうございます。あなたがビームポインターを打ってくれなければ今頃私は……」
「構いませんよ。困った時はお互い様ですしね。それよりもそろそろ交易の方を再開させましょう」
ジョウジの言葉は公益を行う商社に所属する公人の発言としては適切なものといえた。その点はアンドロイドだというべきだろう。
しかし町長の家族は愛する町長を亡くしたばかりなのだ。交易などを行う余裕があるのかどうかが怪しいところだ。
遺族の心情を思い描いた修也が複雑な表情を浮かべていた。
だが、ジョウジは修也の表情になど気が付くこともせず宇宙船の中に戻り、必要なものを持ち出すと、構うことなく町長の遺族に交渉を持ち掛けた。
ジョウジは事前に社長から試供品として渡す予定だった商品を香典として手渡すという手法で遺族を懐柔させ、それからスムーズに交易を進めたのだ。
偉大な町長の死を受け入れ、前へと進むためには未来思考の商品が大事であると力説していったのが功を奏したといってもいい。いずれにしろ、修也たちの激しい戦闘に見合った結果が生じたのだけは事実だ。
人間の心理を突いた巧みな駆け引きの結果、ジョウジはこの取り引きを成功に終わらせたのだった。
ホログラフの社長に向かって報告を終えると、そのまま席の上に修也たちを座らせていった。
次なる目的地へと向かうつもりだ。宇宙船はワープを用いるとはいってもそれまでに多少の空き時間は生じる。
その間に修也は質問を投げ掛けた。
「ジョウジさん、少しいいですか?」
「なんですか? 大津さん?」
「……あの星の地中に眠る青銅の巨人は始末してこなくてよかったんですか?」
それを聞いたジョウジの表情に揺るぎのようなものが見えた。
修也はその隙を逃すことなく一気に畳み掛けることにした。
「ジョウジさん!」
修也が転倒したジョウジに向かって手を伸ばした時のことだ。背後から男が仕返しだとばかりに修也に向かって突進を行った。修也はよろめきながらもその場に踏み止まり、両手を広げて向かってくる男を受け止めようとしていた。つまりジョウジが起きて逃げ出すだけの時間を稼ごうとしていたのだ。
一方で男は待ち構えた修也を狙うこともせず、ただひたすらにジョウジを狙おうとしていた。
そこに修也が割り込み、男の体を止めたことでジョウジはそのまま二人に保護されることになった。
「あんたの相手は私だ。少し役不足かもしれんが、付き合ってもらえると嬉しいな」
「ほざくな! 下等生物がッ!」
男はこれまでに聞いたことがないような口汚い言葉を修也に向かって浴びせた。かと思うと、そのまま修也の顔に向かって殴り付けたのだ。
これまで男から喰らったどの右ストレートよりも強力であったので修也はその場に倒れそうになったが、寸前のところで踏み止まった。
そして今度は修也の方からもう一度強力な右ストレートを喰らわせたのだった。
男は悲鳴を上げながら地面の上へと転倒していく。その際に男が握っていたフレシュット・ピストルが地面の上に落ちていったのも見えた。これで男は唯一ともいえる武器も失ってしまう羽目になったのだ。
男は修也の拳を二度も喰らったものの、なんとか起き上がっていった。それでも戦うには厳しそうな様子で立ち上がっていくのが見えた。
男は修也をギラギラとした目で睨み付けたが、修也はそれを無視して飛び上がり、男の顔に向かって回し蹴りを喰らわせたのだった。
男はもう一度地面の上へと倒されていく羽目になった。その間にフレシュット・ピストルを拾い上げ、それを修也へと突き付けた。
「死ねッ!」
男はフレシュット・ピストルの引き金を引こうとした時だ。修也はそれよりも前にレーザーガンを突き付けていく。
互いに銃を突き付け合って睨み合う姿はさながら西部劇に出てくるガンマン同士の決闘場面を見ているかのようだった。
動いたのは男が最初だった。男はフレシュット・ピストルの引き金に手を当てようとした。
だが、それよりも先にジョウジが先に動いた。ジョウジはビームポインターを使って男の持っていたフレシュット・ピストルを地面の上へと叩き落としたのだった。
フレシュット・ピストルが地面の上へと落ちていく音を聞いた。つまり男はその手から完全に武器を失ったということになる。今だ。修也はここぞとばかりに身体を丸め、男に向かって猪のように真っ直ぐ突進を行っていく。
目の前から男が勢いよくぶつかろうとしてくるのだ。威嚇や牽制として使用したフレシュット・ピストルを構えていたとしても相手がそれを恐れなければ意味がない。
修也は無我夢中で男の体へ飛び掛かっていった。折り重なった両名は地面の上へと倒れていくことになった。二人同時に地面の上へと倒れてしまう羽目になってしまったが、修也はそのまま勢いに任せて男の顔を殴り付けた。
これで男は永遠に起き上がらない算段でいた。少なくとも修也の中では地面の上にへばりつくかのようにくっ付いて起き上がらないつもりでいた。
だが、男は身体を捻って起き上がり、唖然とした顔の修也に向かってお返しとばかりに拳を振るっていった。
勢いのある拳を喰らった修也は男の拳を喰らって地面の上を転がっていく。修也という重しが取り除かれたことによって男は自由を得た。
男は解放されると同時に全身の筋肉をパキパキと鳴らしながら修也の元へと近付いていく。それと同時に男の体から電気がバチバチと鳴り出していく音が聞こえた。どうやら例のバリアを再び身に付けたらしい。
あのバリアの厄介な点を挙げるとするのならば単に電気が生じていくばかりではなく、どのような攻撃も弾いていくという鉄壁の防御を誇るのだ。修也はかつての男と対峙した時に味わったバリアの恐ろしさを思い返し、思わず生唾を飲み込んだ。
攻守を兼ね備えた男に勝てるわけがない。先ほどまでの優位な立ち位置にあったことも忘れて修也は恐怖に囚われた。
そんな不甲斐ない修也の代わりに動いたのは子供たちだった。
麗俐も悠介もビームソードを抜いて男の元へと飛び掛かっていった。
「やめろ! この男に近付いたとしても勝てないッ!」
修也は愚かな行動に出た二人に向かって叱責を繰り出したが、それよりも二人が男へ飛び掛かる方が早かった。ビームソードの先端を下段へ向けていったのだ。
二人は男を串刺しにしようとしたに違いなかった。
だが、見えないバリアのため針串刺しの刑が執行されることはなかった。
二人は見えない壁の手によって背後へ弾かれてしまい、地面の上を転がっていくのが見えた。
「悠介! 麗俐!」
修也は子どもたちの名前を呼んだものの、応答はない。余程強く殴られたに違いなかった。
「おのれぇぇぇぇ~!!!」
修也は激昂した。先ほどまで感じていた恐怖の感情も忘れ、己のビームソードを強く握り締めながら男の元へと挑み掛かっていった。
修也が惨めにも挑み掛かろうとする姿を見て男は嘲笑を浮かべていた。
しかし奇妙であったのは男がなぜかフレシュット・ピストルを引っ込めたことだ。
怒りで我を忘れた修也にフレシュット弾をぶつけて死神が持つ死の鎌の元へと飛ばすなど朝飯前のはずだ。
だが、男は銃を使うことをしなかった。代わりに己のバリアを攻撃に利用して修也を葬ろうとしたのだ。
理由は分からなかった。全力で挑もうとする修也に対して敬意を払ったのかもしれないし、厄介な修也をここで確実に殺すためフレシュット・ピストルよりも強力な電気の力を用いようとしたのかもしれない。
詳細は不明だった。とにかくバリアを攻撃に転じて修也を始末しようとしたのは確かだった。
男は人差し指を修也に向かって突き付けて、その先端に電気を溜めていく。指の先でバチバチと電気が鳴る様子は地球でいうところの線香花火を彷彿とさせて面白かった。
日本人の修也を日本の伝統文化を模したやり方で葬るというのも洒落が効いていると思う。男はクックと笑いながら迫り来る修也に向かって電気を一斉に放出していった。
その時だ。男の胸元に向かって一筋の赤い光が突き刺していった。アイスピックのような細い光線だった。
男が漠然としているとそのまま自身の人差し指から放たれていったまばゆい稲光が目の前から向かう修也の目前で狙いが逸れ、青い空の上へと消えていくのが見えた。
「なっ、ば、馬鹿な……」
唖然とした顔を浮かべる男に向かってジョウジは得意げな顔を浮かべて言った。
「あなたがバリアを攻撃手段として外に放出する間はバリアそのものが無効になるんでしたよね?」
「ま、まさか……それを狙ったのか?」
男が声を震わせながら問い掛ける。その問い掛けに対してジョウジはいささかも躊躇うことなく首肯した。
胸元に小さな焦げ穴を宿した男はパクパクと口を開けながら何かを言いたそうにしていたが、言う気力というものが失われてしまったのだろう。
そのまま地面の上に吸い込まれるように倒れ込んでいった。
もう二度と起き上がることはないだろう。ジョウジは男の死を確信した。
これでこの惑星ヒッポタスに暗躍していた宇宙人は永遠に取り除かれてしまうことになったのだ。
ジョウジはビームポインターを懐の中へと仕舞い込み、男が手にしていた例のスイッチ回収しようとした時のことだ。
突然ジョウジを風圧が襲った。台風に襲われたのかと錯覚させるほどの凄まじい突風がジョウジを押し出したかと思うと、そのままスイッチを男の手から攫い取ったのだった。
しばらくの間、スイッチは風に吹かれて宙の上をフワフワと浮いていた。
だが、すぐにまた強い風に吹かれてしまい、そのまま空の彼方へと消えていった。
「逃してしまいましたか……」
ジョウジは悔しげな表情で思わぬ形での勝ち逃げを果たした宇宙人を睨んだ。
そのジョウジの元へ疲れ切った様子の修也が戻ってきた。
「ジョウジさん、ありがとうございます。あなたがビームポインターを打ってくれなければ今頃私は……」
「構いませんよ。困った時はお互い様ですしね。それよりもそろそろ交易の方を再開させましょう」
ジョウジの言葉は公益を行う商社に所属する公人の発言としては適切なものといえた。その点はアンドロイドだというべきだろう。
しかし町長の家族は愛する町長を亡くしたばかりなのだ。交易などを行う余裕があるのかどうかが怪しいところだ。
遺族の心情を思い描いた修也が複雑な表情を浮かべていた。
だが、ジョウジは修也の表情になど気が付くこともせず宇宙船の中に戻り、必要なものを持ち出すと、構うことなく町長の遺族に交渉を持ち掛けた。
ジョウジは事前に社長から試供品として渡す予定だった商品を香典として手渡すという手法で遺族を懐柔させ、それからスムーズに交易を進めたのだ。
偉大な町長の死を受け入れ、前へと進むためには未来思考の商品が大事であると力説していったのが功を奏したといってもいい。いずれにしろ、修也たちの激しい戦闘に見合った結果が生じたのだけは事実だ。
人間の心理を突いた巧みな駆け引きの結果、ジョウジはこの取り引きを成功に終わらせたのだった。
ホログラフの社長に向かって報告を終えると、そのまま席の上に修也たちを座らせていった。
次なる目的地へと向かうつもりだ。宇宙船はワープを用いるとはいってもそれまでに多少の空き時間は生じる。
その間に修也は質問を投げ掛けた。
「ジョウジさん、少しいいですか?」
「なんですか? 大津さん?」
「……あの星の地中に眠る青銅の巨人は始末してこなくてよかったんですか?」
それを聞いたジョウジの表情に揺るぎのようなものが見えた。
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