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8、フォルトウルフの長老様
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私が寝かせれていた家からさほど離れていない場所に長と呼ばれる方の家に着いた。
因みに彼らは狼の姿で暮らす者と人の姿で暮らす者とがいるそうで、人の姿で暮らす狼たちは人と同じように家を建てて生活している。狼の姿で暮らす者たちの住処は更に森の奥にある洞窟や洞穴で生活しているようだ。
本来の姿を大事に考え暮らすものと人間の生活に興味を持ち、知識を取り入れて生活するものと別れたらしい。だからといってそれぞれの事のあり方に反対せず、受け入れ共存している。とても理想的な生き方だと私はそれを聞いて思った。
人間は考え方の違いで簡単に争いをする。欲望に忠実だと言えばそれまでだが、考えの相違は必ずしも起こる事であり、それをどう受け入れ解決するのかが長い間人間が課せられている課題であるだろう。
とまぁ今現在の私にはあまり関係のないことを考えたところでどううにもならない問題である。長の家の扉をウルガさんがノックすると、中から可愛らしい女性が顔を出した。
「あら?ウルガ!それにアルヴィオにヴァレリまでっ!みんなそろって珍しいじゃない、おじい様に何かお話?」
女性は3人を見るなり僅かに頬を染めて笑顔で話しかけた。私は体格のいいウルガさんの後ろ隠されて気づかれなかったようだ。ひょっこりと顔を覗かせると女性は驚いて毛を逆立てていた。
「にっ人間!?じゃあその子が……」
この住処に私が訪れていることは周知のことだったらしい。こんな人里離れた森の奥に来る人はいないだろうと思い当然の反応か、と思いながらながらも軽く会釈した。女性はこちらを少し警戒した様子でこちらを一瞬睨み私たちを中へ通してくれた。
そんな彼女の態度に苦笑しながら中へ入っていく、ウルガさんたちのようにいきなり受け入れてくれたのは珍しいのかもしれない。
中に通されて直ぐがリビングのような場所だった。そして暖炉の少し離れた場所に藁がフカフカに敷かれた上に布を敷いただけのベッドモドキがあり、その上に大きな年老いたオオカミが寝ていた。ピクリと耳を動かし顔を上げたオオカミは私達を目にして目を細める。
「これは珍しい客人が来たものじゃな…異人の娘とは…」
その言葉に私達は目を見張った。まだ何も言っていないのに私が異世界から来たのを言い当てた。
「流石は長だねェ~なんで分かったの?」
アルヴィオさんがキラキラとした瞳で長と呼ばれるオオカミに問いかける。
長は私達に座るように促してくれたので何かの獣の毛皮を敷かれた床の上に座ろうとした、するとウルガさんが「こっち」と胡座をかいた自分の膝を叩く。私が訳がわからず固まっていると手を引き寄せられてそのまま彼の逞しい腕の中に収まってしまった。
この状況に私が慌てて立ち上がろうすると、私の膝の上にオオカミの姿に戻ったヴァレリの頭が乗せられてしまった。身動きがとれない状況になってしまった私は恥ずかしくて顔を俯かせてしまう。
そして何故か「あっ!オレもーー!」と叫びながらアルヴィオさんがオオカミの姿になり、グリグリ無理やり私の膝の上に頭を捩じ込んだ。少しムッとしたヴァレリは頭を上げて顎を乗せやすい場所に戻して目を瞑る。
何故か私は後ろにウルガさん右にヴァレリ、左にアルヴィオさん(二人とも膝に顎を乗せた状態)になってしまっていた。両手に花ならぬ両手にオオカミだ。
そんな私達の様子を見ていた老狼さんは目許を和ませて「ふぉっふぉっふぉ」と笑っていた。
そして斜め後ろからピリピリするよう視線を感じるが、怖くてそちらを見れなかった。
「随分と仲良くなったようじゃな異人の娘よ」
ほがらかなおじいちゃんを思わせる喋り方の老狼さん。私に対しての警戒心もあまり無いようで優しく語りかけてくれる。
「それはそうと何故コイツが異世界の人間だと直ぐに分かったんだ?」
私の頭をポンポンしてウルガさんがそう口にする。頭を撫でられる心地よさに思わず目を閉じて身を任せていると先程よりも強い視線に背筋が伸びた。
「簡単じゃよ、この世界にはない匂いじゃよ。長く生きていると色々なモノに会う、かつて会った男も異人だった」
「えっ?私以外にもこの世界に来た人がいたのですか?」
思わず声を上げた私を老狼は懐かしむように目を細めた。
「奴もこの世界に迷い混んだようだった、突然目の前に異界へと続く穴開きそこへ落ちてしまったらしい」
「私と一緒です…その人はいまどうしてますか?元の世界へ帰れたんですか?」
老狼は首を横に降った。言葉にしなくても分かってしまった。その人は帰れなかった―――
「いまその人は何処に?」
「儂らは人間よりも長く生きる、そやつはとっくにいないだろうな」
「そうですか…」
落ち込んでしまった私に、気遣わしげにヴァレリが見上げていたので優しく頭を撫でてあげる。アルヴィオさんもスリスリと頭を擦りつけて慰めてくれているようだった。ウルガさんは相変わらず優しく頭を撫でてくれる。
因みに彼らは狼の姿で暮らす者と人の姿で暮らす者とがいるそうで、人の姿で暮らす狼たちは人と同じように家を建てて生活している。狼の姿で暮らす者たちの住処は更に森の奥にある洞窟や洞穴で生活しているようだ。
本来の姿を大事に考え暮らすものと人間の生活に興味を持ち、知識を取り入れて生活するものと別れたらしい。だからといってそれぞれの事のあり方に反対せず、受け入れ共存している。とても理想的な生き方だと私はそれを聞いて思った。
人間は考え方の違いで簡単に争いをする。欲望に忠実だと言えばそれまでだが、考えの相違は必ずしも起こる事であり、それをどう受け入れ解決するのかが長い間人間が課せられている課題であるだろう。
とまぁ今現在の私にはあまり関係のないことを考えたところでどううにもならない問題である。長の家の扉をウルガさんがノックすると、中から可愛らしい女性が顔を出した。
「あら?ウルガ!それにアルヴィオにヴァレリまでっ!みんなそろって珍しいじゃない、おじい様に何かお話?」
女性は3人を見るなり僅かに頬を染めて笑顔で話しかけた。私は体格のいいウルガさんの後ろ隠されて気づかれなかったようだ。ひょっこりと顔を覗かせると女性は驚いて毛を逆立てていた。
「にっ人間!?じゃあその子が……」
この住処に私が訪れていることは周知のことだったらしい。こんな人里離れた森の奥に来る人はいないだろうと思い当然の反応か、と思いながらながらも軽く会釈した。女性はこちらを少し警戒した様子でこちらを一瞬睨み私たちを中へ通してくれた。
そんな彼女の態度に苦笑しながら中へ入っていく、ウルガさんたちのようにいきなり受け入れてくれたのは珍しいのかもしれない。
中に通されて直ぐがリビングのような場所だった。そして暖炉の少し離れた場所に藁がフカフカに敷かれた上に布を敷いただけのベッドモドキがあり、その上に大きな年老いたオオカミが寝ていた。ピクリと耳を動かし顔を上げたオオカミは私達を目にして目を細める。
「これは珍しい客人が来たものじゃな…異人の娘とは…」
その言葉に私達は目を見張った。まだ何も言っていないのに私が異世界から来たのを言い当てた。
「流石は長だねェ~なんで分かったの?」
アルヴィオさんがキラキラとした瞳で長と呼ばれるオオカミに問いかける。
長は私達に座るように促してくれたので何かの獣の毛皮を敷かれた床の上に座ろうとした、するとウルガさんが「こっち」と胡座をかいた自分の膝を叩く。私が訳がわからず固まっていると手を引き寄せられてそのまま彼の逞しい腕の中に収まってしまった。
この状況に私が慌てて立ち上がろうすると、私の膝の上にオオカミの姿に戻ったヴァレリの頭が乗せられてしまった。身動きがとれない状況になってしまった私は恥ずかしくて顔を俯かせてしまう。
そして何故か「あっ!オレもーー!」と叫びながらアルヴィオさんがオオカミの姿になり、グリグリ無理やり私の膝の上に頭を捩じ込んだ。少しムッとしたヴァレリは頭を上げて顎を乗せやすい場所に戻して目を瞑る。
何故か私は後ろにウルガさん右にヴァレリ、左にアルヴィオさん(二人とも膝に顎を乗せた状態)になってしまっていた。両手に花ならぬ両手にオオカミだ。
そんな私達の様子を見ていた老狼さんは目許を和ませて「ふぉっふぉっふぉ」と笑っていた。
そして斜め後ろからピリピリするよう視線を感じるが、怖くてそちらを見れなかった。
「随分と仲良くなったようじゃな異人の娘よ」
ほがらかなおじいちゃんを思わせる喋り方の老狼さん。私に対しての警戒心もあまり無いようで優しく語りかけてくれる。
「それはそうと何故コイツが異世界の人間だと直ぐに分かったんだ?」
私の頭をポンポンしてウルガさんがそう口にする。頭を撫でられる心地よさに思わず目を閉じて身を任せていると先程よりも強い視線に背筋が伸びた。
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「私と一緒です…その人はいまどうしてますか?元の世界へ帰れたんですか?」
老狼は首を横に降った。言葉にしなくても分かってしまった。その人は帰れなかった―――
「いまその人は何処に?」
「儂らは人間よりも長く生きる、そやつはとっくにいないだろうな」
「そうですか…」
落ち込んでしまった私に、気遣わしげにヴァレリが見上げていたので優しく頭を撫でてあげる。アルヴィオさんもスリスリと頭を擦りつけて慰めてくれているようだった。ウルガさんは相変わらず優しく頭を撫でてくれる。
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