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第三部『終焉と破滅と』
最上真紀子の場合ーその11
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「にしても、お前があんな爺さんの愛人をしてたなんて意外だぜッ!」
真紀子は船の荷物に身を隠しながら、同じく隣でレイピアを構えている美憂に向かって軽口を叩いていく。
「……別に愛人ってわけじゃあない。単に特別な小遣いを出すからツレとして船に来てくれと頼まれただけだ」
美憂は相変わらずの淡々とした口調で言った。
「あんな可愛らしいピンク色のカクテルドレスまで買ってもらってそりゃあねーだろッ!」
真紀子は同じく陰の向こうに潜んでいる相手に向かって機関銃を撃ちながら叫んでいく。
真紀子は今年のクリスマスほど人生にとって不運であった事はなかった。自分が企画した船上パーティーにあろう事かテロリストが参加し、いきなり銃を乱射するなどとは思いもしなかったのだ。
船を出港させる間際まで部下のヤクザと共に厳重なチェックを施していてのだから、自分達の検査に漏れがあったとは思えない。海路からの侵入も警戒しており、甲板の底には複数の武装した部下が見張っていたのだ。ヨットの場合万が一海路から侵入するとしても船の底から侵入するはずなのだ。
だから、そこを重点的に守って正解だった。真紀子は胸を張って言える。
甲板へと乗り込む様な奴がいるとは想像もできないし、仕方はない。真紀子は声高にして叫びたい気持ちであった。
しかも悪魔の力を使わずに人間の力だけで港から泳いでくるなど想像もできないではないか。
お陰で甲板内で銃を乱射されて多数の死傷者が出てしまったではないか。残った僅かな人々は甲板の下で息を潜めているが、もし自分たちが負ければ目の前の男の手によって皆殺しにされてしまうだろう。この時の真紀子や美憂はまさしく志恩の好きな特撮テレビ番組の主人公になった心境であった。
だが、それは意図しての事ではない。最初の銃乱射騒動の時に転んでしまいそのまま逃げ遅れてしまったというのが真相である。
そのお陰で自分は“サタンの息子”の姿となって存分に腕を振るえるのであるが、この責任は必ず課せられるだろう。
希空の事であるから自分に全責任を押し付けるに違いあるまい。真紀子は兜の下で歯を軋ませながら叫ぶ。
「このクソッタレがァァァァァ~!!」
真紀子は怒りのまま機関銃の引き金を引いていく。ヨットの中にある物の陰に隠れている正彦を狙っていたのである。
「おい、最上。お前のご主人様には連絡したのか?」
「したよ、さっきあいつが甲板の上で殺しまくっていた時な……だけど、あいつ今用事あるから掛けるなってよッ!ちくしょう……」
真紀子は苛立ちながら物陰に向かって引き金を引いていく。
だが、未だに伊達正彦の姿は見えない。
真紀子のイライラはその度に募っていく事に気が付いた。
真紀子は近くの物陰を勢いよく蹴り飛ばして、我慢ができないとばかりに正彦が潜む物陰の元へと駆け出していく。
だが、それこそが罠であったのだ。正彦は両手の爪を大きく突き出して、真紀子のに向かって飛び掛かっていく。
美憂は思わずレイピアを構えながら物陰から立ち上がったが、真紀子はなんとか自分の力で攻撃を交わし、正彦の腹に向かって引き金を引いていく。
正彦の鎧の腹部に幾つもの銃弾が撃ち込まれていき、正彦はこのまま倒れ込むはずであった。
だが、正彦は何事もないかの様に真紀子に回し蹴りを叩き込んだのである。甲板の上に叩き付けられて弱る真紀子に向かって爪を振り上げて始末しようとする正彦の元へと美憂が駆け付けたのである。
美憂は自身のレイピアを盾にして正彦の爪を防ぎ、そのまま滑らせる様にサーベルを動かしたかと思うと、引く間際に力を込めて爪ごと正彦を弾き飛ばしたのである。
「おい、無事か?」
「……あたしもヤキが回ったな。あんたに助けてもらう時がくるなんて」
「助けてもらっておいてその態度はなんだ?」
「へーへー、ありがとうごぜーますだ。おさむれぇ様ぁ」
真紀子はふざけながら感謝の言葉を述べた。
「貴様ふざけているのか?」
すると、これまで聞いた事もないような低い声が聞こえた。兜をしているので表情は察せられないが、裏側では眉を顰めてこちらを鋭い目で睨んでいるのだろう。真紀子はそんな事を考えていたが、目の前の爪を装備した正彦が襲い掛かってきた瞬間にそんなくだらない考えは吹き飛び、懸命に機関銃を構えて引き金を引いていくが、銃弾はテ正彦の鎧の上を滑っていくばかりである。恐らく蜷川大輔が身に纏っていたのと同じ構造の鎧なのであろう。真紀子は意識下なのか無意識なのかはわからないが舌を打った。
だが、この男は蜷川と比較すればかなり厄介である。というのも武器の扱いに優れ、蜷川以上の攻撃を浴びせてくるからである。そのため真紀子は機関銃を攻守に用いて防がなくてはならなかった。
美憂は油断している正彦の背後からレイピアを突き付けていき、その剣先が相手の肩を掠めていく際に正彦はようやく気が付いたらしく、ゆっくりと振り返ると右手の爪を振り上げて美憂を襲っていく。
美憂は体を逸らしてその攻撃を防ぐ。そのまま彼女は弧を描いて、レイピアの先端を打ち出していく。正彦の右肩に向かって一閃が迸っていく。
流石の正彦も美憂の会心の一撃の前には耐えきれなかったらしい。悲鳴を上げて地面の上に倒れ込む。
「よし、このまま逃げるぞ!」
「逃げるってどこへ!?」
「この船には一応緊急用のゴムボートを積んでんだ。甲板の下に置いてあるはずだ」
「よしッ!お前を信じるぞッ!」
美憂はそのまま真紀子に連れられて逃げ出していく。真紀子も逃げやすくするためか、武器を機関銃から自動拳銃に替えていた。
真紀子に連れられるままに美憂は逃げ出していったが、正彦は容赦しなかった。手に付けている爪を使って四足歩行で走っていき、勢いよく飛び上がり、二人を先回りしたのである。
「……信じられねぇ、テメェは漫画に登場するヤバい悪役か?」
「全くだ。森宗意軒がみたら心底から羨ましがるだろうな。きっと、あいつの執念があるならば徳川の世なんて簡単に潰してくれるだろうよ」
時代劇好きの美優らしい比喩である。真紀子は思わず口笛を鳴らす。
森宗意軒は天草島原の乱の際に天草一揆軍の惣奉行や兵糧奉行などを務めた一揆軍の参謀の一人であり、オランダにも渡航した医療者であったとされる。
森宗意軒はとある有名な怪奇時代小説に登場する敵キャラクターとしても知られ、そこでは怪異を操る老人として描かれ、事件を裏で操る黒幕としても知られている。美憂はこの小説が好きで何度も読み返しており、真紀子は自分が高校にお姫様として通っていた頃におどろおどろしい題名を付いたその小説が読んでいた事を覚えている。
そんな事を考えていると、目の前にいる正彦が大きく爪を振り上げて襲ってくる事に気が付いた。真紀子は慌てて拳銃を抜いて、足下に向かって銃撃を喰らわせていく。
流石の正彦といえども飛び上がざるを得なかったのだろう。美憂もそれに同調して共に飛び上がっていく。
美憂は真上からレイピアを突き上げていき、正彦は両手の腕に備え付けてある爪を用いてレイピアを防ぐ。
ぶつかり合った場所が宙の上であったので、両者は地面に足を着く前に武器を離し、再度睨み合っていく。
その隙を狙って真紀子は正彦の足元を狙っていく。流石の正彦といえども、足にまでは防御が追い付いていないらしい。
福音に比べればなんと良心的なのだろうか。真紀子はここに来て真紀子は福音の理不尽なまでの防御力を思い返した。
あんな力があればいかなる武器があっても勝てないではないか。真紀子はこの理不尽なシステムに対して苛立ちを隠しきれなくなってしまう。
真紀子は自分の腹が怒りの炎で燃え上がっているのを感じた。真紀子は自動拳銃から機関銃へと武器を持ち替えて、正彦の足元に目掛けて集中方向を喰らわせていく。
こうすればあと少しでダメージを受け続け、蜷川の様に鎧の効果がなくなる。
真紀子はそんな淡い期待に胸を寄せていたのである。
真紀子は船の荷物に身を隠しながら、同じく隣でレイピアを構えている美憂に向かって軽口を叩いていく。
「……別に愛人ってわけじゃあない。単に特別な小遣いを出すからツレとして船に来てくれと頼まれただけだ」
美憂は相変わらずの淡々とした口調で言った。
「あんな可愛らしいピンク色のカクテルドレスまで買ってもらってそりゃあねーだろッ!」
真紀子は同じく陰の向こうに潜んでいる相手に向かって機関銃を撃ちながら叫んでいく。
真紀子は今年のクリスマスほど人生にとって不運であった事はなかった。自分が企画した船上パーティーにあろう事かテロリストが参加し、いきなり銃を乱射するなどとは思いもしなかったのだ。
船を出港させる間際まで部下のヤクザと共に厳重なチェックを施していてのだから、自分達の検査に漏れがあったとは思えない。海路からの侵入も警戒しており、甲板の底には複数の武装した部下が見張っていたのだ。ヨットの場合万が一海路から侵入するとしても船の底から侵入するはずなのだ。
だから、そこを重点的に守って正解だった。真紀子は胸を張って言える。
甲板へと乗り込む様な奴がいるとは想像もできないし、仕方はない。真紀子は声高にして叫びたい気持ちであった。
しかも悪魔の力を使わずに人間の力だけで港から泳いでくるなど想像もできないではないか。
お陰で甲板内で銃を乱射されて多数の死傷者が出てしまったではないか。残った僅かな人々は甲板の下で息を潜めているが、もし自分たちが負ければ目の前の男の手によって皆殺しにされてしまうだろう。この時の真紀子や美憂はまさしく志恩の好きな特撮テレビ番組の主人公になった心境であった。
だが、それは意図しての事ではない。最初の銃乱射騒動の時に転んでしまいそのまま逃げ遅れてしまったというのが真相である。
そのお陰で自分は“サタンの息子”の姿となって存分に腕を振るえるのであるが、この責任は必ず課せられるだろう。
希空の事であるから自分に全責任を押し付けるに違いあるまい。真紀子は兜の下で歯を軋ませながら叫ぶ。
「このクソッタレがァァァァァ~!!」
真紀子は怒りのまま機関銃の引き金を引いていく。ヨットの中にある物の陰に隠れている正彦を狙っていたのである。
「おい、最上。お前のご主人様には連絡したのか?」
「したよ、さっきあいつが甲板の上で殺しまくっていた時な……だけど、あいつ今用事あるから掛けるなってよッ!ちくしょう……」
真紀子は苛立ちながら物陰に向かって引き金を引いていく。
だが、未だに伊達正彦の姿は見えない。
真紀子のイライラはその度に募っていく事に気が付いた。
真紀子は近くの物陰を勢いよく蹴り飛ばして、我慢ができないとばかりに正彦が潜む物陰の元へと駆け出していく。
だが、それこそが罠であったのだ。正彦は両手の爪を大きく突き出して、真紀子のに向かって飛び掛かっていく。
美憂は思わずレイピアを構えながら物陰から立ち上がったが、真紀子はなんとか自分の力で攻撃を交わし、正彦の腹に向かって引き金を引いていく。
正彦の鎧の腹部に幾つもの銃弾が撃ち込まれていき、正彦はこのまま倒れ込むはずであった。
だが、正彦は何事もないかの様に真紀子に回し蹴りを叩き込んだのである。甲板の上に叩き付けられて弱る真紀子に向かって爪を振り上げて始末しようとする正彦の元へと美憂が駆け付けたのである。
美憂は自身のレイピアを盾にして正彦の爪を防ぎ、そのまま滑らせる様にサーベルを動かしたかと思うと、引く間際に力を込めて爪ごと正彦を弾き飛ばしたのである。
「おい、無事か?」
「……あたしもヤキが回ったな。あんたに助けてもらう時がくるなんて」
「助けてもらっておいてその態度はなんだ?」
「へーへー、ありがとうごぜーますだ。おさむれぇ様ぁ」
真紀子はふざけながら感謝の言葉を述べた。
「貴様ふざけているのか?」
すると、これまで聞いた事もないような低い声が聞こえた。兜をしているので表情は察せられないが、裏側では眉を顰めてこちらを鋭い目で睨んでいるのだろう。真紀子はそんな事を考えていたが、目の前の爪を装備した正彦が襲い掛かってきた瞬間にそんなくだらない考えは吹き飛び、懸命に機関銃を構えて引き金を引いていくが、銃弾はテ正彦の鎧の上を滑っていくばかりである。恐らく蜷川大輔が身に纏っていたのと同じ構造の鎧なのであろう。真紀子は意識下なのか無意識なのかはわからないが舌を打った。
だが、この男は蜷川と比較すればかなり厄介である。というのも武器の扱いに優れ、蜷川以上の攻撃を浴びせてくるからである。そのため真紀子は機関銃を攻守に用いて防がなくてはならなかった。
美憂は油断している正彦の背後からレイピアを突き付けていき、その剣先が相手の肩を掠めていく際に正彦はようやく気が付いたらしく、ゆっくりと振り返ると右手の爪を振り上げて美憂を襲っていく。
美憂は体を逸らしてその攻撃を防ぐ。そのまま彼女は弧を描いて、レイピアの先端を打ち出していく。正彦の右肩に向かって一閃が迸っていく。
流石の正彦も美憂の会心の一撃の前には耐えきれなかったらしい。悲鳴を上げて地面の上に倒れ込む。
「よし、このまま逃げるぞ!」
「逃げるってどこへ!?」
「この船には一応緊急用のゴムボートを積んでんだ。甲板の下に置いてあるはずだ」
「よしッ!お前を信じるぞッ!」
美憂はそのまま真紀子に連れられて逃げ出していく。真紀子も逃げやすくするためか、武器を機関銃から自動拳銃に替えていた。
真紀子に連れられるままに美憂は逃げ出していったが、正彦は容赦しなかった。手に付けている爪を使って四足歩行で走っていき、勢いよく飛び上がり、二人を先回りしたのである。
「……信じられねぇ、テメェは漫画に登場するヤバい悪役か?」
「全くだ。森宗意軒がみたら心底から羨ましがるだろうな。きっと、あいつの執念があるならば徳川の世なんて簡単に潰してくれるだろうよ」
時代劇好きの美優らしい比喩である。真紀子は思わず口笛を鳴らす。
森宗意軒は天草島原の乱の際に天草一揆軍の惣奉行や兵糧奉行などを務めた一揆軍の参謀の一人であり、オランダにも渡航した医療者であったとされる。
森宗意軒はとある有名な怪奇時代小説に登場する敵キャラクターとしても知られ、そこでは怪異を操る老人として描かれ、事件を裏で操る黒幕としても知られている。美憂はこの小説が好きで何度も読み返しており、真紀子は自分が高校にお姫様として通っていた頃におどろおどろしい題名を付いたその小説が読んでいた事を覚えている。
そんな事を考えていると、目の前にいる正彦が大きく爪を振り上げて襲ってくる事に気が付いた。真紀子は慌てて拳銃を抜いて、足下に向かって銃撃を喰らわせていく。
流石の正彦といえども飛び上がざるを得なかったのだろう。美憂もそれに同調して共に飛び上がっていく。
美憂は真上からレイピアを突き上げていき、正彦は両手の腕に備え付けてある爪を用いてレイピアを防ぐ。
ぶつかり合った場所が宙の上であったので、両者は地面に足を着く前に武器を離し、再度睨み合っていく。
その隙を狙って真紀子は正彦の足元を狙っていく。流石の正彦といえども、足にまでは防御が追い付いていないらしい。
福音に比べればなんと良心的なのだろうか。真紀子はここに来て真紀子は福音の理不尽なまでの防御力を思い返した。
あんな力があればいかなる武器があっても勝てないではないか。真紀子はこの理不尽なシステムに対して苛立ちを隠しきれなくなってしまう。
真紀子は自分の腹が怒りの炎で燃え上がっているのを感じた。真紀子は自動拳銃から機関銃へと武器を持ち替えて、正彦の足元に目掛けて集中方向を喰らわせていく。
こうすればあと少しでダメージを受け続け、蜷川の様に鎧の効果がなくなる。
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