ひとりで生きたいわけじゃない

クリスマス番外

14:潤side

「潤……」

　貴矢さんの両腕が僕を包み込もうとする。

「嫌だっ！」

　お別れのハグなんて、辛くなるだけだ。貴矢さんの胸を強く押して抵抗する。

「ごめん。ごめんな？そんなに嫌だったなんて思わなくて」
「ううっ……っく……うっうぅ……」
「でも、そうだよな。俺はこだわりなくても、調理器具の位置が変わってたら不便だよな」

　ーー……ん？

「カジダイコウの人にはこれからも来てもらうことになると思うけど、なるべくキッチンは触らないようにしてもらうね」
「カジダイコウ……？」

　って、家事代行サービス！？

「言ってなかったっけ？前は掃除だけ頼んでたんだけど、潤と付き合うようになって、食べるものとかもう少し気をつけないとなって思うようになって。料理も頼んでみたら結構おいしくてさ」

　ちょっと待って、もしかして僕、盛大に勘違いしてた……？

「その、家事代行の人って、どんな人……？」
「若い男の人だよ。前に女性に来てもらったら、ややこしいことになったことがあって……それから担当を指名できる業者に変えて、去年からずっと今の人にお願いしてる」

　ややこしいこと……貴矢さん、モテるからな。言い寄られてしまったんだろうか。
　若い男の人ってーー……。

「見た目は？どんな人？」
「んー、潤より少しだけ身長あるけど細くて小柄で、最近流行りのアイドルグループのなんとかっていう子にちょっと似てるかな」
「黒髪でパーマかけてる……？」
「そう！あれ、潤知ってるの？」

　ケトルがやれやれと言うようにカタカタ震えて湯気を噴き出した。