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エピローグ『悪魔の使者たちは黄昏時に天国の夢を見るか?』
姫川美憂の場合ーその16
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「よもや、あの襲われていた村がお前の出生地だったとはな。驚いたぞ」
美憂は頭の中で作り上げた最上姉弟と同じ様に頭の中で日本茶を交えながら会話を重ねていく。
「その通り、あそこで二年前まで弟と一緒に暮らしたんだ。田舎かもしれねーけど、いい家だったからな。そんな事気にした事もなかったぜ」
真紀子が日本茶を啜りながら美憂に向かって告げた。
「確かに。あんな家だと気にしなくもなるだろう。しかしお前の実家があんなに大きな家だったとはな……驚いたよ」
「田舎だからな。物価が安いんだよ。ンな事よりもお前を祝福しなくちゃあな。まさか、お前が神通と正式にお付き合いする事になろうとはな」
「すごいや、姫川さん!本当におめでとう!」
志恩が無邪気な笑顔を浮かべながら可愛らしく手を叩いていく。
「ありがとう。こんなあたしだけれども……幸せを掴めるかもしれない。それが嬉しくて堪らないんだ」
「何言ってんだよ。お前は幸せになる権利はあると思うぜ」
秀明が手元に置かれていた団子を口にしながら言った。正直にいえばあまり褒められた食べ方ではなかったのだが、美憂はこの状況においては気にしなかった。
「私の占いが正しければキミと神通恭介とは上手くいくという結果が出ている。カードを見たまえ」
友紀が山となったカードから一枚を抜き出して言った。
「……ありがとう」
美憂がお礼の言葉を述べていると背後から優しく肩に手を置かれた。
そこには満面の笑顔を浮かべた文室千凛の姿があった。
「なぁに気にするな。今の我々はお前が作り上げた空想上の産物に過ぎないんだ。そのお礼にお前を応援するのは当然の事だろう?いいや、それを抜きにしても私はお前と神通恭介との仲が上手くいく事を祈ってるよ」
千凛は優しく笑い掛けた。同時に全員が美憂に向かって優しく微笑んでいく。
美憂がそれを見て微笑ましい気分になっていた時だ。不意に自分の肩が揺らされていた事に気が付く。
周りには広大な田んぼとその上にぽつりぽつりと一軒家が点在するというどこにでもる典型的な田舎町という景色が広がっていた。
美憂は辺りの景色を見回しながらここに至るまでの経緯を思い出していく。
ここに現れた悪魔は不思議な事に二体だけであり既に美憂と恭介が現れた時には二体の悪魔が大勢の人を殺傷していた。
田舎だからという事で油断していた事も大きかったのだろう。人々はいとも容易くその餌食になってしまった。
武装をした二人は剣を振り回しながら二体の悪魔を仕留めたのであった。
中々の激戦であったのだが、お互いに息の合ったコンビネーションをみせられたので難を逃れる事ができた。
美憂はそこまでの事を思い返すと、目の前で自分を見つめる男の姿を改めて見つめていく。
「どうしたんだ?ずっーとぼうっとしていたけれど」
「いや、別に……少し疲れただけだ」
「連戦だったからな。無理もねぇよ」
恭介は美憂に向かって笑いかけると、そのまま手を差し伸べていく。
「そ、そのお、オレらさ……折角恋人になれたんだし、よかったらでいいんだ。手を繋がないか?」
その問い掛けに美憂は満面の笑みで答えた。
「無論だ」
二人は仲睦まじく手を繋ぎながらヘリに向かっていく。お互いの手からその温かさが伝わってくる。
見ている方が恥ずかしくなる程の初々しい光景である。
ヘリに乗り込むと二人はお互いに頬を赤くしながら会話に詰まっていた。
恋人繋ぎの後は何をすればいいのかわからなかったのである。恭介も美憂もこうした経験は初めてであったからだ。
お互いに顔を俯かせていると、元の小屋へと到着したのでその後は特段何もいう事はなく葬儀に集まった人々に感謝の念を込めた後に入れ違いでヘリに乗って帰ってもらう事にしたのである。
無論ここから家族たちが行くのは自宅ではなく政府が使用する地下のシェルターである。
あそこならば核戦争があっても生き残る事ができるだろう。
恭介はそれを知って一先ず一息を入れる。そして彼はそのまま小屋の中にある長椅子の上に腰を下ろす。
その上でくつろぐ恭介の前に紙コップに入った緑茶が差し出された。
「ありがとうな」
恭介は礼を言うと差し出された緑茶を飲み干す。
美憂はその隣で自分の分の緑茶を啜っていたのだが、やがて紙コップを置くとおもむろに恭介に向かって告げた。
「……あたしの母さんな、あの人たちより先に地下シェルターにいたんだが、家が焼けたショックで口も利けないらしい」
「……そうか」
「あぁ」
淡々としたやり取りが続く。無論恭介としても心配をしていないわけではない。なんと言葉を掛けたらいいのかわからなかったのだ。
美憂もそんな恭介の心境を察したらしく何も言わずに代わりの茶を啜っていく。
その時だ。不意に恭介の手が美憂の肩へと伸びた。恭介はそのまま隣に座っている美憂を自分の元に引き寄せると、黙って美憂を抱き締めた。
美憂は恭介の抱擁を黙って受け入れていた。美憂は自分が先程あの様な事を言ったから恭介が自分を慰める目的で抱き締めたのだと推測した。
なんと不器用なのだろう。なんて可愛らしいのだろう。美憂は愛おしい気持ちに包まれた。
一方でそんな美憂とは対照的に不安な気持ちに陥ったのは抱き寄せた恭介本人であった。彼は自分が美憂に比べてどこをとっても平均でしかない事に劣等感を感じていたのだ。
恭介からすれば美憂は全てにおいて愛らしい一面を持った少女であったのだ。桜色の唇も魅力的な黒壇を思わせる様な三つ編みの黒髪も澄ました三日月型の目のなどの顔のパーツはどれをとっても魅力的であった。
恭介のブルーともいえる気持ちが美憂にも伝わったのだろう。
美憂が眉を顰めた。
「どうせ抱くのならばしっかりと自分の気持ちを整理してからしたらどうだ?」
「わ、悪い!土壇場になっておれみたいな奴がお前の彼氏でいいのかと思ってさ……」
「何を言っている。そんなお前にあたしは惚れたんだ」
美憂はもう一度微笑むとそのまま恭介の膝の上に乗り、彼の唇に自身の柔らかく愛らしい唇を重ねていく。恭介にとって母親を除けば女性との生まれて初めてのキスであった。
美憂はそのまま舌を入れていき、恭介を刺激した。
恭介はそれに抵抗する事なく美憂の体を優しく抱き締めていく。それから一度美憂の唇から自身の唇を離すと今度はその額に優しく口付けを与えた。
「……恭介」
「愛してる。美憂」
恭介は初めて「姫川」ではなく「美憂」と呼んだ。美憂も同じく苗字ではなく名前を呼んだ。
このまま二人で永遠に愛を誓っていたかった。だが、それは悪魔たちが許さなかったらしい。二人の携帯電話にけたたましい着信音が鳴り響いていく。
電話の主は『内閣総理大臣』である。
もうすぐヘリはこの山小屋に辿り着くであろう。
二人はお互いの顔を見つめ合うと溜息を吐いたものの、すぐに互いに笑顔を浮かべ合った。
「仕方がない。この続きは戦いが終わってからにしようか」
「……やむを得ないがな。しかし戦いの最中にその事が頭の片隅にあって戦いに集中できなかったりするなどは言語道断だと思うが」
優しい微笑を浮かべる美憂の肩を強く掴むと、恭介は真剣な顔で言った。
「なぁ、姫川!この戦いが終わったらでいい……おれと結婚してくれッ!」
恭介は気まずい空気が流れた事に気が付いて慌てて言い訳の言葉を述べたものの美憂は愛らしい笑顔を浮かべて言った。
「勿論、あたしの様な女でよかったら」
恭介はもう一度美憂を強く抱き締めて美憂の耳元に愛の言葉を囁いていく。
美憂は頭の中で作り上げた最上姉弟と同じ様に頭の中で日本茶を交えながら会話を重ねていく。
「その通り、あそこで二年前まで弟と一緒に暮らしたんだ。田舎かもしれねーけど、いい家だったからな。そんな事気にした事もなかったぜ」
真紀子が日本茶を啜りながら美憂に向かって告げた。
「確かに。あんな家だと気にしなくもなるだろう。しかしお前の実家があんなに大きな家だったとはな……驚いたよ」
「田舎だからな。物価が安いんだよ。ンな事よりもお前を祝福しなくちゃあな。まさか、お前が神通と正式にお付き合いする事になろうとはな」
「すごいや、姫川さん!本当におめでとう!」
志恩が無邪気な笑顔を浮かべながら可愛らしく手を叩いていく。
「ありがとう。こんなあたしだけれども……幸せを掴めるかもしれない。それが嬉しくて堪らないんだ」
「何言ってんだよ。お前は幸せになる権利はあると思うぜ」
秀明が手元に置かれていた団子を口にしながら言った。正直にいえばあまり褒められた食べ方ではなかったのだが、美憂はこの状況においては気にしなかった。
「私の占いが正しければキミと神通恭介とは上手くいくという結果が出ている。カードを見たまえ」
友紀が山となったカードから一枚を抜き出して言った。
「……ありがとう」
美憂がお礼の言葉を述べていると背後から優しく肩に手を置かれた。
そこには満面の笑顔を浮かべた文室千凛の姿があった。
「なぁに気にするな。今の我々はお前が作り上げた空想上の産物に過ぎないんだ。そのお礼にお前を応援するのは当然の事だろう?いいや、それを抜きにしても私はお前と神通恭介との仲が上手くいく事を祈ってるよ」
千凛は優しく笑い掛けた。同時に全員が美憂に向かって優しく微笑んでいく。
美憂がそれを見て微笑ましい気分になっていた時だ。不意に自分の肩が揺らされていた事に気が付く。
周りには広大な田んぼとその上にぽつりぽつりと一軒家が点在するというどこにでもる典型的な田舎町という景色が広がっていた。
美憂は辺りの景色を見回しながらここに至るまでの経緯を思い出していく。
ここに現れた悪魔は不思議な事に二体だけであり既に美憂と恭介が現れた時には二体の悪魔が大勢の人を殺傷していた。
田舎だからという事で油断していた事も大きかったのだろう。人々はいとも容易くその餌食になってしまった。
武装をした二人は剣を振り回しながら二体の悪魔を仕留めたのであった。
中々の激戦であったのだが、お互いに息の合ったコンビネーションをみせられたので難を逃れる事ができた。
美憂はそこまでの事を思い返すと、目の前で自分を見つめる男の姿を改めて見つめていく。
「どうしたんだ?ずっーとぼうっとしていたけれど」
「いや、別に……少し疲れただけだ」
「連戦だったからな。無理もねぇよ」
恭介は美憂に向かって笑いかけると、そのまま手を差し伸べていく。
「そ、そのお、オレらさ……折角恋人になれたんだし、よかったらでいいんだ。手を繋がないか?」
その問い掛けに美憂は満面の笑みで答えた。
「無論だ」
二人は仲睦まじく手を繋ぎながらヘリに向かっていく。お互いの手からその温かさが伝わってくる。
見ている方が恥ずかしくなる程の初々しい光景である。
ヘリに乗り込むと二人はお互いに頬を赤くしながら会話に詰まっていた。
恋人繋ぎの後は何をすればいいのかわからなかったのである。恭介も美憂もこうした経験は初めてであったからだ。
お互いに顔を俯かせていると、元の小屋へと到着したのでその後は特段何もいう事はなく葬儀に集まった人々に感謝の念を込めた後に入れ違いでヘリに乗って帰ってもらう事にしたのである。
無論ここから家族たちが行くのは自宅ではなく政府が使用する地下のシェルターである。
あそこならば核戦争があっても生き残る事ができるだろう。
恭介はそれを知って一先ず一息を入れる。そして彼はそのまま小屋の中にある長椅子の上に腰を下ろす。
その上でくつろぐ恭介の前に紙コップに入った緑茶が差し出された。
「ありがとうな」
恭介は礼を言うと差し出された緑茶を飲み干す。
美憂はその隣で自分の分の緑茶を啜っていたのだが、やがて紙コップを置くとおもむろに恭介に向かって告げた。
「……あたしの母さんな、あの人たちより先に地下シェルターにいたんだが、家が焼けたショックで口も利けないらしい」
「……そうか」
「あぁ」
淡々としたやり取りが続く。無論恭介としても心配をしていないわけではない。なんと言葉を掛けたらいいのかわからなかったのだ。
美憂もそんな恭介の心境を察したらしく何も言わずに代わりの茶を啜っていく。
その時だ。不意に恭介の手が美憂の肩へと伸びた。恭介はそのまま隣に座っている美憂を自分の元に引き寄せると、黙って美憂を抱き締めた。
美憂は恭介の抱擁を黙って受け入れていた。美憂は自分が先程あの様な事を言ったから恭介が自分を慰める目的で抱き締めたのだと推測した。
なんと不器用なのだろう。なんて可愛らしいのだろう。美憂は愛おしい気持ちに包まれた。
一方でそんな美憂とは対照的に不安な気持ちに陥ったのは抱き寄せた恭介本人であった。彼は自分が美憂に比べてどこをとっても平均でしかない事に劣等感を感じていたのだ。
恭介からすれば美憂は全てにおいて愛らしい一面を持った少女であったのだ。桜色の唇も魅力的な黒壇を思わせる様な三つ編みの黒髪も澄ました三日月型の目のなどの顔のパーツはどれをとっても魅力的であった。
恭介のブルーともいえる気持ちが美憂にも伝わったのだろう。
美憂が眉を顰めた。
「どうせ抱くのならばしっかりと自分の気持ちを整理してからしたらどうだ?」
「わ、悪い!土壇場になっておれみたいな奴がお前の彼氏でいいのかと思ってさ……」
「何を言っている。そんなお前にあたしは惚れたんだ」
美憂はもう一度微笑むとそのまま恭介の膝の上に乗り、彼の唇に自身の柔らかく愛らしい唇を重ねていく。恭介にとって母親を除けば女性との生まれて初めてのキスであった。
美憂はそのまま舌を入れていき、恭介を刺激した。
恭介はそれに抵抗する事なく美憂の体を優しく抱き締めていく。それから一度美憂の唇から自身の唇を離すと今度はその額に優しく口付けを与えた。
「……恭介」
「愛してる。美憂」
恭介は初めて「姫川」ではなく「美憂」と呼んだ。美憂も同じく苗字ではなく名前を呼んだ。
このまま二人で永遠に愛を誓っていたかった。だが、それは悪魔たちが許さなかったらしい。二人の携帯電話にけたたましい着信音が鳴り響いていく。
電話の主は『内閣総理大臣』である。
もうすぐヘリはこの山小屋に辿り着くであろう。
二人はお互いの顔を見つめ合うと溜息を吐いたものの、すぐに互いに笑顔を浮かべ合った。
「仕方がない。この続きは戦いが終わってからにしようか」
「……やむを得ないがな。しかし戦いの最中にその事が頭の片隅にあって戦いに集中できなかったりするなどは言語道断だと思うが」
優しい微笑を浮かべる美憂の肩を強く掴むと、恭介は真剣な顔で言った。
「なぁ、姫川!この戦いが終わったらでいい……おれと結婚してくれッ!」
恭介は気まずい空気が流れた事に気が付いて慌てて言い訳の言葉を述べたものの美憂は愛らしい笑顔を浮かべて言った。
「勿論、あたしの様な女でよかったら」
恭介はもう一度美憂を強く抱き締めて美憂の耳元に愛の言葉を囁いていく。
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