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ジャパニーズコネクション編

イタリアンマフィア始動す

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孝太郎はその後は携帯端末で仲間を呼び、自分も急いで、例の寂れたヘリポートへの足を進める。
孝太郎はヘリポートで虫の息の刈谷淳を見つけ、一応は手錠をかけたが。
(酷いな、このままじゃあ死ぬかもしれんな、手錠は外してやろう)
と、考え、孝太郎は6割の善意と四割の逃げないという安心感のために、淳の手錠を外す。
それから、右目で淳を見張り、左目でさっきまで居たであろうトニー・クレメンテを探す。
(やはり、逃げたのだろうか、おれも詰めが甘かったよ、京介の自殺を許してしまったり、トニーを逃しちまったり、淳を逮捕できたのがせめてもの救いか……)
そう考えていると、淳のコートのポケットから、一枚の紙が見えていることに気がつく。
孝太郎はその紙を手に取ると、そこには戦慄の言葉が書いてあった(しかも、日本語で)
『やぁ、孝太郎くんだったかな?今回はキミに花を持たせてやろう。だがね、この次は負けんがね、それにしてもキミは面白い能力を持っているね、警察官にするのが惜しいくらいだよ、じゃあね』
(日本共和国において、日本語を書ける外国人の率は僅か30%。しかも、全員が長い来日歴がある……だが、あのトニーという男は世界を回る殺し屋のはず……余程高い教育を受けていたに違いないな、それもの……)
だが、ここで孝太郎はある事実に引っかかり、さっきの自分の考えは間違いだろうと考えた。旧アメリカ合衆国もといユニオン帝国は全ての王侯貴族がイギリス系或いはドイツ系で構成されており、イタリア系や北欧系の市民は帝国の中でも、かなり低いくらいにあった筈だ(これはユニオン帝国の初代皇帝が旧アメリカ合衆国の設立時に習った制度らしいが……)
さっきまで戦っていたトニーはイタリア系の筈。なのに何故……。
孝太郎は小骨が喉に引っかかって取れない時のような違和感を抱く。
(とにかく、トニー・クレメンテのことを色々と調べてみる必要があるな……)
と、孝太郎が考えていると……。急に背後から何かに飛びつかれたような気がしたのだ。何事かと孝太郎か背後を振り向くと……。
「驚いたぜ、姉貴か……」
「驚いたって何よ! あたしは孝ちゃんのことがすごく心配だったんだもん! 」
孝太郎はこの敬愛する姉に今回ばかりはため息を吐きたくなった。トニーのことに集中している時にいきなり抱きつかれては、つい警戒してしまうじゃあないか。孝太郎はそんな念に囚われ、姉に呆れたような視線を向ける。
「あのな、姉貴……おれを心配してくれるのはとっても嬉しい……だが、急に抱きつくのはやめてくれよな、心臓に悪いぜ」
そんな言葉を聞くと、絵里子は申し訳なさそうに視線を下に落とす。
「そうよね、ごめんね……」
絵里子の謝罪を受け入れ、孝太郎は寛大な笑みを浮かべながら、頭を撫でてやる。
「大丈夫さ、おれは気にしてないよ、それに……オレは姉貴を誰よりも大切に思っているんだ」
その言葉に絵里子は自分の鼓動が早くなるのが聞こえた。やはり、弟も自分と同じ感情を抱いているのかと考えた時だ。
「孝太郎お疲れ様ァ~! 」
「お疲れ様です。孝太郎さん」
二人の声が聞こえ、絵里子はその場から咄嗟に離れる。
「聡子に、明美か……心配はいらんよ、刈谷淳はあそこで寝転がっているよ、周りに死体も多いが、心配するな、淳はキチンと生きているよ」
「良かったです! これで刈谷組はお終いですね! 刈谷阿里耶の逮捕から、一ヶ月も過ぎているのに、ようやく壊滅なんて……」
明美は後悔しているようで、両眉を寄せている。
「大丈夫さ、お前が悪いんじゃあない、それにオレはこれで白籠市の嵐が止んだとは思えないんだ……」
孝太郎の意味深な言葉が三人の口が一文字に結ばれるのが確認できた。
「どういう事だよ、詳しい説明を……」
聡子の言葉に孝太郎は首を縦に振り、刈谷京介が自殺前に言った言葉を告げる。


トニー・クレメンテは最初は刈谷淳を抹殺しようと考えたが、自分を裏切ったあんな男の言うことを聞くのも癪だと考え、敢えて見逃す。それから、トニーは孝太郎がこの寂れたヘリポートに戻る前に、武器を回収し、その場から立ち去る。
それから、白籠市の高級イタリアンレストランへと行くために、偽名で泊まっている白籠デラックスホテルでタキシードに着替える。
トニーはタキシードのよく似合う男で、そのまま結婚式に行けば、周りの人間は彼が花婿なのではないかと考えるくらいであった。
トニーはホテルから出ると、タクシーに乗り、そのまま高級イタリアンレストランに向かう。
高級イタリアンレストランの名前は『ルイス』だった。昔、見たかの有名なマフィア映画で主人公が悪徳警官と麻薬の売人を殺害したのと同じレストランだったので、トニーは思わず苦笑する。
トニーは運転手に入り口の前に付けるように言い、タキシードから財布を取り出し、数枚の紙幣を取り出し、タクシー代を払う。
タクシーから降りたトニーは入り口の前に立っていたポーターの男から、レストランにて、待っている人物があるという旨を告げられる。
トニーは男に案内され、レストランに入る。レストランはまさに高級の名に相応しい場所だった。だだっ広い空間の上には煌びやかなシャンデリアが、壁には複製画に混じり、本物のミケランジェロの絵画が何枚か。他にも鹿の首の剥製などが飾られていた。
トニーはこんな高級な店に呼び出すくらいなのだから、さぞかし名の知れた依頼人なのだろうと考察した。自由三つ葉葵党の議員だろうか。それとも……。
トニーはまさかの可能性に思わず誰もいないのに首を横に振る。
まさか、自由共和党の議員が自分に依頼などする筈がない。これまで来日で彼は自由共和党の議員或いはその秘書から何も頼まれていないのだから。
答えはトニーが席に座っている男を見た時に分かった。席に座っているのはイタリア人の男だ。しかも、ガッチリとした体格の良い男であった。
「お前が、トニー・クレメンテだな?」
その男の問いにトニーは首を縦に振る。
「よし、ならばかけ給え、わたしはキミに話があるのだよ」
トニーは男に逆らわずに、用意された席に座る。
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