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秋野小窓

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【3】おかえり

3−4

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 そのまま眠ってしまったらしい。目を覚ますと、鹿賀さんは既に起きていたようだ。パジャマのまま、ベッドにPCを持ち込んで、何か見ている。
 もぞもぞと動く音にすぐに気づかれてしまった。

「おはようございます。眠れましたか?」
「はい。おはようございます」

 膝に乗せていたPCをサイドテーブルに置いて、隣に寝転んだ。中断させてしまったかな。
 というか、起きて何かやることがあったなら、2階の書斎でもリビングでもよかったはずなんだ。

「一緒にいてくれたんですね」
「はい。ラヴェルもそこに」
「ホントだ」

 壁際の大きなクッションは、やはりラヴェルのベッドだったみたいだ。伏せた状態でこちらを見ている。

「寂しくなかったでしょう?」
「へへ。はい」
「そろそろ起きましょうか。夜眠れなくなってしまいますからね」

 脱ぎ散らかした服は鹿賀さんが丁寧に畳んでくれていたようだ。受け取って、今度は自分で着替える。
 鹿賀さんの服はここにはないようで、「支度ができたらリビングにおいで」と言って先に部屋を出て行った。ラヴェルもくっついて行ってしまった。

 何とも言えない気持ちで借りたパジャマを畳み、ベッドの上に置く。余計な思考を振り切るようにして、リビングに向かった。

「もうお昼ですね。お腹は空いていますか?」
「いえ、まだ」
「ですよね。僕もです。ランチはもう少し後にしましょうか」

 そうだ。食費。生活費のことを相談しないと。

「鹿賀さん、あの、ご相談が……」
「はい?」

 促されて、ソファに並んで座る。
 俺が切り出すと、鹿賀さんは少し考えて、

「一日300円でどうでしょう」

と三本指を立てる。俺の聞き間違いだろうか。

「一食300円ですか?」
「いえ、一日です」
「それは破格すぎます!」

 一食300円としても、今時、学食だってそんな値段では食べられない。それが、一日で300円?朝昼晩三食食べたら、一食100円だ。
 それに、食費以外にも光熱費や日用消耗品、ここに住ませてもらう家賃も含めるとしたら、もはやタダ同然になってしまう。

「でも、優太君、家事も手伝ってくれるでしょう?」
「もちろんやりますけど、それとこれとは別です!」
「むしろ働きぶりによっては、僕の方がお給料を払わないといけないくらいかと」

 もし俺がこの家の家事を全部担うとしたら、トントンかもしれない。ラヴェルのお世話まで完璧にこなしたら、お小遣いをもらってもいいくらいだろう。
 でも、鹿賀さんといる限り、そんなことには絶対にならない。きっと甘やかされて、あれもこれも僕がやっておきますね、なんてことになるんだから。
 ぶるぶると首を振る。
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