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エピローグ『悪魔の使者たちは黄昏時に天国の夢を見るか?』
姫川美憂の場合ーその15
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無数の悪魔たちが現れたのは自分たちの地元である。最初の襲撃で怯えてしまったとはいえ都市部にはまだまだ人が残っている。悪魔たちはそういった人たちを狙っているのだろう。
人々に噛み付き、その爪で引き裂いていく。首元に噛み付いてその命を奪っていくのである。
それを止めるのは武装した二人。二人は武器を用いて人々を襲う悪魔たちを阻んでいく。
美憂は懸命に剣を振るいながら上下左右から襲ってくる悪魔たちに対抗していく。
かつての美憂はまさか神通恭介に自身の背中を預けて戦う事など想像もできなかっただろう。思えば恭介との付き合いも長い。彼が最初にサタンの息子である事をカミングアウトされてから既に一年以上も経つのだ。
ゲームでは時に共闘し、時に袂を分かち合って戦う仲であった。
美憂はまだゲームが続いていた頃の事を思い返すと、全てが懐かしく思ってしまう。あの頃はまだ世界がこんな風になるとは思わなかった。
あの頃の美憂には自分たちがゲームを続ける事によって自分の家族が幸福になると信じて疑わなかったのだ。
そんな自分であったが、希空に父を殺される前はなぜか戦いを止めようとしていた。
今から思えば滑稽である。家族の幸せを願うのならば戦いを止めるのではなく戦いを行うべきではなかったのだろうか。
考えても仕方がない。戦いそのものが終わってしまった今となってはどうでもいい事なのだから。
美憂は剣を用いて大きな蛭の様な姿をした悪魔を一刀両断にしながらそんな事を考えていた。
美憂は剣を振り上げながら悪魔を相手に立ち回りを繰り返し、次々と剣の錆へと変えていく。
「姫川、そっちはどうだ!?」
「大丈夫だッ!お前こそどうだ!?」
「心配はいらねぇぜ!」
恭介は迫り来る下級悪魔の一体を蹴り付けながら叫ぶ。
真後ろから悪魔の血が吹き流れていくのを確認し、美憂は兜の下で安堵の笑みを浮かべた。同時に自分の中で神通恭介という青年の存在が非常に大きくなっていく事に気が付いた。
『地獄への入り口』が開くまでは恭介など大した存在ではなかったはずだ。なのにどうして彼と肩を並べているとこんなにも胸が高鳴るのだろう。これが『恋』という感情なのだろうか。
だが、仮にそれが『恋』の感情であったとしても正直にいえば自分が幸せになっていいのかもわからなかった。
正直な経歴をいえば自身がとても褒められた経歴の持ち主ではない事をしっかりと理解していた。家族のためなど大義名分に過ぎない事なども美憂はちゃんと理解していた。
自分がいくらそんな錦の旗を掲げたとしてもそれが通じない相手も中にはいるだろうし、なんなら卑怯者と罵る者もいるかもしれない。そんな批判を受ける覚悟で美憂は深夜のアルバイトを行っていたのだ。
親ほども歳の離れた男性と食事をし、その後にデートをしたりする。稀に時間がない時はこのデートは飛ばされたりもするが、その後の流れは同じなのだ。
平凡な青年である恭介にそんな壮絶な人生を送ってきた自分は似合わない筈なのだ。例え向こうがどれだけ自分の事を愛してくれたとしても……。
美憂はそう割り切って心の中に留まる思いを消し去ろうとしたのだがいくらそう思ってもその感情が消える事はなかった。ノートの上に鉛筆に強い力を込めて記した際に消しゴムで消しても筆跡がいつまでも残っている時の様なモヤモヤとした感覚が美憂の中に残った。
その時だ。目の前から大きな口を開けた怪物が美憂の元へと迫っていく。
美憂は慌てて現実世界へと意識を引き戻し、懸命に剣を振っていく。背中の心配はしていない。背後は恭介が守ってくれているのだ。美憂は心置きなく目の前から迫る悪魔の大群を相手にする事ができた。
悪魔の大群をおおよそまで減らしたところで今日のところは侵攻を諦めたのだろう。多くの悪魔が空の上へと昇っていき姿を消す。
美憂はホッとするのと同時に思わず片膝を突いて溜息を吐く。
「……ようやく消えやがったか」
「らしいな。けど、次の襲来がいつになるかがわからん以上は何も言えん」
二人は暫くの後に空を眺めていたが、不意に美憂が恭介を手招きし、その体を強く抱き締めていく。
「ひ、姫川?」
「……最近になって気が付いた。あたしはあんたに惚れてるんだって……」
「お、おい……」
愛の告白を行った立場であるのにも関わらず、大胆なアプローチを前に恭介は照れて左足を後方へと下がらせるのだが、美憂はそれに追い付いていき恭介の元へと迫っていく。
「あたしをあんたものにしてくれ」
恭介の元へと追い付くと、兜の下で美憂の桜色の唇は微かにはっきりとそう言っていた。
恭介の胸が高鳴っていく。心臓の慟哭が抑えきれない。学校に通っていた頃から望んでいたシチュエーションだというのに恭介は未だに目の前で起きる光景が信じられずにいた。
堪らなくなり武装を解除すると美憂もそれに合わせて武装を解除する。だが、美憂は恭介を離さない。彼女は照れる恭介を優しく抱き締めていた。
メロンを思わせるほどに豊満な両胸が押し付けられるのと共に美憂の唇が目の前から迫り来る光景に恭介はすっかりと我を忘れていた。
このまま唇を重ね合わせるべきだろうか。そんな悩みを抱えた時だ。
国の操るヘリが二人の前に降りてきた。
「神通様、姫川様、取り込み中のところ申し訳ありませんが、今度は鳥取市の山村に悪魔たちが現れたという事でして、よければご同行願えませんか?」
二人はそれに同調してヘリへと乗り込む。その間も恭介の胸の鼓動はまだ鳴り続けていた。
先程の美憂のあの言葉は告白の言葉そのものであった。
恭介は胸がバクバクと動いていた事に気が付く。恭介は自身の頭の中になぜか真紀子が現れて、頭の中にいる自分に向かって真っ白な空間の中で話し合っていた事に気が付く。
「焦ったいなぁ、さっさと姫川を抱き締めちまえよ。男なら当たって砕けろの精神でやりな」
頭の中で真紀子が腕を組みながら揶揄う様に告げた。
「で、でも、姫川に頬でも張り飛ばされたらと思うと怖くてさ……」
「お前いちいちンな事に怯えてんのかよ。情けないねぇ~」
真紀子の煽る口調が少しばかり腹が立った。だからだろう。言い返す恭介の語気が少し荒くなる。
「別にいいだろッ!お前なんかにオレの気持ちがわかってたまるものかッ!」
「今度は逆ギレかい?情けないねぇ~神通、テメェがだいぶ前のゲームの時にあたしの問い掛けに対して答えた時の自信を思い出しなッ!」
その時の恭介が思い出したのは去年天堂希空に絡まれていた時に行われたゲームの中での二人の間に開かれた押し問答であった。
「……そうかよ。けど、あたしより先に死ぬんじゃねーよ。楽しみが減るだろうが」
希空への恐怖を語りながら剣を振るった時に真紀子は確かにそう告げた。
その時に恭介は顔に絶対の自信に満ちた笑顔を浮かべながら真紀子に向かって答えたのである。
「当たり前だろうがッ!オレは必ずこのゲームを生き抜いて姫川をモノにするんだ」
この時の恭介の体全体からは自信というものが真紀子に伝わったのだろう。
真紀子は機関銃を構えながら大きな笑い声を上げていく。
「それだよッ!神通ッ!あたしが求めていたのはそれだッ!」
恭介はこの後に自身と真紀子が互いに剣先と銃口とを構え直した後にぶつかって激しい戦いを繰り広げた事を思い返す。
「……そうか、あの時の感触か」
「そういう事だ。まぁ、頑張れよ」
真紀子は恭介の肩を優しく叩きながら言った。優しく置かれた手が恭介には温かく感じられた。
人々に噛み付き、その爪で引き裂いていく。首元に噛み付いてその命を奪っていくのである。
それを止めるのは武装した二人。二人は武器を用いて人々を襲う悪魔たちを阻んでいく。
美憂は懸命に剣を振るいながら上下左右から襲ってくる悪魔たちに対抗していく。
かつての美憂はまさか神通恭介に自身の背中を預けて戦う事など想像もできなかっただろう。思えば恭介との付き合いも長い。彼が最初にサタンの息子である事をカミングアウトされてから既に一年以上も経つのだ。
ゲームでは時に共闘し、時に袂を分かち合って戦う仲であった。
美憂はまだゲームが続いていた頃の事を思い返すと、全てが懐かしく思ってしまう。あの頃はまだ世界がこんな風になるとは思わなかった。
あの頃の美憂には自分たちがゲームを続ける事によって自分の家族が幸福になると信じて疑わなかったのだ。
そんな自分であったが、希空に父を殺される前はなぜか戦いを止めようとしていた。
今から思えば滑稽である。家族の幸せを願うのならば戦いを止めるのではなく戦いを行うべきではなかったのだろうか。
考えても仕方がない。戦いそのものが終わってしまった今となってはどうでもいい事なのだから。
美憂は剣を用いて大きな蛭の様な姿をした悪魔を一刀両断にしながらそんな事を考えていた。
美憂は剣を振り上げながら悪魔を相手に立ち回りを繰り返し、次々と剣の錆へと変えていく。
「姫川、そっちはどうだ!?」
「大丈夫だッ!お前こそどうだ!?」
「心配はいらねぇぜ!」
恭介は迫り来る下級悪魔の一体を蹴り付けながら叫ぶ。
真後ろから悪魔の血が吹き流れていくのを確認し、美憂は兜の下で安堵の笑みを浮かべた。同時に自分の中で神通恭介という青年の存在が非常に大きくなっていく事に気が付いた。
『地獄への入り口』が開くまでは恭介など大した存在ではなかったはずだ。なのにどうして彼と肩を並べているとこんなにも胸が高鳴るのだろう。これが『恋』という感情なのだろうか。
だが、仮にそれが『恋』の感情であったとしても正直にいえば自分が幸せになっていいのかもわからなかった。
正直な経歴をいえば自身がとても褒められた経歴の持ち主ではない事をしっかりと理解していた。家族のためなど大義名分に過ぎない事なども美憂はちゃんと理解していた。
自分がいくらそんな錦の旗を掲げたとしてもそれが通じない相手も中にはいるだろうし、なんなら卑怯者と罵る者もいるかもしれない。そんな批判を受ける覚悟で美憂は深夜のアルバイトを行っていたのだ。
親ほども歳の離れた男性と食事をし、その後にデートをしたりする。稀に時間がない時はこのデートは飛ばされたりもするが、その後の流れは同じなのだ。
平凡な青年である恭介にそんな壮絶な人生を送ってきた自分は似合わない筈なのだ。例え向こうがどれだけ自分の事を愛してくれたとしても……。
美憂はそう割り切って心の中に留まる思いを消し去ろうとしたのだがいくらそう思ってもその感情が消える事はなかった。ノートの上に鉛筆に強い力を込めて記した際に消しゴムで消しても筆跡がいつまでも残っている時の様なモヤモヤとした感覚が美憂の中に残った。
その時だ。目の前から大きな口を開けた怪物が美憂の元へと迫っていく。
美憂は慌てて現実世界へと意識を引き戻し、懸命に剣を振っていく。背中の心配はしていない。背後は恭介が守ってくれているのだ。美憂は心置きなく目の前から迫る悪魔の大群を相手にする事ができた。
悪魔の大群をおおよそまで減らしたところで今日のところは侵攻を諦めたのだろう。多くの悪魔が空の上へと昇っていき姿を消す。
美憂はホッとするのと同時に思わず片膝を突いて溜息を吐く。
「……ようやく消えやがったか」
「らしいな。けど、次の襲来がいつになるかがわからん以上は何も言えん」
二人は暫くの後に空を眺めていたが、不意に美憂が恭介を手招きし、その体を強く抱き締めていく。
「ひ、姫川?」
「……最近になって気が付いた。あたしはあんたに惚れてるんだって……」
「お、おい……」
愛の告白を行った立場であるのにも関わらず、大胆なアプローチを前に恭介は照れて左足を後方へと下がらせるのだが、美憂はそれに追い付いていき恭介の元へと迫っていく。
「あたしをあんたものにしてくれ」
恭介の元へと追い付くと、兜の下で美憂の桜色の唇は微かにはっきりとそう言っていた。
恭介の胸が高鳴っていく。心臓の慟哭が抑えきれない。学校に通っていた頃から望んでいたシチュエーションだというのに恭介は未だに目の前で起きる光景が信じられずにいた。
堪らなくなり武装を解除すると美憂もそれに合わせて武装を解除する。だが、美憂は恭介を離さない。彼女は照れる恭介を優しく抱き締めていた。
メロンを思わせるほどに豊満な両胸が押し付けられるのと共に美憂の唇が目の前から迫り来る光景に恭介はすっかりと我を忘れていた。
このまま唇を重ね合わせるべきだろうか。そんな悩みを抱えた時だ。
国の操るヘリが二人の前に降りてきた。
「神通様、姫川様、取り込み中のところ申し訳ありませんが、今度は鳥取市の山村に悪魔たちが現れたという事でして、よければご同行願えませんか?」
二人はそれに同調してヘリへと乗り込む。その間も恭介の胸の鼓動はまだ鳴り続けていた。
先程の美憂のあの言葉は告白の言葉そのものであった。
恭介は胸がバクバクと動いていた事に気が付く。恭介は自身の頭の中になぜか真紀子が現れて、頭の中にいる自分に向かって真っ白な空間の中で話し合っていた事に気が付く。
「焦ったいなぁ、さっさと姫川を抱き締めちまえよ。男なら当たって砕けろの精神でやりな」
頭の中で真紀子が腕を組みながら揶揄う様に告げた。
「で、でも、姫川に頬でも張り飛ばされたらと思うと怖くてさ……」
「お前いちいちンな事に怯えてんのかよ。情けないねぇ~」
真紀子の煽る口調が少しばかり腹が立った。だからだろう。言い返す恭介の語気が少し荒くなる。
「別にいいだろッ!お前なんかにオレの気持ちがわかってたまるものかッ!」
「今度は逆ギレかい?情けないねぇ~神通、テメェがだいぶ前のゲームの時にあたしの問い掛けに対して答えた時の自信を思い出しなッ!」
その時の恭介が思い出したのは去年天堂希空に絡まれていた時に行われたゲームの中での二人の間に開かれた押し問答であった。
「……そうかよ。けど、あたしより先に死ぬんじゃねーよ。楽しみが減るだろうが」
希空への恐怖を語りながら剣を振るった時に真紀子は確かにそう告げた。
その時に恭介は顔に絶対の自信に満ちた笑顔を浮かべながら真紀子に向かって答えたのである。
「当たり前だろうがッ!オレは必ずこのゲームを生き抜いて姫川をモノにするんだ」
この時の恭介の体全体からは自信というものが真紀子に伝わったのだろう。
真紀子は機関銃を構えながら大きな笑い声を上げていく。
「それだよッ!神通ッ!あたしが求めていたのはそれだッ!」
恭介はこの後に自身と真紀子が互いに剣先と銃口とを構え直した後にぶつかって激しい戦いを繰り広げた事を思い返す。
「……そうか、あの時の感触か」
「そういう事だ。まぁ、頑張れよ」
真紀子は恭介の肩を優しく叩きながら言った。優しく置かれた手が恭介には温かく感じられた。
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