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ジャパニーズコネクション編
刈谷阿里耶の落とし子たち
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スキンヘッドの男は自分が盃を交わした親分を逮捕した男だと知ると、いきり立ち、懐からナイフを取り出す。
「面白ェ……テメェの首を取って、淳の親分に献上してやるぜッ!このおれの手でなァァァァァァァ~~!! 」
男はナイフを持って突っ込んでくるが、孝太郎はそれをあっさりと交わし、そのまま男の背中に強烈な一撃を喰らわせる。
男は自分の背中に襲い掛かった信じられないよう痛みに悲鳴を上げた後に、その場に崩れ落ちる。
「……こんな奴にはおれの魔法を使うまでもない……お前ら、これでもやるか?」
孝太郎の問いかけにイエスと答える人物は一人もいない。あの取り引き相手の中国人でさえ……。
翌日のネットニュースの一面を飾ったのは、刈谷組と中国の麻薬組織との密売を扱った記事であった。この記事には刈谷組がいかに、麻薬商売に乗り出していたのかを書き立て、その対処のために、刈谷組の代表格たる刈谷京介と桃屋総一郎は大勢のマスコミの前で、その釈明をしなければならなかった。
「刈谷さん! これは一体どういう事でしょうか! 警察に捕らえられた一人の若い男は『刈谷組と中国の麻薬組織との麻薬の取り引き現場だ! 』と叫んでおられましたが……」
そう発言したのは、ジャーナリストの実山聖子であった。彼女は日本共和国における優秀なジャーナリストで、特に自由三つ葉葵党の不正追及で有名であり、同時に白籠市における刈谷阿里耶台頭時には、刈谷阿里耶批判の常連であった。
「もう一度お伺いいたします。本当に麻薬組織との癒着はなかったんですね?」
京介は兄を追い込んだ人間の一人である聖子に密かな憎しみの目を向けながらも、口調は穏やかにして答える。
「ええ、あれは我々の知らない、男があの事件についてのデタラメを言っているだけですよ、刈谷組いえ、現刈谷商事は日本共和国における有力な一会社でしかないのです。そんな、反社会的組織でもない、我々に何ができるんですかッ!」
京介はマイクに唾が飛ぶくらいに熱心に演説していたが、聖子はそんな京介を冷ややかな視線で見つめるばかりであった。
「では、お尋ねします。あなた方は最近白籠市に進出してきたイタリアンマフィアとも癒着しているとの噂ですが……それについての見解は?」
「我が企業は何の関係はありません! 」
京介は目の前の眼鏡をかけたキャリアウーマン風の女性に叫んでみたが、彼女には何の意味もないようだ。
「会見は以上です! 我々はこの件に関しては、一切関係ないと言っておきましょうか! 」
京介はそう叫ぶと、席を立ち、報道関係者を残して、席を外す。その代わりに記者たちの質問に答えのは……。
「弁護士の桃屋総一郎です。え~マスコミの皆さまに一言だけ言っておきます。これ以上我々に対して、誹謗中傷を繰り返せば、わたしとしては名誉毀損で訴えようと思案しておりますが……」
弁護士である総一郎の「名誉毀損」という言葉に、それまで聖子と共に、野次を飛ばしていた他の報道関係者は黙ったが、唯一黙らなかったのは、聖子だけだった。
「いいですか、今、わたしが言っていることは全て裏付けが取れているんです。全て白籠警察署から仕入れた情報なんです」
「異議あり! そのデータは警察が捏造した可能性もあります! 」
だが、聖子は異議を聞き入れない。
「いいえ、誓ってそんな事はありません! わたしはここにあなた方は白籠市に巣食う暴力団だと告発致します! 」
その言葉に、全ての報道関係者に戸惑ったような様子を浮かべる。まさか、彼女がそんな事を言うとは。確かに、自分たちも刈谷組改め、刈谷商事は暴力団組織だと思っていたが……。まさか、この場で組の顧問弁護士たる男の前で告発するとは。
報道関係者たちはこの勇気あるジャーナリストの行動に拍手を送る。
それとは、対照的に分厚い唇を噛み締める桃屋総一郎。
「……いいだろう、そこまで我々をヤクザだと認定したいんだな……お前には考える時間を与えよう……24時間だッ!24時間以内に考えを改めん限り、我々はお前に制裁を与えるッ!」
桃屋総一郎は汗で一杯になっている額を拭いながら、会見場を跡にする。
そんな総一郎を聖子は冷淡な顔つきで睨んでいた。
「何、その女を始末する指示を与えてほしいだと?」
「そうだ。あの女を生かしておけば、将来組の合法化において、大きな障害となるに違いないからな」
京介は自室のオフィスのデスクの黒の社長椅子にもたれながら報告を聞いている男を心底侮蔑する。
彼は叔父である兄と自分とは正反対の不細工な人間であった。まるで泥人形のようだと。
「お前の言う組の合法化とやらは、おれには理解できんが、やればいいだろう……その任務には誰を向かわせる?」
という淳の言葉に、総一郎は「あなたが直々に出迎えばいいのでは」と答える。
「……組長たるオレに直々に行けと?」
「あんたの魔法は暗殺向きだ……オレや総一郎さんにように、戦闘向きの能力じゃあない……それにな、もし、奴らがやって来た時のためにな……」
京介は淳に何やら耳打ちする。
「成る程ね、よし、オレは実山聖子の始末に向かうッ!お前らは2日後に迫っているボルジア・ファミリーとの調停を考えなッ!」
それだけ聞くと、二人は頭を下げ、淳の部屋を跡にする。
「どうだい、上手くいきそうかい?」
と、総一郎が尋ねると。
「心配はいらねえ、あの野郎は聖子を始末した後は、オレの放った刺客により、直々に始末する予定だ……あの野郎はバカだ。未だに、麻薬はいけないだの、街を日本人だけで仕切れだの、昭和のヤクザみてえな事を言いやがる。だから、邪魔な頭デッカチの旧世代には死んでもらうのさ、その後には我々はボルジア・ファミリーと、調停を結び、刈谷組の合法化を目指すんだッ!」
「キミ張り切り過ぎるだぜ……頼むから、無茶だけは辞めてくれよな、キミの頭脳が無ければ、組の合法化に向けての舵は取れないんだから……」
「分かってるよ、そのために必要なカジノを建てるための費用もな、その時に使うであろう弁護士がウチの組にいる以上は雇う金が省けるってもんだが……」
「やれやれだ。とにかく我々はどうする?」
「とりあえず、刺客に任せるしかないな、組の行方はその後にじっくり考えようじゃあないか」
そう言って、京介は総一郎の肩を軽く叩く。
「面白ェ……テメェの首を取って、淳の親分に献上してやるぜッ!このおれの手でなァァァァァァァ~~!! 」
男はナイフを持って突っ込んでくるが、孝太郎はそれをあっさりと交わし、そのまま男の背中に強烈な一撃を喰らわせる。
男は自分の背中に襲い掛かった信じられないよう痛みに悲鳴を上げた後に、その場に崩れ落ちる。
「……こんな奴にはおれの魔法を使うまでもない……お前ら、これでもやるか?」
孝太郎の問いかけにイエスと答える人物は一人もいない。あの取り引き相手の中国人でさえ……。
翌日のネットニュースの一面を飾ったのは、刈谷組と中国の麻薬組織との密売を扱った記事であった。この記事には刈谷組がいかに、麻薬商売に乗り出していたのかを書き立て、その対処のために、刈谷組の代表格たる刈谷京介と桃屋総一郎は大勢のマスコミの前で、その釈明をしなければならなかった。
「刈谷さん! これは一体どういう事でしょうか! 警察に捕らえられた一人の若い男は『刈谷組と中国の麻薬組織との麻薬の取り引き現場だ! 』と叫んでおられましたが……」
そう発言したのは、ジャーナリストの実山聖子であった。彼女は日本共和国における優秀なジャーナリストで、特に自由三つ葉葵党の不正追及で有名であり、同時に白籠市における刈谷阿里耶台頭時には、刈谷阿里耶批判の常連であった。
「もう一度お伺いいたします。本当に麻薬組織との癒着はなかったんですね?」
京介は兄を追い込んだ人間の一人である聖子に密かな憎しみの目を向けながらも、口調は穏やかにして答える。
「ええ、あれは我々の知らない、男があの事件についてのデタラメを言っているだけですよ、刈谷組いえ、現刈谷商事は日本共和国における有力な一会社でしかないのです。そんな、反社会的組織でもない、我々に何ができるんですかッ!」
京介はマイクに唾が飛ぶくらいに熱心に演説していたが、聖子はそんな京介を冷ややかな視線で見つめるばかりであった。
「では、お尋ねします。あなた方は最近白籠市に進出してきたイタリアンマフィアとも癒着しているとの噂ですが……それについての見解は?」
「我が企業は何の関係はありません! 」
京介は目の前の眼鏡をかけたキャリアウーマン風の女性に叫んでみたが、彼女には何の意味もないようだ。
「会見は以上です! 我々はこの件に関しては、一切関係ないと言っておきましょうか! 」
京介はそう叫ぶと、席を立ち、報道関係者を残して、席を外す。その代わりに記者たちの質問に答えのは……。
「弁護士の桃屋総一郎です。え~マスコミの皆さまに一言だけ言っておきます。これ以上我々に対して、誹謗中傷を繰り返せば、わたしとしては名誉毀損で訴えようと思案しておりますが……」
弁護士である総一郎の「名誉毀損」という言葉に、それまで聖子と共に、野次を飛ばしていた他の報道関係者は黙ったが、唯一黙らなかったのは、聖子だけだった。
「いいですか、今、わたしが言っていることは全て裏付けが取れているんです。全て白籠警察署から仕入れた情報なんです」
「異議あり! そのデータは警察が捏造した可能性もあります! 」
だが、聖子は異議を聞き入れない。
「いいえ、誓ってそんな事はありません! わたしはここにあなた方は白籠市に巣食う暴力団だと告発致します! 」
その言葉に、全ての報道関係者に戸惑ったような様子を浮かべる。まさか、彼女がそんな事を言うとは。確かに、自分たちも刈谷組改め、刈谷商事は暴力団組織だと思っていたが……。まさか、この場で組の顧問弁護士たる男の前で告発するとは。
報道関係者たちはこの勇気あるジャーナリストの行動に拍手を送る。
それとは、対照的に分厚い唇を噛み締める桃屋総一郎。
「……いいだろう、そこまで我々をヤクザだと認定したいんだな……お前には考える時間を与えよう……24時間だッ!24時間以内に考えを改めん限り、我々はお前に制裁を与えるッ!」
桃屋総一郎は汗で一杯になっている額を拭いながら、会見場を跡にする。
そんな総一郎を聖子は冷淡な顔つきで睨んでいた。
「何、その女を始末する指示を与えてほしいだと?」
「そうだ。あの女を生かしておけば、将来組の合法化において、大きな障害となるに違いないからな」
京介は自室のオフィスのデスクの黒の社長椅子にもたれながら報告を聞いている男を心底侮蔑する。
彼は叔父である兄と自分とは正反対の不細工な人間であった。まるで泥人形のようだと。
「お前の言う組の合法化とやらは、おれには理解できんが、やればいいだろう……その任務には誰を向かわせる?」
という淳の言葉に、総一郎は「あなたが直々に出迎えばいいのでは」と答える。
「……組長たるオレに直々に行けと?」
「あんたの魔法は暗殺向きだ……オレや総一郎さんにように、戦闘向きの能力じゃあない……それにな、もし、奴らがやって来た時のためにな……」
京介は淳に何やら耳打ちする。
「成る程ね、よし、オレは実山聖子の始末に向かうッ!お前らは2日後に迫っているボルジア・ファミリーとの調停を考えなッ!」
それだけ聞くと、二人は頭を下げ、淳の部屋を跡にする。
「どうだい、上手くいきそうかい?」
と、総一郎が尋ねると。
「心配はいらねえ、あの野郎は聖子を始末した後は、オレの放った刺客により、直々に始末する予定だ……あの野郎はバカだ。未だに、麻薬はいけないだの、街を日本人だけで仕切れだの、昭和のヤクザみてえな事を言いやがる。だから、邪魔な頭デッカチの旧世代には死んでもらうのさ、その後には我々はボルジア・ファミリーと、調停を結び、刈谷組の合法化を目指すんだッ!」
「キミ張り切り過ぎるだぜ……頼むから、無茶だけは辞めてくれよな、キミの頭脳が無ければ、組の合法化に向けての舵は取れないんだから……」
「分かってるよ、そのために必要なカジノを建てるための費用もな、その時に使うであろう弁護士がウチの組にいる以上は雇う金が省けるってもんだが……」
「やれやれだ。とにかく我々はどうする?」
「とりあえず、刺客に任せるしかないな、組の行方はその後にじっくり考えようじゃあないか」
そう言って、京介は総一郎の肩を軽く叩く。
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